http://homepage3.nifty.com/jagh_torikichi/faq/faq_ans.htm#11-0
・ 揚水限界量を求める計算式はありますか?
手持ちのデータと下記資料を照らし合わせ、目的の揚水量を導く適当な計算式から計算されることを提案します。
参考図書1.(社)地盤工学会編:地盤調査 基本と手引き
主に第23章 揚水試験と第22章 透水試験
参考図書2.(社)地盤工学会編 現場技術者のための土と基礎
シリーズ19「根切り工事と地下水ー調査・設計から施工までー」
参考図書2について水替え工法勉強会のHPに、以下のような明快な解説があります。すばらしい!デッドリンクになる前にコピーさせて頂きました。
http://www.mizukae.com/qanda/qanda-29.html
この中の、Imax が使えますね。
安全率について
投稿者:misawa 投稿日: 9月21日(水)11時30分24秒
HP大変興味深く拝見しております。
さて、ディープウェルの安全率についてお伺いしたいと思います。
「根切り工事と地下水」P207において、以下の記載があります。
”通常、シチャートの式は経験的に地盤の透水係数10-2cm/sでよく適合するといわれているので、Fs=1とすると、・・・”
ディープウェル1本当たりの、可能揚水量と必要排水量とを比較し、安全率を求めますが、安全率を設定する際の根拠となるような文献はありますでしょうか?上記に透水係数10-2cm/s云々とありますが、透水係数により安全率は異なってくるのでしょうか?
また、シチャート(シーハルト??)の式は、井戸ロスを考慮した揚水可能量を算出する経験式と見なせばよろしいのでしょうか?
以上、アドバイスお願いいたします。Re:安全率について
投稿者:利光 投稿日: 9月23日(金)22時13分3秒
今回のご質問内容は、多くの技術者が疑問に思っている部分だと思います。
書店や図書館で専門書を探しても、満足できる答えは得られないでしょう・・・。
ところが、ネットサーフィンで、発見し、入手した文献に答えがありました。
文献名は「Groundwater Lowering In Construction」です。
以下、文献内容を引用しながら、私見を述べますので、参考にしてください。
■ディープウェル揚水能力算定式と透水係数の適用範囲
以下に「根切工事と地下水」に示されているディープウェル揚水能力の算定式を示します。
Sichardt(Sichart、シーハルト、シチャート、ジハルト)の式と呼ばれています。
ドイツ語読みであれば「ジハルト」が正解に近いのでしょうか?・・・。
q=2*3.14*rw*lw*√k/15*Fs (5.9)
q : ディープウェル1本当たりの揚水能力 (m3/sec)
rw: ディープウェル半径 (m)
lw: ディープウェル内への地下水の浸出部分のフィルター長さ (m)
k : 地盤の透水係数 (m/sec) ---> (cm/sec)ではありません。
Fs: 安全率 --- 「根切工事と地下水」でのみ、示されている?
文献によると(5.9)式は次のようにして導かれています。
単純明快です。
q=A*v
=2*3.14*rw*lw*k*Imax
=2*3.14*rw*lw*k*1/(15*√k)
=2*3.14*rw*lw*√k/15
A : 地下水浸出部分(流入部分)のフィルタ表面積
A=2*3.14*rw*lw
v : ウェル外周面における地下水のウェル内流入速度
v=k*Imax ----- Darcy's law(ダルシーの法則)
Imax : 最大揚水能力が得られる最大動水勾配
Imax=1/(15*√k)
文献によると、Imaxの算定式は1928年、Sichardtが多くのポンプ揚水井戸施工実績を調査分析して導き出した式(経験式、実験式)のようです。
(5.9)式がSichardtの式と呼ばれる理由が見つかりました。
さて、文献によると、最大動水勾配算定式 Imax=1/(15*√k) の適用範囲は K>1*10^-4m/sec = 1*10^-2cm/sec となっています。
1993年、Preene and Powrieの研究により、K<1*10-4m/secの場合、上式を用いるとImaxが過大に算出されることがわかりました。つまり、ウェル揚水能力が過大に算出されることがわかったのです。
Preene and Powrieの研究によって示されている「透水係数~ウエル口径~揚水能力の相関図」により試算した結果を示します。
rw k q1 q2 q1/q2
-----------------------------------------------------------------
0.3m 1*10^-3m/sec 0.0040m3/sec 0.0040m3/sec 1.0
0.3m 1*10^-4m/sec 0.0012m3/sec 0.0013m3/sec 0.9
0.3m 1*10^-5m/sec 0.0002m3/sec 0.0004m3/sec 0.5
rw: ディープウェル半径 (m)
k : 地盤の透水係数 (m/sec)
q1: グラフから読取ったストレーナ1m当たりウェル揚水能力(m3/sec/m)
q2: Sichardtの式でFs=1として算出したストレーナ1m当たりウェル揚水能力(m3/sec/m)
Sichardtの式の適用範囲が K>1*10^-4m/sec = 1*10^-2cm/sec となっている理由が見つかりました。
q1/q2を(5.9)の安全率Fsとすると、K>1*10^-4m/secの場合はFs=1、K=1*10^-5m/secの場合は
Fs=0.5となります。
なぜ、このような重要な情報が、日本の専門図書に掲載されていないのでしょうか?
(5.9)式を「きわめて不思議な式・・・」と酷評した論説文を読んだことがあります。
恐らく、Sichardtの研究成果を調査されなかったのでしょう・・・。残念です。
「Groundwater Lowering In Construction」には他にも重要な情報が掲載されています。
文献引用ばかりの和書を読むよりも、参考になります。
問題は「お役所が、この洋書を設計根拠資料として認めるかどうか?」です・・・。
■井戸ロスについて
井戸ロス(井戸損失)とは井戸外周面水位と井戸内水位の差を意味するものです。
Sichardtの式は井戸外周面水位以深にあるストレーナ長をパラメータとしてウェル揚水能力を算定する式です。
したがって、井戸ロスを考慮したウェル揚水能力算定式ではありません。
なお、井戸外周面水位は井戸干渉によって変化しますので、群井戸の式で算出してください。
以上
全体的にはP. M. Cashman and M. Preene (2001)Groundwater Lowering in Construction :A practical guide, p214~215 のことを解説されています。この本、今年8月に 2nd Ed. が出るようなので、この個所がそのまま残るかどうか分かりません。ただ、「根切り工事と地下水」は有名な本ですから、根拠には使えるでしょう。Sichardt とPreene and Powrie の文献、早速注文しましょう。
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