2015年4月1日水曜日

有効応力解析と全応力解析

FEMを使った変形解析では、静的全応力解析が主流です。有効応力解析は、圧密や液状化の問題に利用されています。

基本的には変形(変形係数・ポアソン比・せん断剛性)の話題になりますので、ここ数日の有効応力法・全応力法(c・φ・安全率)の議論とは土俵が異なります。が、自重解析での塑性化チェック、弾塑性モデル、SSRM 、ダイレイタンシー角などを扱う必要があるでしょうから、やはり基礎知識として押えておくべきでしょう。

数値計算における有効応力解析と全応力解析の違いについて、詳細に説明した書物は見当たりません。もっと先の話をするために本を書かれているからでしょう。基本的には、変形に関し浸透・水圧の計算を取り扱っている(土の計算と連成している)か否かの違いです。
それらの違いやパラメータの取り扱いについては、以下の入門書が丁寧で参考になると思います。
備忘録を兼ねてピックアップしてみました(いやー、忘れていますね)。

地盤工学会「地盤技術者のためのFEMシリーズ①初めて学ぶ有限要素法、②弾塑性有限要素法が分かる」
動解での全応力解析と有効応力解析 ②P198 
全応力解析(土骨格・間隙水を一体として扱う)
有効応力解析(土骨格・間隙水を個別に扱う) 
地震時は、よほど透水性のよい砂礫でない限り非排水
非排水せん断で、ダイレイタンシーによって過剰間隙水圧発生
全応力解析では、過剰間隙水圧の影響を含めた形での動的変形特性や動的強度特性を用いる必要がある。しかし、大ひずみ領域ではダイレイタンシー挙動や繰り返し効果が顕著になり、過剰間隙水圧を陰に含んだ全応力強度特性を室内試験から設定することは困難。
全応力解析はダイレイタンシー挙動がさほど顕著に表れない中ひずみまでの領域で用いられることが多い。
大ひずみ領域では、有効応力解析を用いざるを得ない。 
単位体積重量 ①P152②P199
中ひずみ以下での「非排水条件下での飽和地盤を対象とし、動的変形特性を用いた全応力解析」の密度・・・粘性土や地下水以浅:湿潤密度、地下水位以深:飽和密度
有効応力解析を行う場合は、地下水面下で有効単位体積重量γ’を用いればよい。 
変形係数 ①151②P209
有効応力解析の弾性係数E’
一軸のE50は非排水であり、全応力に対する弾性係数。
有効応力解析では、有効応力に関する弾性係数に変換する。利用するのはせん断剛性G。せん断剛性G=E’/2(1+ν’)は体積変化に無関係。
E’/2(1+ν’)= E50/2(1+ν)
E’=E50(1+ν’)/1.5
有効応力解析のν’=1/3程度。
(講習会では、「粘土の側方流動などを扱う場合、ν=0.1~0.2程度が多い。0.3を超えることはない。」と言われていました)

ソフトによって水位や単体の入力・表現方法、ダイレイタンシー特性の設定法などにルールがあります。そのソフト・コードがどのような処理をするのか理解しないと、パラメーターの設定を大きく誤ります。まず確認、ですね。
FORUM8さんはFAQとして掲載されています。確認される方が多いのでしょうね。

有効応力解析UWLC
http://www.forum8.co.jp/faq/win/uwlc.html#q1-5

全応力解析GeoFEA2D
http://www.forum8.co.jp/faq/win/geo2d.htm#q2-32
http://www.forum8.co.jp/faq/win/geo2d.htm#q2-33
http://www.forum8.co.jp/faq/win/geo2d.htm#q2-81


全応力法(圧密持有効応力法)、有効応力法、全応力解析、有効応力解析、ややこしいように思えますが、ベースは至ってシンプルです。

0 件のコメント:

コメントを投稿