不飽和透水試験機のデモに立ち会いました。
試験機自体は古くからあるのですが、小型化、高速化したと宣伝されてた機種です。小型化はまだしも、機器の改良だけで高速化?という点が気になっていました。
実際に見せていただくと、測定自体は確かに速い。が、不飽和透水試験で時間がかかるのは測定前の浸透。今回は肝心のプレ浸透が済まされており、試験だけの営業でした。
何時間浸透させたのかと聞いてみると、ほとんどしていないとのこと。つまり、測定が速い=高速化と宣伝されているようでした。うーん。
ま、プレ浸透を長くすれば飽和透水係数を得られるわけでもありません。が、雑に扱うのは論外。短時間のプレ浸透で飽和とみなせる理屈はないでしょう。
https://phreeqc.blogspot.com/2019/09/blog-post_17.html
残念ながら私の勘違いだったのですが、コンセプトは良いと思われます。これからも開発が続くことでしょう。一つぐらいは手元に置いておきたい機材でした。
2019年12月24日火曜日
2019年9月17日火曜日
不飽和地盤を対象とした現場透水試験
2年前に不飽和地盤を対象とした現場透水試験法が、地盤工学会で基準化されました。
それまで、現場透水試験といえば、飽和帯を対象としたものが主体でした。
過年度の報告書を借りてくると、不飽和帯に対し飽和帯の試験を適用して、透水係数を求めている例を見かけることも屡々。「長時間注入しているから飽和したと見なす」、「流量が一定になったから飽和帯とみなす」、などという期待のもとに実施されていたり、何も記載せず淡々と飽和帯の式を流用している例も多く見ました。背景には、不飽和の式が基準にないから飽和の式を使うといったマニュアル依存が強くあったようです(基準外の論文ベースの不飽和試験を実施している例は見ませんでした)。
「長時間注入しているから飽和したと見なす」等の期待について、論ずるに値しないことを示すデータは、以下の報告にあります。
それまで、現場透水試験といえば、飽和帯を対象としたものが主体でした。
過年度の報告書を借りてくると、不飽和帯に対し飽和帯の試験を適用して、透水係数を求めている例を見かけることも屡々。「長時間注入しているから飽和したと見なす」、「流量が一定になったから飽和帯とみなす」、などという期待のもとに実施されていたり、何も記載せず淡々と飽和帯の式を流用している例も多く見ました。背景には、不飽和の式が基準にないから飽和の式を使うといったマニュアル依存が強くあったようです(基準外の論文ベースの不飽和試験を実施している例は見ませんでした)。
「長時間注入しているから飽和したと見なす」等の期待について、論ずるに値しないことを示すデータは、以下の報告にあります。
西垣ほか「不飽和地盤を対象とした現場透水試験法に関する課題の抽出と改良に関する考察」
- 初期飽和度により求められる透水係数が異なる。これは、不飽和帯に注入することで間隙空気が封入されるため。
- CO2ガスの事前注入が有効。
大きくは上記2点の成果が中心の報告です。他にも、示唆に富む報告が数多く含まれており、個人的には「当たり」の資料でした。
過去の研究をもとに、普遍化・共有化できる部分のみがマニュアル化・基準化されているとも言えます。その観点ではマニュアルや基準の適用範囲に多様な自然をすべて合わせることはできません。適用外の自然をどのように調べるか?が地質屋の力量と言われたこともあります(素晴らしい施主でした!)。
今まで力量を問われ対応できなかった方々も、せっかく基準化されたのですから、使えばよいと思います。不飽和地盤を対象とした試験、今後は広く使われるようになることに期待しましょう。
2016年8月2日火曜日
不飽和地盤の透水性
設計者から、問い合わせ。
不飽和地盤の透水係数を求める際、通常は力学試験の実施も念頭にサンプリングを行い、室内透水試験を実施します。浸透流解析も飽和透水係数を設定し、それに対する不飽和透水係数の比を飽和度の関数として設定します。
これに対し、原位置の不飽和透水試験のメリットは何でしょうか?
先日、この点に関し話を伺う機会がありました。メリットは大きく3つ。
①スケールの影響を抑えられる(ただし、孔内で実施する場合であり、現在基準化の最中です)
②サンプリングや試料作成時の擾乱を考えなくてよくなる
③地表の植生の影響を取り入れることができる
3つ目が大きいですね。これは計算結果に大きく効きそうです。
なお、原位置不飽和透水試験で求めた透水係数は、当然、飽和透水係数よりも小さくなります。 数か月前まで意見募集中であった不飽和透水試験の基準案でも、飽和透水係数とは区別されています。実務でどのように扱っていくか、ある程度の割り切りみたいなものは現状でもあるのですが、基準の解説で何か触れられるでしょうか?
不飽和地盤の透水性に関してはある程度の目途が立っています。力学については、まだまだですね。
不飽和地盤の挙動、「使ったことがない」など我関せずではなく、危機感をもって接しないといけません。
「不飽和地盤の透水試験ができるか?」
できません。
いえ、古い大きなマリオットタンクが他支店にあるそうなので、できないことはなと思います。が、個人的にそれを見たことも使ったこともありません。
不飽和地盤の透水係数を求める際、通常は力学試験の実施も念頭にサンプリングを行い、室内透水試験を実施します。浸透流解析も飽和透水係数を設定し、それに対する不飽和透水係数の比を飽和度の関数として設定します。
これに対し、原位置の不飽和透水試験のメリットは何でしょうか?
先日、この点に関し話を伺う機会がありました。メリットは大きく3つ。
①スケールの影響を抑えられる(ただし、孔内で実施する場合であり、現在基準化の最中です)
②サンプリングや試料作成時の擾乱を考えなくてよくなる
③地表の植生の影響を取り入れることができる
3つ目が大きいですね。これは計算結果に大きく効きそうです。
なお、原位置不飽和透水試験で求めた透水係数は、当然、飽和透水係数よりも小さくなります。 数か月前まで意見募集中であった不飽和透水試験の基準案でも、飽和透水係数とは区別されています。実務でどのように扱っていくか、ある程度の割り切りみたいなものは現状でもあるのですが、基準の解説で何か触れられるでしょうか?
不飽和地盤の透水性に関してはある程度の目途が立っています。力学については、まだまだですね。
不飽和地盤の挙動、「使ったことがない」など我関せずではなく、危機感をもって接しないといけません。
2012年8月25日土曜日
浸透流計算が収束しない
後輩からヘルプ。
38万節点のモデルで、初期定常が12時間以上かかるとの事。
モデルを見ると、初期水位が入っていません。カラカラの器に境界条件だけ張って水を入れようとしても時間がかかります。適切に初期水位を設定してまわすと、流れるようになりました。最終的には単コアで3分でした。
これ、飽和だけの計算でも速いですね。最初は飽和だけで計算し、その結果を初期値にして不飽和も含めた計算をすれば、効率が上がりそうです。
ちょっとショックなこともありました。
なぜか並列化ソルバーの方が遅い。
6コアで7分かかります。この4分は、「分けて、くっつけて」の時間だけではないように思います。ちょっと考えましたがそれ以外は思いつきませんでした。今後の課題です。
38万節点のモデルで、初期定常が12時間以上かかるとの事。
モデルを見ると、初期水位が入っていません。カラカラの器に境界条件だけ張って水を入れようとしても時間がかかります。適切に初期水位を設定してまわすと、流れるようになりました。最終的には単コアで3分でした。
これ、飽和だけの計算でも速いですね。最初は飽和だけで計算し、その結果を初期値にして不飽和も含めた計算をすれば、効率が上がりそうです。
ちょっとショックなこともありました。
なぜか並列化ソルバーの方が遅い。
6コアで7分かかります。この4分は、「分けて、くっつけて」の時間だけではないように思います。ちょっと考えましたがそれ以外は思いつきませんでした。今後の課題です。
2012年4月1日日曜日
地中レーダー探査で体積含水率?
文献の整理をしておりますと、地中レーダー探査から体積含水率を推定するといった報告を見つけました。
これ、調べてみると古くからある研究のようで、多くの方が報告されています。今回は比誘電率と広範囲の体積含水率の関係を、新たに整理しなおした文献でした。
鈴木敬一(2011)「誘電分散を伴う土質試料の比誘電率と体積含水率の関係」物理探鉱, 64, 3
なかなか実務的な内容です。読み終わって、これは使えそうだ!と思いました。が、1つ疑問が。どうやって、比誘電率の震度分布を求めるのか?に引っかかりました。地中レーダー探査(プロファイル法)では、それを知るために既知の深度でキャリブレーションを行って等価な誘電率を設定し、解析するからです。つまり、時間を測定し、速度(比誘電率)を決定して深度を求めているのです(先月理解したばかりです)。
http://phreeqc.blogspot.jp/2012/03/blog-post_10.html
調べてみると、その答えがこちらの文献にありました。
http://www.jstage.jst.go.jp/article/segj/60/6/455/_pdf/-char/ja/
2種あり、ひとつはボーリングで含水比急変点を確認する直接的な方法、もうひとつは形状より判定する方法だそうです。後者はよく理解できません。さっそく文献を購入しましょう。
同様の内容を、岡大の竹下先生が国土技術センターで講演され、その資料が公開されています。ワイドアングル併用です。分かりやすいですね。ただ、これらの注意点も上記文献で触れられていますが。(余談ですが、この資料の中で、波形をシミュから作られています。どうやるのでしょう。驚きです。)
http://www.jice.or.jp/jishu/t1/201203060.html
文献を読んでみないと分かりませんが、こういった簡易な手法で地下の体積含水率分布がわかると、解像度は粗くても良いので、どこで水が多いか知りたい場合に役立ちそうですね。地すべりの水みち探しや堤防の漏水箇所探しなど、結構役に立ちそうです。
もう少し調べてみましょう。
これ、調べてみると古くからある研究のようで、多くの方が報告されています。今回は比誘電率と広範囲の体積含水率の関係を、新たに整理しなおした文献でした。
鈴木敬一(2011)「誘電分散を伴う土質試料の比誘電率と体積含水率の関係」物理探鉱, 64, 3
なかなか実務的な内容です。読み終わって、これは使えそうだ!と思いました。が、1つ疑問が。どうやって、比誘電率の震度分布を求めるのか?に引っかかりました。地中レーダー探査(プロファイル法)では、それを知るために既知の深度でキャリブレーションを行って等価な誘電率を設定し、解析するからです。つまり、時間を測定し、速度(比誘電率)を決定して深度を求めているのです(先月理解したばかりです)。
http://phreeqc.blogspot.jp/2012/03/blog-post_10.html
調べてみると、その答えがこちらの文献にありました。
| 斎藤ほか (2007)「地中レーダを用いた不飽和土中水分移動解析」物理探査, 60, 6 |
2種あり、ひとつはボーリングで含水比急変点を確認する直接的な方法、もうひとつは形状より判定する方法だそうです。後者はよく理解できません。さっそく文献を購入しましょう。
同様の内容を、岡大の竹下先生が国土技術センターで講演され、その資料が公開されています。ワイドアングル併用です。分かりやすいですね。ただ、これらの注意点も上記文献で触れられていますが。(余談ですが、この資料の中で、波形をシミュから作られています。どうやるのでしょう。驚きです。)
http://www.jice.or.jp/jishu/t1/201203060.html
文献を読んでみないと分かりませんが、こういった簡易な手法で地下の体積含水率分布がわかると、解像度は粗くても良いので、どこで水が多いか知りたい場合に役立ちそうですね。地すべりの水みち探しや堤防の漏水箇所探しなど、結構役に立ちそうです。
もう少し調べてみましょう。
2011年12月19日月曜日
不飽和透水試験で求める飽和透水係数
雨水浸透施設技術指針に、不飽和帯での透水試験(現地浸透試験)が掲載されています。
http://www.arsit.or.jp/book/tyousa.html
式は非常に単純です。
ダルシー則を変形するとq/k=iAとなりますが、iAが一定であれば、q/kも一定です。基準では、いろんな水深・形状(iA)の浸透試験結果を整理しておけば、比浸透量(q/k)が求まる、さらに試験で最終浸透量(q)を測っておけば、不飽和浸透試験から飽和(に近い)透水係数(k)が求まると考えたようです。
実際、これらの検証を数値解析で行ったとあります。私はここが面白いと思いました。実は、私も不飽和浸透試験を数値解析でパラスタすれば、不飽和浸透特性が求まるのではないかと思い、いつかやってみようと思っていました。既に基準に取り入れられていたんですね。
しかし、この検証の具体的内容がどこにも書かれていません。文献も示されていませんので、適用範囲がどの程度のものなのか、信頼性はどの程度のものなのかがわかりません。仕方ないので、発売元の雨水貯留技術浸透協会に問い合わせてみました。
結果、具体的な内容はわかりませんでした。出典は東大のドク論だそうですが、東大の論文データベースを検索しても出てきません。発表論文を検索しても、基準以上のものは出てきませんでした。残念ですね。
ただ、対応していただいた方の話では、不飽和層の実験を全国から集めて検証したそうなので、飽和層への浸透は範囲外ということでした。もともと、浸透施設が飽和層を対象としたものではないとも言われていました。
非常に惜しいのですが、適用範囲や信頼性はわからないままです。現段階では雨水浸透以外で使用することは控えておいた方が良さそうです。
http://www.arsit.or.jp/book/tyousa.html
式は非常に単純です。
ダルシー則を変形するとq/k=iAとなりますが、iAが一定であれば、q/kも一定です。基準では、いろんな水深・形状(iA)の浸透試験結果を整理しておけば、比浸透量(q/k)が求まる、さらに試験で最終浸透量(q)を測っておけば、不飽和浸透試験から飽和(に近い)透水係数(k)が求まると考えたようです。
実際、これらの検証を数値解析で行ったとあります。私はここが面白いと思いました。実は、私も不飽和浸透試験を数値解析でパラスタすれば、不飽和浸透特性が求まるのではないかと思い、いつかやってみようと思っていました。既に基準に取り入れられていたんですね。
しかし、この検証の具体的内容がどこにも書かれていません。文献も示されていませんので、適用範囲がどの程度のものなのか、信頼性はどの程度のものなのかがわかりません。仕方ないので、発売元の雨水貯留技術浸透協会に問い合わせてみました。
結果、具体的な内容はわかりませんでした。出典は東大のドク論だそうですが、東大の論文データベースを検索しても出てきません。発表論文を検索しても、基準以上のものは出てきませんでした。残念ですね。
ただ、対応していただいた方の話では、不飽和層の実験を全国から集めて検証したそうなので、飽和層への浸透は範囲外ということでした。もともと、浸透施設が飽和層を対象としたものではないとも言われていました。
非常に惜しいのですが、適用範囲や信頼性はわからないままです。現段階では雨水浸透以外で使用することは控えておいた方が良さそうです。
2011年11月6日日曜日
不飽和斜面の安全率
久しぶりの休日です。
学会HPのチェックをしていると、地盤工学ジャーナルで面白い論文が出ているのを見かけました。
川﨑 元, 西垣 誠, 実用的な不飽和土用三軸圧縮試験装置の開発とそれを用いて測定した不飽和土のせん断強度について, 地盤工学ジャーナル,Vol. 6 (2011) , No. 1
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jgs/6/1/39/_pdf/-char/ja/
内容は2本立て。
1つ目は通常の三軸圧縮試験機を改良することで実務的に不飽和三軸試験が行えることの報告。
2つ目は、締固めたマサ土について、Öberg と Sällfors が提案している(飽和時の試験結果から導く)不飽和時のせん断強度推定値と、上記試験機で得られたサクション一定排水せん断試験結果の比較、盛土安全率への影響度などの議論です。2つ目の結果は概要に以下のように記されています。
面白いですね。つまり、少なくともサクション0の試験をして予測式に使用する必要がありますよ、と。
それで出るなら簡単ですね。試験機については本当に簡単に改良できるのか、プロに聞いてみましょう。
サクションによる安全率の変化について、粘着力の寄与分、φの寄与分を述べられています。あまりに明確な結果であり、面白いですね。斜面では降雨浸透により見かけの粘着力が減少し崩壊が起きると言われますが、その通りなのでしょう。
拘束圧に応じてポアソン比は不変ですが、変形係数は異なります(=せん断剛性が異なります)。では、ダイレイタンシー角はどうなんでしょう?結果は変わっていますね。低拘束圧の方が正のダイレイタンシーが出やすいというのは感覚として納得できますが、深く考えたことはなかったですね。注意すべき点です。
安全率の評価ではGa3dのSSR法が採用されています。ピーク強度とダイレイタンシー寄与分考慮後の強度の2つで分けて計算されています。拘束圧依存性も反映できるよう、モデルを2層としています。この程度の反映は実務でも必須なのでしょう。
前者のケースでは実際に比べて過大な安全率が出ますし、後者のケースでは過小な安全率が得られものと推定されます。降伏後にピーク強度からダイレイタンシー寄与分考慮後の強度(≒残留強度)に落とせば、それらの安全率は中間になると思います。試験結果では緩やかに落ちていますので、私が岩盤を意識して改良したコードは使えませんね。FLACなどひずみに応じてc・φを設定するタイプのひずみ軟化を扱えるコードを用いて計算した方が良いのでしょう。
全般的には実務に対して2段階程度上を行く内容です。
一つは、安定計算では飽和度を無視していること。2次元・3次元、あるいは順解析・逆解析においても、すべり計算において不飽和帯の強度を考慮することはありません。港湾や軟弱粘土では、ほぼ飽和として扱うので問題ありませんが、盛土や地すべりなどでは無視です。つまり、試験値を使ったとしてもそれは飽和の試験結果であり、計算上は不飽和も含めた平均強度として扱っています。不飽和斜面の崩壊も実務ではオーソライズされたものがありませんので、なかなか取り込めないのが現状でしょう。
もうひとつはSSR法の使用です。斜面安定に関する数値計算は土研(トンネルと地すべり)や盛土工指針(浸透流)でオーソライズされた感はありましたが、SSR法はさらに上を行く話でしょう。
いろいろ考えさせられる論文でした。
時間のあるときに出会えてラッキーでしたね。
学会HPのチェックをしていると、地盤工学ジャーナルで面白い論文が出ているのを見かけました。
川﨑 元, 西垣 誠, 実用的な不飽和土用三軸圧縮試験装置の開発とそれを用いて測定した不飽和土のせん断強度について, 地盤工学ジャーナル,Vol. 6 (2011) , No. 1
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jgs/6/1/39/_pdf/-char/ja/
内容は2本立て。
1つ目は通常の三軸圧縮試験機を改良することで実務的に不飽和三軸試験が行えることの報告。
2つ目は、締固めたマサ土について、Öberg と Sällfors が提案している(飽和時の試験結果から導く)不飽和時のせん断強度推定値と、上記試験機で得られたサクション一定排水せん断試験結果の比較、盛土安全率への影響度などの議論です。2つ目の結果は概要に以下のように記されています。
1) Öberg と Sällfors が提案している従来の予測法では,本装置で測定したせん断強度よりせん断強度を低めに見積もることになる。そしてその差はサクション変化によるダイレイタンシーのせん断強度への寄与分の差と,湿潤過程におけるサクション 0 の不飽和ケースの粘着力と飽和ケースの粘着力の差で構成されている。
2) 従来の方法で推定したせん断強度と本装置で測定したせん断強度との差の影響は湿潤過程にある盛土の安定解析上,無視できない
面白いですね。つまり、少なくともサクション0の試験をして予測式に使用する必要がありますよ、と。
それで出るなら簡単ですね。試験機については本当に簡単に改良できるのか、プロに聞いてみましょう。
サクションによる安全率の変化について、粘着力の寄与分、φの寄与分を述べられています。あまりに明確な結果であり、面白いですね。斜面では降雨浸透により見かけの粘着力が減少し崩壊が起きると言われますが、その通りなのでしょう。
拘束圧に応じてポアソン比は不変ですが、変形係数は異なります(=せん断剛性が異なります)。では、ダイレイタンシー角はどうなんでしょう?結果は変わっていますね。低拘束圧の方が正のダイレイタンシーが出やすいというのは感覚として納得できますが、深く考えたことはなかったですね。注意すべき点です。
安全率の評価ではGa3dのSSR法が採用されています。ピーク強度とダイレイタンシー寄与分考慮後の強度の2つで分けて計算されています。拘束圧依存性も反映できるよう、モデルを2層としています。この程度の反映は実務でも必須なのでしょう。
前者のケースでは実際に比べて過大な安全率が出ますし、後者のケースでは過小な安全率が得られものと推定されます。降伏後にピーク強度からダイレイタンシー寄与分考慮後の強度(≒残留強度)に落とせば、それらの安全率は中間になると思います。試験結果では緩やかに落ちていますので、私が岩盤を意識して改良したコードは使えませんね。FLACなどひずみに応じてc・φを設定するタイプのひずみ軟化を扱えるコードを用いて計算した方が良いのでしょう。
全般的には実務に対して2段階程度上を行く内容です。
一つは、安定計算では飽和度を無視していること。2次元・3次元、あるいは順解析・逆解析においても、すべり計算において不飽和帯の強度を考慮することはありません。港湾や軟弱粘土では、ほぼ飽和として扱うので問題ありませんが、盛土や地すべりなどでは無視です。つまり、試験値を使ったとしてもそれは飽和の試験結果であり、計算上は不飽和も含めた平均強度として扱っています。不飽和斜面の崩壊も実務ではオーソライズされたものがありませんので、なかなか取り込めないのが現状でしょう。
もうひとつはSSR法の使用です。斜面安定に関する数値計算は土研(トンネルと地すべり)や盛土工指針(浸透流)でオーソライズされた感はありましたが、SSR法はさらに上を行く話でしょう。
いろいろ考えさせられる論文でした。
時間のあるときに出会えてラッキーでしたね。
2011年5月16日月曜日
降雨による斜面崩壊
今日は榎名誉教授(鳥取大)による模型実験の講演を聞いてきました。
簡易三軸試験や地震斜面による崩壊、砂杭形成、液状化など、いくつかの模型実験を見せていただきました。啓蒙といった要素もありましたが、どれもシンプルで分かりやすいものでした。
その中で、降雨による斜面崩壊実験がありました。ちょうど最近悩んでいた不飽和の浸透と崩壊に関する研究かと思いきや、その反対でした。
「降雨による斜面崩壊の機構として、①見かけの粘着力喪失、②単体の増加、③基盤岩上の間隙水圧の増加が考えられる。これらは非定常浸透流解析と安定解析を併用するのが一般的であった。」
そうなんです。一般的だったそうなんです。知りませんでした。しかも過去形。
「①②が主要因なら、斜面上部・下部で破壊確率は同じはず。しかし、模型実験や現地実験ではそうはならない。」ということで、③をベースにしたモデルを提案されています。要はサクション低下や空気圧をそぎ取った、従来法に近いシンプルなモデルなのです。
当然、基盤岩上の土砂の薄いほうがすべり易くなります。「切土で、少し風化したくらいが危ない」とおっしゃっていましたが、妙に納得できました。
しかし、厚い場合はどうなんでしょう。「厚いほうが雨には有利」とまでおっしゃっていました。確かに、このモデルではそうなるでしょう。しかし、盛土や堤防の破壊は、従来通りの浸透・飽和領域への着目で解決できるのでしょうか?不飽和の変形を研究されている方と、着目点(適用性)の違いは何なのでしょうか?
質問したところ、厚い場合の実験は無理だが理屈は同じ飽和領域の分布であるという趣旨のご説明をされました。厚い場合でも不飽和の強度低下や間隙空気圧は考えておられません。
まだまだ私の知識は点の状態です。それが線として繋がるまで、努力が必要だということが分かりました。参考書も教えていただいたので、勉強です。まだまだ学ぶことがありプレッシャーですが、できることを一歩ずつですね。
簡易三軸試験や地震斜面による崩壊、砂杭形成、液状化など、いくつかの模型実験を見せていただきました。啓蒙といった要素もありましたが、どれもシンプルで分かりやすいものでした。
その中で、降雨による斜面崩壊実験がありました。ちょうど最近悩んでいた不飽和の浸透と崩壊に関する研究かと思いきや、その反対でした。
「降雨による斜面崩壊の機構として、①見かけの粘着力喪失、②単体の増加、③基盤岩上の間隙水圧の増加が考えられる。これらは非定常浸透流解析と安定解析を併用するのが一般的であった。」
そうなんです。一般的だったそうなんです。知りませんでした。しかも過去形。
「①②が主要因なら、斜面上部・下部で破壊確率は同じはず。しかし、模型実験や現地実験ではそうはならない。」ということで、③をベースにしたモデルを提案されています。要はサクション低下や空気圧をそぎ取った、従来法に近いシンプルなモデルなのです。
当然、基盤岩上の土砂の薄いほうがすべり易くなります。「切土で、少し風化したくらいが危ない」とおっしゃっていましたが、妙に納得できました。
しかし、厚い場合はどうなんでしょう。「厚いほうが雨には有利」とまでおっしゃっていました。確かに、このモデルではそうなるでしょう。しかし、盛土や堤防の破壊は、従来通りの浸透・飽和領域への着目で解決できるのでしょうか?不飽和の変形を研究されている方と、着目点(適用性)の違いは何なのでしょうか?
質問したところ、厚い場合の実験は無理だが理屈は同じ飽和領域の分布であるという趣旨のご説明をされました。厚い場合でも不飽和の強度低下や間隙空気圧は考えておられません。
まだまだ私の知識は点の状態です。それが線として繋がるまで、努力が必要だということが分かりました。参考書も教えていただいたので、勉強です。まだまだ学ぶことがありプレッシャーですが、できることを一歩ずつですね。
2011年5月8日日曜日
不飽和斜面の安定性
不飽和斜面の変形に関する研究に携わる予定でしたが、諸々の理由で中止となりました。
ただ、今ない分野を開拓し、実用化を検討することは必要なことです。仲間と話をしていて、体積含水比によりc、φを変化させるプログラムがあれば、間隙空気圧を考慮するよりは実用的だよね、ということになりました。このGWの間、(間隙空気圧の考慮も含め)不飽和斜面の安定性を検討可能なソフトを探していたのですが、なかなか見つかりませんでした。
ところが、地盤工学会「不飽和地盤の挙動と評価」を読んでいると、上記の考え方の例が掲載されていました。1990年代の例です。10~20年前です。知りませんでした。
実務で広がっていないのは、不飽和のせん断、保水性試験等に時間、コストがかかるからでしょうか?「安定勾配」といった基準があれば、盛土の設計には必要ないからでしょうか?繰り返し円弧と経験的な目標安全率が掲載された基準を持ち出せば、自然斜面でも必要なかったからでしょうか?やはり重要物件でないとコストをかけて実施する「流れ」ができなかったものと思われます。
解き方は浸透と変形の連成・非連成の2種あるようですが、後者のほうが簡単です。これなら、浸透流をかけた後、サクションの等高線にそってレイヤー分けを行い、それぞれに該当するc、φを当てはめ、SSR法ですべり面を探査すればOKです。今ある技術でも力技で解くことができますね。
厳密にはレイヤー分けの個所をθ-c、φ関数で表現し、非定常の(リアルタイム?)安定解析に取り入れていると思われますが、テキストには詳細が書かれていません。文献を当たる必要がありますので、早速注文しましょう。
2011年4月10日日曜日
水分特性曲線
今年度より、不飽和斜面の崩壊予知の研究に携わることになりました。
個人的にはあまり興味のない研究ですが、これがきっかけで好きになるかもしれません。日頃軽視している不飽和領域の水分挙動について、しっかり勉強する良い機会です。
せっかくですから計測方法や不飽和の水分挙動について頭の中を整理しておこうと、「SOIL PHYSICS with HYDRUS 」などを引っ張り出し、ポテンシャルと水分特性曲線について記載されている箇所を読んでいました。お気に入りの本です。数式や単位の記載が丁寧なので、追いかけやすい本です。追いかける過程であちこちページが飛ぶ場合もありますが。
http://phreeqc.blogspot.com/2011/03/1.html
土壌分野においては、植物の成長が土壌の不飽和浸透特性と密接にかかわっているため、昔から研究されてきたようです。読んでいく中で分からない単語が出てきました。「PAW (plant available water)」「field capacity θfc」「permanent wilting point θwp」
permanent wilting pointはDNDCの時に調べました。pF4.2の体積含水率ですね。土粒子の表面積に影響されます。当然、粘土のほうが高い値(体積含水率)を示します。
field capacityは、large poreに保持される水です。粗い砂だと簡単に排水してしまうので低い値を示します。
PAWは重力排水が終わって(θfc)枯れ死するまで(θwp)の、植物が有効に使える体積含水率の範囲ですね。上記より、medium soilで値が大きくなることが分かります。水分特性曲線の寝てる部分(capillary region)がθfc~θwpの範囲にはまるとPAWが大きくなるということでしょうか。植物にとって良い土となるのでしょう。
個人的にはあまり興味のない研究ですが、これがきっかけで好きになるかもしれません。日頃軽視している不飽和領域の水分挙動について、しっかり勉強する良い機会です。
せっかくですから計測方法や不飽和の水分挙動について頭の中を整理しておこうと、「SOIL PHYSICS with HYDRUS 」などを引っ張り出し、ポテンシャルと水分特性曲線について記載されている箇所を読んでいました。お気に入りの本です。数式や単位の記載が丁寧なので、追いかけやすい本です。追いかける過程であちこちページが飛ぶ場合もありますが。
http://phreeqc.blogspot.com/2011/03/1.html
土壌分野においては、植物の成長が土壌の不飽和浸透特性と密接にかかわっているため、昔から研究されてきたようです。読んでいく中で分からない単語が出てきました。「PAW (plant available water)」「field capacity θfc」「permanent wilting point θwp」
PAW = θfc- θwp
θfc : -100cm for sandy soil; -350cm for medium soil; -500cm for clayey soil
θwp : -1500kPa (h = -15,330cm; pF=4.2)
permanent wilting pointはDNDCの時に調べました。pF4.2の体積含水率ですね。土粒子の表面積に影響されます。当然、粘土のほうが高い値(体積含水率)を示します。
field capacityは、large poreに保持される水です。粗い砂だと簡単に排水してしまうので低い値を示します。
PAWは重力排水が終わって(θfc)枯れ死するまで(θwp)の、植物が有効に使える体積含水率の範囲ですね。上記より、medium soilで値が大きくなることが分かります。水分特性曲線の寝てる部分(capillary region)がθfc~θwpの範囲にはまるとPAWが大きくなるということでしょうか。植物にとって良い土となるのでしょう。
古い文献ですが、pFについて土質工学会の講座がありました。一通り、頭に入れておきましょう。
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