2011年1月29日土曜日

インフルエンザと思い付き

インフルエンザA型にかかってしまいました。人生初です。

初日 :朝、のどが痛い。昼から会社で悪寒、夜39度。病院で検査。タミフル頂く。
2日目:38度。頭痛がひどい。よく寝る(寝不足が原因?)。体力的には問題ない。
3日目:37度弱。関節痛、頭痛は残るが、問題なし。

思ったほどしんどくありませんでした。初日から2日目で、「2kmのランニング後+軽い二日酔い」が続く程度でしょうか?重い2日酔いやカキにあたったときのほうが酷かったです。
ウイルスが抜けるまでは5日(熱が収まってから2日間)程度かかるそうなので、まだ出勤はできません。なお、検査は発熱後8時間経過してから、投薬は48時間以内だそうです。

この時期ですから、「あの資料を作ってくれ!」とか「このシステムで発注お願い!」とか要請があります。体力的には回復していますので、VPNでWANに入り、リモートで操作すれば仕事はできます。便利になったのか、不便になったのか?今の世の中、PCと携帯さえあれば、大抵の仕事はできるかもしれません。

寝てる間に、いいことを思いつきました。3次元の変形解析では、FLAC3DがSSR法を用いた解析ができるようです。しかし、通常のFEMアプリでもできるのではないでしょうか?例えば、①ある強度を設定し、計算が回ることを確認する、②次に強度を低減(あるいは増大)し、再度解析する。③発散するまで繰り返す。一般のアプリと構成式は同じですからね。これなら、弾塑性だけでなく、ひずみ軟化も扱えます。アルゴの繰り返し部分は手作業になりますが。
ま、計算結果が出て安全率を算出しても、3次元では計画安全率が設定できないので実務的には面白くないですが。うーん。やっぱりいい思い付きではなかったか?

もうひとつ。3次元の計画安全率ですが、2次元と同じように、2割増しで始めても良いかと思いました。結局、設定できないで2次元を採用し続けるよりは、3次元で試行(言い方は悪い?)していくのもありかと。計算上は2割増しにしているんだから、もつだろうと。もともと「決め」なんだから、「決め」で始めてもよいであろうと。お墨付きがないので使えない?そうですよね。やはり正攻法の過去のデータの洗い直しでしょうか?
ある有名路線では坑口におけるほぼ全ての地すべりに対して2次元と3次元が併用されていますので、そこが数年後どういう挙動を示すかデータが公開されると、目安がつきそうです。

あと、局所安全率と全体安全率の評価の融合も必要かなと。こちらはまだ目安が立っていません。病人の思い付きです。

2011年1月27日木曜日

並行計算

並列でも平衡でもありません。(コンカレンシーでもありません)
同時並行でいくつのケースの計算ができるかということです。

Dtransuはシングルコア用のため並列計算はできません。(ソースを書き換えれば別です。)が、プログラムが単体のため、複数コピーしておけば、スレッド数(実用的にはコア数)だけのパラスタが並行して計算できます。通常、Core i7-980Xでは6ケース同時に計算しています。

ところが、SoilPlusでは並列も並行もできません。パラスタでは1ケースの結果を見て、次のケースを作成し計算するといった過程の繰り返しになります。作業効率はDtransuの1/6となってしまいます。

一番良いのはSoilPlusからFEMAPのneu形式で書き出したものをDtransu(UNSAFでもOK)形式に変換してしまうことでしょうか。原子力安全基盤機構ではFEMAP-DTRANSU-TOUGH2-MODFLOWなどの変換ツールを作られています。さすがです。公開していただければありがたいですね。

今後、モデルはどんどん大きくなると思います。並列化を取るか、遅くてもシングルで複数ケース回すかといった判断に迫られる時期が来そうです。CPUの開発状況にもよりますが、使い分けの準備はしておきましょう。

2011年1月25日火曜日

地質リスク

最近、地質リスク学会ができたり、図書が発売されたりと、何かと耳にする「地質リスク」ですが、実はよく理解していません。

地質リスク学会によれば、「地質リスク」=「地質に係わる事業リスクと定義し、具体的には事業コスト損失そのものとその要因の不確実性をさす」ということだそうです。抽象的ですよね。
「調査しましょう」といった結論と意思表示は理解できます。しかし、それと「地質リスク」という定義が定量的に結びつきません。問題の設定とその解決過程が理解し難いのです。たとえば、①調査を密に実施したため、粗にしたときよりも地質分布が良くわかった。②その結果、施工時の修正設計、手待ちが省け、〇〇円のコスト縮小につながった、という流れをよく聞きます。この場合、回避すべき問題は「調査不足による施工時の大幅な増額」であり、「事前追加調査」が解決法なのです。これが地質リスクの回避なのでしょうか?それなら昔から言われ続けていますよね。回避過程がわかりませんし、リスクの意味も、もう一歩突っ込んで欲しいですよね。

本来、リスクを議論するにはその事象の発生確率が必要でしょう。しかし、それを算出するには問題とする事象以外は比較的均質とみなせる場(前提条件)が必要です。たとえば地層処分や地下空洞の建設対象である深部岩盤がそれとみなせるでしょう。道路・橋梁・河川構造物といった地表面から風化が進行していたり、盛土や埋め立てなどの改変があったり、堆積などによる水平構造が発達している不均質場において、ある事象の発生確率を予測することは困難です。計算中に恣意的な場の形成が必要になるからです。また、統計的手法を使えるだけの既存調査もない場合がほとんどです。

では、あきらめるのか?という問題に、土木研究所 地質監 脇坂氏が以下のように応えていらっしゃいます。(H22 第18回技術後援会「地質リスクのマネージメント」中国地質調査業協会岡山県支部にて)
  • 「対策費A×発生確率P+調査費B」と「対策費Aのみ(調査なし)」を比較
  • 調査をした場合のほうが安くなるためには発生確率Pの閾値が決まる。
  • 通常は対策費Aが非常に高いのでPが高くなる。
  • 現段階では発生確率Pを定量的に求めるよりは、閾値を用いたオーダーで議論すべき。
この式の妥当性には気をつけないといけませんが、かなり実務向きではないでしょうか?

SGeMS

SGeMSへの乗換えを計画しています。
http://sgems.sourceforge.net/

地球統計学は地下水解析にも変形解析にも使えます。地下深部岩盤の透水係数分布を、実測値からSISimで補間したり、なぜか最近、地質屋さんの一部で話題になっている「地質リスク」といった計算にも本来は必要なツールです。また、汚染分布の推定にも利用できます。
http://phreeqc.blogspot.com/2010/10/gslib.html
Indicator krigingのみなら確かMVSにもありましたね。シミュ機能まではないので私は使っていませんが。



以下、SGeMSの備忘録です。



  • Number of lags ・・・バリオグラム雲からトレンドをとるためのデータ間隔の数
(=赤い点の個数)
  • Lag separation ・・・ Lag size、データ間隔、個々のセミバリオグラムの間隔
(=赤い点の間隔)



2011年1月22日土曜日

建築における砂質土の強度定数

隣で建築ボーリングの結果をまとめている新入社員が、断面図を描くのに悩んでいました。
既存ボーリングが平面上にランダムにあり、どこに断面を書けばよいのか、それぞれの土層の対応は?など悩んでいるようです。悩んでください。それが糧になります。4月以降、GEORAMAやMVSで3次元の練習をしましょう。3次元配置を3次元でそのまま入力し、任意の断面を切れば良いだけです。簡単です。

建築には7年以上携わっていませんでした。新入社員といっしょに建築基礎構造設計指針2001年版を読んでいたのですが、砂質土のφについて面白い記載を見つけました。平面ひずみ応力状態でのφpと三軸状態のφtの関係が、φp=1.1φtとなっていました。基準書で記載してあるのは初めて見ました。1.1倍は少し小さいような気がしますが、これは使えますね。

以前にも書きましたが、孔内水平最荷試験では地盤を現位置で降伏させますので、室内試験よりも良い状態で平面ひずみ状態のφpを求めることができます。試験をしておけば、変形係数、強度定数が一度に求まるわけです。
http://phreeqc.blogspot.com/2011/01/blog-post_8311.html

変形係数の設定も、土木に比べると進んでいる指針です。
ぜひ利用していきましょう。

浸透流解析にはまる2

昨日の続きです。

いろいろ試行していたところ、不飽和浸透特性が効いてしまいました。浸透流では鉄板ですから気をつけていたつもりですが・・・。これって、いつも思うんですが、解析結果にかなり効きますよね。現場でせっかく測定しても、そのまま使えることは少ないように思います。

また、未調査の箇所に粘性土の高まりを作れば結果は合ってきました。こういった地質分布の調整を解析時にしないですむよう、地質屋サンが水位コンターを見て、どこにどんな透水係数を有する地質が分布するのか予測し、必要な箇所で必要な種類の調査を実施しないといけません。

3次元の浸透流解析や移流分散解析は、地質屋さんの出した結果でほぼ答えが決まります。逆に言えば、こういった地下水問題は地質屋さんの仕事といえるでしょう。今後もスキルアップを図りましょう。

2011年1月21日金曜日

浸透流解析にはまる

10万点くらいの定常浸透流解析をやっていますが、はまってしまいました。悪いほうに。

アスペクト比は1:200に押さえているし、定常なので答えは出るはずなんですが、なぜか回らない。地表面で引っかかっているようなんですが、地下水があふれてはいない。所詮、浸透流の定常なんで、やや厳しいモデルでも回るだろうと簡単に考えていました。馬鹿は手を動かし続けるしかないようです。

ただ、これは気のせいかもしれませんが、Dtransuのほうが無理が利くように思います。ベースは同じUNSAFなんですけど。今度はVisual MODFLOWを使おうと心に決めました。

変形では「理論と実務がつながる 実践有限要素法シミュレーション」を最近読みましたが、浸透流のことが書いてある実践本もあればいいですね。
明日もパラスタです。

2011年1月18日火曜日

高密度?弾性波探査

高精度弾性波探査は、従来のはぎとり法とは異なり、成層構造を仮定せずに解析できるため、得られる結果が高精度となります。PCの発展の賜物です。

今日、高精度弾性波探査の結果を他社に送っていると、高密度弾性波探査と言う言葉で返事が返ってきました。時々、聞きます。いったい何が高密度なのでしょうか?

名称の似たような探査に高密度電気探査というものがあります。実は、何が高密度なのか知りません。単順に、測点間隔が密なだけなのでしょうか?2極法や4極法などの手法自体は昔から変わっていませんが、電極の組み合わせ総当り戦的な計測ができなかったのでしょうか?
以前、4極法を実施したときに6時間以上連続測定していたことがありましたが(機械が電極組み合わせ自動で選択してくれるので、測定が始まるとただ見ているだけです)、これはさすがに昔はできなかったでしょう。昔はどんな「低密度」な手法をとっていたのでしょう?気になります。

話は戻しますが、高密度弾性波探査というのも受振器設置間隔が密なのでしょうか?
機会があれば専門の方に聞いてみましょう。

トンネルと地すべり

地すべりブロックど真ん中にトンネル坑口を設けるため、安定計算をすることになりました。(なぜそこに坑口を計画されたのかは不明です。)

実績的には道路公団の手法ですが、これに対応したソフトがありません。この時期、手計算は避けたいので、SSA_3Dを使おうかと思っています。
前から書いている設定困難な3次元安全率ですが、2次元計算の必要抑止力から求める方法にしましょう。フォーラムエイト、鵜飼先生の提案手法です。
http://www.forum8.co.jp/product/uc1/jiban/pdf/LEM20040901.pdf
http://phreeqc.blogspot.com/2010/08/blog-post_14.html

やや後ろ向きの感はありますが、実務上は良いでしょう。

2011年1月16日日曜日

酸性水の実務的計算法

トンネル掘削で出たずりを盛土に使用する場合、酸性水や重金属汚染が問題になります。自然由来の汚染問題です。これを正攻法で解くには浸透流-化学反応連成解析(非定常)が必要になります。
酸性水対策はlimestoneベースのPRBがいいなと思いテキストを読んでいましたが、そのような連成解析ベースの設計法は確立されていないようでした。そこで思いついたのが、簡易な計算法です。概要は以下の通り。

安全側の濃度計算
(岩石が出しうる最も低いpHで、境界において基準値を超えるかどうかの計算)
①CNS分析でpyrite、calcite含有量推定。
②バッチ式溶出試験と地球化学コードにより、maxの濃度(飽和濃度)とpHを求める。
③濃度固定で飽和移流分散-化学反応連成解析(定常)を行い、境界での濃度を基準値と比較。
④超える場合はPRBの設計。カラム試験より有効間隙率、実流速(滞留時間)を求め、設計長を結滞。地球化学コードでチェック

こんな感じでしょうか。地下水の水質分析が必要になりますね。地盤の化学特性はXRD+RockJockで推定です。安全側の計算になるため、基準値を超えないならそのまま施工しても問題ないでしょう。

しかし、後ろ向きですよね。
書いていて、急につまらなく思いはじめました。正攻法から逃げているだけですもの。こんな方法では駄目ですね。

やはり自然のままにモデル化し、評価するべきです。

FEMAP

「はじめてのCAE 静的解析偏」が届いたので、仕事も忙しい中、夜中にFEMAPを触っていました。

6時間ほどで一通り終わりました。操作入門に徹しており個人的には物足りない内容でしたが、それでもFEMAPの操作感を得ることはできました。
基本は材料を設定し、メッシュを切って要素にプロパティーを設定し、拘束条件、荷重を設定するといった流れで、SoilPlusと同様でした。CatsFlow時代はFEMAPベースだったので当然かもしれません。

しかし、本当に知りたい所であった複雑なメッシュ作成に関しての知見は得られませんでした。まだまだ時間がかかりそうです。

2011年1月15日土曜日

音波探査

今週末、音波探査結果の解釈について御指導いただいておりました。

結果を見て素人の私が予想していた答えと、専門の先生の答えは結構違っており、また、それが「なるほど!」と理解できる答えばかりなので、非常に勉強になりました。
音波探査による結果は音響インピーダンス(速度は変わらないので密度)の差でしかなく、それを解釈するには地質の知識が不可欠ですし、それらを詳細に見つけようとするには探査の知識が不可欠です。また、それらを照らし合わせた経験も重要になってくるようです。

探査機自体は100万~のようで、すでに保有している航跡を得るためのGPSとも連携できます。1日あれば広域のデータが得られますので、海上調査では威力を発揮します。護岸調査でもボーリングを補間するために手軽に使えるのではないでしょうか?

結果の表現はやはり3次元ですね。3次元でとったデータは3次元で表現するほうが素直ですし、直感的に理解しやすいです。少し調べると、SEGYデータはVoxlerで読めることがわかりました。http://www.hulinks.co.jp/software/voxler/fileformat.html
このソフトは手元にあるため、コチラもチャレンジです。

いずれにしても、このような機会が得られたことに感謝です。

2011年1月9日日曜日

SKB

先週、本を9冊注文しました。計5万6千円です。専門書は高いですね~。洋書が特に高い。でも、Geochemiや水質分析、それらの対策の話は日本の研究よりもはるかに進んでいるので仕方ないですよね。痛いですが。

そういえば、地下深部の新鮮な花崗岩類の透水性について数年間地下にもぐり続け調べたことがありますが、そのときに役に立ったのがSKBの文献です。膨大な資料が今も公開され続けています。http://www.skb.se/
ここでは結晶質岩の透水性について各国が参加し国際的に研究されたことがあります。日本もJNCが参加していました。日本の地層処分の研究もココの流れを汲んでいます。で、残念ながらその報告書だけは非公開なのですが、地質について非常に重要なデータが示されています。特に「地質と水みちは関係ない」といった結論は衝撃を受けました。(余談ですが、現在、瑞浪では関係有といった内容の発表がされています。)当時、私も含めた各社の地質屋さん10人程度でかなりの数の切羽、大背、BTV、コアなどを観察し、議論しましたが、結局は結論付けられず他に何かあると思っていた矢先の話でした。前にも書きましたが、初期地圧を組み合わせる必要があると考え始めたのは、この資料を読んでからです。ターニングポイントとして十分な価値を持つ報告書でした。

地質屋は地質のみに結論を求めがちですが、自然現象でその分野のみに答えがあるというのは不自然です。自然は複雑です。また、地質屋は物理的・化学的な議論を避けたがりますが、自然現象を説明するにはそれらの知識も必要です。それらを習得して初めて地質屋と宣言して良いのではないでしょうか?どこかの経営者が技術者はT型、π型であるべきといっていましたが、まさに地質屋は様々な設計手法や物理化学知識を習得したゼネラリストであり、地質に特化したスペシャリストであるべきなのでしょう。
まだまだ学ぶべきことは多くあるようです。

SSRFEM

平面ひずみ状態で思い出しましたが、10年以上前、地すべり学会のFEM講習会に言ったときの話です。
講師の方がSSRFEMを紹介されていました。地すべり学会誌の講座でも紹介されている手法です。http://www.landslide-soc.org/landslide/education/pdf/finite_element_method_for_landslide_analysis_04_40-3.pdf
あるモデルを説明する際に、「平面ひずみ状態であるから2次元モデルで表現した場合・・・」ということを言われました。「では、設定する強度定数も平面ひずみ状態のものを使用するのか?」と質問したところ、「モールクーロンの破壊基準が平面ひずみも三軸も関係ないので、そこまでこだわらなくて良い」と返答されました。
今でも真意はよくわかりません。実務的には2次元の強度定数は現状あわせなので、順解析でもそれなりの強度に調整するのでしょう。

2次元が前提であれば、SSRFEMは、良い手法だと思います。自動的に最もすべりやすい面の位置を探索できますし、地質的な弱面も反映できます。安全率も通常のLEMと同義なので、Fp=1.2の経験則を受け継ぐには実務上都合が良い手法だと思いました。
しかし、この手法は現在でもほとんど使われていません。鉄道の内部基準で取り入れられた程度でしょうか。安全率も含め、安定計算に関する経験則はかなり根が深いものなのでしょう。

ただし、道路土工の盛土基準に変形・浸透流解析が取り入れられたこともあります。非常にゆっくりですが真実に近いモデルで解きたいといった純粋な技術者の思いや、ハード、ソフト面でのFEMの裾野は広がりつつあると感じています。今後の動向に着目です。

2011年1月8日土曜日

孔内水平載荷試験と強度定数

孔内水平載荷試験で地盤を破壊させると、2次元平面ひずみ状態の強度定数を求めることができます。結果を見ると、排水状態か非排水状態かも判断できますので、cuとして評価すべきかφ'として評価すべきかも理解できます。メジャーな基準書「地盤調査の方法と解説」や一つ前の「地盤調査法」にも掲載されていますが、実務で適用された例を見たことがありません。それは、試験が平面ひずみ状態のため、3軸状態よりも強度定数が3割程度高くなるからか、基準の報告義務に入っていないからか、ソフトが対応していないからか・・・。
平面ひずみ状態と三軸状態での相関はいくつかのテキストに出ていますので、得られた強度定数を割り戻してやれば十分使えるデータになります。せっかく現位置でとっているデータなのですから、使わなければもったいないですよね。

私は試験結果をEXCELで整理しています。VBAの仕様上、古いVer.では動作しませんが、コチラにUPしています。
LLT >>> https://sites.google.com/site/geochemist001/resources/llt
エラスト >>> https://sites.google.com/site/geochemist001/resources/elast


ちなみに、昨日書いたαE0で基準となっている平板載荷試験ですが、もとの土研資料では、横方向に載荷しています。杭のことを考えると当然ですよね。

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20211024追記
管理上の都合で、上記サイトは閉鎖しています。


変形係数とポアソン比

私は変形係数(この場合は地盤反力係数のほうが良いか?)を設定する際には、αE0で統一しています。この辺しっかり記載していないと、設計者に伝わりませんからね。今日も隣で迷われた方がいましたので、その話をしていました。

さて、孔内水平載荷試験で変形係数を設定する際に、土砂の場合はポアソン比νを仮定しますよね。そのことについても時々問い合わせがありますが、そこは深く考えなくてもでも良いのではないか?と思っています。その理由は以下の通りです。
  • 三軸応力状態で有効応力、ひずみε=0を仮定すると、静止土圧係数K0=σh’/σv’=ν/(1-ν)となる。K0=0.5のとき、ν=1/3=0.33となるので、これが排水材料(砂)の場合の0.33の導出でしょう。
  • 軸対象三軸圧縮では体積変化ΔV=0の場合、ポアソン比νmax=0.5となるため、これが非排水材料(飽和粘土)の場合の0.5の導出だと思います。
  • 厳密には孔内水平載荷試験は平面ひずみ状態の試験であり、三軸応力状態ではありません。したがって、上記の値を適用するのは(経験的に施工上問題が発生しなくても)理論的には間違い。(理論上、ポアソン比は孔内水平載荷試験自体から求められます。ユニークな方法を深川先生がご提案されています。)
  • また、地盤調査の方法と解説に掲載されている変形係数E算定式は理論的に誤っています。(岩盤のプレッシャーメーター試験方法(地盤工学会)では理論式となっています。)
  • このように、現状では①適用できないポアソン比や②理論式でなく経験式で変形係数を求める仕様となっています。
  • さらに、変形係数は③ひずみレベルと④拘束圧に依存します。しかし、①~④を無視した経験上の設計手法が確立されています(建築の指針では補正の指摘あり)。
  • そのため、上記理論背景を認識した上で基準通り0.5、0.33を使用して良いのではないかと考えています。

ちなみに孔内水平載荷試験で直接求められるのはせん断剛性率Gであり、νの仮定を必要としません。岩盤のプレッシャーメーター試験方法では算定時の孔壁圧力、ひずみレベルとそれに対応したGの報告義務があります。
なぜ岩盤だけが理論式になったのかはわかりませんが、従来設計との整合性も考えられたのかもしれません。

2011年1月7日金曜日

DtransuのTECPLOT変換ツール

DtransuにはTECPLOT用の変換ツール(trans_tec.f)がついています。

今日もこれを使って変換し、濃度分布のチェックをしていたのですが、どうも薄い濃度の表現ができてないように感じました。変換されたTXTデータをチェックすると、小数点以下4桁しか書き出されていません。fortranソースを見ても倍精度になっていましたので、おかしいなあと思いながら読んでました。
もしかしてDtransu側が4桁しか吐き出していないのか?そっちを見ないといけないのか?と不安になりかけた頃、後ろのほうでformatされていました。そりゃそうですよね。

  200 format(f10.3,4(a,f10.3),a,f10.4,a,e12.4,a,e12.4,a,e12.4)

これを、8桁にしとけば今回は十分な精度になるので、変えました。

  200 format(f10.3,4(a,f10.3),a,f10.8,a,e12.4,a,e12.4,a,e12.4)

指数表示のほうがよかったかな?
人の書いたソースって、読めないんですよね。ま、自分の書いたソースも後でわからくなるときありますが。めんどくさくてもコメント行を書かないといけないですね。

2011年1月4日火曜日

総合的な問題の捉え方

ある問題を解決する際に、目先の問題だけに集中し周りが見えなくなることはよくあります。

たとえば、吸着層では鉄粉末を使用してtrace metalを回収しますが、通水井戸や地すべりの水抜きボーリングの目詰まり物質(Ferrihydrite)に、同じメカニズムでそれらが濃集することを気にしていないのではないでしょうか?目先の目標が環境ではなく、目詰まりの解消だからです。逆洗浄で洗い流した物質はどこに行くのでしょう?
今読んでいるOLCsでも、回収したtrace metalはarmoring、もしくはcloggingといった悪者で、longevity、コストの点から洗浄の対象になります。洗浄した場合の結末に注意する必要があります。

近づいて、離れてを繰り返し総合的に解決すべきなのは、どのような問題でも共通しているのでしょう。なんか、地質図を作るときの心得に似ていますね。



2011年1月3日月曜日

PRBs Chap. 2

2章まで読みました。
AMDに対するLimestoneベースのPRBsの話でした。反応論は扱っておらず簡易な扱いでしたが、必要量、時間、間隙率、実流速など、頭の中で整理できたように思います。また、あの時はこうすればよかったかな?とか、今度こうしてみようかな?など、素人にはいろいろと考えさせられるところが多くある内容でした。実務上のヒントがあったように思います。
この本は2002年の出版ですから、約9年がたとうとしています。その間に基準ができているかもしれません。特に鉛直方向の反応壁について調べる必要がありそうです。

また、最後の1文は、PRBsのみならず、化学反応と輸送を連成する全ての研究に共通する永遠のテーマでしょう。
“Accurate information on variations in the water chemistry, detention time, rates of limestone dissolution, and effects of hydrolysis products on limestone dissolution, sorption of trace metals, and hydraulic properties is needed to optimize designs for OLDs and ALDs and to minimize costs for the effective implementation of these passive-treatment system.”

2011年1月2日日曜日

国内の透過反応壁の動向

PRBsの施工についてDOWAエコシステムさんのHPに動画がありました。鉄粉を用いた工法です。
寿命に関しては、コストの点から再施工を提案されるのでしょうか?
http://www.dowa-geo.jp/service/co_PRB.html

栗田工業さんでは以下の情報が引っかかりました。
http://www.kurita.jp/CACHE/japanese/news_news_newsobj85.cfm
http://patent.astamuse.com/ja/published/JP/No/2009226348
http://www.ekouhou.net/%E9%80%8F%E9%81%8E%E5%8F%8D%E5%BF%9C%E5%A3%81%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E5%9C%B0%E4%B8%8B%E6%B0%B4%E3%81%AE%E6%B5%84%E5%8C%96%E6%96%B9%E6%B3%95/disp-A,2009-226348.html

ZVIを用いた反応壁ですね。私が取り扱いたいのが石灰岩のほうだったのですが、特許申請の情報には参考になる点がありました。「土壌・地下水汚染: 原位置浄化技術の開発と実用化」という本にも同社の方が透過反応壁のことを書かれています。国内では独占状態なのかもしれませんね。ちなみに、今、この本を監修された先生と一緒に仕事をしていますが、有名な方なんですね。汚染の話になると、よくお見かけします。

また、JOGMECもこんな事業をされていました。
http://www.jogmec.go.jp/mric_web/prevention/technical/h191204matsuyama/matsuyama03.pdf

鉱害や土壌汚染関連で発達している技術でしょう。休暇が終わったら、社内の土壌汚染担当者に聞いてみましょう。

2011年1月1日土曜日

PRBs Chap. 1

Handbook of Groundwater Remediation using Permeable Reactive Barriers: Applications to Radionuclides, Trace Metals, and Nutrients  (2002/9/23) David Naftz、Stan J. Morrison、Christopher C. Fuller、 James A. Davis

第一章だけ読みましたが、要約のようでした。
結構、知りたかった内容が書いてありましたので、備忘録としてまとめます。

1. Abiotic reaction (Chap. 11, 12, 14, 15)
ZVI (zero-valent iron) >>> low oxidation potential >>> low solubility minerals (U, Cr)
Longevity: relatively unknown, focus of several current investigations
(Longevity is directly linked to cost effectiveness.)
ZVI is potentially reduced by three phenomena.
 a) Dissolution of the iron
 b) Permeability reduction (mineral precipitation)
 c) Passivation of the ZVI (alteration of ZVI grain surfaces)
The reaction of dissolved O2 with ZVI is relatively rapid, and O2 is usually depleted from the groundwater within a few centimeters of migrating through the ZVI.
<<<これ、個人的に知りたかったことです。ラッキーです。
Oxygenated groundwater >>> Ferric oxyhydroxide minerals will accumulate at the upgradient interface of the PRB. >>> low permeability >>> high-porosity zone of ZVI mixed with gravel (Upgradient gravel zone)
pH increase >>> chemical precipitation

2. Biotic reaction (Chap. 8, 17)
CH2O
Longevity: depends on the loss of organic material, reduction in permeability >>> Mixed with gravel

3. Chemical precipitation (Chap.2, 3)
acid mine drainage に limestone が多用されている
Limestone >>> pH increase >>> Metal contaminants can precipitate as hydroxides or carbonates.
Limestone based PRBs lose efficiency as limestone is armored by Fe or Al precipitates, which can lead clogging and failure. High concentrations of Fe3+, Al3+, and dissolved oxygen increase the risk of clogging. >>> Flushing precipitates, which may lead to greater longevity.
<<<通水井戸と同じですね。メンテナンスフリーのイメージがあったので、逆に納得です。

4. Adsorption and ion exchange (Chap. 9)
AFO (amorphous ferric oxyhydroxide) >>> U and metal contaminants
Desorb and reenter the groundwater, 60% of the sorbed U was released (column experiments)
 <<<重要ですね。説明されているメカニズムも良く知られたものです。以前、吸着層の設計をするために移流分散方程式を使ったという発表者がいらっしゃいましたが、吸着のみしか考慮されていませんでした。サイト数は考慮しているかという質問に、「サイト数とは何ですか?」と返されたので、実際の設計はされていないと思いますが、怖いですね。移流分散のみでは40%残留する、あるいは60%が再び地下水に流れ出すといった現象は再現できません。ただ、いつの時点で60%なのかは本文を読んで精査する必要があるでしょう。
Zeolite-based PRBs will largely depend on its sorptive capacity, which can be accurately calculated from laboratory test results. Clogging and surface passivation are likely to be less significant because the chemical mechanism is primarily cation exchange.
 <<<本当?よく読んでみましょう。