2026年2月23日月曜日

文献:Landslide susceptibility zoning through physically-based limit equilibrium method modelling

Landslide susceptibility zoning through physically-based limit equilibrium method modelling - ScienceDirect

AI要約

背景
 地滑りは世界で最も普及している地形学的災害の一つであり、気候変動による豪雨の増加に伴い、その頻度が高まっています。被害軽減や都市計画のためには、特定の地域での発生可能性を示す地滑り感受性(LS)の評価とマッピングが不可欠です。従来の評価手法には、主観的な定性的手法と、統計的または物理学的な定量的手法があります。統計的手法は広域評価に適していますが物理的プロセスを直接考慮せず、物理モデルは詳細な地盤データが必要なため広域適用が困難という課題がありました。本研究は、これらを克服する新しい広域物理モデル手法を提案しています。

手法
本研究では、GeoPhyLS(Geospatial Physically-based Landslide Susceptibility)と呼ばれる手法を開発しました。この手法は以下の4つのコードブロックで構成されます。

1. Extractor(抽出器): DEMから排水路に基づいた Half-Basins (HB) を作成し、各HB内で斜面方位(モーダル値および±45度)に沿った2次元断面を自動生成します。これに地質図に基づく力学パラメータを割り当てます。

• ハーフ・ベイスン(HB)の活用: 地形を、尾根線(分水嶺)から排水路(流路)までの単位である「ハーフ・ベイスン」に分割します。これは地形的に意味のある単位でモデルの境界を定義するためです。計算効率を最適化するため、ユーザーはDEMの解像度を調整したり、HBのサイズを選択したりできます。

• 断面方向の決定: 各HBにおいて、地形の方位(アスペクト)の最頻値(モード値)と、そこから±45度変化させた計3つの方向に沿って断面線を引きます。これは、単一の方向だけでは「最も急な斜面」や「最も重大な崩壊方向」を見逃すリスクがあるため、包括的に斜面を調査するための工夫です。

• パラメータの統合: 断面上の各点には、地質図から抽出された**有効粘着力(c')、有効内部摩擦角(φ')、単位体積重量(γ)**などの力学パラメータが割り当てられます。最終的に、解析ソフトウェアCSSAPで読み込み可能な形式(.dat, .geo, .fld, .utm, .modファイル)として出力されます。

2. Analyser(分析器): SSAP2010ソフトウェアを用い、2次元極限平衡法(LEM)ランダムサーチアルゴリズムの使用で、滑り面の形状(円弧、平面、複合線)を事前に仮定せずに探索し、局所的な安全率(SF)を算出します。 

• SSAP2010の使用: 2次元LEM解析ソフトSSAP2010のコマンドライン版(CSSAP)を使用し、並列処理によって数百から数千の計算タスクを高速に処理します。

• ランダムサーチアルゴリズムの革新性: 本手法の最大の特徴は、滑り面の形状を事前に仮定しない点にあります。従来のモデルが円弧や平面を仮定するのに対し、このアルゴリズムは円弧、平面、さらには「複合線(mixed-line)」を含む任意の形状の滑り面を自動的に探索します。これにより、浅い崩壊から深い崩壊まで、多様なメカニズムをバイアスなしに評価できます。

3. Interpolator(補間器): 各断面の最小局所SF値をグリッドノードに抽出し、IDW法で領域全体に空間補間してSFマップと滑り面深さマップを生成します。

4. Classifier(分類器): SFを単なる絶対値ではなく「不安定指数」と見なし、観測された地滑りデータを用いたロジスティック回帰分析によって、SFを発生確率としてのLSへ変換・分類します。

結果
イタリア南部のボヴィーノを対象とした適用では、地盤物性と水文条件を組み合わせた複数のシナリオ(最悪・妥当・最良)を分析しました。

• 水文条件(Hydraulic settings):
 Saturated(飽和): 地下水位が地表面にあると仮定した「最悪」の条件。
Dry(乾燥): 地下水を考慮しない「最良」の条件。

• 地盤物性条件(Geomechanical parametrisation):
イタリア全土のデジタル地質図(Bucci et al. 2021, 2022)に基づき、対象地域を以下の4つのリソタイプ(岩相)に分類しました。
• 沖積堆積物 (Al)
• フリッシュ / 珪質砕屑性堆積岩 (Ssr)
• 固結砕屑岩 (Ccr)
• 未固結砕屑岩 (Ucr)

広域にわたる詳細な地盤データの不足を補うため、以下のソースからパラメータを取得しました。
• フリッシュ (Ssr): ボヴィーノ南部の斜面で行われた14本のボーリング調査、および深さ3〜20mから採取された不攪乱試料に対する23の室内試験(三軸圧縮試験、直接せん断試験)の結果に基づく学術文献から抽出されました。
• その他の地質単位: 既存の地盤工学データベース(GeoSTRU 2015; Monte et al. 2024a, b)からデータを収集しました。

詳細な層序情報が全域で得られないため、以下の3層構造をモデルとして仮定しました。
• 第1層(地表〜3m): 浅い層を代表させるため、下層よりも低い強度パラメータを割り当てました。
• 第2層(3m〜25m): 文献やデータベースから得られた値を直接割り当てました。
• 第3層(25m以深): 一律に基盤岩(Bedrock)と見なし、非常に高い強度値を設定しました。

地盤物性の自然なばらつきや不確実性に対応するため、単一の平均値ではなく、「最小値(Min)」「平均値(Avg)」「最大値(Max)」の範囲を定義し、以下の3つのシナリオを設定しました。
• 最悪(Worst): 強度パラメータ(c ′ ,ϕ′ )に最小値を適用。
• 妥当(Plausible): 平均値を適用。
• 最良(Best): 最大値を適用。

乾燥状態かつ強度が低い「最悪シナリオ」AUC(受信者動作特性曲線下面積)が0.82と最も高い識別能力を示しました。 

考察
本手法は、従来の無限長斜面モデルでは困難だった多様な滑りメカニズムの評価を広域で可能にしました。SFを確率的なLSに変換することで、シナリオ間の不確実性を考慮しつつ、一貫した感受性パターンを特定できています。既存の統計的手法(LAND-SE)との比較でも同等以上の性能が確認されており、地盤データが限られる広域評価において物理モデルを活用する強力なツールとなります。今後は過去の地滑り履歴が及ぼす影響の統合などが課題です。


土質に応じたパラメータを3ケース設定し、ロジスティック回帰で安全率をLSに変換。 安定エリア: 「0」、 不安定エリア(地滑り地点):「1」としてAUCを計算、といった流れです。物理モデルベースなので、説明性が高いのが特徴です。これにSFやパラメータの取り得る確率が入れば完璧でしょうか。

文献:Physical and Data-Driven Landslide Susceptibility Assessment Frameworks

Physically Based and Data-Driven Models for Landslide Susceptibility Assessment: Principles, Applications, and Challenges

AI要約

背景
地滑りは、インフラ破壊や甚大な人的・経済的損失、二次災害を引き起こす深刻な地質学的現象です。地滑り感受性評価(LSA)は、特定の地域での地滑り発生確率を予測することを目的としており、土地利用計画や防災管理、資源配分において重要な役割を果たします。近年のリモートセンシングやGIS技術の発展に伴い、物理的原理に基づくモデルと統計・機械学習を用いたデータ駆動型モデルの双方が進化していますが、それぞれの利点や限界、相互補完の可能性を整理することが、将来の防災戦略において不可欠となっています。

手法
本論文では、2005年から2024年までの国際的な査読済み論文1,078件を抽出・分析し、以下の2つの主要なアプローチを詳述しています。

1. 物理学的モデル(Physically Based Models) 力学、水理学、材料科学の基本原理に基づき、重力、土壌の粘着力、摩擦、間隙水圧の変化を数式で表現します。

原理: モール・クーロンの破壊基準(せん断強度の算出)やダルシーの法則(地下水浸透の制御)等の数式を用いて、安全率(FS)を算出します。

分類: 静的安定性モデル(無限斜面モデル等)、時間依存の変位を扱う動的変位予測モデル、降雨浸透を考慮する水・土砂結合モデル、気候変動の影響を評価する気候駆動型モデルに分けられます。

ワークフロー: 地形データ(DEM等)や土壌パラメータ(粘着力、内部摩擦角等)を入力し、TRIGRSやSINMAP等のモデルを用いて解析、最終的に感受性マップを作成・検証します。

2. データ駆動型モデル(Data-Driven Models) 過去の地滑り履歴データから機械学習や統計アルゴリズムを用いてパターンを学習します。

アルゴリズム: ロジスティック回帰(LR)等の伝統的統計手法から、サポートベクターマシン(SVM)、ランダムフォレスト(RF)、人工ニューラルネットワーク(ANN)等の機械学習、さらにCNNやTransformerを用いた深層学習まで多岐にわたります。

ワークフロー: 地形、地質、気象、土地利用等の要因を「特徴量」として抽出、データ正規化や主成分分析(PCA)を経てモデルを構築し、ROC曲線やAUC(曲線下面積)等の指標で予測精度を評価します。

結果
地滑り感受性研究は、2010年頃から徐々に増加し、2016年以降はデータ駆動型モデルを中心に爆発的な成長を遂げています。地理的には中国、インド、ベトナム等のアジア諸国の貢献が顕著です。物理学的モデルではTRIGRSやSINMAPが主要な枠組みとして定着している一方、データ駆動型モデルではSVMが最も頻繁に使用され、近年は深層学習(CNN等)による空間特徴抽出が予測精度を大幅に向上させています。

考察
物理学的モデルは、発生メカニズムの解釈性が高いものの、詳細な地質パラメータの取得が困難であり、計算コストも高いという課題があります。一方でデータ駆動型モデルは、非線形で複雑なデータの処理に優れ高い予測精度を誇りますが、「ブラックボックス」化しやすく物理的解釈に欠ける点が弱点です。 今後の展望として、本論文は以下の5点を提唱しています。

1. ハイブリッドモデル: 物理の解釈性と機械学習の予測力を統合したフレームワークの構築。
2. 多源・多尺度データ融合: InSARやLiDAR等、最新のリモートセンシングデータの統合。
3. パラメータ最適化: ベイズ校正等を用いた不確実性の定量的評価。
4. 地域転移性の向上: 特定の地域で学習したモデルを他地域でも適用可能にする技術の確立。
5. 解釈性の向上: SHAP値などの説明可能AI(XAI)の導入による意思決定の透明化。

機械学習による LSM 作成 は、既に出尽くしたように感じます。機械学習の適用だけなら学生でもできるため、ツールを使った報告以上の成果が求められています。
https://phreeqc.blogspot.com/2024/12/das.html

物理モデルベースのレビューは他にもあり、課題や展望として、気象変動への対応やIOT利用なども挙げられていました。



2026年2月22日日曜日

文献:Trend Classification of InSAR Displacement Time Series Using SAE–CNN

Trend Classification of InSAR Displacement Time Series Using SAE–CNN

AI要約

背景
マルチテンポラルInSAR(MTInSAR)技術は、広範囲の地盤変動を測定する上で貴重なツールですが、数百万のコヒーレントターゲット(CT)から得られる変位時系列を解釈し、危険な信号を特定することは困難です。既存の統計的手法は、複雑な変形を記述するのが難しく、InSAR時系列に不可避な位相ノイズの影響を受けやすいという限界がありました。また、先行の機械学習アプローチでは、教師なし学習の結果が初期パラメータや専門知識に大きく依存し、教師あり学習では特徴量エンジニアリングや手動介入の課題がありました。

手法
本研究では、InSAR時系列の分類を目的として、最適化されたStacked Autoencoder(SAE)とConvolutional Neural Network(CNN)を組み合わせた深層学習手法(SAE-CNN)を提案しています。このハイブリッドモデルは、SAEがInSAR時系列からノイズの影響を低減し、微妙な変形パターンに関連する深層特徴を抽出する能力と、CNNが時系列内の様々なスケールで変位トレンドを捉える能力を組み合わせています。SAEは、softmax分類器を備えたバックプロパゲーションニューラルネットワーク(BPNN)によって最適化されています。

分類対象の変形トレンドは、「安定(stable)」、「線形(linear)」、「加速(accelerating)」、「減速(deceleration)」、および「位相アンラップ誤差(PUE)」の5つのカテゴリに定義されました。これらのカテゴリに属する5000のサンプル(各カテゴリ1000サンプル)が、手動の視覚的解釈と相互確認によってラベリングされ、70%がモデルの教師あり学習に、30%が検証に使用されました。データは、Sklearnライブラリを用いて前処理(データ準備、クリーニング、正規化、学習/テスト分割など)され、異常な変形信号に対するモデルの感度を高めるために、線形、加速、減速のカテゴリには重み付けがされました。モデルの性能評価には、精度(accuracy)、適合率(precision)、再現率(recall)、F1スコア、および混同行列が用いられました。

本手法は、2017年1月から2022年9月までの171枚のSentinel-1画像から抽出された561,839のCTに対し、中国昆明市を対象地域として適用されました。昆明市は、急速な都市化、軟弱な地盤、および顕著な地盤変形のため、研究対象として選ばれています。

結果
提案されたSAE-CNNモデルは、ラベル付けされたサンプルに対して95.1%の精度を達成しました。比較実験では、本モデルが従来のCNN、Random Forest(RF)、Support Vector Machine Classification(SVC)といった他の分類モデルよりも、精度、適合率、再現率、F1スコアのすべての指標で優れていることが示されました。特に、従来のCNNと比較して、精度で6.4%、F1値で6.1%の改善が見られました。混同行列の分析により、本モデルは、加速パターンと減速パターンを混同しがちな他のモデルと比較して、加速パターンの認識において7.7%の精度向上を示し、異なる分類カテゴリを区別する能力が優れていることが実証されました。

SAEの有効性は、t-SNE可視化によっても確認され、SAEがInSAR時系列データの分離可能性を著しく向上させ、ノイズを低減し、複雑な分類シナリオを容易に分類可能なものに変えることが示されました。

昆明市への適用結果では、CTの約79.28%が安定していると分類され、残りのうち線形が10.70%、減速が5.30%、加速が4.72%、PUEが3.60%でした。特に、S2地域では危険な加速変形が住宅地で観測され、S3地域では減速変形が主であることが示されました。本手法は、InSAR時系列単独では見逃されがちな地域(例:P1クラスター)における減速変形を特定するなど、広域InSAR結果の解釈を補完する能力があることが示されました。また、不規則な建物や建設活動がある地域(P4, P5, P6)で複雑な変形パターンを識別しました。

計算時間については、提案手法の訓練およびテストに要した時間は32.18秒であり、CNN(3.36秒)やRF(1.69秒)よりは長いものの、SVC(413.46秒)よりは大幅に高速であり、合理的な計算速度で競争力のある精度を提供することが示されました。

考察
本研究のSAE-CNNモデルは、人間の介入なしに、大規模な地盤変動の特徴を区別し、非線形変形信号を検出できるという利点があります。これにより、変形パターンの理解が深まり、MTInSAR成果品の定性的な解釈が向上します。

ただし、本研究で設定された5つのカテゴリは、実際の変形現象を簡略化したものであり、すべての複雑な変形を網羅しているわけではないため、誤分類(誤警報)につながる可能性が指摘されています。この問題は、より高品質な参照サンプルを用いたモデル学習や、教師なし学習手法の検討によって軽減できる可能性がありますが、後者にはアルゴリズムとパラメータ選択、結果の解釈という課題が伴います。処理時間のさらなる改善は、非常に大規模なデータセットへの適用を考慮する上で必要です。本分類結果は、変形プロセスによる悪影響を軽減するための意思決定や予防的措置において重要な情報源となります。


精度や誤差の評価を除き、ひとまず変動マップの作成まで自動化できるようになります。

文献:Is higher resolution always better?

NHESS - Is higher resolution always better? A comparison of open-access DEMs for optimized slope unit delineation and regional landslide prediction

AI要約

背景 (Background): デジタル標高モデル(DEM)は、地形形態の再現や土砂災害誘発要因の導出、斜面単位(SU)の区画において、土砂災害研究に不可欠です。DEMの品質は土砂災害予測能力に大きく影響するため、適切なDEMの選択が重要ですが、しばしば解像度やアクセス性のみで選ばれてきました。

手法 (Methods): 本研究は、イタリアのマルケ地域で、土砂災害感受性評価のための最適なDEMとSUパラメータを特定することを目的としました。 フェーズ1では、ALOS、COP、FABDEM(グローバルDEM)とTINITALY(国内DEM)を、高解像度航空ライダー(参照DEM)と比較しました。比較基準は、標高差、残差DEM、粗さ指数、SU区画能力などです。 フェーズ2では、フェーズ1で最良とされたTINITALY30mを使用し、SUの最小面積(a)と円形分散(c)のパラメータを調整してSU区画を生成。SUの内部均一性・外部異質性(F)、SU内の土砂災害領域割合(A)、SUあたりの土砂災害密度(D)を統合したSメトリックという新しい最適化手法を提案しました。土砂災害感受性モデルには一般化加法モデル(GAM)が適用され、地形派生変数などが説明変数として使用されました。

結果 (Results): フェーズ1において、TINITALY30mがすべての評価指標で最も優れた性能を示しました。FABDEMはCOPと比較して斜面などの地形派生指標の表現において改善が見られず、TINITALY10mよりもTINITALY30mが優れており、高解像度が必ずしも良い結果を保証するわけではないことが示唆されました。 フェーズ2では、Sメトリックによりa=300x10^3 m^2、c=0.1の組み合わせが最適なSU区画と特定されました。土砂災害感受性モデルの評価指標(AUC、F1スコア、Kappa)はSメトリックの性能とは直接一致せず、訓練データセットのバランスに影響されることが判明しました。

考察 (Discussion): 本研究は、土砂災害研究においてTINITALY30mがマルケ地域でSU定義に最適であることを示しました。DEMは解像度だけでなく、データ品質や目的への適合性が重要であり、高解像度でもアーティファクトがあれば性能は低下します。提案されたSメトリックは、土砂災害の空間的特徴を捉えたSU最適化に有効ですが、感受性モデルの評価指標解釈には訓練データバランスの考慮が不可欠であると結論付けられています。

国内ではLPが公開されていますが、国外ではそうではないのでしょう。DEMの精度を比較し、目的(Landslide Susceptibility 評価)に適したユニット分割が重要とされています。機械学習の観点では、いくつかの解像度を試し良い結果を出すものを選定しますが、これはサイエンスではありません。斜面単位を目的に応じて作成・選定する、というのが求められる手順でしょう。

SU最適化に用いられた指標は以下のとおりです。

AI要約

1. F(アスペクトセグメンテーション指標 / Aspect Segmentation Metric)

 概念: 地形を、類似したアスペクト(斜面方位)特性を共有するピクセルをグループ化することによって分割するという概念に基づいています。

目的: SUの内部均質性(homogeneity)と外部異質性(heterogeneity)を評価するために使用されます。

 計算: 内部均質性を示す局所アスペクト分散 (V) と、隣接するSUの外部異質性を示す自己相関 (I) に基づいて算出されます。

 解釈: F値が高いほど、地形のセグメンテーション(分割)が優れていることを示します。これは、SUの内部は均質であり、隣接するSUとの間には明確な異質性があることを意味します。

2. A(地すべり拡張係数 / Landslide Extension Coefficient)

 概念: SU内で発生した地すべりの総面積のうち、そのSU内に収まっている地すべり面積の割合を合計したものです。

 目的: SUが地すべり領域全体をどれだけ適切に含んでいるかを評価します。

 計算: A = (i番目のSU内の累積地すべり面積の合計) / (i番目のSU内で発生した全地すべりイベントの総面積の合計)。

 解釈: A値が高いほど、SUが地すべり領域全体をよりよく包含していることを示します。理想的には、地すべりの領域がSUの外部に漏れ出ることなく、SU内に完全に収まっている状態が最適とされます。SUのサイズが大きいほど、地すべり全体を包含する可能性が高まる傾向があります。

3. D(地すべり密度係数 / Landslide Density Coefficient)

 概念: 各SUにおける平均地すべり数の逆数です。

 目的: SUの寸法の過大評価を避けるために導入されました。理想的には、SUは単一の地すべりに限定されるべきです。

 計算: 1/D = (i番目のSUで発生した地すべり数の合計) / (不安定なSUの数)。したがって、D値はD = (不安定なSUの数) / (i番目のSUで発生した地すべり数の合計)となります。

解釈: D値が高いほど、SUがより小さい領域に分割され、各SUに含まれる地すべり数が少ないことを意味します。これにより、SUの寸法が過大評価されることを防ぎ、地すべり事象をより正確に表現できます。

 

Sは、上記で説明したF、A、Dの3つの指標を統合した最終指標です。

計算: Sは、F、A、Dの正規化された値の積として定義されます。

 S(a,c) = [(F(a,c)-Fmin(a,c))/(Fmax(a,c)-Fmin(a,c))]
     * [(A(a,c)-Amin(a,c))/(Amax(a,c)-Amin(a,c))]
     * [(D(a,c)-Dmin(a,c))/(Dmax(a,c)-Dmin(a,c))]

 ここで、aはSUの最小表面積、cは地形の最小円形分散を表すパラメータです。

SUが最適と判断されるロジック: S指標を最大化するSUの最小表面積(a)と円形分散(c)の組み合わせが、研究地域におけるSU区画の最適なものと判断されます。 これは、F、A、Dの各指標がそれぞれSUの異なる「良さ」の側面(幾何学的分割の質、地すべり包含の効率、SUサイズの適切性)を評価しているため、S指標を最大化するということは、これらのすべての側面をバランス良く考慮し、総合的に最も優れたSU区画を見つけることを意味します。

簡単に言えば、SUが地すべりモデリングにおいて効果的であるためには、

1. 内部が均質で、隣接するSUとは明確に異なる(F値が高い)

2. 発生した地すべりをできるだけ完全に包含している(A値が高い)

3. 地すべりの寸法を過大評価せず、適切なサイズである(D値が高い) 

という3つの特性を同時に満たす必要があります。S指標は、これらの目標を正規化された積として統合することで、最適なSU区画を特定するための包括的な評価基準を提供します。


2026年2月11日水曜日

河川砂防技術基準+生成AI

昨年から「NotebookLMがすごい!」と耳にしていましたが、別のLLMを利用することが多く利用する動機がありませんでした。
「この資料の中の情報に限る」というケースもありましたが 、情報をGoogle 側に渡すわけにもいかず、結局今まで触っていませんでした。

そのような中、国交省さんが河川砂防技術基準の生成AI用のデータセットを公開されていることに気づきました。

 活用しやすい河川砂防技術基準に向けての取り組み - 国土交通省水管理・国土保全局

生成AI活用のための学習用データセットの公開 (試行版)

河川砂防技術基準の参照に生成AIを活用するため、学習用のデータセット一式(以下の表参照)を作成しました。
参考に、無償で提供されているサービス(Google NotebookLM※1)の活用事例を紹介します。
これは画期的!?(ますます文字を読まなくなりそうです。)
早速使ってみました。

NotebookLMのチャット機能はOK。概要を把握するには十分です。
スライド機能はイマイチ。絵を生成できることは素直に感心しますが、専門的な絵は生成が難しそうでした。もう少し、時間が必要でしょうか。


今後、国交省さんは生成AIの利用を推進されるのでしょうか?他の基準も電子化が進んでいますが、生成AI利用での配信へ展開されるのかも知れません。頭の片隅に置いておきましょう。


2026年2月8日日曜日

文献:LSM uncertainty analysis

PyLandslide: A Python tool for landslide susceptibility mapping and uncertainty analysis - ScienceDirect

AI要約

背景
地すべりリスク評価において、専門家の主観的判断による重み付けが一般的だが、バイアスや不確実性が問題。
機械学習を用いた統計的アプローチが発展しているが、重みの不確実性の定量化が不十分。
既存ツール(LSM Tool Pack、LSAT PM等)は存在するが、不確実性分析機能が限定的。

手法
1.ジニ不純度に基づく特徴量重要度(重み)の計算
1)ランダムフォレスト内の各決定木において、ある特徴量で分岐する際のジニ不純度の減少量を計算
2)全ての木について、各特徴量による不純度減少量を合計
3)各特徴量の重要度 = その特徴量による不純度減少の合計 / 全特徴量による不純度減少の総和

2.不確実性分析の手法
20,000回の反復計算を実施
各反復で地すべり・非地すべり地点の80%をランダムサンプリング
accuracy 0.75以上のモデルのみの特徴量重要度(feature importance)を記録
重要度の範囲を集計し、限られたインベントリデータに起因する不確実性を定量化

3.LSI(Landslide Susceptibility Index)の算出
ある地点が地すべりに対してどれだけ脆弱であるかを数値化した指標
PyLandslideでは、複数の要因を重み付けして統合することで、空間的な地すべり発生リスクを評価

LSI = Σ(Wi × Si)

LSI: 地すべり感受性指数
Wi: 要因iの重み(weight)
Si: 要因iのスコア層(score layer)
n: 考慮する要因の総数

スコア層(Si)の算出方法
連続データ型要因(降水量、傾斜、道路距離など):
分位数による分類: データを11個の分位数(quantile)に分類
地すべり件数の計算: 各クラス内で発生した過去の地すべり件数を集計

降水量・傾斜: そのクラス以下で発生した地すべりの累積パーセンテージ
道路距離: そのクラス以上で発生した地すべりの累積パーセンテージ
降水量が17~80mmのクラス: 80mm以下で発生した地すべりの累積割合がスコア
道路距離が143~286mのクラス: 143m以上の距離で発生した地すべりの割合がスコア

カテゴリカルデータ型要因(土地被覆、岩相など):
各カテゴリ内で発生した地すべり件数を計算
各カテゴリのスコア = そのカテゴリ内で発生した地すべりのパーセンテージ

標準化
全ての要因について、スコアを0~100の範囲に線形正規化:
0: その要因クラスの最低寄与度
100: その要因クラスの最高寄与度

LSI分類基準
Very low: 0 ≤ LSI ≤ 20
Low: 20 < LSI ≤ 40
Moderate: 40 < LSI ≤ 60
High: 60 < LSI ≤ 80
Extremely high: 80 < LSI

感度分析の実施回数
歴史的降水条件について200回のランダムな重みの抽出を実施
9つの気候予測について各200回ずつ実施
内訳:
歴史的降水条件(1981-2023年):200回
将来予測(2041-2050年):9つの気候シナリオ × 各200回 = 1,800回
合計:200 + 1,800 = 2,000回

9つの気候シナリオ:
3つの気候モデル(ACCESS-ESM1-5、MRI-ESM2-0、UKESM1-0-LL)
3つの共有社会経済経路(SSP126、SSP245、SSP585)
3モデル × 3シナリオ = 9つの組み合わせ
この結果、LSIも範囲として表現される

結果
イタリアにおける6要因の重要度(重み)
道路からの距離: 0.43〜0.52(中央値0.47)
・最も影響が強い
・過去の地すべりの85%が道路から143m以内で発生

傾斜: 0.16〜0.23(中央値0.20)
・2番目に重要
・過去の地すべりの70%が傾斜9%以上の地域で発生

土地被覆: 0.10〜0.13(中央値0.12)
地質: 0.07〜0.09(中央値0.08)
降水量: 0.05〜0.07(中央値0.06)
TWI(地形湿潤指数): 0.05〜0.08(中央値0.06)

モデル精度
訓練データでの全体精度: 0.80〜0.82
テストデータでの全体精度: 0.75〜0.80
過学習は認められない

lSI評価
歴史的期間(1981-2023):
「極めて高い」: 7.8〜9.5%
「高い」: 23.8〜26.8%

将来予測(2041-2050):
「極めて高い」: 5.3〜7.6%(減少傾向)
「高い」: 21.5〜28.3%

イタリア北西部と南部で大幅に低下
北東部で増加

考察
人為的要因(道路)が最大の影響
道路建設に伴う斜面切土や人間活動が斜面安定性を低下

不確実性の重要性
重みの不確実性範囲を考慮することで、より堅牢な意思決定が可能
インフラ投資計画において、重みの不確実性を考慮した堅牢な地すべりリスク評価が可能

研究の限界
気候変動の影響評価
降水量変化のみを考慮、温度・山火事・植生変化は未考慮

入力データの精度
ITALICAデータベースの位置精度は最大5.6kmの誤差
より高精度なデータが望ましい

閾値の設定
accuracy0.75の閾値は本研究で設定したが、絶対的な基準ではない
ユーザーのニーズに応じて調整可能

国外では、LSM作成において機械学習を用いるアプローチは既に一般化していると言えますが、そこに不確実性評価が入っています。といっても、重要度の示し得る範囲を利用しているだけですから、新たなツールは不要です。
この文献のLSIの定義が正解かどうかはわかりませんが、少なくとも確率を導入する方針については同意です。

2026年2月6日金曜日

AIの利用法

【優勝🥇】防衛省サイバーコンテストをAIで攻略した話 #Security - Qiita

このような時代なのですね。AIで攻撃、AIで防衛。

勝敗はAIで解けない超高難度の問題で決まります。

うーん。考えさせられます。

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20260211追記

そういえば、「半分は生成AIにつくらせたでしょう」と思わせる海外の方からもらった査読結果がありました。それなら生成AIに回答の素案を作成させましょう、と考えたことがあります。単純なのか複雑なのかわからない時代で、戸惑います。