2012年7月31日火曜日

起振点間隔

トンネル事前調査における弾性波探査の起振点間隔について、経験豊富(自称)な方より指摘がありました。

「はぎ取りの場合は30mでも良いけど、高精度解析の場合は25m間隔にするんだよ!(当然でしょ!)」
 
「知りません」と素直に答えて治めました。
 手法ではなく、「坑口部や地形、表層部の状況により」が正解だと思います。あえて言うなら、 はぎ取りの方が表層の影響を受けやすいので、間隔は密にすべきかと。(名称もトモグラフィー的なのか、高精度なのかも疑問です。)


しかし、過去を振り返っても、プロに頼りっきりでしたし、「その程度の間隔なのだ」と、ほとんど気にとめていない点でした。受振点間隔は5mで統一する場合もあれば、山中は10mと、混在させる場合もありました。起振点間隔は30~70m程度でしたね。土中発破で波が充分届く範囲かつ尾根-谷間を等間隔に近くなるよう複数の起振点を設けていたように思いますが、土被りの薄い箇所は密に、厚い箇所は粗にしたようにも思います。なぜ、その間隔にしたかは、きっちりとは理解していなかったですね。そういうものだと。
反省です。こういった指摘でも、考え始める役に立ちました。


 以下、参考書より関連箇所の抜粋。

・物理探査学会(2000)「物理探査適用の手引き」 p18より
受振点の間隔は、探査深度が浅い場合は5m、深い場合は10mにすることが多い。起振点は30~60m間隔に設置し、起伏の激しい地形の変換点などにも設けると解析精度が向上する。S波地震探査では受信点間隔ならびに起振点間隔とも、これより短く設定する。
 ・物理探査学会(1998)「物理探査ハンドブック 手法編 2」p126、127、129より
図2-17 尾根、谷で起振点追加
同図(b)のように起伏が激しい場合、起伏の頂部と底部に起振点(図中「s」)を設けることにより、起振点間を一様傾斜とみなせるようにしておくのが良い。
図2-19、20 1展開中の起振点  実際の解析では、表層から順次、速度と層厚を求めていく必要があり、それらの誤差が最下層の深度決定に大きな影響を与える。従って、測線内に適当な間隔で起振点を配置し、異なる起振点間隔の組み合わせで異なる層の速度値と層厚を精度良く決定できるよう計画するのがベストである。
・山岳トンネル工法Q&A検討グループ(2007)「山岳トンネル工法Q&A」 p49より
受振点の間隔は、探査深度が浅い坑口部では5m間隔とし、探査深度が深い中央部では10m間隔とするのが一般的である。また、複雑な地質状況が想定されるときには、測線全体について5m間隔で受振点が設定される事もある。起振点は100m以下の間隔で測線内に設定されることが一般的である。しかし、地形の起伏が大きい場合には、谷部や尾根部などの地形の変化点にも追加の起振点を設けることが望ましい。

明快な回答はないものですね。奥が深いのでしょう。
一度、プロに聞いてみましょう。




2012年7月29日日曜日

Relation between equilibrium and kinetic

以下の論文より、セメントの反応における Relation between equilibrium and kinetic について。

Matschei, T., Lothenbach, B., Glasser, F. (2007), Thermodynamic properties of Portland cement hydrates in the system CaO-Al2O3-SiO2-CaSO4-CaCO3-H2O, Cement and Concrete Research, 37(10), 1379-1410.
  • kinetic をまったく無視しているわけではない。例えば、CaO-SiO2-H2O 系では、stable phases である tobermorite と jennite が、準安定の C-S-H の生成によって抑制されている。C-S-H は熱力学特性の definite set を与えられ、その計算条件における他の安定な phases と共に反応に加わる事を許容されている。
  • kineticが重要であるという一方で、定量化に関与する部分は比較的小さい。そのため、熱力学的(平衡論の)アプローチが成功していると言える。
  •  反応に伴い、solid の bulk composition の変化するとタイプは、定量が難しい。1つのspecies がセメントに加わったり出たりすると、絶えず mass balance を再計算する必要がある。
  • kinetic is a best approach in conjunction with thermodynamic equilibrium calculations rather than as a separate exercise: the driving forces responsible for change have a thermodynamic basis and, moreover, comparison of calculation  and experiment shows that with few exceptions, the principal of local equilibrium is maintained, or nearly so, in the course of environmentally-conditioned reaction.
  • 多くの研究より、反応は数日~数週間程度と、比較的早い事が明らかになっている。
  • Thus while kinetics are important, much evidence indicates that, with the notable exception of C-S-H, the internal constitution of hydrated Portland cements tends to approach a thermodynamic equilibrium.

2012年7月28日土曜日

熊対策

「熊対策を実施しなさい」と指示を受けました。

隣接県が鳥獣駆除を本気ではじめたため、熊や鹿が県境を越えて逃げてきたようです。結果、熊の出現数は例年の倍だそうです。
で、そこへ調査に向かうわけですが、熊が迷惑というのは完全にこちらの都合でしょうね。熊にしたら人間が迷惑でしょうし、もともと彼らの住処ですからね。侵していくのはヒトの方です。


そういえば、入社試験の時、「構造物を作る事と自然破壊について論じよ」という内容の問題が出ました。何を書いたか忘れましたが、「自然を守りたいなら作らなければ良い」という他人事のような考えを書くわけにもいかないので、なかなか紙面が埋まりませんでした。
ヒトの都合で進められる事業にも理解できますし、地質屋ですから自然の理も理解しているつもりです。それらのバランスが崩れると、単に平衡点に戻るだけです。それだけです。

何事もやり過ぎはいけません。こちらに帰ってきます。
フィールドサインには気を付けて、進み過ぎない様にしましょう。


2012年7月27日金曜日

伸び盛りの技術者

伸び盛りの技術者は何でも吸収します。こちらも2件。

1人は現場作業ばかりで、 同年代の技術者に比べ自分は遅れているのではないか?と感じている若い方。大丈夫ですよ。教えた事はしっかり吸収しています。地質屋は若い内にこなした現場作業が財産になります。歳をとると、若い時のように馬力がなくなりますので、物理的に確認できる範囲が狭くなります。想像と知恵で補間できるかどうかは、若いうちの体験だと思います(と、偉そうに言っていますが、私が経験豊富なわけではありません。残念なのですが)。
当然、勝負する土俵に上がるために、そこで使用されている基礎理論は本を読んで自分で覚えないといけません。それが自分の体験している作業とどのように結びつくか、現場で丁寧に探せば良いと思います。

もう1人。
並列化のレクチャーを3時間でこなしました。短時間で並列化概要、使用方法からポスト処理まで説明できました。質問も的を得ています。打てば響くような感じの方でした。


この2人から感じた事は、自分も新しい事を吸収し続ける必要があるといった点と、知っている技術をより深くしないといけないという2点。知識を広げる、レベルを上げると言うのは簡単ですが、実践するのは難しいものです。が、その困難さは、頑張れとエールを送った若い方も同様なのです。彼らのように迷いながらも着実に進まなければなりません。

温故知新

困った技術者?の話を2件。

1件目は例の部長様。
理想や目標の高い事は良いのですが、そこへ向かって作業!となると、御自分では手を動かせません。いえ、昔なりには動かされるのですが、CADはできませんし、数値計算はもちろんムリ、3次元なんてとても、という状態。しかし、解析結果や可視化の結果はよく目にされているようで、「自分は”時間がなくて”無理だが、自分より若い世代なら誰でもすぐにできる」とでも思われたのでしょう。
3次元データ入力結果の引き継ぎをしたのが今日で4人目。説明時間は30分程度ですが、4回同じ説明を繰り返しています。部長様から次々と 人材が送られてくるのですが、説明の結果、皆、違う選択肢を選ばれ、部長様の思うように作業が進んでいません。世の中の出来るレベルと、現実論(時間、人材)で出来るレベル、着地点は違うのですが、なかなか妥協されないようです。

2件目。
 こちらの方もCADはできませんし、計算ツールもダメ。でも、アカデミックな事例や3次元は好き。自分で生産できないし、今のツールの使い方、選定法も分からないので、他人にあいまいな指示だけします。そのため、周りから避けられているのですが、それに気付かれていない点は同情にも値しません。
今回、私の担当している業務に非常に興味があるようで、向こうから近づいてこられました。やんわりと断ったのですが、気付かれないようです。仕方ないので、その方に任せる内容を、同年代の方(こちらの方はキレキレ)に相談しました。結論としては、見張員ぐらいしかないという寂しいもの。

 この2件から感じた事は、自分の立ち位置を正しく知り、今も、これからも、手を動かし続けないといけない!ということでした。ツールを使える事自体が偉いと思えませんし、時代遅れの技術者?が不要とも思いません。本質的な経験と、それに基づく適度な自信は重要です。ただ、それを表現する手段は、取り巻く環境に応じたものでないといけないということです。環境は常に変わりますので、手を動かし続けないといけないのでしょう。
古いだけでもダメ、新しいだけでもダメ、両方必要だということです。
温故知新にも通じます。




2012年7月25日水曜日

SGSim

「Sequential Gaussian Simulation で透水係数の3次元場を作る業務が出ていますよ」と連絡がありました。

いえ、会社としては実績がないので参加すらできません。

今後、この手の手法が一般の土木分野でも使われ始めるのでしょうか?
まあ、統計的手法として確立したものをトレースするだけですから、技術レベルはそれほど高くなく、お金もあまりかりません。流行り出すと広まるのは早いでしょうね(そういえば地質リスク学会はどうなったのでしょうか?全く、その活動を聞かないないですね。)

前にも書きましたが、地質屋もこの程度の事はできておいた方が無難です。
で、以前整理した250個程度の透水係数をSGSimで補間してみました。realizationは10と少なめ(教えてもらった業務は10,000 realizations)。 


 うーん。この程度。やはり、統計的手法は興味をそそられませんね。人によるのでしょうけど。


場の発生まではすぐにできますが、この後が大変ですよね。浸透流への取り込みはどうするのでしょう。要素に番号振って、それに透水係数を力技で当てはめて行けば終わりなんでしょうか。ソース、簡単に触れるでしょうか?

この辺が技術力の差のように思えます。



2012年7月24日火曜日

測量図面

測量屋さんはその仕事柄、きちっとした図面を作られる方が多いと個人的に思っています(適当に作る方が難しいと言われる方もいらっしゃいます)。しかし、中にはとんでもない方がいらっしゃいます。

先日、年配の測量屋さんと現場で打ち合わせをしていたのですが、その話し方が自信満々。その時はよく知っておられる方なのかなあ?程度に思っていました。次の日の午後に現場に行くと、既に作業を終えられていましたので、流石だなあと感心。

しかし、待てども成果が上がってきません。
結局、出てきたのが、1週間後。とんでもない図面でした。単点の表示が無い、マンガのような崩壊跡、横断と平面がまったく合っていない等々。そりゃ、早く済むはずです。ほとんど測っていないのですから。


もう一つの現場では、急いでいます!というのに、移動杭の初期値を測ったっきり、なかなか現場に現れない測量屋さん。しかし、成果を見て驚きました。地盤の細かい段差や亀裂、セメントの分離や移動位置をきっちり拾われてました。一目見ただけで、現場のイメージが再現できるのです。すばらしい図面でした。欲しい内容を理解されているのでしょうね。

腕が良いので忙しい、腕が悪いのでヒマというのは、どの職にもある程度共通すると思います(実際はその上に商売上手・下手が加わって分かりにくくなるのでしょうけど)。
ボーリング屋さんもそうですよね。難しい現場、サンプリングの重要な現場ほど、腕の良いオペさんに話が行きます。
地質屋も設計、工事の事を知っている、何を求められているのかを理解している人ほど、話が来るのでしょう。

そのような事を感じた、2枚の測量図面でした。




2012年7月22日日曜日

Portland Cement Hydrates with PHREEQC

以下のモデルを数年前に実施した試験条件に合うようアレンジし、計算してみました。
http://phreeqc.blogspot.jp/2012/07/decalcification.html
(PHREEQC の標準 DB を利用した論文は当たりが見つかりませんでした。)

最初は、うまいくか見てみよう!程度に考えていたのですが、予想外にうまくいきました。結果は以下の通り。


コンセプトモデルでは、セメント側の反応量として表面より単位厚(1cm)を考慮しただけなのですが、これはパラスタで決めると良いのでしょう。実務では安全側になるよう配慮すればOKですね。
また、実験値は3種の流速による結果なのですが、何と kinetic ではなく、局所平衡で計算しています。この仮定により初期に若干の影響が出ているようですが、実務上は問題ないでしょう。つまり、今回の地盤の流速程度であれば、比表面積をパラスタする必要がないのです。この前取り寄せた CEMDATA 関連の論文に、kinetic と equilibrium について述べられていた箇所があったので、もう一度見てみましょう。

詳細はもう少し詰めないといけないのですが、それでも見通しが立ちましたね。以前は移流分散のみでコンクリ打設の影響を計算していましたが、今後は反応も組み込めそうです。

豪雨による斜面崩壊

昨年の今頃も、地すべりと崩壊について考えていますね。
http://phreeqc.blogspot.jp/2011/07/blog-post_27.html
http://phreeqc.blogspot.jp/2011/07/2_29.html

今年の道路災を見ながら思ったのが、崩壊のメカニズムは何だろう?という事。
冠頭部に水みちがなく、噴き出した形跡がありません。道路直下は盛土だからでしょうか?今まで見てきた自然斜面の崩壊跡には多く認められたのですが。
また、崖錐と風化土、岩盤など、明瞭な透水係数の差がある箇所ですべっているようにも見えません。不飽和浸透が岩盤に達し、飽和浸透流(水圧)が発生するといった事でもないようです。風化土ですからサクションの開放も可能性は低いでしょう。

そうすると、残るのは荷重でしょうか。不飽和領域への雨水浸透による荷重増加です。ただし、重たくなって崩れるというのは想像できますが、今回の雨でないと壊れなかったという検証が必要でしょうね。浸透流で通常の雨と今回の雨の両方を降らせ、浸透量を単体に荷重として加え安全率を求めるといった手法でしょうか?浸透流の結果をSSRに引き継いでも良いかも知れません。いずれにしても数値実験が必要でしょう。でも、そう簡単には解決しないでしょうね。

表流水の影響はどうでしょうか?
表流水が流れ込み、表層数cm~数10cmの小さな崩壊が発生。あるいは削剥。それらが 拡大し、大きな崩壊につながったという解釈。これは見ていませんので分かりませんが、流れ込んだ跡が路面に残っている箇所もありますので、ないとはいえないでしょう。

うーん。わかりません。

2012年7月18日水曜日

LUMIX DMC-FT3

現場用のカメラが壊れたため、新品を購入してきました。

広角以外は特にこだわりはなかったのですが、故障理由が「レンズエラー(たぶん、埃か衝撃)と浸水(たぶん、雨)」だったため、防水・防塵を優先しました。事前に調べることなく近くの電気屋さんに立ち寄ってみると、数種類ありました。で、選んだのが Panasonic LUMIX DMC-FT3 。1万9800円也。価格.comよりも数千円安いので、まあ、お買い得だったのでしょう。既にFT4という機種がHPに載っていますので、去年のモデルのようですね。

GPS、高度計/気圧計、方位計がついる多機能カメラ。これらの精度はそれほど期待していませんが、忘れ物の多い私にとって「 GPS の電池が切れた!」「高度計忘れた!」などという場面では役立ちそうです。


で、早速 firmware を Ver.UP して、現場で使用。
撮影自体は特に問題なかったのですが、GPS の捕捉と更新が遅すぎ。自動更新してくれるのですが、5分以上間隔があきます。その間に違う場所に移動していますから、全く使い物になりませんでした。更新間隔についてマニュに記載がありませんので、修正もできません。スマートフォンでもしっかり追ってくれるのですが。

良い点も。カシミール3Dで写真をブラウズすると、隅に小さな矢印が表示されています。撮影方位がEXIFに記録されており、それを表示しているようです。素晴らしいですね。いえ、良いのはカシミールか。

GPS 以外は特に問題なし。高度計/気圧計は即時更新されますね。接写も綺麗に取れています。
今後の GPS 関連の firm 更新に期待しましょう。



2012年7月17日火曜日

OSASI

梅雨も明け、地すべり挙動も鈍化しそうですね。

この時期、災害対応で人がいないのですが、地盤伸縮計をつけてきました。後輩を連れて2人で作業です。暑い中、運搬・設置・通信確認・撤去まで3時間ほど。(ついでにBTVもOJT。いい絵は取れませんでしたけど。)

機種は OSASI さんの SLG-100。他支店に転がっていましたので、NetMAIL-1といっしょに設置しました。この機種は初めてなのですが、まあ、仕様は他社の自動観測機種と大きく変わらないでしょう。ネットにつなげてデータを回収し、サーバーへUPするだけです。

現場では何事もなく通信できたのですが、実は事前の室内でのテストは散々でした。いえ、ハードが悪いのではなく、社内の連絡不足で、解約している機種で通信しようとしていたのです。いくらやっても通信できず、OSASI さんも巻き込み、ひと騒動でした。OSASI さんの神対応に随分助けられました。おなじサービス業として、見習わないと。

水位計も用意しました。既に新しい機種から持ち出されており、「さあ、付けよう」と思った時には在庫なし。まあ、こちらは連続でデータが取れていたら問題ないですから、古い DLCOS-2000 を用意。テストした4台中1台は壊れていました。2世代前ですから、もう寿命なんでしょうね。

VU-50のキャップをサンダーで細工し、ケーブル留めを作りました。昔使っていた市販の留め具がもう売っていないのです。でも、良い感じに仕上がりました。


伸縮計の塩ビ、支柱等の通りもバッチリ、キャップの加工もバッチリで、ちょっとした満足感のある1日でした。

2012年7月15日日曜日

計測変位からすべり面の推定

櫻井先生の手法で、計測変位からすべり面を推定してみました。
http://phreeqc.blogspot.jp/2011/08/blog-post_22.html

この現場は切土前の調査が実施されています。そのため、ある程度の地質状況は分かっていました。そこからすべり面形状を推定していたのですが、今回の結果がよく似た形状になりました。これは予想以上でした。
使用したデータは竣工時の横断と、現在の横断です。これを重ねてCADで絵を描くだけですから、非常にお手軽で効果的だと思います。

そういえば、土研さんも研究されていたようですが、成果はまだ世に出ていないようですね。

いずれにせよ、数を集め、手法を評価する価値はありそうです。

2012年7月14日土曜日

梅雨と災害

今年の梅雨は適度に法面を壊していったなあと思っていたのが先週だったでしょうか。

しかし、先週末の雨により表層崩壊が多発。
それでも昨年のような大きな地すべり災はありませんでした。
 河川周辺も影響は少なく、農地の再生も簡単そうでした。こうやって氾濫を繰り返し、肥沃な土地ができるなどと考えていました。

そして梅雨も末期になり、その数が増えて行っています。 「肥沃な土地が・・・」などと考える余裕はなくなりました。

今日も強い雨。これでは、すべりがなかなか止まりません。
いまでこそ自動観測機種が多く販売されていますので、警報メールを自動で即時、多人数に出せますし、多くの現場の状況も一度に把握することが可能です。安全管理には有効な手段です。昔は一人一現場張り付きか、毎日データ回収をして判断していたのでしょうね。
ポール横断の写真も慣習で残っていますが、レーザー距離計を使えばすぐに横断が作成できます。現場へ行って、数分で座標を取り、携帯で事務所へ連絡、帰社すると応急対策工の絵が出来上がっている、なんてことも当たり前になってきました。

現場に行く時間を他現場にあてがえられるようになり便利になったのか、それとも多現場を同時並行で抱えなくてはならなくなり忙しくなったのかは、分かりません。昔の人に聞いてみましょう。



2012年7月11日水曜日

流向流速測定

流向流速を測定する機会がありました。

ボーリング孔内にカメラを入れ、粒子を追いかけるタイプの機械があったのですが、随分前に壊れていました。今回はヒーター付きのゾンデをレンタルしました。

測定自体は無事終わったのですが、 結果をチェックするにあたり、色々と分からない事が出てきました。
特に流速。孔内流速を測定しているわけですが、それをダルシー流速や実流速に変換する係数が分かりません。レンタル会社よりメーカーに問い合わせていただきましたが、係数はなく変換できないとのこと。まあ、仕方ありません。
次に流速の算出法について問い合わせたのですが、これも良く分からないとのこと。ブラックボックスだそうです。文献を送付いただいたので、そこに書いてある通りに流速を算出してみましたが、まったく合いません。仕方ないので、どのパラメーターと相関が高いかひとつづつチェックする事にしました。結果、振幅でした(相関係数Rの二乗が0.999でしたので間違いないでしょう。)。熱の移流拡散を流れにのせて解いているのかと思いましたが、案外簡易な算出法なんですね。まあ、方程式を解いていれば変換係数も出ているでしょうけど。

所詮は孔内流速なので、流向以外は気にされないのでしょうね。

2012年7月8日日曜日

重金属の挙動

重金属の挙動に関する水-反応連成計算の事例を読んでいました。

重金属を含む地盤に雨が浸透した場合の、非定常・30年間の計算でした。境界条件(浸透・移流分散)と反応のモデルコンセプトがきちんと記載されており、計算による検証の信頼性は高いと思います。

この中で、一時期、地表部の重金属濃度の増えている結果が示されていました。一瞬、?でしたが、理解できました。蒸発です。上昇流が発生し、増えていたのです。納得。地表近を扱う場合は、こういったことまで考慮しておかないといけないのでしょう。土壌の分野は表層数十cmを相手にするため、より細かいオーダーの調査がいるのでしょうね。

こういった水-反応連成の文献は海外で多く出ていますが、日本ではほとんどありません。地層処分分野のみでしょうか? (海外では反応による porosity の変化まで扱うものも出ているんですけどね。)
たまに一般土木分野での適用例も見ますが、工学屋さんがやっているのか、反応部分のモデルコンセプトがほとんど述べられておらず、信頼性の乏しいものが多いように思います。扱う元素やその濃度だけ表示されていても、それがどういう形態で土に含まれ、どういう形態で地下水に取り込まれていくか、あるいは沈殿していくかを記載しなければなりません。計算はあくまで自分の考え(モデルコンセプト)を検証するツールに過ぎないのです。

やはり、地質屋さんがリードしないといけない分野のでしょう。

2012年7月7日土曜日

Decalcification

CEMDATA を PHREEQC で使用してみました。

選んだ問題はDecalcification。Benchmarking of the cement model and detrimental chemical reactions including temperature dependent parameters より、セメントからの溶解プロセスを再現することにしました。

1000回シフトさせるadvectionでモデルを組み、計算!
が、結果は合いません。何度チェックしても input に問題ないのですが、ダメでした。
本家の GEM-Selektor で試せば手がかりを得られるか?と思い、そちらでも試算してみました。が、結果は合いません(こちらは水和反応も合いません)。

結局、1週間かかりましたが答えは出ませんでした。下図のように、大まかには合っているんですけど、ちょっと違います。鉱物の消失と pH buffer の関係は良いですけどね。


 
まあ、CEMDATA では kinetic の見通しがついていませんので、もう一つの方法、PHREEQC の標準 DB を利用した論文の到着を待ちましょう。

2012年7月6日金曜日

掘削前の地すべり形状

カーブした切土法面の、吹付け前の写真を頂きました。

見事に円弧上のすべり面が形成されています。幅は100mを超えているでしょうか。

それらの位置を5か所選んで断面上にプロットし、GEORAMA で形状推定。結果、見事に掘削前の道路際に抜けました。冠頭部のすべり面勾配をややきつくすると、尾根手前の古い滑落崖につながりますし、全体的にも古い地形図より推定していた地すべりブロックにハマります。古いボーリングや物理探査結果にも調和的です。裏が取れたと言えるでしょう。ただ、想像より緩勾配で見た目より直線的(そりゃ、そうです。カーブした法面に傾斜した平面が交わると、交線が円弧上になります)。そのため層厚も想像よりかなり薄い。層理面の方向をBTVでチェックしておく必要がありそうです。

5点で推定できたのはラッキーですし、PCが 無理のない結果を出してくれたのは見事だと思います。法面がカーブしていましたので、ソースの位置情報を効率よく利用できたのでしょう。
掘削後に以前の現地確認はできませんので、こういった使い方は効果的だと思います。今日は皆で感心していました。

雨、崩壊、施工者

ここ最近、雨が良く降ります。土砂崩れも多くなってます。

先日は掘削中の現場にて、すべるかどうかの議論。
地盤自体は問題なかったので、法勾配の変更はありませんでした。施工屋さんはどうしても変えたかったようで、暗くなるまで引きとめられました。
「ただ、大きなすべりは無くても、表流水が掘削面に流れ込んだり、乾燥させると表面は崩れて行きます。掘削後はブルーシートなどで養生してください」とお願いしておきました。施工屋さんからは「それは当然」とのお返事。
が、数日過ぎて見てみますと、ほったらかしでした。気にするところが違います。崩れるまで放置でしょうか?

もう一つは岩盤の切土法面。
最初は表層崩壊かと思いきや、背後に滑落崖が連続。すぐに、間詰め、ブルーシート、丁張りをお願いしておきました。
当日にはお願いしておいたことは全て実施され、2日後には大型土のうの設置まで終わっていました。 迅速。しかも、丁寧。

すべり、崩壊、雨、養生などに対する考え方も、施工者によって随分と変わってくるようです。そういう意味では人災もあるのでしょうね。

2012年7月1日日曜日

C-S-H gel models

C-S-H gel のsolubility model について整理していました。

文献は多く集めていたのですが、系統立てて把握しておりませんでしたので、誰が、いつ頃、どのモデルを、どのコードで計算したかを整理しました。

モデルが世に出始めたのは1990年代 後半です。
日本では地層処分分野で、2000年頃より研究結果が出ています。核燃料サイクル開発機構、電力中央研究所、太平洋セメント、日本原燃等より発表されていますが、基本的には熱力学データベースの整備と、どのようにすれば計算にモデルを取り込めるか、実験結果を再現できるか?といった所に注力されていたようです。使用コードは PHREEQC がメインです。
一段落ついたのは、2005年の電気事業連合会・核燃料サイクル開発機構「TRU廃棄物処分技術検討書-第2次TRU廃棄物処分研究開発取りまとめ-」のように見えます。Atkinsonモデル、Berner モデル、杉山モデル を PHREEQC、RAIDEN3 で計算し差違が顕著でない事を確認しています。
http://www.jaea.go.jp/04/be/docu/tru/TOP.htm


その後、2007年ごろまでは、その流れで杉山モデルでの発表が出ていますが、2009年に The Belgian Nuclear Research Centre SCK • CEN の D. Jacques. (HP1の作者)が Benchmarking of the cement model and detrimental chemical reactions including temperature dependent parameters という資料を公表してからは、EMPA の CEMDATA の利用が目立ちます。PHREEQC に取り込める事が分かったからでしょうか? 2010年の日本原子力研究開発機「平成21年度 地層処分技術調査等委託費 高レベル放射性廃棄物処分関連 地下坑道施工技術高度化開発報告書」でも CEMDATA の中のデータを利用(JNC-TDB.TRUを拡充)しています。

また、使用されているコードはPHREEQCはもちろん、移流分散との連成が目立つようになりました。


さらに、Webでは過去の20モデルのほとんどを PHREEQC でモデル化できるといった趣旨の資料も見られます。数年前は計算上のコンクリートの取り扱いに悩んでいましたが、もうその必要はなさそうです。