2010年12月29日水曜日

仕事納め

今日は仕事納めでした。

現場にボーリングマシンを設置したまま年を越す場合には年末パトロールをするのですが、今日はもう一人の担当者と一緒でした。
普段は入らない他の担当者の山に入ってみると新鮮ですね。谷底に見える岩盤は同じような破砕を受けているなーとか、硬そうな転石が多いなーとか、いろいろ地質のことが気になります。

また、パトロール時に安全項目や資材整理の仕方をチェックし、必要であれば機長にそれをこうして、ああしてとお願いする。現場全体として一体感を出していくのは好きですね。みんなでひとつの目標に向かって力をあわせ、仕事をしていく、自分のやりたいことを伝え、同意してもらい、みんなで目標を達成するということが何より好きです。なかなかうまくいかないですが。

最後に退場確認、閉門。今年も無事おわったーと思います。
いろんなことをした一年でしたが、つくづく現場向きだと思います。

2010年12月28日火曜日

トンネルと地下水調査

浸透流解析のことを知らない地質屋さんから御相談。

トンネルを掘るんだけど、周辺に影響が出るか解析でわかるか?と。
どんな調査をしているんだい?と聞いたら、トンネルを掘るための地質調査と水文調査しかしていない。広域の地質分布は?3次元構造は?各地質がどれくらいの透水係数なのか?亀裂発達方向や断層などの水理地質構造は?各箇所の表流水の流量は?河川水位は?など、まったく不明。
調査提案、地質モデルの作成からでした。

浸透流にせよ移流分散にせよ、理論を理解していれば、ある程度必要な調査が適切に計画できるようになります。いえ、理解していないと、調査不足になる可能性が高く、実際そのような例が多く見受けられます。ハードの発達により誰でも手軽に解析ができるようになった反面、地質屋さんの姿勢が追いついていないといったところでしょうか?精神論ですが、反省しないといけません。

2010年12月26日日曜日

インターネットと洋書

インターネットを始めて18年になりますが、当時はこの情報化社会を想像すらしませんでした(想像できるくらいの興味と能力があれば、いまごろ左団扇でしょうが)。FAXは2、3年くらいでなくなるだろうとか思っていましたが、それもハズレました。Googleのストリートビューのように、画像が大量にネットでやり取りできることすら想像できませんでした。当時の汎用機ではEXCELとPhotoshopが同時に立ち上がらない程度でしたからね。ちなみに、先日、講習会の講師が海外の汚染サイトをストリートビューの写真で紹介されていましたが、これはなかなか理解しやすく、面白い発想だと思いました。

さて、時々書いていますように、水質分析、化学反応を考慮したシミュレーションに関するテキストは、日本に満足できるものがないので、ネットで洋書を検索・注文しています。本文、索引などを立ち読み感覚で閲覧できるサービスは良いですね。ハズレを選ぶ確立が小さくなりました。また、洋書の古書を検索できるサービスも良いですね。クレーガーのD20と透水係数の関係が書かれた原著を購入できたのはこのサービスのおかげでしょう。また、複数の古書店を同時に比較できますし、その書店の評価も購入時の目安になります。しかも、このようなサービスの利用がiphoneでどこにいてもできるようになりました。こういった情報サービス・ハードが利益を生み出す構造をも想像しませんでしたが、そちらもまた面白くかつ厳しい分野なのでしょう。

最近買ったのは、以下の2冊。クリスマスプレゼントのように、24日に届きました。反応壁に関しては日本では見たことがありませんね。ゼネコンさんが提案されているのを見たことがありますが、非常に高い印象があります。また、その効果・設計手法にも興味があります。
THMC連成の話もまだ半分ほどしか眺めていませんが、現段階では使えるコードは限られているようです。来年こそ、TOUGHREACT購入してもらいたいですね。http://esd.lbl.gov/TOUGHREACT/
インターネットと洋書、年末年始の休み中に楽しもうと思います。
  • Handbook of Groundwater Remediation using Permeable Reactive Barriers: Applications to Radionuclides, Trace Metals, and Nutrients  (2002/9/23) David Naftz、Stan J. Morrison、Christopher C. Fuller、 James A. Davis
  • Coupled Thermo-Hydro-Mechanical-Chemical Processes in Geo-systems, Volume 2 (Geo-Engineering Book Series) Ove Stephansson、John Hudson、 Lanru Jing (2004/12/14)

2010年12月25日土曜日

トンネル15 : B計測

多段式の岩盤変位計やロックボルト軸力計を入れておくと、地質の劣化箇所で大きな変位や応力を計測します。地質屋サンはそれが次の断面でどうなるか予想するわけですが、あたらない場合も多々あります。自然は単純ではありません。しかし、そこが面白いところでもあります。以下、単純な絵があったので忘れないように記載しておきます。


地中変位パターンと対策
多段式地中変位計による測定結果の解釈と対策
地盤工学会「NATMにおける予測と実際 (地盤工学・実務シリーズ (9)」p138

---------------------------------------------
2014.4.20追記

計測対象別の計測項目、計測方法、事例(基準値含む)
土木学会「実務者のための山岳トンネルにおける地表面沈下の予測評価と合理的対策工の選定(トンネル・ライブラリー24号)」p195、205~207、210~218

計測項目
土木学会「トンネル標準示方書[山岳工法編]・同解説」2006



トンネル14 : ゆるみ領域

地下空洞のゆるみ領域は、過去の空洞の岩盤変位計と局所安全率の比較から設定する例を見ます。設計時にはそれを使用してロックボルトのパターンを決めるようです。普通のトンネルでは以下のような程度でしょうか?


ゆるみ領域として局所安全率1.2~1.4以下の領域を緩み領域とする事例が多い。
大成建設土木本部土木設計部「トンネルの設計 (考え方と設計がよくわかる実務シリーズ) 」山海堂 p90

既存の考え方、45+φ/2、0.5~1D
財団法人高速道路技術センター「トンネル掘削を誘因とする地すべり対策に関する基本検討報告書(日本道路公団委託)」1996、p25、42

トンネル13 : 解析物性・モデル

地質と内空変位のデータを見た瞬間に、適切な解析手法を判断できる経験・技術力を早く身につけたいものです。以下の内容は、多くの資料に載っていますね。


解析モデルの応力-ひずみ関係
鹿島建設土木設計本部「トンネル (新・土木設計の要点)」鹿島出版会、2003.7 p26、27、35

解析に必要な物性と試験
鹿島建設土木設計本部「トンネル (新・土木設計の要点)」鹿島出版会、2003.7 p34

掘削開放率:30~50%が多い
土木学会「山岳トンネルにおける模型実験と数値解析の実務 (トンネル・ライブラリー) 」p162

開放率と解析順の例
大成建設土木本部土木設計部「トンネルの設計 (考え方と設計がよくわかる実務シリーズ) 」山海堂 p93,94

トンネル12 : 解析領域

盛土の沈下解析などで解析の下方領域を意識した調査をしていないため、上層の変形係数を下方全体に当てはめ、変形が出すぎてしまうといった例をよく耳にします。地質屋サンも解析についてよく勉強し、「掘り足らず」といった状況は避けたいものです。



下方領域3~4D、側方領域4~5D
日本道路公団試験研究「トンネルの標準設計に関する研究報告書-数値解析と施工実績の分析-」1986
日本道路公団試験研究「技術資料 都市部NATMトンネル解析的設計の手引き」2002
紹介:土木学会「山岳トンネルにおける模型実験と数値解析の実務 (トンネル・ライブラリー16号) 」p160

下方領域2~3D
鉄道建設・運輸省整備機構「NATM設計施工指針」1996
紹介:土木学会「山岳トンネルにおける模型実験と数値解析の実務 (トンネル・ライブラリー16号) 」p160

下方領域最低1D
土木学会「山岳トンネルにおける模型実験と数値解析の実務 (トンネル・ライブラリー16号) 」p160

---------------------------------------------
2014.4.20追記

下方領域1D程度:リバウンド対策(地表面沈下の評価、トンネル・ライブラリー16号の補足)
土木学会「実務者のための山岳トンネルにおける地表面沈下の予想評価と合理的対策の選定(トンネル・ライブラリー24号)」p132~133、146~147、180~181
下方の境界条件→水平ローラー

トンネル11 : 側圧係数・初期地圧

変形解析で一般的な側圧係数を使っても、内空変位データと合わないのではないでしょうか?変形解析を実施する特殊時山などでは、初期地圧測定を実施すべきですね。
地下空洞では数多くの初期地圧を測定しますが、その結果の解釈、それに対するレイアウトが重要になってきます。個人的には、初期地圧のゾーニングと、サイトの亀裂構造図が一致するのではないかと考えています。


側圧係数
日本道路公団試験研究「トンネルの標準設計に関する研究報告書-数値解析と施工実績の分析-」1986
紹介:土木学会「山岳トンネルにおける模型実験と数値解析の実務 (トンネル・ライブラリー16号) 」p151、152
日本鉄道建設公団「NATM設計施工指針」1996.2,p323
紹介:大成建設土木本部土木設計部「トンネルの設計 (考え方と設計がよくわかる実務シリーズ) 」山海堂 p86、87


初期地圧
土木学会「トンネルの地質調査と岩盤計測」1997 p108-112


-------------------------------------
2014/4./20追記

側圧係数
土木学会「実務者のための山岳トンネルにおける地表面沈下の予測評価と合理的対策工の選定(トンネル・ライブラリー24号)」p148


2014/11./27追記

初期地山応力を算出する場合の地山要素のポアソン比は、以降の掘削解析に用いる地山材料のポアソン比とは切り離して考えなければならない。
鹿島建設「新・土木設計の要点5 トンネル」p38


トンネル10 : 地質と切羽

一般的な話です。地質屋さんは理解している内容ですが、設計屋さんに説明するときには絵を使ったほうが通じやすいですね。


地質境界の切羽での現れ方
土木学会「より良い山岳トンネルの事前調査・事前設計に向けて(トンネル・ライブラリー (第18号)」p63

地質と切羽安定
NEXCO「設計要領第三集トンネル偏」2009.7,p165

トンネル9 : 地山等級毎の定数代表値

岩盤分類と地盤定数の設定表はよく見ますが、下記は地山等級と定数の設定例です。


地山等級毎の定数代表値
ベース :日本道路公団「トンネル数値解析マニュアル」p3-26,1998.10
加筆修正:大成建設土木本部土木設計部「トンネルの設計 (考え方と設計がよくわかる実務シリーズ) 」山海堂 p91
加筆修正:土木学会「山岳トンネルにおける模型実験と数値解析の実務 (トンネル・ライブラリー16号) 」p152、153


---------------------------------------------
2014.4.20追記

地山等級毎の定数代表値(N値、土軟硬と関連付け)
鉄道建設・運輸施設整備支援機構「山岳トンネル設計・施工標準・同解説」p310, 2008
(鉄道総合技術研究所「NATM設計施工指針」1996と同じ表)
紹介:土木学会「実務者のための山岳トンネルにおける地表面沈下の予測評価と合理的対策工の選定(トンネル・ライブラリー24号)」p113

トンネル8 : 変形係数

動弾性係数の補正値αがある基準は珍しいですね。
静弾性係数(変形係数)の目安がつきます。


変形係数E0の補正係数α
平板載荷試験:1
孔内水平載荷試験:4
三軸圧縮試験:4
一軸圧縮試験:4
標準貫入試験:1
弾性波速度検層:0.125
日本鉄道建設公団「NATM設計施工指針」1996.2,p340、341
紹介:大成建設土木本部土木設計部「トンネルの設計 (考え方と設計がよくわかる実務シリーズ) 」山海堂 p124

トンネル7 : トンネルと地すべり

最近、トンネル坑口の地すべり対策についてよく耳にします。調査・設計の分業制が理由なのか、地質屋の腕が落ちたのか、そのような不安定な箇所しか残っていないのか・・・。以前書きましたが、土研から数値解析による地すべりとトンネル影響評価手法が出ています。http://phreeqc.blogspot.com/2010/08/blog-post.html
地すべりブロックの規模とトンネルの位置・大きさ関係が多様なため、3次元で計算しないと緩み領域の影響はつかめません。しかし、出てきた緩み領域を活用し地すべりに対し3次元でLEMをかけても、現段階では目標安全率の設定が困難といった矛盾があり、マニュアル化はできないでしょう。今までの2次元計算を3次元でやり直して、対策工がもった、もたなかったという整理をすれば、3次元の目標安全率も目安が出ると思いますが、膨大な作業ですね。以前にも書きましたが、現段階では技術者の腕次第ではないでしょうか。http://phreeqc.blogspot.com/2010/08/blog-post_14.html


地すべり地内にトンネルが計画された場合にはトンネル外に押さえ盛土や抑止工等を先行施工した上での設計とする必要がある。緩みを生じさせない施工、観測、応急的な対策工も考慮しておく。
NEXCO「設計要領第三集トンネル偏」2009.7,p141

トンネル構造物を抵抗力として見込まないのが一般的。
日本道路協会「道路トンネル技術基準(構造編)・同解説」2004,p141

すべり面から天端まで20m以内接近した場合が検討の目安。
横断する場合は排土量と切除長を差し引いて通常の2次元安定計算
地盤工学会「NATMにおける予測と実際 (地盤工学・実務シリーズ (9)」p258-263

緩み領域内でc'=0.3c0、φ'=3φ0/4に低減し2次元安定計算。
横断する場合、縦断する場合、下位を通過する場合の計算方法。
財団法人高速道路技術センター「トンネル掘削を誘因とする地すべり対策に関する基本検討報告書(日本道路公団委託)」1996、p42、48、100、109

地下水の低下を見込む。(見込まない基準もあったはず。思い出せない。)
財団法人高速道路技術センター「トンネル掘削を誘因とする地すべり対策に関する基本検討報告書(日本道路公団委託)」1996、p114、145

地すべり地での施工事例、補助工法
土木学会「山岳トンネルの補助工法〈2009年版〉 (トンネル・ライブラリー) 」p294、295

施工中の計測と配置
地盤工学会「NATMにおける予測と実際 (地盤工学・実務シリーズ (9)」p131、294
土木学会「トンネル標準示方書「山岳工法」・同解説」2006.8 p183

数値解析による地すべりとトンネル影響評価手法
土研地すべりチームhttp://www.db.pwri.go.jp/pdf/D6425.pdf

トンネル6 : 坑口部

坑口部の範囲は通常1~2Dで、特別な支保構造・施工法となる。NEXCOではDIII。
個々のトンネルの地山条件や一般部の施工法などを考慮した合理的な施工法を選定する必要がある。
NEXCO「設計要領第三集トンネル偏」2009.7,p140、144
日本道路協会「道路トンネル技術基準(構造編)・同解説」2004,p140、143、145
土木学会「トンネル標準示方書「山岳工法」・同解説」2006.8 p110-112


岩盤地山では、土被りが1D 程度まではDIII、それより大きな土被りでは地山条件に応じてCII~DIII、土砂地山では、土被りが2D 程度まではDIII、3D までは地山条件に応じてDI~DII が主体でありDIII の割合は少ない。それ以降は主にDI の支保パターンを採用すれば支保に大きな変状を発生させることなく施工が可能と考えられる。
岩盤地山とは地山分類(日本道路協会「道路トンネル技術基準(構造編)・同解説、2003 年」)において、岩石グループが「硬質岩」「中硬質岩」「軟質岩」に属すものとし、土砂地山とは上記に属さない地山、および破砕帯も含むものとした。
平成21年度 土木研究所成果報告書「土砂地山トンネルの支保構造に関する研究」


坑口部の範囲設定例
例1)軟岩以上の地山にパターンボルト(4~6m)が打設できるようになる位置まで。
例2)硬岩1D、軟岩1.5D、土砂2D
例3)1D(ゆるみ領域が1D)
山岳トンネル工法Q&A検討グループ「山岳トンネル工法Q&A」p176

トンネル5 : ひずみ

掘削時に発生する壁面での接線方向ひずみはλ=1、支保内圧=0、σ=2Pv=quと仮定すると以下の通りとなる。
u/r=(1+ν)qu/E
(孔内水平載荷試験と同じですね)
一軸圧縮試験でのピーク強度時のひずみは0.2~0.3%以上であり、これ以下であれば弾性変形領域内である。これを内空変位量に換算すると、10m×(0.2~0.3%)=10000mm×0.002~0.003=20~30mmとなる。亀裂などの影響を除くと、素掘りでも掘削面の自立が可能。
NEXCO「設計要領第三集トンネル偏」2009.7,p60

トンネル4 : 地山強度比

地山強度比の考え方
等方地圧における素掘り円形トンネル周辺では、地山が弾性体の場合、壁面で半径方向応力σr=0、円周方向応力σθ=2Pとなる(Pは初期応力)。つまり、トンネル壁面では圧縮応力2Pの一軸圧縮応力状態となっている。そのため地山の一軸圧縮強度quが作用荷重2Pよりも大きい場合(qu>2P)、安定となる。これが地山強度比qu/Pv>2の考え方(Pv=γH:土被り圧)。
大成建設土木本部土木設計部「トンネルの設計 (考え方と設計がよくわかる実務シリーズ) 」山海堂 p48,49
鹿島建設土木設計本部「トンネル (新・土木設計の要点)」鹿島出版会、2003.7 p10,28

これに側圧係数λを導入すると、λ=1~0のとき、側壁部の応力は2~3Pvとなる。
(λ=0の場合とはどんな状態なんでしょうか?)
NEXCO「設計要領第三集トンネル偏」2009.7,p59

地山の一軸圧縮強度quは、亀裂が無視できる地山では試料の一軸圧縮強度を適用できるが、亀裂などの影響が大きい地山においては準岩盤強度qu'を用いる。
qu'=qu(Vp/Up)^2
Vp:地山の弾性波速度、Up:試料の超音波伝播速度、qu:試料の一軸圧縮強度
日本道路協会「道路トンネル技術基準(構造編)・同解説」2004 p83、84
土木学会「トンネル標準示方書「山岳工法」・同解説」2006.8 p42

地山強度比による地圧の大小
紹介:土木学会「トンネルにおける調査・計測の評価と利用」1987 p75
紹介:土木学会「トンネルの地質調査と岩盤計測」1997 p117

トンネル3 : 岩盤分類

岩盤分類にも多くの指標があります。以下はそれらを比較したものです。


各機関の岩盤分類の比較
道路公団、電中研(菊地)、鉄建公団、RSR、RMR、Qなど
日本トンネル技術協会「TBMハンドブック」2000.2 p65
紹介:大成建設土木本部土木設計部「トンネルの設計 (考え方と設計がよくわかる実務シリーズ) 」山海堂 p73

国内外の基準の比較
紹介:土木学会「トンネルの地質調査と岩盤計測」1997 p136

トンネル2 : 水文調査

最近では地表流の検討が多くなっていますが、これについてはあまり資料がありませんね。登坂先生のGETFLOWSもソースは非公開ですし。http://www.getc.co.jp/software/aboutgetf/
以下は一般的な資料です。


調査法
地盤工学会「NATMにおける予測と実際 (地盤工学・実務シリーズ (9)」p57

湧水量と集水範囲、大島の水収支、イオン分析、年代測定などの概要
土木学会「より良い山岳トンネルの事前調査・事前設計に向けて(トンネル・ライブラリー (第18号)」p70~87

水質
土木学会「トンネルの地質調査と岩盤計測」1997 p38-40

トンネル1 : 限界ひずみ・限界せん断ひずみ・管理基準値

以前より、限界ひずみ・限界せん断ひずみのどちらを用いて評価するのが良いのか疑問に思っていました。http://phreeqc.blogspot.com/2010/09/blog-post_07.html

文献を読み返していたところ、理想的には限界せん断ひずみ直接的に評価するほうが良いようですね。http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00037/493/493-122072.pdf
しかし、管理基準値を決める場合には限界ひずみを使っている例が多いようです。


トンネル関連の資料・基準で、気になっていた箇所を整理しています。
備忘録もかねて整理しましょう。




限界ひずみ・限界せん断ひずみ・管理基準値
鹿島建設土木設計本部「トンネル (新・土木設計の要点)」鹿島出版会、2003.7 p45、46

限界ひずみから管理基準値を設定した例
土木学会「トンネルにおける調査・計測の評価と利用」1987 p237、238
大成建設土木本部土木設計部「トンネルの設計 (考え方と設計がよくわかる実務シリーズ) 」山海堂 p100-103

限界せん断ひずみ=限界ひずみ×(1+ν)
櫻井ほかhttp://library.jsce.or.jp/jsce/open/00037/493/493-122072.pdf

限界せん断ひずみと解析ケースの比較(鏡ボルトの必要性)
大成建設土木本部土木設計部「トンネルの設計 (考え方と設計がよくわかる実務シリーズ) 」山海堂 p100-103、137ー140

---------------------------------------------
2014.4.27追記

管理レベルI  :管理レベルIIIの30~50%程度
管理レベルII :管理レベルIIIの60~80%程度
管理レベルIII:近接構造物の許容値に安全率を見込んだ値

鉄道建設・運輸施設整備支援機構「山岳トンネル設計・施工標準・同解説」p257-297, 2008
紹介:土木学会「実務者のための山岳トンネルにおける地表面沈下の予測評価と合理的対策工の選定(トンネル・ライブラリー24号)」p201



2010年12月21日火曜日

ソリッドの分割

今日はSoilPlusにはまってしまいました。悪い方にです。

以前記載した①の方法(http://phreeqc.blogspot.com/2010/12/blog-post_16.html)で地盤を取り込んだ後、3DのDXFを読み込んで構造物のモデル化を進めていたのですが、そこでハマりました。もともと、そんなに細かいものを表現でるソフトではないのですが、お客様のご要望もあり、チャレンジしたわけです。

ソリッドの分割・オートメッシュは、なかなかうまくいかないときがあります。
そんなときは分割面を少し動かしたり、スケールを変えたり、正規化したりいろいろな方法で試行してみます。はまると何をやっても駄目というときもあり、時間がかかります。そして結果が出ません。特に、薄層・小領域の分割が弱いですね。隣接フェイスの分割も、同様です。

そういう場合はGEORAMAからメッシュを書き出すしかないんですね。地層面はボクセルになりますが、しかたありません。http://phreeqc.blogspot.com/2010/12/georama.html

明日も継続作業です。


ちなみに、SoilPlusのモデルをFEMAPに取り込んでみると、ソリッドはきれいに読めました。しかも、一発でメッシングできました。驚きです。私はまだFEMAPを使いこなせないため、思ったような粗密を表現できませんが、そのポテンシャルの高さを見せ付けられた気がします。

2010年12月18日土曜日

解析屋さんの腕

FEM解析を専門とする方の技術力は尊敬に値します。

たとえば、「この地質モデルと変位であれば、ジョイント要素よりも異方性を持たせた弾塑性でモデル化したほうが再現しやすいと思う。」というように、地質とデータを見た瞬間に解析手法を判断する経験・技術力は私にはまだありません。恥ずかしながら、有しているのは複数の手法でやってみて、一番合うのを選ぶといった力技ぐらいです。
また、土木の知識はもちろんのこと、数学の知識、メッシングの技術、プログラミングの技術、PCに関する知識など、幅広く、深い知識が必要となります。特にメッシュは、見た瞬間に「うまく切っているなー」と感心することがあります。2~3週間かけて解析モデルを作られているようですが、やはりそこが解析屋サンの腕なんでしょうね。

私も解析を実施しますが、やはり専門にされている方と比べると、詰めが甘いといいますか・・・到底太刀打ちできません。2次元解析や浸透流くらいならまだ良いんですけどね。
まだまだ努力が必要です、

2010年12月17日金曜日

GEORAMA 初期メッシュの取り込み

昨日の投稿の中でGEORAMAからSoilPlusへのデータ受け渡しについて、3つの方法を記載しました。

GEORAMA3.2でメッシュを書き出す際、先に2次元平面メッシュ(初期メッシュ)を読み込んで各境界面に反映することができます。私は①SoilPlusで先に2次元メッシュを作成し、②節点と要素をテーブルからEXCELに書き出します。③それをEXCELのVBAでNASTRAN形式に変換して④GEORAMA3.2に取り込んでいます。

この方法で先に構造物の配置を反映しておけば、後で節点の移動により構造物深度を調整すれば良いので比較的お手軽です。

変換VBAをUPしておきます。
https://sites.google.com/site/geochemist001/resources/soilplus-to-nastran

2010年12月16日木曜日

地質モデルから解析モデルへ

地下水解析モデルを作るのにVisual MODFLOW、SoilPlus、G-TRANを使っています。化学反応を連成する場合はWphastも使うことがあります。

モデル作成に関しては、2次元では圧倒的にSoilPlusが簡単です。ダントツでしょう。
3次元ではどのソフトも一長一短ありますが、FDMのVisual-MODFLOWでしょうか。FEMではSoilPlusでしょう。G-TRANは個々の作業のレスポンスが非常に遅く、undoもできないため、モデル化にかなり時間がかかります。Dtransuをサポートしていなければ使っていません。代わりにFEMAPを使えるようにならないといけないのですが、今年はできませんでした。

SoilPlusでは、地質モデルをGEORAMA+Civil3Dで作成しておけば比較的容易に取り込めます。取り込み方は大きく分けて3種類あります。
①GEORAMA3.2からSoilPlus形式で書き出し、SoilPlusにて境界面(gdo)読み込み
②GEORAMA3.2からNASTRAN形式で境界面書き出し、SoilPlusにてメッシュ(nas)読み込み
③GEORAMA3.2からNASTRAN形式で地形面書き出し、SoilPlusにてメッシュ(nas)読み込み
問題点は以下の通りです。
①SoilPlus に読み込んだ時点で境界面は近似面となり、GEORAMAの境界面形状をそのまま読み込むことができない。近似面のため、境界面が逆転したり、ボーリング位置での境界深度が少しズレる。
②成層構造では問題ないが、地層の消滅がある場合、その境界の再現性が非常に悪い。
③境界面がボクセルとなり階段状の表現になる。

①の近似面となる問題点はMVS+G-TRANでも同様です。③のボクセル化はG-TRANやV-MODのモデルでもどこかに出てきます。このあたりが地質モデルから解析モデルへの妥協点といったところでしょう。そのうち、推定境界面を完全互換で取り込み、消滅やレンズも忠実に再現できる、あるいは3次元地質モデルと解析モデルがひとつのソフトで作成可能となる日が来ると思います。それまで忠実なモデルを作るには手間隙かけるしかないですね。

2010年12月15日水曜日

トンネル排水のpH

今日届いた応用地質の12月号に、アルカリ性トンネル排水のpH低減を目的とした論文が載っていました。

トンネル施工中は、吹付コンクリートが路盤に混ざったり、湧水がコンクリートに接触したりするため、濁水処理プラントではpHも調整します。施工後は通常の排水となりますが、それでも高アルカリのためpHを調整する必要がある場合には、この論文のようなメンテナンスフリーの設備ができれば便利だと思います。
ただし、クリアーすべき問題も多くあるでしょう。たとえば、①湧水処理量、②スケールの発生と改良効率③本体・下流側流路の材料(コンクリート不可)などです。

この論文に連名となっている先生は、北海道をベースに自然由来の汚染分野で御活躍されているようです。しかし、昨年度の応用地質学会発表会で「私はPHREEQのことは良く知らないが、計算で平衡を考えなくても、自然に二酸化炭素が溶ければpHは8強になる。」と言われていました。自然に解けるということが計算上の平衡を意味することを当時は御理解されていなかったようです。
今回の論文でも、酸素分圧を考慮していない、飽和度(過飽和speciesの沈殿)を考慮していないなど稚拙な感が否めません。しかし、こういった有名な先生方が地球化学ベースの対策工を発表され続ければ、「お墨付き」の対策工として認められる可能性もあります。今後の動向には気を止めておきましょう。

2010年12月11日土曜日

Calciteが解けた場合のpH

昨日の続きです。

Calciteが完全に大気を遮断した状態で地下水や雨水と平衡になった場合、MaxでpH=9.9まで上昇します。これは計算すれば容易に求められます。しかし、このような状況は自然界にないでしょう。
大気と平衡になった場合、そちらの影響のほうが大きく、pHは7弱となり上昇しません。
昨日書きましたが、自然界の場合はその間に落ち着くわけです。

石灰岩地帯の井戸水の水質を測定したことがありますが、
ボーリング井戸でpH=8.1、掘りぬき井戸でpH=6.8に大体落ち着きました。
水道水の基準pH=8.6を超過していませんが、快適水質項目目標値や農業用水の基準pH=7.5は超過しています。地元の方はそれを飲まれているので、健康に問題はないのでしょう。

ちょうど今日届いた、地盤工学会誌にこういった溶出の話が載っていました。
シミュを用いた詳細な予測の話ではなく、現状の整理といった内容でしたが、なかなか良く整理されていたと思います。実務的にはこの辺が落としどころでしょう。どなたが書かれたのか?と思って著者を見てみると、研究者でした。複雑ですね。

2010年12月10日金曜日

盛土材からの浸出水

「石灰岩を盛土に使用したいが、アルカリ性の浸出水が農作物に影響があるかどうか?」
「黄鉄鉱を含む盛土材で酸性水が発生し、環境に負荷がかかるか?」

こういったpHの問題、最近多いですね。
前にも触れましたが、不飽和浸透流+化学反応の連成問題です。
http://phreeqc.blogspot.com/search/label/%E7%86%B1%EF%BC%8D%E6%B0%B4%EF%BC%8D%E5%BF%9C%E5%8A%9B%EF%BC%8D%E5%8C%96%E5%AD%A6%E9%80%A3%E6%88%90

通過する雨の量と流速、比表面積次第なので、どんな答えでもありえます。ただ、鉱物の溶解によるpHのMax、Minは決まりますので、その間と言ってしまえば乱暴ですが、まあ、その間で変動するわけです。当然、カラム試験とシミュで計算すれば、より良い答えが出ます。

あちこちで施工されてきたコンクリート構造物、場所打ち杭、薬液注入の方がよほど影響があると思うのですが、あまり気にされていませんよね。今、「自然地盤由来」といったキーワードに踊らされている感があります。地に足を付けた検討が必要です。

地すべり 水抜きボーリングの目詰まり(その2)

もともとは、通水井戸の目詰まりの可能性を考えるため関連資料を探していましたが、出てきたのは地すべり施設関連ばかりでした。
その中でも、農林さんの「北陸地方の地すべりにおける水抜きボーリング工の目詰まりの実態と要因、地すべり学会誌43巻4号」では非常に詳細な水質データが掲載されています。
http://www.jstage.jst.go.jp/browse/jls/43/4/_contents/-char/ja/
これだけ調べるのは、大変だったことでしょう。

このデータを使ってPHREEQCでFerrihydriteの沈殿量を求めると、下図のようになります。


拡大すると・・・↓



農林さんの場合、沈殿量が2E-6mol/kgで、「閉塞なし」と判定できるようです。


土研さんも「地下水排除施設集水管の目詰まりに関する検討、地すべり学会誌39巻4号」で水質データを公表しています。
こちらは、以下のようになります。


拡大すると・・・↓


コチラはやや不明瞭ですが、農林さんと同じように沈殿量が2E-6mol/kgで、「閉塞なし」と判定できるようです。


流動阻害対策の通水井戸、地下空洞の水封ボーリングなどでも、地すべりの水抜きボーリング同様に目詰まりの影響を検討しないといけない訳ですが、基本、「目詰まりする」と事前に判明しても、その位置に設けないといけない施設なんですよね。計算で結果がわかっても、心積もりができるといった程度でしょうか?

2010年12月7日火曜日

地すべり 水抜きボーリングの目詰まり(その1)

 地すべり対策工で実施する水抜きボーリングの長期的目詰まりについては、
その防止や施設点検の優先順位付け等の観点から、
土木研究所や農林水産省で研究されています。
http://www.db.pwri.go.jp/kenkyu/datail.asp?NO=1082
http://www.maff.go.jp/j/nousin/noukan/tyotei/t_zisuberi/pdf/mezumari.pdf

面白いことに、坑口にエルボーを付けて空気が入らないようにした対策を
農林さんは効果アリ、土研さんは効果なしと正反対の判定をされています。

共通しているのが、2価の鉄イオンの量がキーだということ。
酸化してFerrihydrite↓になるわけですが、
餌が多いとバクテリアも住み着いて、より沈殿しやすくなるんですね。
日本は遅れていて、こういった現象を国の研究機関がWで調べています。
その研究成果?は学会誌にも載ってしまいます。
海外では本屋のテキストに載っているんですけど・・・

それはさておき、水質調べて地球化学コードでFerrihydriteの沈殿量調べると、
定量的な判定が可能となります。

続きは、また後日。

2010年12月2日木曜日

Dtransuの高速化

Dtransuの並列化は置いておき、とりあえずソース内の連立方程式の収束許容値を甘く設定し、コンパイルしてみました。
PCGエラーが1.5×10^-4程度だったので、その3倍を設定し、定常チェック。その後、非定常を計算してみたところ、10^-9の場合の結果とほとんど差が出ませんでした。最小メッシュ1mで、最大2cmの差です。しかも、局所的。

驚いたのは、22万節点で17年×6ケースの計算時間が28時間強。以前は4日かかっていましたので、恐るべき高速化です。今まで、モデルに対し厳しすぎる精度を求めていたんですね。なお。CPUはCore i7-980Xを4GHzまでO.C.して計算しました。

その後、並行計算を9ケース+他の負荷作業1種に増やしてみたところ、残念なことに計算が2日以上かかってしまいました。12スレッドあるとはいえ、コア数以上の働きをさせると、遅くなるようです。

2010年12月1日水曜日

地質モデルの妥当性

2次元でも、3次元でもボーリングから断面、あるいは3次元構造を推定するわけですが、その推定手法は地質学・堆積学・層序学など地質屋サンの腕の見せ所になります。また、地下深部で等価とみなせる場合には地球統計学も使えます。

しかし、ボーリングが多過ぎて、実務上、全てを3次元モデルに反映できない場合、どのような基準で取捨選択するか?という問題は難しいですね。柱状図やXMLがあれば比較的容易ですが、簡易柱状図しかないと、土層区分深度をCADで拾って行く必要があり、大きな手間です。

何か、説明しやすい取捨選択の方法を探さないといけません。