2011年10月30日日曜日

N値からせん断剛性

設計の方から問い合わせ。

「N値から初期せん断剛性を推定するのと、PS検層や表面波探査から推定するのとでは値が異なるのか?」

液状化の話ですね。値は異なるでしょう。が、Vsを経由するなら有意な差ではないと思います。

ただし、N値からVsを経由しないで推定するのであれば、オーダーレベルで異なる可能性があります。推定式がどのひずみレベルの初期せん断剛性を推定しようとしているのか知らなければなりません。


順を追って聞いていくと、ALIDのG1/G0でN値から求めた場合とVsから求めた場合で低減率が異なる点に疑問を持たれたようです。
http://www.geolabo-chubu.com/upload/pdf_letter/1238246447.pdf

ALIDというコードは知りませんでした。液状化後の変形量の予測に使うために開発されたようで、発想がユニークかつシンプルだと感じました。
図3をみると、確かに低減率が異なっていますが、これは別の理由もありそうです。
早速、論文を注文しましょう。

2011年10月27日木曜日

薬液注入 その2

薬注業者さんにコアを見ていただきました。

詳細は書けませんが、初めてのことですのでいろいろ吸収すべきことがあります。
工法による違い、効果、最近のトレンド、管理方法、改良目標値、土質による必要性の有無、現場条件による機材の制約など。現場でコアを見ながら話をすると、それだけで経験になります。ありがたいことです。

設計を飛ばしていますが、結論としての感覚を身につけるのも重要です。これが私に足りないところですので。

2011年10月25日火曜日

仕事の精神論

今日は朝から建設現場での仕事でした。

建設現場ではいろんな人が本音でぶつかることが多いので、ケンカもおこります。当然、引けない時もありますし、引いて相手を立てるべき時もあります。

今日も朝礼でいきなり怒り始めた方がいらっしゃいました。規律や安全に対する熱意は伝わりましたが、かなり年上の方もいらっしゃったのに、言い方が良くなかったようです。長々と怒っていらっしゃったのですが、次第に別の方がその言い方に対し怒り始め、最後は所長が一喝。

個人的には、後で「言い方が悪かった」と年配の方に謝罪すれば良いだけだと思います。言ってることの半分くらいは正論でしたから(途中から怒りに支配されてました)。

礼儀を欠いては伝わりません。謝罪がなければ、周囲がその方を心から信頼できず、契約書以上のモノを作ることはできないでしょう。

本音でぶつかり合うこと自体は良いことです。本気で相手を説得し、同じ思いで一つの目標に向かうというのは好きですね。残念ながら、今の仕事にはない面白さです。

どのような職種でも、仕事の面白さの半分はこの辺にあるような気がします。

2011年10月23日日曜日

薬液注入

明日から薬液注入の事前調査に携わります。

薬注は初めてです。諸先輩方からいろいろ教えていただきました。ありがたいことです。

個人的にも、本屋で地盤工学会「薬液注入工法の理論・設計・施工」を購入し、概要を叩き込みました。基本的には薬注が適用できるかどうかの透水係数、土質、N値が重要なようです。それらの値を頭に入れながら結果を整理すれば良いですね。
逸水箇所、地下水位、水頭、礫打ちなども調査中に分かりますので、細かく記録しておく必要があるのでしょう。現場透水試験は揚水法より注水法の方が良いのでしょうか?そこまでこだわらなくても大丈夫ですかね。

グラウトは何度も見てきましたが、薬注はありません。地表設備は同じようなものなのでしょう。圧力は小さい代わりに、化学的な結合を使うといったところでしょうか。

いろいろ教わる事がありそうです。

2011年10月22日土曜日

PHREEQCの2011年版セミナー資料

PHREEQC の2011年版セミナー資料が USGS の HP で公開されています。

以前は2005版でしたから、6年ぶりの更新でしょうか?
内容もやや厚くなっています。

いくつか印象に残った点がありました。

1点目は WEBMOD の存在です。以前は無かったように思います。(気にしていなかっただけかもしれません。)PHASTは飽和3次元浸透流と反応の連成ですが、WEBMOD は地表流と地下水、反応の連成のようです。コードは公開されていないようで詳細は分かりませんでしたが、USGS のことですから今後公開される可能性はありますね。広域の地下水汚染などでは活躍できるのではないでしょうか?

2点目は次期バージョンのアナウンス。PHAST もオリジナルで GUI となるようです。これはどうなのか分かりませんが、transport や chemistry で MPI による並列化を実装する話題も掲載されていました。PHREEQC も for Win と同じように図化機能が付くようです。公開されたらこれらの詳細が分かるでしょう。楽しみですね。

3点目は少し変わって以下の言葉。

It takes a few days to learn PHREEQC
It takes a few years to learn geochemistry
There is no substitute for study and experience

The purpose of computing is insight, not numbers.
               --R.W. Hamming (1962)
The purpose of computing is insight, not pictures.
               --L.N. Trefethen (1998)

私、PHREEQC を使えるようになるまで3カ月かかりましたが。geochemistry を理解するには、あと何年かかるのでしょう?

一般的な数値解析にも共通しますが、理論を理解し、経験と洞察力を得て本当に使えるようになるには、コツコツ勉強し手を動かし続けるしか道はありません。王道は無いのです。

レーザースキャナーデータをトレース?

レーザースキャナーで測定した構造物データを、2次元にしたい方がいらっしゃり、お手伝いしていました。

最初に聞いた時は驚きましたね。なぜ、3次元データ2次元データに変換するのか?
まあ、2次元で設計するのであれば仕方ないのですが。

さて、測定した会社から頂いたdwgデータは220万点のポイントデータとなっており、動きが重たすぎます。そこで、座標TXTデータを送付していただき、点群データとして読み直しました。これで動きはサクサク。次のステップへ移れます。

さあ、2次元にと思いましたが、ここで詰まりました。2次元データにするには、Express Tools の Flatten Objects を使えば可能ですが、点群データは扱えません。仕方ないので、重たい point データに戻り使用しました。
ところが、半日たっても変換が終わりません。あきらめました。

測量部隊にも try してもらいましたが、結局ダメ。
CGのプロに聞いても、「みんなレーザーで測定して図面ができましたなどと簡単に言うけど、構造物の場合は一点一点、写真を見ながら結んでいるんだよね。」とのこと。確かに、そこに時間がかかります!努力しています!という話は聞いたことがありません。高度なイメージを保ちたいのでしょうか?

最終的には、点群データを目視でトレースし、構造物の外形を2次元にすることが一番早い手法ということで落ち着きました。高度なようで、なんとも低級、アナログな手法です。まあ、そもそも220万点の2次元データを32bitアプリで読めるとは思えませんので、ちょうどいいのかもしれません。


その後、Labs のプレリリース版を調べてみますと、点群データから shape を抽出するプラグインが出ていました。AutoCAD 2012 のみ対応だそうです。今後、LPデータが普及してくると、こういった機能が必須になってくるのでしょうね。

2011年10月19日水曜日

地すべり監視のためのSAR干渉画像判読マニュアル

「地すべり監視のためのSAR干渉画像判読マニュアル」が国土地理院から出ています。

http://gisstar.gsi.go.jp/sar-jisuberi/manual-top.htm
http://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/sar/index.html

合成開口レーダーは、約10年以上前に小池先生が地形解析(確かSTA)に使用されているのを見て、トライしようと考えたことがありました。ちょうど、LANDSATから脱却し始めた頃ですね。日本の場合、地表を植生が覆うため、LANDSAT画像の演算処理は適用しにくいことがあり、他の画像を模索していた時代でしょう。
いずれにしても、衛星画像は広域の解析が対象になるため、すぐに利用しなくなりました。通常業務で広域の構造物を扱うことはほとんどありませんのでしたし、当時、私がベクトル解析を深く理解していなかっこともあります。
ところが、国土地理院では広域から地すべり変動を抽出する目的で、SAR干渉画像を利用しています。やはり、広域を相手にせざるを得ないニーズもあるのでしょうね。

これを見て思いついたのですが、地すべりであれば、地上レーザースキャナかLPデータを1~2年毎に取得し、差分をとれば3次元の動きが分かりますね。
・・・・・いえ、何年も動きを追うくらいなら、対策してしまいますよね。逆に、何年も観測だけで良いなら、動きは少ないでしょうし。干渉SAR画像による地すべり監視とは、どのような地すべりを相手にするのか分からなくなってきました。

河川では、広域の監理(治水安全度評価)を目的として、LPデータが使用されています。
http://www.nilim.go.jp/lab/rcg/newhp/seika.files/lp/
ちょうど昨日の発表ですが、今回の震災前後のデータで比較した研究例もありますね。Civil3Dが使用されています。
http://www.mlit.go.jp/chosahokoku/giken/program/kadai/shitei.html
http://www.mlit.go.jp/chosahokoku/giken/program/kadai/pdf/shitei/shi2-01.pdf

LPで差分をとるというのも、もう新しい発想ではないのでしょう。

2011年10月18日火曜日

ボーリング調査と法令 その2

来週から建設業としてのボーリング作業に従事します。
(下請けですからあまり関係ないのですが、監理技術者講習を受けていて良かった。)

地質調査業で育った諸先輩方は、建設業のルールを御存じでない方が多いようです。
法令則を理解せずに地質調査をしているため、安全管理が大事!と言いながら、安全教育を実施しておらず、安全について何が分からないのか分からない状態の方が大半です。いままでこれできたのだから、これくらいが普通で、地質調査ではこれ以上はやり過ぎだろうという思考もあるようです。

一般的に、新規入場の際には色々な書類を提出しなければなりません。地質調査では「これ以上はやり過ぎ」の部類に判断されがちなところです。でも、良く理解していれば、やって当たり前なこと、必要なことが多くあります。
持込み機械の承認は、地質調査で行われていないと思います。場内という感覚自体がないと思います。こういった状況で、たまに安全パトが入ると、移動式クレーンの年次点検が行われていなかったり、ボーリングマシンに張ってある管理者が退社された方のままだったりします。

さて、その諸先輩の一人から、「来週身が空くなら、担当してほしい」と言われた現場が建設業。その書類作成や現場の下見は、身の空いていない今週中に実施すべきということでしょう。
ま、いつものことですが。

2011年10月16日日曜日

ロリップ vs アッセンダー

アッセンダ―が2個足りないので、週末、買いに行っておりました。

工事用のロリップを使ったことがないので、資材調達がてら、どの程度の価格なのか探してみました。しかし、どこにもありません。「建築業者のみ、一般の方お断り」のかなり大きな資材館(凄い所があるもんです)でも売っていませんでした。職人の店にも行きましたが、あいにく休み。

で、結局は山の店に行き、在庫のあった PETZL Basic を買いました。環付きも新品!ピカピカです。


テスト後、納めるため引っかけているだけですが、早くスリングを結んで使いたいですね。

1個しかなかったので、代用としてCrollも購入。これもピカピカ。なぜか嬉しい。
今後、本来の出番があるかもしれません。


ギアの魅力は恐ろしいもので、色々かごに入れていると、合計3万4千円のお買いものになってしまいました。


今日、たまった資料を見ていると、「斜面防災技術, Vol38, No.1」にロリップの改良による安全対策の話が掲載されておりました。図をみると、握ることで爪が親綱から離れる構造です。これ、危ないですね。事故の例を見ても、全て「とっさに握って墜落」です。構造自体が問題ですよね。握らなくても、なにか道具が当たったら、緩みそうです。

やはり、アッセンダ―にしておいて良かったです。

テレワークでの過重労働

先程、NHKの「会社の星」という番組で、「スーパーモバイル仕事術」といった内容を、偶然見かけました。
http://www.nhk.or.jp/kaisha/archives/111015/index.html

内容は、「テレワーク」についてです。私も実践していますが、その働き方を「テレワーク」と呼ぶのは知りませんでした。総務省も震災以降は節電の観点から推奨しているようです。リーフレットでは、以下のように定義されています。
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/telework/index.htm
http://www.soumu.go.jp/main_content/000119363.pdf
テレワークとは、情報通信技術(ICT)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方、のことです ※テレワーク:「tele=離れたところで」と「work=働く」をあわせた造語

スマートフォンでテザリングし、出先からタブレットやPCで社内にアクセスし仕事をする形態も含まれるようです。

技術的にはそれほど新しい内容ではないですが、1点だけ、グサッと刺さったものがありました。

「過重労働」です。テレワークでは過重労働に陥りやすいとのこと。
番組では、仕事の効率が上がるので、空いた時間に東京マラソンのための練習をしたり、妻のために晩御飯を作る夫が紹介されていました。
私の場合は、空いた時間に次の仕事。そしてプライベートとの時間的な境が消えてゆきます。過重労働だったんだと、ここで気付きました。鈍い。
http://phreeqc.blogspot.com/2011/02/blog-post_12.html

番組によると、過重労働を避けるためには会社の頑張りも必要だそうです。具体的には社員に与える仕事量や残業時間の管理でしょうか?
建設関連業において、過重労働のない会社は少数派でしょう。そのような業界ですから、テレワークが進めば過重労働が増える方向になると思います。人によるのでしょうか?

他の業界はどうなんでしょうね。

2011年10月15日土曜日

鉄粉利用に関する実験的研究

ここ1週間ほど、バタバタして勉強しておりませんでした。

文献の回覧が溜まってしまい、今日はそれらを持ち帰り、夕方から読んでいました。その中に、先週行われていた第9回環境地盤工学シンポジウムの論文集がありました。

まだ、反応と浸透を連成させたものや、現場ベースの解析はありませんが、それでもいくつか興味深い発表がありました。コツコツやっている反応ベースの話も、こういった場ですれば、聴講者からの反応があるのかもしれません。(応用地質学会では全く手ごたえがありませんでしたので。)

「硝酸汚染の軽減に向けた、鉄粉利用に関する実験的研究」では、0価の鉄の代用として、カイロの鉄粉を利用し、遅延効果をカラム試験で確認しています。こういった研究好きですね。結論として、負荷を低減できるとありましたが、これは正解なのか分かりません。遅延が生じているので結局は薄まりながら流れているといった実験結果です。実施工ではPRBの寿命が来る前に入れ替えといった発想でしょうか?

この論文を読んでいて気がついたのですが、吸着層の設計者は「漏水した場合に、短期的に高濃度でなく、ピークを抑え基準以下にし、長時間地下水へ流す」ことを目的として設計しているのでしょうか?さすがに入れ替えは困難でしょうから。
いや、違いますね。そうであれば、初めから薄めて流せばよいわけですから。どういった発想か、まだ理解できていないですね。
http://phreeqc.blogspot.com/2011/08/as.html

海外の参考書レベルに追い付くには、あと数年はかかりそうです。

2011年10月13日木曜日

ボーリング調査と法令

今日は監理技術者講習でした。
事業仕訳でなくなる予定の講習です。5年に1回ですので、今回が最後でしょう。

ボーリング調査を行っておりますと、色々な法令則が関わってきます。
建設業法では建設などに直接関わる派遣がOUTですから、施工の下請けボーリングでの派遣はダメでしょう。さく井も建設業に該当するのでOUT。しかし、地質調査でのボーリングは建設業には含まれませんのでOKでしょう。ただし、通常派遣の方は玉掛けをお持ちでないので、安衛則でOUTになります。

ボーリング作業は特別教育が必要ですが、経験がある方は免除という、あいまいな規則もあります。安全教育は必要ですが、安全大会は法令則に書かれていない。でも、逆を実施している方がいらっしゃいます。


このような基本的な事項まで講習会では話がありません。今回は過去5年間で変更になった法令則を総括されていました。

これ、私にとっては貴重な講習会でした。なくなるのは残念ですね。

2011年10月11日火曜日

地表流と地下水

先週開かれていた全社技術発表会で、浸水シミュの報告をされている方がいらっしゃいました。

自作GISに流線連結アルゴリズムを搭載し、さらにMIKE11,21などを載せて表層の流れをシミュしていました。これ、使えると思います。

MIKE11はVisualMODFLOWのオプションになっていますが、全地表面を計算するわけではありません。その点自作の方はメッシュを全て流路として組み立て計算させています。浸透と湧出は計算させていないと思いますが、組み込める可能性は十分ありますよね。

こういった社内発表会で他の部署がどういった技術を持っているのか知るということも、定期的に必要ですね。お互いが欲しい技術を独自に発展させて交換・交流できるというのは、ありがたいことです。

今後、地下水との連成について話し合いましょう。

2011年10月9日日曜日

安定計算式を選ぶ責任

ところで、昨日記載したの講習会の教科書、技報堂出版「土の力学」に、安定計算解説個所への書き込みもしていました。

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円形


・簡便分割法・・・「スライス間の合力を0とする。」日本のみ。めちゃくちゃ。不経済。
・Bishop・・・円弧では最低限これを使え。
・Spencer
・その他

非円形

・Janbu・・・「合力の作用点を仮定。」
・Morgenstern・Price・・・「合力の傾きを仮定。」世界で最も使われている。
・Spencer・・・円形でもOK
・Sarma・・・オーストラリア・ニュージーランドで使われている。分割線が斜めでOK
・その他

・意味を分からずに使う時代は終わり。エンジニアは自分の考えを。
・円弧か非円弧か直線かは技術者が考えるべきこと。
「建設省の基準でやった」という言いわけは裁判で通らない。技術者の主義主張がなければならない。

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重いですね。講習会でメモったのは、11年前だと思います。
相変わらず、簡便法を使い続けていますね。どうすれば変えることができるのでしょうか?

ある報告では、排水効果を見るときに、Janbuよりも簡便法が危険とありますが、実際、そんなことはないと思います。
指針にあるFs=1.2は経験上培われた簡便法の目標安全率で、ヤンブーの目標安全率ではありません(この辺りの話は、今回の講習会でも講師より話がありました)。上記の場合、Janbu で簡便法の1.2を目指す場合には、簡便法より密な手当てが発生するといった解釈も可能で、cを同値とした場合の Janbu の目標安全率は簡便法より低くて良いということも言えます。もちろん、問題によりますが。

指針にないから実務上簡便法を使わざるをえないのが現状と解釈しています。FEMならどうか、3次元ならどうか、整理して出来るところから指針を変えてしまえばいいんですけど。研究者や権威のある方が講習会でなく、委員会で一言いえば、簡単に変わると思いますが。

変わらないからそれに甘えているというのも技術者としていけないですよね。ダメな場合は主義主張を持ってお客様に説明しないといけないのです。技術士の面接で出てきても良さそうな話です。いま問われたら、試験用の解答をするでしょうね。

ダメですね。考え方がサラリーマンになってしまっている。もっと追い込まないといけないですね。

2011年10月8日土曜日

FEMでの安全率

「ある収束値での修正NRの繰り返しが○○回以上で発散」と書きました。
http://phreeqc.blogspot.com/2011/10/terzaghi.html

SSR法では発散=破壊という解釈ですので、収束値と繰り返し回数でも安全率が変化するようです。そのあたりの話を先日の講習会で講師の方が強調されていました。その影響が考慮された設計マニュアルがJR東日本にあります(非売品)。8年前のマニュアルです。私の知る限り、FEMでの全体安全率の考え方が示されているのはこれくらいですね。地すべりに流用する場合、完璧とは言えませんが、参考になるレベルです。

地すべり学会もこれくらい整理すれば良いのに、と思いますが、まあ、気長に待ちましょう。

2011年10月7日金曜日

支持力係数

反復回数1000回でも、結果は全く変わりませんでした。

c=10kN/m2で固定した場合の結果は、以下の通り。


値はOKです。やはり、粘りがないですね。施工時の観測では困るでしょうね。弾性域は200kN/m2程度でしょうか?

これを含めた検証結果より、改変コードは正しく動作していると言えるでしょう。

ところで、支持力係数は道示ではグラフからの読み取りになっており、式が示されていません。古い土研資料が根拠のようですが、持っていないですね。
http://jsce.jp/pro/node/1212
今回は、建築基礎構造設計指針の Nc, Nq 式を使いました。

支持力係数の算定式はいくつかあります。式やグラフは、いろんな参考書に載っています。
技報堂出版「土の力学」は10年以上前の講習会で購入した教科書ですが、そこに係数のグラフが載っています。当時、そこに書き込みをしていました。
「Terzaghi は理論的に少し違う。Caquot・Kerisel が正解。」
極限支持力算出式で、根入れ分の土の荷重は見るが、強度を見ない所が理論的でない(安全側)といったことは覚えています。しかし、支持力係数の「理論的に少し違う」は覚えていないですね。何だったのでしょう?

理工図書「土質力学-全訂新版-」でも式が以下のように書かれています。
「上述の解析は本来、有効応力法であるクーロンの破壊基準に基づき、またプラントルの支持力破壊の手法を踏襲しているので、支持力の解析も有効応力法であるが、第4章で述べたような全応力法による見かけのせん断強さを用いても差し支えないことは、土圧や斜面の安定の場合と同様である。それらの結果に差があるのは現在ではやむを得ない。」
これは1991年の4版なので、ちょうど20年前ですね。20年経ってもあまり変わっていないです。

Terzaghiの式による比較

Ga3d改変コードの検証の続きです。

Terzaghiの式では、Nc, Nq, Nγ の3つの支持力係数を使用します。このうち、理論解が求められるのは前2つですので、γ=0として(Nγの影響を取り除いて)比較しました。

ピーク強度 c=10kN/m2、φ=30°kN/m2、残留強度 c=1kN/m2、φ=25°kN/m2 です。
結果は以下の通り。


値は合っていますが、いきなり破壊するんですね。粘土の方が降伏してからも、文字通り粘りが出るんですね。
ただこれは「ある収束値での修正NRの繰り返しが○○回以上で発散」という人的な設定値によるものも大きいと思います。今は500回なので、1000回ならもう少し伸びるでしょうか?あるいはcを落とさずにφだけ落としたらどうなるでしょう?破壊時におかしな値になっているのも気になります。
もう少し、やってみましょう。

2011年10月5日水曜日

プラントル解との比較

Ga3d にひずみ軟化を取り入れた改変コードの検証を行っています。

最初はFLACの例題と同じモデルで検証しようと思いましたが、モデル作成が難しいので止めました。薄々感じてはいるのですが、この改変コード、プレ処理を工夫しないと実務では使えませんよね。ま、完成してから考えましょう。

簡単なモデルで検証!ということで、支持力問題にて検証しました。ex11a.dat での比較です。
まずは c =100kN/m2、φ=0の粘性土をモデルに与え、残留強度として70kN/m2に入れ替えた場合を計算してみました。実現象としてあるかどうかは別として、あくまで粘着力 c 入れ替えの動作確認が目的です。
メッシュ幅は0.5mに変えました。これは、メッシュが細かいほどプラントル解に近づくという理由からです。本にも書かれています。
100mm(1mm×100回)の強制変位を与え、得られた接点力を合計し、極限支持力をチェックしました。結果は以下の通り。

せん断ひずみの形は変化ないですね。


当然、変形量も変わりません。



しかし、極限支持力は大きく変わりました。青はピーク強度のみ、赤は残留強度考慮。


プラントル解より少し大きめに出ています。まだメッシュが大きいのでしょう。まあでも、良いところへ行っていると思います。降伏点は変わりませんが(これが必要)、極限支持力ではひずみ軟化モデルのほうが大幅に低下し、それぞれのプラントル解へ近づいています。成功ですね。

次はφのチェックをしましょう。


2011年10月2日日曜日

コンパイラーによる計算結果の差

Ga3dにひずみ軟化を取り入れ、コンパイルしてみました。

最初は、Win7 64bit + Intel Visual Fortran Composer XE 2011 で行いました。
ところが、計算が進みません。おかしい。

originalのソースをコンパイルしても同様。バンド幅の計算で誤った答えを出して止まります。

色々試しましたが、うまくいかないのでWinXP 32bit + Intel VF9 でコンパイルしてみました。
結果、配布されている original の exe (コンパイラーは Compaq)と答えは一致しましたが、outファイルの0に近い値で10^-13程度の誤差が生じます。これは仕様上、仕方ないところでしょう。

結局、このソースでは以下のような動作確認結果となりました。

 OS     exe   結果
32bit  32bit   ◎(答えは一致)
64bit  32bit   ×
64bit  64bit   ○(答えが32bitと微妙に違う箇所あり。影響のない程度)

コンパイラーによって、結果に影響のない程度の差が出てくるのは仕方のないことかもしれませんが、同じコンパイラーなのに64bitと32bitで差が出てくるのはいやらしいですね。まあ、PCを使用した数値計算の限界や収束設定値を考えて、誤差が影響のない程度であれば問題ないわけですが。

最適化オプションによっても微妙に答えが変わってくると思いますので、こういったコードの配布時にはプロジェクトのプロパティ―(セッティング)等の情報も参考程度に公開していただきたいものです。

孔内水平載荷試験結果の解釈と利用

孔内水平載荷試験について引っかかっていたことがありました。

処女載荷の勾配は必ず繰り返し載荷より緩くなります。
ひずみレベルの差として解釈していましたが、前者より同じレベルの区間を取りだして見ても勾配に差があることに違和感がありました。また、繰り返し載荷と同じ勾配が処女載荷に一度も出てこないことも引っかかっていました。
ひょっとするとこれは弾塑性状態にあるのではないか?早々に降伏し、ひずみ硬化の状態にあるのではないか?などと考えたのが数ヶ月前。ちょうど連続体力学や構成則を追っかけていた頃です。

先日の講習会で、引っかかっていた点を講師の方に質問してみました。
回答は、弾塑性状態でOK、押し込んでいるので繰り返し載荷時は勾配が立つとのことでした。ひずみレベルよりは解釈しやすい御回答です。それが実際に起きている現象なのかどうかはまだ分かりません。岩盤の場合はどうなのか?他の問題や扱うスケールとの関連性は?など、まだ完全に理解できていませんので、今後ゆっくり考えて行きましょう。

また、どちらで導いた変形係数を使うかは、扱う問題によって(答えを想定し)使い分けることが重要とのことです。その通りだと思います。基本的に、土砂の孔内水平載荷試験結果の解釈については割り切っています。
http://phreeqc.blogspot.com/2011/01/blog-post_08.html
弾塑性状態から弾性の変形係数を求めているのなら、更なる割り切りが必要になります。割り切った上で「適度な」答えを導けるようになるべきなのかもしれません。

いずれにしても、FEMで変形量を求める場合には、c、φ、ψ、E、νなど、全て工学的(経験上の)判断が重要になるということです。純粋に、精密な試験を行って得られた値を入力すれば、答えの精度が高まるといったものではないのです。
こうなると、経験豊富なベテラン技術者の方が、数値解析に向いているような気がします。
あ、だから、ベテラン技術者はシンプルなツールで答えを出そうとするのか、答えがある程度見えているから。答えが見えない、予測のつかない問題は、シンプルであろうが複雑なツールであろうが、難しいということでしょう。答えを出すのはFEMではなく、技術者ということです。