2012年1月30日月曜日

地質の基本

久しぶりにセクションを見ました。3、4年ぶりだと思います。

例の sericitization した岩石です。
http://phreeqc.blogspot.com/2012/01/blog-post_23.html
http://phreeqc.blogspot.com/2012/01/jarosite.html
さすがに、セクションを見たら原岩が決めやすいですね。流紋岩質凝灰岩でした。長石類はほぼ全てSeに置き換わっているようです。
セクションを作ること自体、最近なかったのですが、これ、XRD よりもはるかに安上がりで、効果的ですよ。分からない岩石が出てきたら作るべきですね。

XRD のバルクでは、Qz 、Se が検出されました。細脈は Qz,、Se、Py、Chl、±Ca でした。
風化部では表面にK-Jaが吹いています。
実体顕微鏡では、Py も粒界や脈状部で存在しています。キュービックもあります。
セクションでは石基にもCaができていました。

さて、これらの岩石に雨水が反応するとpHはどうなるでしょうか?

流紋岩の場合、水質を支配しているのは主に亀裂にある鉱物です。そこには pH に大きく関与するCa、Py があります。今回の場合、溶解速度は一般的に前者が大きことなどから、初期は弱アルカリになるでしょう(実際、新鮮岩の pH 試験は弱アルカリになりました)。しかし、時間がたてば Ca が先に枯渇するため、強酸性となるものと予測されます。もちろん、比表面積によっては最初から下がり始めるということもあるかもしれません。
いずれにせよ、pH の最終値は、脈部の含有量比を測定しておけば PHREEQC で計算可能です。さらに、亀裂を含めた岩石の透水性を測っておくこと(困難ですが)、カラム試験などでpHの変化を時系列で測定しておくことが重要でしょう。時系列のデータがあれば、計算上のパラメーター(比表面積)をフィッティングで同定させることができます。そして、観察結果より導いた上記のモデルを検証することができるようになります。

これらのベースになるのは、地質です。
トンネルや切土による水位変化予測は、地質屋の作成する3次元水理地質モデル次第ですが、水質予測もこういった偏光顕微鏡観察、XRD 分析、実体顕微鏡観察といった地質の基本的要素の積み重ねが重要になります(当然、計算に乗せるための物理、化学、数学などの基礎も必要です)。

3、4年ぶりといったところが、基本をおろそかにしていた証拠です。気をつけましょう。

2012年1月29日日曜日

落石防護補強土壁

社内でアナウンスのあったTV番組「ほこ×たて」を見ました。

Geo BANK工法研究会の「落石防護補強土壁工法」に、「壊せないものは無い!」という職人が作った解体用の5tの鉄球を30回強繰り返しぶつけ、はたして壊れるか?壊れないか?を競わせる内容でした。(落石防護補強土壁のPR動画は研究会のHPにあります。http://www.geo-bank-sr.com/video/index.html

結果は惜しくも壊れてしまいましたが、これ、技術者へのPRは十分だったのではないでしょうか?
番組では同じ個所へ繰り返し鉄球をぶつけましたので壊れてしまいましたが、通常は落石が数10回も同じ場所に当たることはありません。また、緩衝材が壊れた段階で補修を行うと思います。
視聴者には「負けた壁」のイメージがつくかもしれませんが、プロにはその性能を示したように思います。

こういった番組に出演するということは、技術や商品への信頼、愛情があるのでしょうね。
技術者として見習いたいところです。

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2/1追記

今日、設計技術者とこの番組の話をしました。
この壁、土砂を中身に使っているので価格が安そうだと思っていましたが、やはりそれも利点の一つだとのこと。安くて施工が早いそうです。難点はやはり幅をとること。
破壊については、「最後は上向きの力をかけるように、えぐるように鉄球を当てていた。さすが破壊専門の職人。うまい。あの壁は落石用だから、下向きの力しか想定してないからね。」と仰っていました。そういう見方もあるんですね。

Optical Flow

OpenCV の optical flow 抽出を試しています。

2枚の画像より、輝度の勾配で抽出点をピックアップし、その移動量をベクトル表示させるアルゴを動かせるようになりました。といっても、アルゴは OpenCV が提供してくれますので、入出力を整える程度です。公開されているサンプルコードも、ほとんどが同じ流れです。

結果は、イマイチ。地すべりの傾斜量図、地上開度で試してみたのですが、アルゴとの相性がダメなのか、材料がイマイチ(LPでないものが含まれていた)なのか分かりません。単純に考えれば、両方ですが。

前者については、今回試した sparse な方法 (Lucas - Kanade 法)でなく、密な方法(block matching)を使えば改善するかもしれません。後者はレーザー測量限定で試してみれば分かるでしょう。

ひとつづつ潰していきましょう。

2012年1月27日金曜日

地質図を持ち歩く

今日、検尺立会に来られたお客様が地質図を持ってこられました。

地質が好きな方は過去数名いらっしゃいましたが、地質図を持って来られた方は初めてでした。聞けば、県内の地質図のセットを、常に持ち歩かれているようです。

これは良い!と思いました。
石を見れば地質が分かること、事前に調べる時間がなく現場に来てしまったこと等々、つい地質図を見るのを後回しにしがちです。しかし、一式打ち出して持ち歩けば、端末で調べる面倒さもありませんので、車中より気になった露頭が何かをすぐ確認できます。近くに変わった地質があれば少し足を伸ばして見に行くことも出来ます。広域の構造を現場で頭に入れられる点が大きいかもしれません。

その方、何十年も県内の地質を見てこられたため、分布を良くご存知です。しかも、土木が御専門で、地下水やグラウトなど土木工学と地質を対応させて覚えていらっしゃいます。素晴らしいですね。

私も真似して、現場道具の中に入れておきましょう。

2012年1月25日水曜日

BTV 観察

今日は午前中、BTV 観察を実施しました。

来週まで現場は休止中でしたので、気兼ねなく実施できました。いつもは試験や観察をすると掘進を止めることになりますので、気を使ってしまいます。

ボーリングマシンのワイヤーを巻き上げ、プーリーをセット。カメラを入れた後にケーシングにもセンタリング用のプーリーをセット。セッティング完了し、撮影です。最初から最後まで1人で実施したのは初めてでした。時間が掛かりましたね。いつもはオペさんがセットしてくださいますので、甘えていました。

しかし、こんなときに限って、孔崩れで4m程しか観察できませんでした。残念。

仕方ないのでモノレールに機材をつみ、スイッチバックして次の孔に運搬。そこで養生して今日は作業終了。他の現場へ移動しました。

続きは明日です。
順調でありますように!

熱赤外映像

先日、法面の老朽化調査で、久しぶりに熱赤外映像の撮影を行いました。

夜も明けぬ暗い内からセッティングし、お昼過ぎまで撮影です。
現場作業は簡単です。が、細かなノウハウが多くあります。設置方法、離隔距離と解像度、カット数、植生の有無、季節(温度変化)、天候(直射日光、雨、雪)、ターゲットの種類等々(といっても、私も色々教えていただいたのですけど)。

法面の老朽化調査で困るのは、クラックの原因推定。単に吹き付けが劣化しているだけで収まっているのか、地山からきているのか分かり難い点です。クラックが馬蹄形に入ったり、観測が行われていれば判断しやすいのですが、通常は背後がほとんど見えません。(そういう意味では、本来は地質屋の仕事ではないのかもしれません。)

そんな中、2年ほど前に熱赤外や打音調査を実施した法面について、お客様からお声がかかりました。「施工中で、ほとんど剥いだから見に来てほしい」とのこと。ありがたいことです。
早速、見に行ってきました。現場監督に湧水状況、空洞の状況を確認し、地山を見せていただきました。葉片状~塊状の蛇紋岩です。小断層から湧水があります。熱赤外の結果と比較すると、地山からの湧水箇所で温度差が出ていました。空隙ができていたのでしょう。また、新鮮岩でも「簡単に剥げた」と言われた箇所は温度差が出ています。当時は湧水も見られたので、地山からではなく吹きつけの間の空隙を流れていたのでしょう。水と接していた岩塊は、監督曰く、落ちてしまったようです。

地山を見て、熱赤外の結果をみると、「ああ、なるほど」といったように、案外解釈できます。
湧水のある小断層が3つありましたが、そのうち1つの方向は温度の差分画像に現れてるものの、残り2つは部分的、といったように、完全ではないものの、何かしらの要因を訴えていたようです。

こういったフィードバックを重ねていくことで、今後、より良い結果を示せるように思います。
地質屋の技術力が必要です。やはり地質屋の仕事なのでしょう。

2012年1月23日月曜日

Jarosite の生成

Jarosite の生成していた風化部で、pH試験をしていただきました。

結果、pH = 3。

Qz,、Se、K-Jarosite でそのような pH が出るか PHREEQC でチェック。予想通り、出ません。pyrite を含めなければ、このような値にはなりません。大部分が Jarosite になっているとはいえ、まだ pyrite が残っていることを計算結果は示しています。

では新鮮岩だとどうなるでしょう。
Qz,、Se、Pyrite を含め、open な条件で計算してみると、酸性水が発生します。予想通りです。
しかし、問題があります。Jarosite に不飽和なのです。pyrite が溶けて酸性水が発生 > Jarosite が生成といったモデルは正解に近いとは思いますが、まだ欠陥があるようです。

ちなみに、県内の流紋岩質凝灰岩を XRD でチェックしていただきましたが、見事に Qz + Ab です。Se は含まれていません。

さて、この岩石の原岩は何で、どのようにして現在の鉱物組み合わせになり、Jarosite が生成したのでしょうか?
専門の地質でも、この程度の実力です。まだまだです。

セリサイト化作用

先週末、岩盤のコア鑑定をしていました。

新鮮硬質なのですが、弱い変質を受けたのか、緑色を帯びたコアでした。最初は緑レン石化かと思いましたが、顕微鏡で見ると殆どが石英に見えました。
また、有色鉱物に見えた黒い粒は、殆どが pyrite でした。pyrite は粒界や細脈にも見えます。

研究職に XRD + RockJock をかけてもらうと、Qz 65%、sericite 35%とのこと。細脈の有色鉱物は緑泥石でした。風化部はQz,、Se、K-Jarosite のみだそうです。Jarosite は黄色の粉状ですので、風化生成物ですね。pyrite が溶解し Fe と S、sericite から K が来たのでしょう。

K-fsp が sericitization したとすると、原岩は Qz と K-fsp がメインでしょうから、(凝灰質)砂岩でしょうか?スレートなどを挟む流紋岩質凝灰岩分布域ですので、可能性はあります。が、砂岩であれば Ab も含まれていたと考えるのが自然です。現在 Na 、Caを含む鉱物の見られない点が引っかかります。
原岩が流紋岩質凝灰岩だとすると、Na、Ca に加え、有色鉱物はどうなったのでしょうか?Na や Mg  などは熱水と共に流れ去ったと考えるのは、都合が良すぎるでしょう。
XRDだけでは源岩が分からなかったので、薄片鑑定を研究職に依頼しました。

この現場のお客様が地質に興味があるようで、いろいろ質問を受けます。
コアについても成因やその特徴、崩壊箇所との違い、地形への表れ方などを整理しておく必要があります。

2012年1月21日土曜日

反応計算の解釈

先日より、教科書の数ページを3時間かけて書き下しました。
紙に書かないと、理解できないんですよね。
1st NETPATH Simulation では、全ての逆解析モデルで CO2 の degassing が予測された。しかし、実際は Ar、N2 より、degassing は無いものと考えられる。そのため、tremolite などの Ca- Mg-Silicate などをモデルに入れる必要がある。
このような感じでコンセプトモデルの修正過程が書かれています。それも、かなり詳しく。
なかなか良いと思います。多くの本には成功した結果のみが書かれており、その前の試行錯誤の過程は載っていません。先人の失敗とその修正過程を見るのは、かなり役立ちます。

ちなみに、2nd も 3rd も失敗のモデル。そしていよいよ4th Simulation 。

先は長い。


2012年1月18日水曜日

衛星飛来予測

ハンディーGPSに味をしめ、また踏査に持って行きました。

現場を歩いていて気付いたのですが、どうも衛星の補足にムラがあるようです。最初は上空の開度の影響かと思いましたが、時間的な要因もありそうです。

数日後、測量技術者にそのことを話すと、「衛星飛来予測」があるとのこと。検索すればすぐに出てきました。うーん。こんな情報が発信されているんですね。測量技術者のこだわりといったところでしょうか。それとも私が非常識?

ちなみに今日、沖積低地での踏査に持ってきましたが、精度は±3~4m。やはり山の中より格段に良くなります。時間的にも良かったようです。

ますます、最新のGPSが欲しくなりました。

OpenCV + VC++ の設定

OpenCV 2.2を利用するため、Visual C++ 2010 Express を インストールしました。

基本的には、VC++も、VB や VF と似たような構成です。OpenCV を利用するだけなら、それほど深い知識は必要なさそうです。

空のWin32コンソールアプリを作成し、コードを書き込みます。このままでは OpenCV へのリンクが設定されていませんので、以下のパスを追加します。

「プロジェクト」-「プロパティ」-「構成」-「全ての構成」
「プロジェクト」-「プロパティ」-「C/C++」-「全般」-「追加のインクルードディレクトリ」
    C:\Program Files\OpenCV\include <<<これが必要!
    C:\Program Files\OpenCV\include\opencv
    C:\Program Files\OpenCV\include\opencv2
その他必要に応じて。

「プロジェクト」-「プロパティ」-「リンカー」-「全般」-「追加のライブラリディレクトリ」
    C:\Program Files\OpenCV\lib

ライブラリはソース内で指定しました。
    #pragma comment(lib,"C:\\program files\\OpenCV\\lib\\opencv_core220d.lib")
    #pragma comment(lib,"C:\\program files\\OpenCV\\lib\\opencv_imgproc220d.lib")
    #pragma comment(lib,"C:\\program files\\OpenCV\\lib\\opencv_highgui220d.lib")
    #pragma comment(lib,"C:\\program files\\OpenCV\\lib\\opencv_objdetect220d.lib")
デバッグの場合はdのついたもの、リリースではdのないファイルが必要です(#ifdef 文で選択しま
す)。その他必要に応じて。

これでOpenCVが使えるようになりました。
optical flow のサンプルコードもビルド可能となり、2つの画像を比較して差分をベクトル表示できるようになりました。

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2/1追記
ツール-設定-上級者用の設定
表示-プロパティ―マネージャーより debug - Microsoft.Cpp.___.user をダブルクリックで、VC++ ディレクトリへの入力ができました。

2012年1月17日火曜日

OpenCV とベクトル表示

地盤工学会誌にレーザー計測に関する講座が連載されています。

今月号では2回の測定データの差分による、土砂移動量や移動ベクトルの表示が掲載されていました。後者の「5.3.2地表面変位ベクトル解析(p55)」については特許技術のようですね(特許技術を講座に載せられても勉強にならないのですが)。

いまや XBOX の kinect が USB で PC に接続できる時代です。画像追跡などはそれほど困難な技術のように思えません(kinect は驚愕!)。
CGのプロにその話をすると、「OpenCV で可能では?」と教えていただきました。調べてみると、映像処理や解析に特化したライブラリー集のようです。CVは computer vision でしょうね。

確かに、モーション解析と物体追跡は実装されています。
私が見たサンプルコードでは、2枚の画像の特徴点を検出し、それらの間の移動ベクトルを表示させるアルゴでした。地すべりに適用するには、LPデータの画像処理にひと手間必要かもしれません。

ま、ダメもとで、試してみましょう。

2012年1月16日月曜日

反応計算が難しい

計算自体が難しいのではありません。

解釈が難しいのです。

年頭に購入した教科書を読み進めているのですが、解説を理解できません。まだマルチではなく反応計算(代数計算)のみなので、やっていることは非常に単純なのですが、化学種が多くなるとパズルのように複雑になってしまい、計算結果を解釈しにくくなります。「化学種Aが実測値より多すぎる。Aを少なくするにはBを多くする必要がある。しかし、CがBの量を規制するので、新たにDが存在しているはず・・・・・。」こんなモデル解釈の繰り返しです。

基本がなっていないということでしょう。
こういうことをやっていると、自然由来の環境問題というのは鉱物学、物理化学の基礎を丁寧に積み上げて行かないと解けない問題だと実感します。さらに空間や時間を扱うには、水理学、計算力学なども必要になります。

王道はありません。
紙に書いて少しずつ読み解きましょう。

2012年1月14日土曜日

GTSのSRM

年末より GTS でせん断強度低減法のテストをしています。

3月までお借りしているので、その間に実務への適用性を見極めようと考えています。特に3次元SRMの動作確認が目的です。

今のところ、いくつかのエラーで計算がまわっていません。サポートに伺うと、原因がまだ分からないとのこと。やはり、ソフトによってはクセや回すための細かなノウハウが必要となる場合もあるので、購入前に実際に手を動かしてテストしないといけないのでしょう。また、事前にサポートの反応を見ることも必要ですね。

それでも、いくつかの特徴はつかめました。
ソルバーによっては 32bit 版のものがあります。逆に、64bit 版や、スレッド数の(段階的な)指定が可能な並列化対応ソルバーでは、大きなモデルを扱えます。
SRM では、Fs = 1.0以上を初期値として指定し、そこから収束し難い方へ計算を向かわせる手法が取られているようです。Ga3d とは異なります。なぜ1.0以上なのか説明書には書かれていません。安全率の小さい側から少しずつ壊していかないとなかなか収束しないのでは?と思いサポートへ質問したところ、サポート側にも説明書は残っておらず、詳細は良く分からないようでした。ただ、他社のソフトと同様のアルゴであり、計算もそちらの方が早いとのことです。
ということは、説明の書かれている他のソフトを使用すれば良いということでしょうか?そういえば、FLAC も11月に Ver.7 が出ていましたね。

とりあえずエラーの件、アルゴの件で MIDAS 社の反応はつかめました。
まだ、時間はありますので、ゆっくり検討してみましょう。

2012年1月13日金曜日

Multiphysics Modeling

年末に注文していた本が届きました。

Geochemical Modeling に関する参考書ですが、今年1月2日に発売でした(海外は2日から市場が動いているんですね)。 不飽和浸透、移流分散、熱拡散、化学反応などを連成させる内容です。Multiphysics Modeling の一種ですね。

洋書を購入する場合、Google Books などで事前にある程度の内容が分かります。が、やはり実際に手に取らないと詳細はわかりません。今回、内容をざっと見ると、1/3程度は読む価値がありそうでした(同じ分野の本を多く購入していますので、だんだん重複する内容が増えてきます)。

こういったコア技術となる本は読むのに時間がかかります。大体、2、3ヶ月くらいでしょうか。例の地形の本は、この本が読み終わるまでオアズケです。

じっくり読んでいきましょう。

2012年1月11日水曜日

Win7 + ハイパーターミナル

RS-232C の規格は、古い計測機で使用されています。

最近ではPCから232Cのシリアルポートが消えているため、USBでの変換ケーブルが販売されています。
今日はそれを使って他の方のPCの通信テストをしていました。環境はWin7 64bit + XP 付属のハイパーターミナル限定です。この環境に限っては、いくつか勘所がありますので、備忘録です。
  • ハイパーターミナルは古くから多くの方が使用されており、人気なのでしょう。ネットでも、以下の手順3までは多くの情報が得られますし、その段階でほぼ対応可能なようです。
  • 全て自己責任です。
  1. XPのhypertrm.dll、hypertrm.exe の2ファイルを Win7 へコピー。 (セッション保存の必要がなければ、以下の作業は不要です。これで動きます。)
  2. セッションファイル(.ht)もコピー。
  3. .htをダブルクリックしてもファイルは開きませんので、ハイパーターミナルと関連付けを行います。
  4. それでも、.htが開きませんので、以下の registry を修正します。
    HKEY_CLASSES_ROOT\ht_auto_file\shell\open\command
    "C:\Program Files (x86)\HyperTerminal\HYPERTRM.EXE" %1
  5. それでも開かない場合は、上記の key を削除。".ht" を含む key を検索、全削除して手順3、4をやり直します。
  6. それでも開かない場合は、registry の修正をあきらめ、バッチ処理で対応します。
    例えば、dll と exe をコピーしたフォルダに、AAA.htといったセッションファイルを保存した環境では、「hypertrm.exe AAA」 という1文だけのbatファイルを作成します(「」は要りません)。これをダブルクリックすれば、セッションが立ち上がります。
ハイパーターミナルを使い続けるのと、新しいターミナルソフトに慣れるのとでは、多くの方はどちらを選ぶでしょうか?個人的にはどちらでも良いですが、他のターミナルソフトの方がハードルが低いように思われます。

2012年1月10日火曜日

Eurocode 7

海外担当の方より「Eurocode 7 で安全率の話が詳しい」と教えていただきました。

早速、見てみました。

で、見て思い出しました。
これ、詳しいのは全体安全率でなく、部分安全係数の話です。港湾基準が変わった時に聞いていたのを思い出しました(Eurocode を読むのは初めてなので、「ああ、これが噂の・・・」といった、また別の感想を持ちましたが)。アンカーなど対策工の話もありますが、基本的には順解析での流れです。

道路橋も次回の改定では部分安全係数法が取り入れられるそうですが、こうなると、地すべりだけが浮いた感ありますね。まあ、既に破壊した地盤だけを対象としたカテゴリーというのは土木の中でも特殊でしょう。ある意味、現況再現が可能なため、予測(対策)が簡単なのかもしれません。そういった中で育った2次元逆算法は、レベルの違いは大きいものの「モデル依存実在論」の考え方に沿った簡易で優秀な手法ということになるのでしょうか?真理とは違っても、簡単なモデルによる再現とFs=1.2で安定するといった実績という意味で。
うーん。堂々巡りに入りそうです。

安全率を理解するには、もう少し時間が必要ですね。

2012年1月8日日曜日

海外の安全率

マレーシア・香港・UKの安全率について知る機会がありました。

まず、マレーシア。
Slope Engineering Branch, Jabatan Kerja Raya MALAYSIA. 「GUIDELINES FOR SLOPE DESIGN」2010

All untreated slopes shall be designed with minimum of 2m berm width and
maximum 6m berm height with a Factor of Safety greater than 1.3. Stabilisation
measures can be considered when the design is inadequate. Stabilisation
measures may include the following:-
• soil nailing with slope surface protection
• permanent ground anchors
• retaining walls, etc.
The minimum global Factor of Safety for treated slopes shall be 1.5.

切土の場合です。盛土も似たようなもんです。なぜこのように決めたのか、背景が知りたいですね。非常に興味があります。
計算式については、指定がありません。


次はUK
Transport Research Laboratory 「OVERSEAS ROAD NOTE 14 HYDROLOGICAL DESIGN MANUAL FOR SLOPE STABILITY IN THE TROPICS」

これはどこまで効力があるのか分かりませんが、安全率よりも検討析手法の紹介になっています。浸透流と安定計算(Bishop)の組み合わせで多くのケースを検討しています。最終的には透水係数、降雨強度、勾配などから、チャートを使って簡単に安全率が出せるようになっています。このマニュに沿ったソフトも出ているようです。http://www.chasm.info/
目標安全率の記載はほとんどありませんが、ある表には推奨値として香港の1.2~1.4が掲載されています。


で、香港。
上述した1.2~1.4の出典です。

GEOTECHNICAL ENGINEERING OFFICE, Civil Engineering and Development Department, The Government of the Hong Kong 「GEOTECHNICAL MANUAL FOR SLOPES」

Risk to Life と Economic Risk のマトリックスで目標安全率を決めています。リスクに応じて1.0以上、1.2、1.4の3段階になっています。良いですね。リスクブームの日本でも、将来的にはこのような整理がされるのでしょう。
計算式も多く紹介されていますが、Janbu, Bishop あたりなのでしょうね。


日本では当たり前のように使われている簡便法は、どの国にも出てきませんでした。安全率が日本より高めなのは、それも一因なのかもしれません。背景はよくわかりませんが。

最近では上記の資料を始め、他国のガイドライン等もネットで容易に手に入ります。井の中の蛙であることに気付きやすくなっています。
技術者としてはありがたいことです。

2012年1月6日金曜日

締付け効果と引き止め効果

昨日より、部署内で「アンカー設計の諸問題」が話題となっています。

なにを今更?と思いながらも、珍しくベテラン技術者がネット上で発言されていますので、静観しています。正月明け、時間と心にゆとりのある時期ということもあるでしょう。

その中でも、活発に意見交換されているのが、締付け効果をみるべきかどうか。(うーん。古い。)

LEMでは、すべり面とアンカーの交点に締付け・引止めの両効果が発揮されるとして計算します。具体的には2次元断面上でアンカー負担荷重をすべり面と垂直・平行方向に分割し、それぞれ抵抗力に加えて計算します。
なぜ、ベテラン技術者が引止め効果(平行方向の分割)は考慮して、締付け効果(垂直方向の分割)を無視するのが良いと考えるのか、理屈がわかりません。が、経験則として理解できます。受圧板からすべり面に100%の応力が伝達するわけがないということでしょう。適度に差っ引いて考えたら、実現象にあったということだと思います。ただ、それでは効果が小さすぎると判断すれば、両方見るということも可能です。経済的な意見も出ていました。その辺がベテラン技術者にとって経験則が物を言う、地すべり対策の面白いところなのかもしれません。

ただ、このような議論は本来、経験則をぶつけ合うのではなく、理論ですべきでしょう。正解がわかりませんから。
数値計算を使えば、応力の伝達範囲は視覚化できますし、程度も数値化できます。
あるケースでは、どの効果をどの程度見るべきかも目処がつくでしょう。

例えば、以下の論文では両効果の差についてFEMを用いて検討されています。

蔡ほか(2003)「アンカー工による斜面の補強効果―極限平衡法と弾塑性FEMとの比較」
http://www.journalarchive.jst.go.jp/jnlpdf.php?cdjournal=jls2003&cdvol=40&noissue=4&startpage=266&lang=ja&from=jnltoc

以下は読んでいません。土研が絡んでいますね。書庫を探してみましょう。

土木技術資料 2009年3月
「地すべり対策に用いるグラウンドアンカーの締付け効果の評価」

日本地すべり学会研究発表会講演集  2008 47th pp375-378
「地すべりにおけるアンカーの締付けおよび引止め効果に関するFEMによる基礎的検討」



その他、議論されている諸問題も、変形を取り扱うことで解決する内容が多いようです。
LEMで変形は扱えません。破壊しか扱えないツールで、変形に起因する現象をカバーしようとすると、小難しい説明やファジーな表現に行きつきます。ベテラン技術者はそこを経験のみで発言することなく、計算なども利用してカバーしていただきたいと思います。
鬼に金棒とはこのことでしょう。

2012年1月4日水曜日

空中写真の立体視

この休みに空中写真判読を復習しておこうと思い、図書館で2冊の本を借りていました。

2冊とも、空中写真と判読結果、解説が載っています。その内、私のレベルに合ったのは、次の1冊です。
大八木規夫「地すべり地形の判読法」近未来社
まだ最初の方しか読んでいませんが、このまま読み進めて気に入れば購入し、実際に手を動かして判読結果を比較しようと思っています。

空中写真は立体視できるように2枚配置されています。平行法です。
個人的に裸眼では交差法の方がやり易く、平行法は少し時間がかかります。
解説を読んで、写真を立体視で確認し、また解説を読んで・・・を繰り返すと、そのたびに立体視に時間がかかって先に進みません。

仕方ないので、簡易ビューアーを近くで販売していないかネットで探していると、老眼鏡を代用している方の記事が眼に止まりました。眼から少し離した老眼鏡を通し、ステレオ写真を見るのです。
半信半疑でしたが、早速、100円ショップに行きました。少し小さめで、+3.5の老眼鏡を購入。帰宅後に写真見てみました。

最初は駄目でしたが、10分ほどの試行錯誤でコツをつかみ、鼻の頭に載せた老眼鏡からすぐに立体視できるようになりました。上下に動かしても立体視は崩れません。試しに老眼鏡なしでも見てみましたが、やはり時間がかかります。これは、なかなか良いアイテムです。
私の場合、右目の視力が極端に悪いので、老眼鏡を手で持って写真に近付けた方が見やすいのですが、それだと視野が狭くなります。右目の画像がぼやけても立体視できれば綺麗な像(左目は普通に見えます)になりますし、鼻の頭に載せた方が視野も広く、両手も空きます。解説を読みながら確認するにはこれが良いですね。


ちなみに、YouTubeは3D対応済みですし、それらのソースをを表示するための3次元ディスプレーも販売されています。中には裸眼で見るために工夫されたディスプレーもあります。
今後は空中写真も大きなディスプレーで表示し、それを裸眼で見ながら直接判読し、ソフト上で書き込んで行くようになるんでしょうね。