2016年9月25日日曜日

地震予測と統計学

録画していたNHKスペシャルを見ました。

MEGA CRISIS 巨大危機 ~脅威と闘う者たち~
第2集 地震予測に挑む ~次はいつ どこで起きるのか~
https://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20160911

あーあ、と思ってしまったのが、統計による予測。
マグニチュード4以上だったと思いますが、1か月予測で6/9=67%の正答率。現段階ではかなり良いと思います。
原因が分からなくても答えは出せる、と言うのが統計の強みです。研究の最終目標は高精度の予測、人的災害の防止でしょうから、(極端ですが)精度の担保された結果を出すことが可能であれば良いのです。地震予報として毎日公表しておけば、研究者でなく、一般の方々が評価してくれます。「結果」を出せなくても、それに通ずると信じているプロセスや「原因」を重視するのは地震屋さんだけでしょう。
地震屋さんはどういう気持ちでこの研究を見ているのでしょうか?おそらく、私が水理地質で味わったように、内心複雑だと思います。ま、両方できればいうことありませんので、否定はされないと思いますが。

ただ、未曽有の大地震については統計処理できるほどの数がないため、予測できないようです。そうすると、 原因の解明>>>予測といった流れに時間的余裕が生まれます。

データの多い中~小地震については統計を、対応できない大地震については原因の把握をといった並行作業で、地震予測の発展が望まれます。





2016年9月23日金曜日

シルバーウイーク

法面掘削の現場で、施主さんから「業者さんが掘り過ぎたので見て欲しい」と依頼がありました。

見に行くと、確かに掘り過ぎ。目で落ちるようで、落としていったら掘り過ぎたようです。境界ギリギリでした。能力不足により問題が発生し、これがまた仕事を生むパターンです。ヒトの世です。複雑ですね。

対応方針を決め、帰りに施主さんのところに寄ってみるとお休みでした。そういえばシルバーウイークですから、休暇を取られているのでしょう。「危険」や「急ぎ」の感覚は人によって異なります。

ついでに別のお客様も尋ねましたが、こちらもお休み。


能力不足で新たに仕事が生まれてしまうのは複雑ですが、そのせいで休めなくなるのも複雑な心境です。ま、今回は経験値を積ませてもらったと考えましょう。


2016年9月22日木曜日

支保判定と人工知能

切羽評価に deep learning を適用したニュースが引っかかりました。

日本システムウエア さんの deep learning を用いた画像判定サービス を使い、安藤ハザマさんが特許を出願したとのこと(営利目的であれば困りますね)。
http://www.nsw.co.jp/topics/news_detail.html?eid=427&year=2016
http://www.nsw.co.jp/topics/20160920_deeplearning.pdf
http://www.ad-hzm.co.jp/info/2016/pre/20160920.html

切羽写真から支保判定でなく、弾性波速度を推定させるようです。私は、支保判定を吐かせることしか考えていませんでした。が、弾性波の方が利点があるのでしょうか?
https://phreeqc.blogspot.fr/2016/02/blog-post_14.html
↑コレについては2月に思い付いた後、切羽写真を集めてみました。が、数が足りず保留にしていました。このニュースを見て、「あ、これはゼネコンさんのモノだ」と、納得したところです。

ただ、このシステム(といっても、そこらに出ているプログラムで判定可能ですが)をもっと積極的に利用すべきは施主さん(国など)の方でしょう。施工結果を学習した AI に頼りすぎると、過大な支保になる恐れがあります。危険側の支保は施工結果に含まれていませんが、過大な支保は含まれていますので。
国などの施主側が過去のデータを整理した後、ある切羽写真に対しどの程度の支保だと危険になるか(変位が大きい、崩落した、縫い返したなど)の情報を吐かせるシステムを構築する方が重要です。過大なデータを吐く AI に対抗するには、厳しいデータを吐く AI を所有する必要があります。
「AIが言っているから」に対抗するには、それなりの AI と、その異同を判断できる感覚(経験)が必要になります。


さあ、情報弱者になる建設コンサルタント、データ共有等による反撃は始まるでしょうか?それとも、まだ攻撃されていることに気づいていないでしょうか?(おそらく、後者でしょうね)
地下水や維持管理にも AI の導入が検討されつつあるようです。どういった分野で優位に立てるか、なども見通す目が必要になるでしょう。

基準通りの功罪

自然由来重金属対応マニュアルにある、スクリーニングの必要性の話を、先輩から伺いました。
(前の話:https://phreeqc.blogspot.jp/2016/09/xrf_99.html

先輩の考えは以下の通り。

・スクリーニングは個人的に提案していない
・スクリーニングで OK でも、溶出量で OUT になる場合がある
・溶出量と全含有量に相関があるとは言えない

相関が認められないことは、書き物にありましたね。 それを根拠に、スクリーニングを飛ばすことは、実務上、合理的な判断になります。


一方、先の土研さんの図書では、以下のように書かれいています。
スクリーニング基準値は、これまで行われた多くの建設工事における発生土利用実態から、自然由来重金属等による人の健康影響が明らかになった事例がないことを背景に、我が国における土・岩に含まれている自然由来重金属等の通常の値(平均値)以下の含有量の発生土については、問題なく利用可能であろうとの考え方に基づいて設定されたものである。
社会問題になるかどうかを、全含有量試験値のみで、経験的に判断しているわけです。例えば、φがどのくらいの土なら斜面がすべらないか?を安定計算なしで経験的に判断しているようなものです。
では、それと相関がないと言われる溶出量試験、または土壌含有量を優先する根拠は何でしょうか?(少し知恵のついた新入社員に聞くと「基準だから」と答えそうな質問です。)

個人的には、どちらも似たようなものだと思っています(どちらかと言うと、根拠の分かりやすいスクリーニングの方が説得に有利だと感じています)。どちらも、含有形態の把握や熱力学計算が丸々抜けていますので。このあたり、5,6年前から何も変わっていません。
https://phreeqc.blogspot.jp/2011/11/as.html
https://phreeqc.blogspot.jp/2010/08/blog-post_16.html

「基準通り」は合理的ですが、正解を得られるとは限りません。技術者として合理性を保ちつつ、正解を求める根本的な視点を忘れてはならないでしょう。

2016年9月20日火曜日

土器の起源と花崗岩類

三辻利一「新しい土器の考古学」に、土器と花崗岩類の化学的特徴の話題が載っていました。

新しいと言っても、80年代の話。K, Ca, Rb, Sr に着目し、土器とその出土地域に分布する花崗岩類の傾向を比較した内容です。岩石学としても、その頃の話題でしょうか?
分析は蛍光X線です。同時多元素測定が可能なこと、前処理が簡単なので大量に測定可能なことが大きな理由でしょう。

地域の花崗岩と花崗閃緑岩を4元素で特徴づけています。岩石学ではないので詳細は書かれていませんが、K:Ksp、Ca:斜長石(An)でしょう。液相濃集元素であるRb, Srに着目しているのも、当時の岩石学の影響を受けているのでしょうね。Srは斜長石、Rb は Ksp か Bt でしょうか?
斜長石の Ca が抜けて粘土鉱物が生成されるため、土器では極端にCaが減少した組成を示すと考えると、まあ、示されたような結果になるのかなあといったところです。

16年前の和歌山毒物カレー事件に XRF の利用がありました。亜ヒ酸の異同識別に用いられたようです(驚いたことに、いまだ分析結果について討論が続いているようです)。こういった起源の考察や利用法もあるのでしょう。

設計者からは濁りの起源の分析の相談を受けています。目で見える情報に加え、目で見えない情報を機器分析で示すことは起源を示すにあたって効果的だと思います。
調査計画を立案する際、どのような情報を、何で、どの程度得られるのか?程度は最低限知らないと、適切な機器を選択するのは難しいでしょう。
 「知らない」と投げ出すことなく、機器の発展について行かないといけません。

2016年9月19日月曜日

重金属等の起源

建設工事における自然由来重金属等含有岩石・土壌への対応マニュアル(暫定版) 資料集 (平成22年3月)の 「3. 岩石・土壌に含まれる重金属等の起源を識別する試験方法」にて、XRF の利用が紹介されています。
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/region/recycle/pdf/recyclehou/manual/sizenyuraimanyu_zantei_siryou.pdf
  • 例えば鉛がカリ長石に含まれる場合には (図-5) 、カリウムと鉛の全含 有量の間に正の相関が見られる 2)。
  • ひ素と鉄の全含有量の間に正の相関がある場合には (図-6) 、ひ素は鉄鉱物として存在する可能性が高い 3)。
  • 蛍光X線分析法は土壌中に含まれる大半の元素を分析することができる ため、ひ素やカドミウム、鉛などの汚染が自然由来のものか、人為汚染に起因するかを判断するための重要な情報 を提供できる。
2) 独立行政法人産業技術総合研究所地質調査総合センター (2003):土壌・地質汚染評価基本図「5 万分の 1 姉崎」.
 3) 独立行政法人産業技術総合研究所地質調査総合センター (2006):土壌・地質汚染評価基本図「5 万分の 1 仙台地域」.
イマイチです。
ま、こういった方法で起源の可能性を示すことのできる場合もありますよ、程度の紹介だと思います。

日本分析化学会「X線分析の進歩」では、イメージング処理ができるよう機能強化された蛍光X線分析装置での分析例が掲載されています。1つの試料・分析装置で元素濃度とそのマッピング結果が得られると、起源についても説得力が出てきます。こういった説明をしないといけないのでしょう。ここまで説明できれば、足元が固まり、この後に予測計算を実施しても信頼性が高まります。実験と計算結果の整合を見てもよいでしょう。が、マニュアルは上記の通り。現段階ではそこまで目指されていないのでしょう。

2016年9月18日日曜日

スクリーニングと XRF

「建設工事における自然由来重金属等含有 岩石・土壌への対応マニュアル」では、スクリーニングでのXRF 分析適用上の留意点について、以下の通り示されています。
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/region/recycle/pdf/recyclehou/manual/sizenyuraimanyu_zantei_honbun.pdf

p46-47
  •  蛍光X線分析法は、固体のまま試料の元素分析が可能な方法であり、簡易、迅速に分析が可能であることが特色である。
  • しかしながら、定量下限値または検出限界がスクリーニング基準値未満の元素は限られていることに留意する必要がある。
    卓上型のエネルギー分散型蛍光X線分析装置は、現場でのスクリーニング試験に適している。
  • スクリーニング基準値未満の精度で定量できるのは、総クロム、ひ素、鉛である。
  • セレン、カドミウム、水銀が検出された場合には、スクリーニング基準値を超過しているとみなす。
  • 波長分散型蛍光X線分析装置はふっ素、ほう素の分析も可能な場合がある。
  • スクリーニング基準値未満の精度で定量できるのは、総クロム、ひ素、鉛である。
  • 波長分散型の装置を用いた場合、ふっ素も定量できる。
  • セレン、カドミウム、水銀が検出された場合には、スクリーニング基準値を超過しているとみなす。
  • 波長分散型蛍光X線分析装置でほう素が検出された場合にも、スクリーニング基準値を超過しているとみなす。
スクリーニングでの基準値はこちら。p49
クラーク数については Sc 等の例もありますので、バックグラウンド値を上手に使わないといけないのでしょう。

  • 日本国内では、さまざまな構成地質 によって、自然由来重金属等の全含有量もさまざまな値を示している。
  • スクリーニング基準値 を超え、全含有量バックグラウンド値以下の岩石・土壌については、一体区域内に搬出することができる。
  • ただし、搬出する場合には、対象となる岩石・土壌の拡散および酸化を防止する観点から、 覆土等の表面被覆を行うとともに、モニタリングを実施する。

資料集5 蛍光X線分析装置の定量下限値および検出限界
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/region/recycle/pdf/recyclehou/manual/sizenyuraimanyu_zantei_siryou.pdf
  •  表-1 は、日本国内で蛍光 X 線分析装置を販売する 5 社に対し、定量下限値および検出限界に関する情報を提供していただき、集約したものである。
  • 本表の結果は同一の試料に基づく分析結果ではなく、測定時間などの条件も統一されていない。
  • また、本 マニュアルに沿った測定方法による結果ではないため、あくまで参考値として取り扱うものである。


上記の様な背景から、土研さんの「建設工事で発生する自然由来重金属等含有土対応ハンドブック」2015 p32では、スクリーニング試験を取りやめています。

その相違は、土木学会でも整理されています。が、「だから、どうしろ」とは書かれていません。
 http://committees.jsce.or.jp/sekou09/system/files/


土対法に沿った試験は高価でないため、時間があるときはスクリーニングを飛ばしても良いと思います。一方、施工時の管理など、判定に迫られる頻度が多く、かつ時間もない場合には、スクリーニングを効果的に利用するなど判断が必要になるでしょう。それは施工規模と対策を含めたトータルコスト、バックグラウンド値、事前評価の結果などに委ねられると思います。
「だから、どうしろ」と書かれていないのは、「技術者が判断してくださいね」ということでしょう。

XRF の活用


XRF の活用例の一つに、土壌の分析があります。

建設工事における自然由来重金属等含有 岩石・土壌への対応マニュアル
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/region/recycle/pdf/recyclehou/manual/sizenyuraimanyu_zantei_honbun.pdf


多分に漏れず、汚染土などのスクリーニングに XRF を利用したいと考え、ソフト内でアプリケーション(テンプレート)を作成し、定量してみました。
今回はセーフ。ただし、露頭試料であったため、溶出している可能性が考えられます。ま、本番はコアですのであくまでテスト結果になりますが。
 
水溶液も測れます。テンプレも入っています。
以下の様な利用例もありますね。

蛍光 X 線分析装置の効果的な活用について
http://www.gesui.metro.tokyo.jp/gijyutou/gn22/nenpou2010/5-2-8.pdf

XRF、使う人次第で活用の幅は大きく広がりそうです。

2016年9月16日金曜日

ICDD と ICSD

会社の XRD が新しくなりました。

MiniFlex 600、リガクさんの分析器です。先日よりそれを触っていたのですが、コンパクトかつ便利になりましたね。
機能面は大きく変わっていないのですが、usability が向上しています。 電源投入後、前回までの使用頻度を選択するだけで、それに応じた電流電圧値と時間を選んで立ち上げてくれるのはありがたいです。ヒューマンエラーに対しフールプルーフでの対応も進んでいます。
当然、制御は Windows からですので、操作に至るまでの余計な知識は必要ありません。(PC-98は、倉庫にて眠りにつきました)。

今日、一通りの測定が終わり、分析ソフト PDXL で定性に入ったのですが、ココで違和感。自動検索で表示される鉱物名が何か雑。
残ったピークから手動で検索しようと思いましたが、3強線から検索できない仕様でした。しかも、「magnetite」で検索できても、「magne」など省略キーワードで検索できません。
お手上げでしたのでメーカーに問い合わせることに。

話を進めていると、使用しているデータベースの違いで、省略キーワードでの検索可否のあることがわかりました。今回、購入担当者が選択していたのが「ICSD」。価格が安いので選択されたのでしょうが、こちらは省略したキーワードでの検索に対応していませんでいした。メーカは「ICDD」を使用されていましたが、こちらは検索可能でした。データベースの違いというよりはソフトの設計ミスで、容易に修正できるような気がしたのですが、ま、仕方ありません。


今まで、研究職はデータベースファイルを「PDF」と呼んでおり、私は(さらに古い)「ASTM」に慣れていたためか、「ICDD」を知りませんでした。よく見ると、PDF の CD に ICDD と書いてあります。ICDD(International Centre for Diffraction Data) が出している PDF(Powder Diffraction File) データベースを使用していたというのが正解のようです(調べましたが、ICDD を知らないのはモグリのレベルのようですね)。しかも、PDF-2には ICSD を元に作成されたデータも含まれているとのこと。鉱物検索程度であれば、ICSD を新たに購入する必要がなかったのです。「無知は罪」がブーメランで帰ってきました。

 所有していたPDF2.dat を変換し PDXL に取り込んだところ、短いキーワードでも検索できるようになりました。また、自動検索でも、しっくりくるの鉱物名が出てくるようになりました(ま、慣れの問題なのでしょうが)。これでひとまず環境は整いました。

さ、次はリートベルトです。自然界の鉱物でうまくいくでしょうか?

2016年9月14日水曜日

XRF の補正

先日より、XRF に手をかけ始めました。

XRF はこれまで経験がなく、十分な知識 & ノウハウを有していません。何かしら数字は出てくるのですが、その不確かさの程度も理解できていません。周りの方もあまり興味がないようですので、まずはメーカーの方に問い合わせたり、図書を読んだりすることに。

XRD とは異なり、XRF で定量するためには分析線の選択や、補正の話が出てきます。
分析線の選択は、ピークの被る箇所を避けて選択する、といったことが基本の様です。これは ICP などで似たような経験をしているため、特に違和感はありませんし、既にメーカーの方がPC内で設定されていました。

?と思ったのが、バランス補正と薄膜補正。これは、今までの機器分析で 経験していません。最初「Oでバランス」ということを言われていたのが理解できていませんでした。
このあたりの話を理解するのに、以下の様な資料が今の私にはよさそうです。産総研 NMIJ(計量標準総合センター)の資料です(懐かしい)。

XRFにおけるFP法の補正について
https://www.nmij.jp/~collab/bb_kai/NEN-KAI/h22/genkou/12-suzuki.pdf
XRFにおけるFP法の留意点
https://www.nmij.jp/~collab/bb_kai/NEN-KAI/h23/9%20suzuki.pdf 

薄膜は、本当に薄膜を測るときだけかと思っていたのですが、違いましたね。 試料の状態と分析対象をきちんと理解していないと、結果の精度も落ちてしまいます(当たり前ですが)。

ま、これからです。少しづつ、基礎知識を身に付けていきましょう。


***********************************
20160918追記
まずは試料調整から。
市川ほか(2015)蛍光X線分析の試料調整-基本と実例- ,X線分析の進歩46, pp75-95

2016年9月9日金曜日

切土法面の崩壊

施工中の法面が小崩壊を起こしたと連絡が入り、現地へ。

その現場、落石調査を私が実施しており、その後、設計者が落石対策に整形(切土)を追加し、施工されていた箇所でした。施工前は道路際に中硬岩の直壁が連続しており、整形すると聞いた時も「スライスカットなら問題ない」と感じていた現場でした。

ところが、地山背面に小断層を含む弱線(軟岩)が切土面と平行に走っており、そこを背面として剥がれ落ちたようでした。降雨や施工法の影響もあると思いますが、うーん、私にも油断があったように思います。

最近、大抵の案件はそこそこできるようになったなあ、と感じていたのですが、一気に現実に引き戻されました。
今、携わっている案件、(勝っていませんが)兜の緒を締めてかかりましょう。

2016年9月8日木曜日

等価透水係数

設計者より、複数の土層を平均した透水係数について質問がありました。

話を聞いてみると、どうも鉛直流れと水平流れを区別せず、土層全体の等価透水係数を算出されているようでした。

簡易な水理公式で湧水量などを求めたい場合、井戸周辺から集水するような流れは水平、止水矢板を用いた掘削で底盤から湧水する場合などは鉛直で代表させれば良いと思います。
各土層の透水係数と層厚、水頭差を利用すれば、簡単な四則演算で答えが出せます。土質力学の授業でも教えていらっしゃるのでしょうか?ネットでは以下の様な資料が引っかかりました。

モデル図
http://ftn.jp/tec8_8.7.pdf

式の展開 (個人的には各水頭差を用いた展開の方が良いと思います)
http://geotech.civil.yamaguchi-u.ac.jp/dorikih/kaito/vol6.pdf
http://www.research.kobe-u.ac.jp/eng-geotechlab/files/doriki_1/09_%E9%80%8F%E6%B0%B4(2)(%E9%80%8F%E6%B0%B4%E4%BF%82%E6%95%B0)_20160531.pdf

これらについて書いてある図書はあまり見ませんが、以下の図書にはシミュレーションを前提として等価な透水係数の計算式が書かれています。最後の付録の箇所だったと思います。

地盤工学会「 地下水流動保全のための環境影響評価と対策―調査・設計・施工から管理まで (地盤工学・実務シリーズ 19)」


鉛直・水平のみの流れという現象は、実際にはレアだと思われます。が、求めたい精度と手間を考えると、等価透水係数で代表させる価値は十分にあると思われます。
ま、それ以前に、各土層の鉛直・水平透水係数を原位置で精度良く求める必要性にも留意しないといけませんが。


2016年9月4日日曜日

DECALTO で沈下計算 その2

圧密沈下の計算に DECALTO を使用しています。
http://www.fujitsu.com/jp/group/fip/solutions/industry-solutions/construction-industry-solution/plan/decalto/

現在はVer.16。
久しぶりに使用する機会がありました。

相変わらずなのが入力の方法。
改善されているかな?と思って試してみましたが、そのままでした。
CADで地層を作って読み込ませるのですが、地層線だけではダメ。地層をクルッとポリラインで囲まないと層を認識してくれません。作り方がおかしいと「ねじれてます」とか「くぼんでます」とか教えてくれるのですが、どこの部分がおかしいのかを教えてくれません。MS-DOS の頃の syntax error を彷彿させます。ただし、Civil3D の DXF は問題なく読めるようになっていました。

出力もそれほど改善されていませんでした。
地層節点と呼ぶのですが、節点における結果(応力、変位)は書き出せません。任意位置での沈下量や応力もダメ。あくまで各層の⊿P、沈下量とその合計が、水平方向の指定距離にて出力されるのみです。その指定位置も最大50箇所、結果の一覧表示は(20箇所以上指定しても)20箇所までの制限があります。 FEMの感覚から一歩戻る必要があります。

ただし、一通りの計算は網羅しており、機能的には十分すぎるぐらいです。 サポートの回答も早いと思います。
インターフェースさえ改善してもらえれば、言うことなしです。次に使う際には改善されていることに期待しましょう。


2016年9月3日土曜日

崩壊と粒子法

今年も台風が複数上陸しています。

これまでは東日本ばかりに上陸し、土砂災害、水害、多々発生しています。ニュースでも多くの映像が流されています。

その中で目を引いたのが、小規模な土砂崩壊の動画。
1度崩れて土砂が堆積した箇所に、再度崩土が迫ってきていました。その勢いで1度目の崩土に乗り上げたあと、水のように飛び散って谷側に堆積していました。
以前、現場で撮影していた崩壊動画も、同じように対岸にぶつかり、駆け上がり、飛び散るように挙動していました。水分を多く含む土砂は流体のようだと、あらためて感じながら見ていました。
この様な流体の挙動を厳密に再現したい場合、可視化する場合には、粒子法でないとダメでしょう。LSFLOW などで堆積形状の再現はできますし、実務上はなにも問題ないのですが、ある程度の割り切りを用いていることは、なかなかお客様に伝わりません。

鉄道分野では、既に粒子法を用いた地盤の大変形対応ソフトを開発されています。活用の程度はわかりませんが、意欲的だと思います。今後、3次元の粒子法ソフトが安価になれば、土木分野でも活躍すると思います。

台風12号は明日上陸するようです。
土砂崩れは発生しても、災害にはならないことに期待しましょう。




2016年9月1日木曜日

微動探査による地盤調査

図書館で本を探していた際、以下の図書に目が留まりました。

日本建築学会「建築基礎構造設計のための地盤評価・Q&A」 2015年11月

建築の基準書関連で、このような本が出版されていたとは気づきませんでした。

中を見ると、なかなか面白い。
地盤調査や評価についてまとめられた図書なのですが、耐震に関する話題(定数設定や調査の解釈など)が当たり前のように含まれています。繰り返し三軸や PS 検層だけでなく、H/V での地盤評価やそれらに関する Q&A まで載っています。やはり建築は土木より進んでますね。以前、支持層コンターを微動探査結果から求められるのでは?などと記載しましたが、建築の世界では、そう珍しい話でなかったようです。
https://phreeqc.blogspot.nl/2015/12/blog-post.html

「2.4 物理探査による地盤評価」では、微動探査による地盤評価の話題のみであり、やや偏った感はありますが、他の図書には見られない意欲を感じます。ただ、大阪層群のH/Vピークが1秒で、その上の沖積層が厚い箇所では0.1秒付近にピークが出てくるというのは理解できません。なぜでしょうか?
http://phreeqc.blogspot.jp/2015/10/blog-post_46.html

Q&Aには以下の様な内容が含まれています。これらも他の図書にはない個性的かつ意欲的な内容だと思います。
Q1-1 土質分類における閾値の根拠は?
Q1-12 PS検層を100mしてもVs400m/sが出なかったら工学的基盤をどう設定するか?
Q1-13 微動アレーや表面波探査の精度は?
Q1-15  H/Vから工学的基盤の傾斜が分かるか?
Q3-4 地盤の非線形モデルでは H-D と R-O のどちらが良い?

「どこが答えなの?」と思うような日本人らしい曖昧な表現もあります。が、それだけ答えにくい内容にも踏み込んで記載しているということだと思います。
先行する建築分野、注視しておきましょう。