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2017年10月17日火曜日

谷埋め型大規模盛土造成地の安定計算式

宅地防災マニュアル には、以下の記述があります。
http://www.mlit.go.jp/crd/web/topic/pdf/takuchibousai_manual070409.pdf
谷埋め型大規模盛土造成地の安定性については、二次元の分割法により検討することを標準とする。
「2次元分割法」とは幅広い記載に感じますが、基準独自の定義があります。具体的な計算式は「宅地防災マニュアルの解説〔第二次改訂版〕」「大規模盛土造成地の変動予測調査ガイドラインの解説」に掲載されています。
http://www.mlit.go.jp/common/001089011.pdf

先日、この式を使おうかと式を読み始めたのですが、非常に不可解。いえ、複合すべり(谷埋め型)の直線部分にモーメントが使われているようです(現行のガイドラインの図中では「円弧の場合」となっていますが)。
通常、モーメント比は円弧、力の比は複合や直線すべりでと考えていましたが、この式はそうなっていません。直線部分のモーメント原点(任意点O)はどうやって決めるのか?円弧部分のモーメント原点と一致しないが良いのか?導出や出典がないので追いかけられない、と途方に暮れていました。
式の形だけを見ると、おおざっぱにはモーメント原点が分割片の上方に離れるほど Rti が大きくなり、安全率は高くなりそうです。水平に離れるほど、Rwi や Rri が大きくなり、安全率が低くなりそうです。一意に決められない直線部分の原点の取り方次第で答えが変わりそうというのはすっきりしません。安全率が低くなる原点を探索せよ、ということでしょうか?

PowerSSA(Ver.5.5、五大開発)と斜面の安定計算(Ver.12、FORUM8)はこの式に未対応です。COSTANA(Ver.18.1F、富士通エフ・アイ・ピー) だけがこの基準に対応と謳われていましたので、試算してみました。
結果、やはり原点の取り方によって安全率が変わります。傾向も、まあまあ想定に沿っています。

これ以上の理解は困難なので、COSTANAにおけるモーメント原点の決め方についてサポートさんに確認してみました。が、明解な回答は帰ってきません。(SEさんなのか、ソフトの使い方には幾分慣れていらっしゃるようですが、力学の基礎理論を御存知ないようでした)。
五大さんとFORUM8 さんにも確認してみましたが、両社ともあえて実装していないように受け止められました。(富士通さんとは対照的に、FORUM8さんは技術的な回答でした)。
ただ、実装している富士通さんも悪くはないと思います。基準通り計算されているようですので、設計通りなのでしょう。もともと安全率の定まらない計算式なのか、2次元の0.01にこだわる業界がおかしいのか?

結局、解説で定義される「2次元分割法」を使うのをやめました(2社もこのような判断だったのかもしれません)。
標準以外にも簡易ヤンブーや 3次元計算などが紹介されており、基準の中で比較的自由に泳げますので、すっきりしない式は使わないことにしました。

それにしても、この谷埋め型大規模盛土造成地の安定計算式、どのようにして生まれたのでしょうか?ひょっとすると、直線部分の原点の決め方が出典に書かれているのかもしれません。
今後、何かしらの情報に触れる機会があるかもしれませんので、その時を楽しみにしておきましょう。

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マニュアルの解説では、盛土の安定計算箇所の全応力式と有効応力式の「間隙水圧」の書き方が曖昧。2巻の軟弱地盤ので箇所ではきちんと書かれていますので、担当者が別なのでしょうね。


2012年8月8日水曜日

動いた地すべり、動かなかった地すべり


先日、大きな移動量を示す地すべりを見ました。
後輩が管理者に応急対策を提言していたものの対応がなく、仕方ないので簡易伸縮計をつけてあげたそうです。
2、3日たって、インバー線が切れたと電話があり現地へ行ったそうですが、なんと1mのストロークを振り切っていたそうです。張った時はそれほど動くとは思えなかったようで、驚いていました。改めて測ってみると、その移動量、時間1cm。通行止めの倍以上の動きです。

私も現場へ行ってみましたが、パッと見、もう、地すべりではなく、崩壊といった形状。滑落崖だけでも5m程(写真で見せてもらった時は1m程度でしたが)。ブロック積みはズタズタ、末端部の押し出しは顕著、土塊に開口亀裂が数多く入っています。でも、人の目では動きが見えません。土塊の上を歩いても心配ないですし、下で畑もされています。でも、簡易伸縮形を見ると、まだ止まらずに動いています。ゆっくり動き続け、いつの間にか大きく変わっています。「アハ」体験のようでした。


一方、動かなかった地すべり?にも出会いました。
トンネル坑口の地すべり対策として垂直縫地を計画している他社さんの報告書を見ました。以前も書きましたが、これ、疑問です。
http://phreeqc.blogspot.jp/2011/06/blog-post_2484.html

安定計算は3次元で珍しいなあと思っていましたが、安全率は「土工指針よりFsp=1.2」。で、垂直縫地の計算は2次元と同じ。しかも、垂直縫地の根入部分をトンネルがばっさり貫いていくという計画。で、施工済み。
本当に地すべりだったのでしょうか?まあ、問題なく施工できたようですので結果オーライなのでしょう。

地すべりも、その対応も、様々です。

2012年5月23日水曜日

Fsp = (1.0+1.5)/2 = 1.25

「土の会」技術伝承出版編集委員会編「高速道路の軟弱地盤技術」を読んでいます。

本屋で見かけたときに、「経験的知識の伝承」という目的に惹かれ、購入しました。まあ、実体験でなく本から学べることは少ないと思いますが、経験の足りない私にとって読まないよりマシと思います。

 とりあえず、地盤調査の経験則を読んでみました。
大丈夫です。この辺りの事は身についています。少し安心。

続いて、最初から読んでいくと、11ページに面白いコラムが。
最初に議論になった時、安全率は1.0でいいという意見と、日本は地震国だから1.5にしようという意見があった。足して2で割って1.25になったということだ。
現在の設計要領は1.2ですから、1.25という時代もあったのかもしれません。最初は適当に値を決めておいて、試験施工で検証し、改訂していくといった手法を繰り返し、経験を積んできた値に落ち着いたということでしょう。
さらに面白いことに、これらの値や基準に執着心はないようで、あくまで現段階でBESTと考えられる基準であり、現場実験と観測データを多く集め改正すれば良いというスタンスがあちこちで読み取れます。昔の公団の方は、そうやって設計要領を改訂されてきたのでしょう。

しかし、設計者の立場ではそうはいきません。設計時に現場実験はできませんから。 そうすると、設計要領を逸脱するものは作れません。ジレンマですね。

そういう意味では、ゼネコンの設計者が、一番有利なのだと思います。

2012年1月10日火曜日

Eurocode 7

海外担当の方より「Eurocode 7 で安全率の話が詳しい」と教えていただきました。

早速、見てみました。

で、見て思い出しました。
これ、詳しいのは全体安全率でなく、部分安全係数の話です。港湾基準が変わった時に聞いていたのを思い出しました(Eurocode を読むのは初めてなので、「ああ、これが噂の・・・」といった、また別の感想を持ちましたが)。アンカーなど対策工の話もありますが、基本的には順解析での流れです。

道路橋も次回の改定では部分安全係数法が取り入れられるそうですが、こうなると、地すべりだけが浮いた感ありますね。まあ、既に破壊した地盤だけを対象としたカテゴリーというのは土木の中でも特殊でしょう。ある意味、現況再現が可能なため、予測(対策)が簡単なのかもしれません。そういった中で育った2次元逆算法は、レベルの違いは大きいものの「モデル依存実在論」の考え方に沿った簡易で優秀な手法ということになるのでしょうか?真理とは違っても、簡単なモデルによる再現とFs=1.2で安定するといった実績という意味で。
うーん。堂々巡りに入りそうです。

安全率を理解するには、もう少し時間が必要ですね。

2012年1月8日日曜日

海外の安全率

マレーシア・香港・UKの安全率について知る機会がありました。

まず、マレーシア。
Slope Engineering Branch, Jabatan Kerja Raya MALAYSIA. 「GUIDELINES FOR SLOPE DESIGN」2010

All untreated slopes shall be designed with minimum of 2m berm width and
maximum 6m berm height with a Factor of Safety greater than 1.3. Stabilisation
measures can be considered when the design is inadequate. Stabilisation
measures may include the following:-
• soil nailing with slope surface protection
• permanent ground anchors
• retaining walls, etc.
The minimum global Factor of Safety for treated slopes shall be 1.5.

切土の場合です。盛土も似たようなもんです。なぜこのように決めたのか、背景が知りたいですね。非常に興味があります。
計算式については、指定がありません。


次はUK
Transport Research Laboratory 「OVERSEAS ROAD NOTE 14 HYDROLOGICAL DESIGN MANUAL FOR SLOPE STABILITY IN THE TROPICS」

これはどこまで効力があるのか分かりませんが、安全率よりも検討析手法の紹介になっています。浸透流と安定計算(Bishop)の組み合わせで多くのケースを検討しています。最終的には透水係数、降雨強度、勾配などから、チャートを使って簡単に安全率が出せるようになっています。このマニュに沿ったソフトも出ているようです。http://www.chasm.info/
目標安全率の記載はほとんどありませんが、ある表には推奨値として香港の1.2~1.4が掲載されています。


で、香港。
上述した1.2~1.4の出典です。

GEOTECHNICAL ENGINEERING OFFICE, Civil Engineering and Development Department, The Government of the Hong Kong 「GEOTECHNICAL MANUAL FOR SLOPES」

Risk to Life と Economic Risk のマトリックスで目標安全率を決めています。リスクに応じて1.0以上、1.2、1.4の3段階になっています。良いですね。リスクブームの日本でも、将来的にはこのような整理がされるのでしょう。
計算式も多く紹介されていますが、Janbu, Bishop あたりなのでしょうね。


日本では当たり前のように使われている簡便法は、どの国にも出てきませんでした。安全率が日本より高めなのは、それも一因なのかもしれません。背景はよくわかりませんが。

最近では上記の資料を始め、他国のガイドライン等もネットで容易に手に入ります。井の中の蛙であることに気付きやすくなっています。
技術者としてはありがたいことです。

2011年12月14日水曜日

LEM, SRM, SAM その2

LEM, SRM, SAM の比較です。

適当なモデルで計算してみました。まずは、非関連流れ則。


自動で書き出される比較表の一部です。計画安全率は自分できめることができますが、今回、特に意味はありません。便宜上表示しているだけです。

結果はFellenius より Bishop、SRM より SAM で安全率が高く評価されます。後者は円弧を仮定している影響ですね。FEM とLEM は単純比較できないでしょう。SRMでの結果が円弧に近いと、案外、Bishopと同じような安全率が出ています。


関連流れ則でも実施しました。
結果、このモデルでは SAM、SRM ともに安全率が0.01前後上がります。ひずみが集中しにくくなる影響でしょう。教科書に載っている注意点ですね。土の評価が重要になります。


モデルを変えるとコチラ。材料値は上のモデルと同じで、非関連流れ則です。


解析領域や結果に問題ありですが、傾向は同じです。
異なる点は、SRM で非円弧が顕著になると、安全率が円弧よりかなり低くなるということでしょうか?まあ、当たり前ですか。


通して考えると、Fellenius だけはやはり異常ですよね。あらためて実感しました。Felleniusの計画安全率1.2を考慮すると、、他の計算手法で1.2は駄目ですね。駄目なのはわかりますが、ではどうしたら?というと実務的には以下のような答えしかありません。

海外ではどう評価しているのでしょう?

2011年10月9日日曜日

安定計算式を選ぶ責任

ところで、昨日記載したの講習会の教科書、技報堂出版「土の力学」に、安定計算解説個所への書き込みもしていました。

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円形


・簡便分割法・・・「スライス間の合力を0とする。」日本のみ。めちゃくちゃ。不経済。
・Bishop・・・円弧では最低限これを使え。
・Spencer
・その他

非円形

・Janbu・・・「合力の作用点を仮定。」
・Morgenstern・Price・・・「合力の傾きを仮定。」世界で最も使われている。
・Spencer・・・円形でもOK
・Sarma・・・オーストラリア・ニュージーランドで使われている。分割線が斜めでOK
・その他

・意味を分からずに使う時代は終わり。エンジニアは自分の考えを。
・円弧か非円弧か直線かは技術者が考えるべきこと。
「建設省の基準でやった」という言いわけは裁判で通らない。技術者の主義主張がなければならない。

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重いですね。講習会でメモったのは、11年前だと思います。
相変わらず、簡便法を使い続けていますね。どうすれば変えることができるのでしょうか?

ある報告では、排水効果を見るときに、Janbuよりも簡便法が危険とありますが、実際、そんなことはないと思います。
指針にあるFs=1.2は経験上培われた簡便法の目標安全率で、ヤンブーの目標安全率ではありません(この辺りの話は、今回の講習会でも講師より話がありました)。上記の場合、Janbu で簡便法の1.2を目指す場合には、簡便法より密な手当てが発生するといった解釈も可能で、cを同値とした場合の Janbu の目標安全率は簡便法より低くて良いということも言えます。もちろん、問題によりますが。

指針にないから実務上簡便法を使わざるをえないのが現状と解釈しています。FEMならどうか、3次元ならどうか、整理して出来るところから指針を変えてしまえばいいんですけど。研究者や権威のある方が講習会でなく、委員会で一言いえば、簡単に変わると思いますが。

変わらないからそれに甘えているというのも技術者としていけないですよね。ダメな場合は主義主張を持ってお客様に説明しないといけないのです。技術士の面接で出てきても良さそうな話です。いま問われたら、試験用の解答をするでしょうね。

ダメですね。考え方がサラリーマンになってしまっている。もっと追い込まないといけないですね。

2011年10月8日土曜日

FEMでの安全率

「ある収束値での修正NRの繰り返しが○○回以上で発散」と書きました。
http://phreeqc.blogspot.com/2011/10/terzaghi.html

SSR法では発散=破壊という解釈ですので、収束値と繰り返し回数でも安全率が変化するようです。そのあたりの話を先日の講習会で講師の方が強調されていました。その影響が考慮された設計マニュアルがJR東日本にあります(非売品)。8年前のマニュアルです。私の知る限り、FEMでの全体安全率の考え方が示されているのはこれくらいですね。地すべりに流用する場合、完璧とは言えませんが、参考になるレベルです。

地すべり学会もこれくらい整理すれば良いのに、と思いますが、まあ、気長に待ちましょう。

2010年8月14日土曜日

地すべり安定計算の必要抑止力

3次元の地すべり安定計算で悩むのは、必要抑止力の設定、言い換えれば目標安全率の設定ではないでしょうか?2次元であれば色々な基準で設定されていますので、言い方は悪いのですが、ルーチンワークのように設計まで流れてしまいます。しかし、3次元では基準が無いため、古典的てすがホフランドか?やはりヤンブーか?それともLEMではなくFEMか?その時の必要抑止力はどの程度を設定するのが妥当なのか?全て技術力に委ねられます。

どのような手法でも、対象とする地すべりブロックは変らない訳ですから、必要抑止力は変わらないはずです(目標安全率は変ります)。そうすると、フォーラムエイトや群馬大の鵜飼先生の提案も、実務的かつ現状では、もっとも受け入れやすいと思います。

いずれは、模型実験でも事例収集でも良いので、3次元形状に応じた必要抑止力の設定方法が整理され、さらには、2次元解析結果を3次元形状によって補正できるまでになれば、イイなあと思います。