2014年4月30日水曜日

微動アレイ探査のテスト

4月に入って落ち着いた際、前から気になっていた微動アレー探査のテストをしてみました。
(コチラにわかりやすい解説がありました http://www.geo-x.co.jp/R_BD_QandA.html

といっても、使用するのは表面波探査で使用している McSEIS-SXW です。MT NEO のカタログもよく回覧されていますが、会社にはありません。2Hzのジオフォンもありません。ということで、浅層のみの探査ですが、一度も自分で実施したことがなかったので試してみたかったのです。

設置は簡単です。今回はスペースの制約からL字アレイを組んで、測定です。測定を開始すれば、1時間くらい勝手にデータを取ってくれるのかと思っていたのですが、違いました。20回はボタンを押して、データを取る必要がありました。うーん。ま、これくらいなら一人でも十分できそうですが。

データを回収して図化してみましたが、これまた、うーん。うまくいきませんでした。測定深度が浅すぎたのでしょうか?コツもなにもなさそうでしたが。

感想としては以下の通り。
・街中では難しい。・・・ケーブルの取り回しが街中では困難。無線タイプが必須でしょうね。
・自動でデータを取ってほしい。

やはり、MT NEOが欲しいところです。
http://www.oyo.jp/product/01-seismic/mcseis-mt_neo.html

2014年4月27日日曜日

UDEC その2

UDEC に少し慣れてきました。

当初、GUI ベースで触っていたのですが、どうもプロンプトからコマンドを入力する方が軽くて速そうです。しかも、コマンドを TXT ファイルに書き込んでおけば、それを読み込むことでバッチ処理が可能です。計算させて、結果の数値や図をファイル出力するまで、すべて一発です。読み込む指示をしてやれば、風呂に入っている間にすべての作業が終わっていました。

まだまだプロに頼るレベルですが、操作の基本は理解できたと思います。

2014年4月26日土曜日

水平ボーリングですべり面判定

地すべりを貫くトンネルをいくつか扱っています。

ある現場では、地すべりブロックに関連するボーリングが20本程度あります。地元の地質屋さんが判定を行っていたのですが、再度、私もコアと観測結果を見て確認。同意できる点、同意できない点を話し合い、5時間かけて帰ってきました。

今日、そのすべり面を GEORAMA 2014 でモデル化していました(エンジンは 32bit のままのようで、ちょっとしたモデルでも、すぐにエラーを吐きます。相変わらずです)。

地すべり縦断、横断を複数見ながら、すべてのボーリングの入力結果を確認しました。結果は思ったほど誤っておらず、一部を除けば素直な面ができていました。
引っかかっていたのは水平ボーリング。どの方向に何mですべり面、という感覚をつかむのが難しいのでしょうね。浅いすべり面を深いすべり面と誤判定していました。可視化するとそこだけ不自然になるのでよく目立ちます。

また、考慮されていなかった別ブロックのすべり面が可視化され、その存在が浮き彫りになりました。扱うブロックが観察者の頭にあり、観察時にはそこに集中してしまいがちなので、それ以外の箇所は見えていなかったことになります。記載に偏りのできた(バイアスのかかった)柱状図ができてしまいますし、掘り足らずも発生します。ま、人が歩いて簡単に把握できるブロックの大きさはせいぜい200~300m程度だと思いますので、それ以上の大きさになると現地では把握し難いのでしょう。初期の机上調査が重要となります。

以前も書きましたが、3次元になると一気に頭がついて来なくなります。できているようで、できていない。PCの助けが必要となるのです。

2014年4月23日水曜日

掘削開放率

トンネルの掘削を2次元で計算する場合、掘削開放率が用いられます。

トンネル・ライブラリー24号に、その話も書かれていました。要点をまとめると、以下のようなことでしょう。
  • 3次元の地山特性曲線を2次元平面ひずみ場で応力解法率として厳密に表現することは困難。そのため、着目点(先行変位か最終変位か、地表面沈下か天端沈下か)に応じて応力解法率を設定する必要あり。
  • 3次元に一致する結果が得られる応力解法率は、掘削工程や物性値、土被りなど様々な影響を受ける。そのため、二次元解析は「目安」を得る手段であることに留意する必要あり。
このような細かい設定を考えるくらいなら、素直に3次元でモデル化する方が初心者向けだと思います。p184にも書かれていますが、3次元解析によって現象を理解できる経験・能力を得ることが必要でしょう。そうすることで、2次元モデルとして解析・評価する感覚が見につくのだと思います。この分野も、経験が物を言う世界なのです。

ところで、「カイホウ」という漢字は、「解放」「開放」のどちらが正しいのでしょうか?
応力なら解放率でしょうし、掘削なら開放率で良いと思いますが、どうなのでしょうね?




支保部材・補助工法のモデル化

2次元で支保部材、補助工法をどのようにモデル化するかが、以下に整理されていました。

土木学会「実務者のための山岳トンネルにおける地表面沈下の予測評価と合理的対策工の選定(トンネル・ライブラリー24号)」p149-151

過去のライブラリー2冊が整理され、表になっています。こういった表、欲しかったんですよね。
基本的には等価な剛性でモデル化するか、掘削解法率を低減するかだろうと思います。多いのは前者でしょうね。後者の場合、3次元解析との比較になりますが、そうであれば三次元の結果を見れば事が済みます。わざわざ次元を落として再確認する必要がありません。

ソリッド要素、トラス要素、ケーブル要素、ビーム要素、パイル要素の簡単な説明もあります。このあたり、私がよく知らないところです。構造物をよく扱う方は、こちらの方が詳しいのでしょう。どのソフトで、どの要素を実装しているのか、把握しておく必要もありますね。


お客様の中には、補助工法の効果を定量的に把握する手法がないと思われている(そのように説明を受けている)方がいらっしゃいます。解析的手法による結果と施工実績との対比が少ないためでしょうか、まだまだ通常の設計手法としては認知されていないようです。
現段階では、支保部材・補助工法のモデル化を含めた解析的手法の中身を基礎知識として押さえ、それを使った評価の検証を蓄積して行く必要があるということだと思います。




2014年4月20日日曜日

解析領域と地表面沈下

解析領域と地表面沈下の話がトンネル・ライブラリー24号に出ています。

モデルの中でトンネルを掘ると、ある程度のリバウンドが出ます。下方領域が大きいほどリバウンドが大きく出ます。そのため、地表面沈下を対象とした解析では、下方領域を小さ目にしないといけないという内容でした。トンネル・ライブラリー16号にも出ています。
http://phreeqc.blogspot.jp/2010/12/12.html

これ、沈下の計算でも同じことが言えますね。
通常の解析領域同様に下方領域を設定すると、盛土により岩盤が弾性変形し大きな沈下が生じてしまう、といった考えにくい現象です。土質定数の設定や事前調査にも問題があるわけですが、解析領域にも気を付けないといけないという点は上記のトンネルの場合と共通でしょう。

境界条件にも触れられています。
トンネルの場合は側方:水平ローラー、下方:固定境界として計算しているものが多いようです。JH等のマニュアルでそのように扱われていたからでしょうね。
先日、他社の解析屋さんに「なぜ下方は固定?」と問うと、やはり「一般的」「マニュアル通り」という答えが返ってきました。トンネル・ライブラリー24号p147に掲載されているような偏圧地形であるがなかろうが、「固定境界」としているようです。これ、地表面沈下を対象とする場合(下方領域を小さくとる場合)は注意が必要と明記されていますね。ま、答えを見たらダメかどうかはすぐにわかると思いますが。

ただし、次のようにも書かれています。
(下方を1D程度に抑えるのは)掘削による浮き上がりを抑制したいという解析者や設計者の意図が読み取れる。言い換えると、・・・自らその予測値を自分で与えたことに注意を喚起したい。
確かにそうです。下方領域=1Dを読んだときの違和感がこれでした。執筆者が熟練者のため、先のような記載になったのでしょう。正解に対する嗅覚(経験)が必要ということでしょうね。ベテラン技術者ほど数値解析を割り切って使っているというのはこういった点を指すのだと思います。

まだまだです。

2014年4月19日土曜日

被圧水の広がり

ボーリングで岩盤を掘削中、被圧水に遭遇したそうです。
その平面的な分布を知りたいとのことですが、これ難しいですよね。

岩盤の場合、小指の先ほどの水みちでも湧水が発生します。亀裂中のその部分だけで湧水することが、水みちの成因を分かりにくくしています。また、問題に応じたスケールの亀裂構造を把握できないと、水みちの分布域すら議論できなくなります。正攻法としては、見えない初期地圧に気を配って水理地質を構築していくしかないのですが、それでも正解にたどり着けることはまれでしょう。この問題に関し、現在の地質屋の解決力は、圧倒的に無力だと感じています。ま、地質は無関係といったレポートもありますし、仕方ないのかもしれません。

ダムの手法のように、孔を多く設けルジオンマップを作成する、あるいはそこから地球統計学を利用して水理モデルを作成するといった手法があります。地質屋からすると正攻法ではありませんが、全く理屈がわからないけれども現象を整理できる点で有用な手法です。以前も似たようなことを書きましたね。

現状、調査段階で被圧水の平面的な分布を知りたい場合、どの範囲で知りたいか(改良したいか)を最初に決め、その中でボーリングを均等に配置していくしか手はないでしょう。そこから、グラウト効果判定を兼ねて1次孔、2次孔と追加していくしかないと思います。地質屋が悩むことも必要ですが、合理性を追えば、この手になるでしょう。
そこまでお金をかけることが難しければ、できる範囲の孔数で掘削時の応答を把握する、孔間透水試験(パルス含む)や単孔式透水試験、ルジオン試験などで透水性を把握する、程度でしょうか。

いずれにしても、どうにかしたい問題です。



2014年4月14日月曜日

拡散二重層と膨潤

今月の地盤工学会誌に、拡散二重層の話が掲載されていました。

拡散二重層が、膨潤や二次圧密に強く影響するそうです。今まで、分子動力学シミュレーションで圧密を説明できるといわれた先生がいらっしゃいましたが、化学と工学(力学)を結び付けた話を聞いたのはそれ以来です。が、残念なことにその根拠は示されていませんでした。

少し調べてみると、講義資料でしょうか、同じ方の書かれた資料が公開されていました。
http://wwwgeo.civil.ibaraki.ac.jp/komine/EnvironmnetalGeotechnics/Chap03-04PDF.pdf

地層処分の分野で活用されているのでしょうか、今まで見たことがりませんでした。
面白そうですね。

2014年4月13日日曜日

UDEC

UDEC の input ファイルを読んでいました。

ステップ毎に TXT ファイルになっています。理解するには、これを読むのが一番早いと思います。

部分的に FISH を使用して書かれていましたが、マニュアルに説明が開かれていましたので、何とか最後まで読めました。慣れてくれば、TXT ファイルを変更して行く方が早いですからね、一石二鳥です。

マニュアルを読んでいると、透水係数に似た数値を入力するコマンドもありました。浸透流の通過対象がジョイントのみ。さすがに DEM ベースです。どのように計算しているのか興味がありますね。
また、SSRM も実装されているようですし、他の Itasca のソフトとも連携できるようです。高機能です。

ま、まずは慣れましょう。



2014年4月12日土曜日

個別要素法

Itasca 社の UDEC を使用することになり、あわてて個別要素法の基礎を頭に叩き込んでいます。
http://www.itascacg.com/software/udec

いままで触っていたのは、微小変形を扱った連続体ベースの数値計算です。粒子法も連続体ベースですね。

今回は不連続体。この解法の基礎知識がかけているので、まず教科書を読むことに。
読んだのは伯野元彦「破壊のシミュレーション-拡張個別要素法で破壊を追う-」です。1997年ですから17年前の本。日本ではあまり流行っていないのか、日本語の図書は非常に少ないようです。
読んでみると以外に簡単でした。これ、今までで一番簡単な解法ではないでしょうか?(まだ一か所だけ数式で引っかかっていますが)

個別要素法( DEM : Distinct Element Method )や DDA( Discontinuous Deformation Analysis )を総称して離散要素法( DEM : Discrete Element Method )と呼ぶようです。今まで、DEM の正式名が2つあることに「どう使い分けるの?」と思っていたら、こういうことでした。DDA は昔、後輩が使っていましたね。名前だけは覚えています。DDA が要素内をFEMで計算しているのに対し、UDEC は差分です。どちらもハイブリッドには変わりません。
また、個別要素法を開発したCundall さんは、Itasca 社に在籍されているようです。UDECもこの方が開発されたのでしょうか?

個別要素法は、運動方程式をベースに、ブロックの速度を前進的に解いているといった比較的軽そうな解法ですが、要素の接触判定に時間がとられ、全体としてはかなり重くなりそうです(まだ動かしていませんので本を読んだ感覚ですが)。製品が採用しているアルゴリズム次第で、解くスピードが大きく変わってきそうですね。
また、要素間のバネを複数持たせることにより、水圧も表現できるようです。これは拡張個別要素法(EDEM : Extended Distinct Element Method )の説明の中にありました。バネとして水の体積弾性係数を使用し、要素間の間隙の変化率と間隙水圧を結び付けています。で、あとはダルシー則に従って流量を計算し、隣接する間隙水圧の差を調整。うまい考え方ですよね。UDECも水圧を表現できるのですが、同じ考え方でしょうか?透水係数を指定するところがなかったので、全く違うのかもしれません。これは後日、調べておきましょう。

ま、案外簡単に理解できてしまったので、とりあえずはソフトに慣れるところを目指しましょう。

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20140507追記

差分法でなぜ非構造メッシュが使用できるのか聞いたところ、解法は差分ではなく、時間だけ差分とのこと。ま、FEMでも時間は差分というのが良くありますからね。納得ですが、もっとマニュアルを読まないといけませんね。

20140510

マニュアルには、差分要素と書いてありますね。アワーグラスを避けるために3角形にしているとも。うーん。分かりません。

ブラザー・シスター制度

今月の日経コンストラクションに、「若手を逃がすな!」という特集が組まれています。

いくつかの会社で実施されている対策?の事例が掲載されていました。その中で、おっ?と思ったのが、ブラザー・シスター制度。以前書いた、メンター制度の日本版のようです。
http://phreeqc.blogspot.jp/2012/05/blog-post_28.html

新入社員に年の近い先輩を組ませ、指導・相談を行う制度のようです。紹介されている会社だけで実施されているのかと思いきや、検索すれば、いろいろな会社で引っかかりました。流行りなんですかね。

ま、技術も仕事も個人主義といった私の勤め先には、残念ながら関係ない話ですね。
十年後、こういった教育を行ってきた会社、人には、頑張ってほしいものです。

2014年4月8日火曜日

epidote と chlorite

新入社員の歓迎会がありました。

部長様がいくつか質問を紙に書いて用意いされていたのですが、その中に鉱物の知識を問うものがありました(その良し悪しは置いておきましょう)。

epidote の生成温度は?
フローライトの生成温度は?

最初の epidote は変成相の話で、圧力条件書かないとだめでしょ!と思っていました。
http://en.wikipedia.org/wiki/Metamorphic_facies
もう一つ、フローライトの生成温度なんて、変成論にはなかったはず。こちらは何が聞きたいのか?と不思議に感じていました。

隣で飲んでいた同期のオペさんが「epidote ってなに?」って聞いてきたのでパッと「輝石!」と答えると、どなたか「違う」と速攻のつっこみ。ええ、違いました。緑簾石。最近 enstataite を調べていたので、そちらが e 始まりのイメージで出てしまいました。ゴメンナサイ。

もう一つ「フローライトってなに?」と聞かれたので、「フローライトは flourite だよ。ほら、あれだよ。机の横に置いているきれいなやつ」っと、全く和名が出てこず。年を感じます。少し間があって、「そう、蛍石!」。
こちらは突っ込みがなかったのですが、周りは連続して何を言っているのか?と思っていたのではないでしょうか。というのも、翌日、フローライトの質問の意図を研究職に聞くと、紙にはフローライトでなく、クローライトと書かれていたようです。そう、クロライト、chlorite、緑泥石。

ああ、紛らわしいと思いつつ、質問の意図に納得。
と思いきや、研究職曰く、「変成ではなく、変質を考えていたのではないか?」
確かに、200~300度と低い温度を正解としていました。
http://www.cssj2.org/seminar1/section16/text.html


しかし、部長様は酔っぱらいながら言われていました。「地下20~30kmで緑色片岩になる」と。
これ、やはり変成論を語っていたと思います。温度・圧力条件ともずれてますが。酔っぱらってごっちゃになっていたんですかね。

ま、epidote を輝石と言うよりはマシですか。

2014年4月3日木曜日

メサとビュート

先日、香川県の屋島に行きました。

昔、一目見たときから変な地形だと気にしつつ、今まで訪れたことはありませんでした

地理院地図3DのHPでも、おすすめの場所として紹介されています。

■その他の地形
┣ メサ
http://cyberjapandata.gsi.go.jp/3d/gallery2/index.html


wikiより
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%B5
メサ (mesa) は、差別侵食によって形成されたテーブル状の台地のことで卓状台地と呼ばれている。さらに浸食が進み孤立丘となったものはビュート (butte) と呼ばれる。
南嶺から北嶺を見ると、このような感じです。



地学を始めた頃でしょうか、習いましたね。メサだそうです。英語だとメイサに聞こえます。スペイン語で「テーブル」を意味するのは知りませんでした。
鈴木隆介「建設技術者のための地形図読図入門」では、集団移動地形の章で紹介されています。下部の崖錐斜面に着目して解説されていますが、よくわかりますね。


東を望むと、五剣山があります。ビュートでしょうか?これも近づきたくなる面白い地形です。
讃岐富士はビュートでOK(上記の本でもビュートとして紹介されています)。こちらも地理院から紹介されています。3Dで見ると綺麗ですね。

■その他の地形
┣ ビュート
http://cyberjapandata.gsi.go.jp/3d/gallery2/index.html


屋島の場合(讃岐富士もそうですが)、白亜紀の花崗岩の上に、中新世の安山岩(溶岩?火砕岩?)が載っているようです。以前より香川大の長谷川先生が講演されていることは聞いていましたが、じっくり読んだことはありませんでした。高松市より、詳細な内容が公開されています。
http://www.city.takamatsu.kagawa.jp/file/20736_L87_2-1.pdf

百聞は一見に如かず、一度見ておけば忘れないでしょう。



菱鉄鉱と黄鉄鉱 その2

計算するまでもなく、答えは教科書に載っていました。
redox zoning の例として30年以上前の論文が用いられています。

Robert A. Berner, 1981, A New Geochemical Classification of Sedimentary Environments, Journal of Sedimentary Petrology, Vol. 51, No. 2, 359-365

表層部の open な環境から、地下の anoxic な環境に変化するにつれ、地下水の水質変化や鉱物の安定性がどのように変わるかという義論のようです(教科書を読んだだけで、論文まで追いかけていません)。結論としては、S の量の大小で、析出する鉱物が変わってくるというもの。ま、こういった研究が古くから実施済みでしたので、私が見た資料では「知っていて当然」という前提で書かれていたのかもしれません。

今回は教科書に載っていた例を真似て、海水と淡水の違いを見てみることにしました。計算はphreeqci Ver.3.1。user_graph 搭載版です。EXCEL や PHREEQC for Windows を併用する必要がなくなり、便利になりました。
海水の組成は PHREEQC のできたばかりのフォーラムから、淡水はネットで調べて適当に入力。淡水では酸素等の量が不明だったため、別途 O2 や CO2 を大気圧下で飽和させ(ま、あくまで初期条件は仮想です)、organic carbon を添加していくことで還元環境を作っていきました。余談ですが、どのデータベースも、角閃石や輝石は扱っていないのでしょうか?深くは探していないのですが、見当たりませんでした。そのため、今回、火山灰と一緒に降下した両鉱物や鉄鉱物が Fe の供給源として扱えず、計算ではgoethite を代用しています。

結果はコチラ。ますは淡水。



定性的に見ると、順番に還元されて最後に siderite ができています。S の量が少なすぎて pyrite の生成は無視できる程度です。ほとんど見えません。
goethite の量もいくつか変化させて計算してみましたが、ある程度の鉄の供給量がないと、sideriteができまないことも納得。ま、当たり前ですね。
計算結果より、siderite の析出には鉄の供給があること、S の少ない淡水であること、pe がマイナス側にあることが必要と判断できそうです。

次は海水。


こちらの結論は明らか。Sの量が多すぎて(左の軸の桁が違います)、pyrite が析出しても S を消費できていません。他の挙動は同じようなものですので、海水か淡水かが、棲み分けに一番効いてくるのでしょう。

こうしてみると、両者の差は明瞭です。大枠では、siderite が還元性の淡水性堆積物中で生成するということで、根拠を省略して良いレベルの話だったのでしょう。

汽水だと、条件にもよりますが、S を消費し終わって siderite ができる場合がありそうですね。両者の析出割合で、海水の混入率も計算できそうです(ま、全含有量を量ったほうが早いでしょうけど)。CNS分析 による古環境の判定と並行してチェックという手もありそうですね。








2014年4月2日水曜日

菱鉄鉱と黄鉄鉱

顕微鏡で火山灰を探していると、見慣れない鉱物に出会いました。

淡い褐色の球果状で、まるでブドウ。その場で成長したことは明らかです。
研究職にXRD分析で同定してもらうと、Sideriteでした。少し調べてみましたが、還元性の淡水性堆積物中に生成するのだそうです。が、理論や根拠が詳細に報告されているものがありませんでした。ま、土層は還元性の色を示していますし、感覚的には納得できます。

その直上にはPyrite を含む有機質土が存在しています。余計に、なぜ棲み分けができているのか不思議でもあり、地化の教科書をあさってみました。
まず探したのは、predominance diagram 上でのFeS2 と FeCO3 の関係。これはすぐに見つかりました。温度や濃度の問題もありますが、pe-Eh-pH diagram での安定範囲はどちらも低電位側で被っていますので、析出時は同環境(還元環境)だったということで良いでしょう。そうすると、C、S、Feの量が棲み分けに関係しており、当然、海水か入ってきたか否かが大きな一因だったと推察できます(その程度のpHの差は安定範囲の中です)。それは、Eh-pS2- diagram からも読み取れます。

では、量比を変えて実際に 計算すれば、定性的な答えは出るでしょう。

続きは後日。