2012年6月28日木曜日

地震基盤と工学的基盤

先日より試していたS波測定法に目途がたったため、その事について設計者と話をしていました。

 その中で、「そもそも工学的基盤面とは、どういう性質のものか?」と聞かれ、こう答えてしまいました。
 「それ以上深くなっても波形が大きく変わらない深度の連続面」

大間違いです。
 これは地震基盤の解釈に近いでしょうか。

 地震基盤の定義は吉田望「地盤の地震応答解析」によると以下の二つ
  1. 「局所的な地盤構成に関わりなく、ある地域では一様な 挙動をするであろう地層」
    つまり、表層部の影響を取りはらった地盤ということでしょう。
  2. 「構造物の耐震性を扱う際、震源での地震動の特性を反映させるための震源に近づく限界」
    これだけ読むと分かりにくいですが、「考慮すべき最長の周期よりやや長い固有周期をもつ表層地盤の深さ」 ということです。
工学的基盤はそれほど明確な定義はないようですが、「解析上、それより下の地盤は考慮しないことを意味している」とのこと。これを用いる根拠は以下の通り紹介されています。
  1. 「同一地盤でも構造物の固有周期に応じて基盤が仮定されるべきである」
    地震基盤の2の考え方と共通するところがあるようです。
  2. 地震基盤で観測波形データは少ないが、工学的基盤では多数ある。
     つまり、非常に深いデータは少ないため、データの多くある深度で地震動を設定するのが望ましいということでしょう。また、「地震基盤以浅の増幅特性を評価することが困難」とも。
実務的には、それぞれの基準が波形を設定した深度のVsで工学的基盤を決めているという解釈が良いのでしょうか?詳細は分かりませんが。実際、東京湾臨海部模擬地震波はVs = 300~500 m/s での地震動を想定しているようですし、MM21は Vs = 430 m/s だそうです。

今年の短期目標の一つに地震応答解析を挙げていたのですが、本質的なところはまったく進んでいません。こんな基本的な事くらい、即答したいものです。


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2014/2/21追記
工学基盤の1、地震基盤の2については、地盤工学会「ジオテクノート9地震動」に長周期の簡易な留意点が書かれています。
http://phreeqc.blogspot.jp/2014/02/blog-post_21.html

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2019/10/20追記
先日、著者の話を聞く機会がありました。(最近は山の波を扱うことが多く、平地の波を忘れかけていました。)工学的基盤については、以下のように説明されていました。

・工学的基盤(橋梁等で300m/s)で設計用地震動を設定。
・工学的基盤で入射波を設定するので、それ以深の地質構造の影響を受けない。(影響を受けた波を設定している)
・同じ地震に対して工学的基盤に入射する波が同じというのは誤り。(同じとみなせるのは、500m/s程度)

これこそ経験工学、といった内容で納得。今なら設計者の質問に「せん断波速度で決めた深度」と答えるでしょうね。1周した感じがします。



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