2012年6月2日土曜日

限界揚水量

限界揚水量の発生要因を考えています。

先日、うちの部長様が経験則を持ち出し、「30年の経験上、水位を帯水層の○○%低下させると限界揚水量になる」と豪語してしまったため、お客様に「根拠を出して下さい」と返されました。当然の返しです。

 で、根拠を出せる訳もなく、別の方が新たに揚水試験結果を集め整理することに。


文献を調べても出てきませんし、人に聞いても色々な考えが出てきます。
調べてみると、地下水学会のHPに似たようなFAQがありました。
http://homepage3.nifty.com/jagh_torikichi/faq/faq_ans.htm#11
限界揚水量に学術的根拠はあるのでしょうか?
限界揚水量は、段階揚水試験時の揚水量と水位変化を両対数グラフにプロットした際の屈曲点(急変点)における揚 水量のことです。したがって限界揚水量を上回るとわずかな揚水量変化で水位変化が大きくなります。一般的な井戸公式に従えば、透水係数が小さくなることを 意味しますが、実際には井戸周辺の流速が大きくなり非ダルシー流れ(層流から乱流へ)になり抵抗が大きくなるという解釈や、流速の増大にともなって帯水層 を構成する粒子移動が大きくなり目詰まりが生じ始めているという解釈が一般的です。
限界揚水量の通常80%程度を適正揚水量としているのは、後者の立場にたって帯水層を破壊せず、泥だまりへの土砂の流入を極力おさえながら、なるべく多量の揚水量を得ようとする経験的な方策といえます。したがって、根拠の無い数字とは言えません。
経験的に80%という数字はOKなので、100%の限界揚水量の値もそれなりの根拠があるだろうということでしょうか?やはり明快な学術的根拠はないようですね。

計算でチェックするなら、前者では鉛直透水係数を小さくし、それが卓越するほど(水位が低下するほど)流量増分が小さくなるということができるかもしれません。試す価値はありそうです。
後者では流速のチェック程度でしょうか? さすがに、多孔質媒体における層流・乱流は分かりません。なにかあるような気もしますが。

2 件のコメント:

  1. 私は、水道施設設計指針(日本水道協会)などの段階揚水試験での限界揚水量は、以下にように論理的に幾つもおかしいと考えている。
    私のホームページや地下水学会の道後温泉での年次講演では他の提案を含めて述べていますが。なにか おかしいでしょうか?宮本重信

    井戸からの揚水量を増やすと,帯水層内での流れが層流から乱流になり,砂が移動して揚砂量が増大し井戸は壊れると言われている.この層流からの乱流への転換は揚水量-井戸水位低下量の対数グラフへのプロットで2つの直線の折れ線で求められるという.そして,この変化点の揚水量を限界揚水量とすることが広く行われている.
    ところで,井戸中心へと放射状に流れる井戸での流れを考えると図のように,井戸中心から一定の半径までは揚水に伴う水の流れが速く細砂は移動し排出される.しかし,それより遠くでは,流速は半径に反比例して遅くなるから,遠方にまで乱流域が広がり続けるとは考えられない.細砂が移動して無くなると空隙が増えて流速は遅くなって流量は幾分大きくなる.そのことを考慮しても,流速は半径に逆比例することには変わらないから,遠方まで乱流域が広がり続けて,持続的に細砂が移動排出することにはならない.
    既に,森一司・阿部栄一・飯塚康は「井戸の性能を評価する際の段階揚水試験によって得られるs-Q曲線は,多くの場合s=BQ+CQ2というJacobの経験式で近似可能であり,不連続的な勾配変化点は存在しない.両対数表示にしたJacobの経験式に基づくs-Q曲線には0.5126B/Cで求められる数学的な最大曲率点が存在し,この点を境にs-Q曲線の曲率が変化する.ただし,最大曲率点は,揚水量の限界を表すものとは言えない.」とし,このように揚水量に限界揚水量を設定しているのは日本だけだとしている. 更に,圧縮空気を井戸底に送り,その空気の浮上を用いて地下水と細砂を地上に上げて,細砂を取り除く井戸洗浄が井戸仕上げとして実施されている.井戸破壊に繋がる揚砂を井戸洗浄として先に実施し,その後に限界を超える揚水量-水位低下量を計測する.これは,井戸を壊すリスクは排除されていない.このように,幾つもの視点から現行限界揚水試験は明らかに論理的でない.
    なお,さく井工事施工指針(全国さく井協会)では限界揚水試験の際には,プランクトンネット(網目 100μm 150~160 メッシユ)で揚砂量も計測するとしている.ところが深井戸用水中モータポンプの揚砂量の適用範囲50mg/L以下になるようにとしている.そこでは揚砂量は井戸の破損でなくて,ポンプの保護基準でしかない.揚砂量を計測しても,これを井戸が壊れる予防には用いていない.折れ線で求められる限界揚水量は,揚水井戸であればその帯水層の上面,注水井戸ならば地表面までの揚水量や注水量に比べ値が小さい.従って,根拠無く揚水量を制限しているとなる.
    筆者らは,この井戸洗浄時に写真のように揚水量-砂量,粒径を計測した.布で漉した砂量が洗浄に伴って次第に減ることを確認し,揚砂量が増えれば揚水量を増やさないとした.このように直接揚水量-揚砂量を井戸洗浄時に求める方が,井戸水位の変化から揚砂量の変化を間接的に推定する方法より優れていて,計測自体も簡易である.
    スクリーンの目が充填ジャリや帯水層砂礫層の粒径に比べて大きくて帯水層の骨格となる砂礫や細砂が井戸内に流れ込むことがある.あるいは図のように帯水礫層より上部に細砂のみの層があれば,主に自重で細砂は下のスクリーンへと持続的に流れ出すことも起こりえる.こうしたリスクは,井戸洗浄時の揚水量-揚砂量と揚砂粒径のチェックで対応できる.山本荘毅も「過剰揚水とは一定量の揚水量に対して水位降下が急に大きくなるような揚水をいうのではなく,むしろ継続的に排砂のみられるような揚水と考えて良い」(揚水試験と井戸管理p.109)としている.なお,この現場での揚水量-揚砂量の試験(写真)では排水口を布で漉すと大量の泡が集まり,これを集めてCO2濃度を計測すると3000ppmを示した.遊離炭酸を含む地下水では圧縮空気での空気でだけでなく,遊離炭酸が二酸化炭素の気泡となったものであろう.この気泡観察調査やサンプル水の数週間の放置観察で水質への対応策を考えるデータとする.
    井戸洗浄時の揚水量-砂は回数を増やすと揚砂量が減っている.
    揚水試験での写真では布を用いて砂を採取し,その後ふるいで粒径毎の重量を求めた.

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  2. 私は、水道施設設計指針(日本水道協会)などの段階揚水試験での限界揚水量は、以下にように論理的に幾つもおかしいと考えている。
    私のホームページや地下水学会の道後温泉での年次講演では他の提案を含めて述べていますが。なにか おかしいでしょうか?宮本重信

    井戸からの揚水量を増やすと,帯水層内での流れが層流から乱流になり,砂が移動して揚砂量が増大し井戸は壊れると言われている.この層流からの乱流への転換は揚水量-井戸水位低下量の対数グラフへのプロットで2つの直線の折れ線で求められるという.そして,この変化点の揚水量を限界揚水量とすることが広く行われている.
    ところで,井戸中心へと放射状に流れる井戸での流れを考えると図のように,井戸中心から一定の半径までは揚水に伴う水の流れが速く細砂は移動し排出される.しかし,それより遠くでは,流速は半径に反比例して遅くなるから,遠方にまで乱流域が広がり続けるとは考えられない.細砂が移動して無くなると空隙が増えて流速は遅くなって流量は幾分大きくなる.そのことを考慮しても,流速は半径に逆比例することには変わらないから,遠方まで乱流域が広がり続けて,持続的に細砂が移動排出することにはならない.
    既に,森一司・阿部栄一・飯塚康は「井戸の性能を評価する際の段階揚水試験によって得られるs-Q曲線は,多くの場合s=BQ+CQ2というJacobの経験式で近似可能であり,不連続的な勾配変化点は存在しない.両対数表示にしたJacobの経験式に基づくs-Q曲線には0.5126B/Cで求められる数学的な最大曲率点が存在し,この点を境にs-Q曲線の曲率が変化する.ただし,最大曲率点は,揚水量の限界を表すものとは言えない.」とし,このように揚水量に限界揚水量を設定しているのは日本だけだとしている. 更に,圧縮空気を井戸底に送り,その空気の浮上を用いて地下水と細砂を地上に上げて,細砂を取り除く井戸洗浄が井戸仕上げとして実施されている.井戸破壊に繋がる揚砂を井戸洗浄として先に実施し,その後に限界を超える揚水量-水位低下量を計測する.これは,井戸を壊すリスクは排除されていない.このように,幾つもの視点から現行限界揚水試験は明らかに論理的でない.
    なお,さく井工事施工指針(全国さく井協会)では限界揚水試験の際には,プランクトンネット(網目 100μm 150~160 メッシユ)で揚砂量も計測するとしている.ところが深井戸用水中モータポンプの揚砂量の適用範囲50mg/L以下になるようにとしている.そこでは揚砂量は井戸の破損でなくて,ポンプの保護基準でしかない.揚砂量を計測しても,これを井戸が壊れる予防には用いていない.折れ線で求められる限界揚水量は,揚水井戸であればその帯水層の上面,注水井戸ならば地表面までの揚水量や注水量に比べ値が小さい.従って,根拠無く揚水量を制限しているとなる.
    筆者らは,この井戸洗浄時に写真のように揚水量-砂量,粒径を計測した.布で漉した砂量が洗浄に伴って次第に減ることを確認し,揚砂量が増えれば揚水量を増やさないとした.このように直接揚水量-揚砂量を井戸洗浄時に求める方が,井戸水位の変化から揚砂量の変化を間接的に推定する方法より優れていて,計測自体も簡易である.
    スクリーンの目が充填ジャリや帯水層砂礫層の粒径に比べて大きくて帯水層の骨格となる砂礫や細砂が井戸内に流れ込むことがある.あるいは図のように帯水礫層より上部に細砂のみの層があれば,主に自重で細砂は下のスクリーンへと持続的に流れ出すことも起こりえる.こうしたリスクは,井戸洗浄時の揚水量-揚砂量と揚砂粒径のチェックで対応できる.山本荘毅も「過剰揚水とは一定量の揚水量に対して水位降下が急に大きくなるような揚水をいうのではなく,むしろ継続的に排砂のみられるような揚水と考えて良い」(揚水試験と井戸管理p.109)としている.なお,この現場での揚水量-揚砂量の試験(写真)では排水口を布で漉すと大量の泡が集まり,これを集めてCO2濃度を計測すると3000ppmを示した.遊離炭酸を含む地下水では圧縮空気での空気でだけでなく,遊離炭酸が二酸化炭素の気泡となったものであろう.この気泡観察調査やサンプル水の数週間の放置観察で水質への対応策を考えるデータとする.
    井戸洗浄時の揚水量-砂は回数を増やすと揚砂量が減っている.
    揚水試験での写真では布を用いて砂を採取し,その後ふるいで粒径毎の重量を求めた.

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