今月の地盤工学会誌は「ため池・アースダムの耐震」特集でした。
ニューマークD法が紹介されています。今年度より実務で使われるようになりましたが、本格的な利用は来年度以降でしょうか?
読み進める中で、懐かしい言葉が目に入りました。
「圧密時有効応力法」
いわゆる全応力法のことです。雑誌「基礎工」で2002年に連載されていた「基礎の設計-優しい基礎知識」で目にしたのをよく覚えています。当時は容易に理解できず、「どこが優しいの?」と、何度も読み返した記憶があります(今でもすぐに忘れて見返しますが)。筆者は同じ龍岡先生です。
全応力法(一般全応力法、φ=0法など)と有効応力法ですが、実務ではあいまいに用いられていると思われます(情けないですが、私もあいまいに用いています)。が、定義は比較的はっきりしています。以下は三笠の一般全応力法中心の解説ですが、全応力法と有効応力法の違いを知るには参考になると思います。
http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/175674
http://ci.nii.ac.jp/lognavi?name=nels&lang=jp&type=pdf&id=ART0005447927
http://ci.nii.ac.jp/els/110003334642.pdf
(3つ目の文献で言われる間隙水圧は、せん断時の過剰間隙水圧のことです)
要は、せん断時のダイレイタンシーに伴う過剰間隙水圧usをσ0に加える(σ'=σ0-us=σ-u-us)のが有効応力法、c・φ側に反映して考慮するのが全応力法です。
安定計算で必要なパラメーターは以下の通り異なります。
有効応力法:σ0(=σ-u)、us、c'、φ'
(一般)全応力法:σ0(=σ-u)、ccu、φcu、(cd、φd)
間隙水圧(静水圧)uはどちらも考慮されています。
が、稀に間隙水圧を考慮しない全応力σを使うのが全応力法と言われている技術者もいらっしゃいます。この辺、言葉が紛らわしいですね。全応力法を「圧密時有効応力法」、σ0を「有効な全応力」(usを差し引いていないので有効応力ではない)と先の文献で言われるのは、その辺をはっきりさせるためかもしれません。
有効応力法の場合、破壊時に発生する過剰間隙水圧usを反映しがたいという欠点があります。実際に測定できているのかどうかが分からない(おそらく測定できていない)ということでしょう。そのため、実務上はusを無視し、静水圧を引いたσ0を使用することが多いですね。その影響については2つ目の文献で触れられています。
一方、全応力法ではすべてのパラメーターを測定可能です。が、現場条件や排水条件によって強度が変化しますので、どの土質がどの時点の現場条件(応力状態)が最も危険側になるかを考えて試験を計画する必要があります。一般全応力法はそのようなニーズによって誕生したのでしょう(あいまいに使っているので、偉そうに言える立場ではありませんが)。
続きは後日。
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