2015年9月28日月曜日

火山噴出物の写真

火山噴出物の同定は難しいと思います。

噴出物は各地で古くから研究されており、その地方での層序が決定されています。数10cm単位で命名されているため、いきなり知らない土地に行って、一見では判別できません。
昔の資料では写真がなく、研究に使われた露頭も無くなっていることが多いようです。図書も適当なものが見当たらないですね。残念です。

こちらのサイトでは、写真を用いて噴出物を整理されていました。こういったサイトが火山毎に増えると、調査に出向く場合に助かります。
http://ooisivolcano.my.coocan.jp/volcano/tephras.htm

この連休中、既往柱状図やコアを眺めていたのですが、地元の地質屋さんでも噴出物の記載にはバラツキがありました。コアだけでは同定が困難ですし、構成物も不均質なので難しいのでしょう。扱うスケールによっても、対象や目的によっても記載を変えられているようで、それが余計に複雑化を招いていました。

私もまだまだ。
試料や露頭を何度か見直し、先輩に教えを請い、XRDの結果を見て、また見直しの繰り返しで、ようやく納得いくものができてきました。
層区分を整理しGEORAMAに断面を書かせてみると、珍しく一発で決定。flow unit 自体は単純なのでしょう。
さらに細分すると、次第に矛盾点が出てきます。GEORAMAが正誤を教えてくれているように感じます。そこを修正していく際に、またコアを見直し再考します。

そうやって、何度も歩き、何度も見直して、自然の状態に近づけて行くのだと思います。地質屋の基本の一つでしょう。


2015年9月26日土曜日

せん断剛性と密度

せん断剛性Gを密度とVsから出す場合の単位の取り方です。
もともとは下記の通りだと思われますが、γを現行の単位体積重量kN/m3、ρを密度t/m3=g/cm3として取り扱うと、算出される G がkN/m2となり扱いやすいですね。

ρ=γ/g
G=ρVs2
ここで
湿潤重量γ:tf/m3
湿潤密度ρ:tf・sec2/m4
重力加速度g:9.8m/sec2
 S波速度Vs:m/sec
せん断剛性率G:tf/m2

ところで、この単位体積重量はサンプリング+土質試験結果として得られるわけですが、どの単体を使えばよいか、今まで全く悩んでいませんでした。不飽和領域で湿潤単体、飽和領域で飽和単体を使用すれば良いと思っていましたが、そのような細かいことを書かれている書物はありません。整理を頼んでいた方から、あらためて尋ねられる機会があったのですが、返答に困りました。

結局、耐震のプロに聞きました。
答えは「あまり気にしなくても良い」でした。
SHAKE前提ですが、土層のGの相対値が効いてくるため、ρは湿潤でも飽和でも、それほど大きな差は出ないとのこと。
うーん。本当でしょうか。

SoilPlusで 入力してみましたが、地震波の入力がうまくいかず断念。
課題が残りました。

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2015/10/12追記

「Gの相対値(比)が効いてくる」というのは、以下のことでしょう。ρも相対値が使われることになります。

國生剛治「地盤地震動力学の基礎」p138 (4.2.12)~(4.2.15)式

p157 あたりも理由の一つかもしれません。
手を動かすことも大事ですが、基礎理論の理解がまず最初、ですね。

2015年9月22日火曜日

G=ρVs2

PS検層結果の整理をお願いしていて、以下の式に疑問を持ちました。

G=ρVs2

あらためて考えますと、この導出を見たことがありません。ρが関与するイメージがわかず、波動の本を読み返してみました。しっかり載っています。
長谷川修司「講談社基礎物理学シリーズ2振動・波動」p167 

波動方程式は以下の通り。一般的ですのでわかりやすく解説されたサイトもあります。
http://d.hatena.ne.jp/Rion778/20111231/1325257353

 


弾性体のずれ変形は 以下の通り。




これを見比べ、「ずれ変形は速さ Vs=√(G/ρ) で伝播する」ということでした。
P波の場合はG(せん断剛性率=ずれ弾性率)をE(ヤング率)に直せばよいとのことですが、こちらはとりあえず置いておきましょう。

2015年9月20日日曜日

ゲーミングマウス + プログラマブルキーボード

私はマウス操作に左右両手を使っています。

右手が痛くなったら左手で、左手が痛くなったら右手で、というように、交互で使用するケースと、複数台のPCを左右で使うというようなケースがあります。
基本は左手操作なのですが、 その左手が腱鞘炎になってしまいました。ハンマーで腱鞘炎ならず、マウスで腱鞘炎と言うところが、地質屋さんとしてちょっと恥ずかしいところですが。

仕方ないのでエルゴノミックマウスの左手用を探すことに。
どうせならゲーミングマウスの左手用!と思ったのですが、これが皆無。通常のエルゴ左手用も、引っかかったのは2種だけでした。左手用は売れないんでしょうね。
結局、左手用のエルゴマウスをオンラインで注文したのですが、1か月経ってもまだ届きません。在庫も抱えないようにしているのでしょう。

ついでに両手用のゲーミングマウスを購入。これが当たりでした。
http://gaming.logicool.co.jp/ja-jp/product/g300s-gaming-mouse
9ボタンのため、CADで使用するには割り当てが足りず、プログラマブルキーボードを併せて購入しました。ゲーム用でなければ、案外安い。
http://www.scythe.co.jp/input-device/rakuraku-keyboard3.html
左手が自由に使えませんので、右手にゲーミングマウスを配置。片手でマウス操作+コピペ、undo、redoなどができるのはありがたいです。
「Logicool ゲーミングソフトウェア」を入れて設定すると、Civil3D を立ち上げた際に、マウスの設定が自動でCAD用に変わるようになります。便利です。割り当てられなかったコマンドはキーボードに登録。キーボードは配置が変わったためか、押し間違いがよくあります。が、そのうち慣れるでしょう。

さらに、2台のPCをマウスが行き来できるように、Input Director をインストール。マウスは各PCにつけていますので、どちらが親になっても(右手でも左手でも)両PCが操作できるようになりました(当分は右手onlyですが)。今まではスイッチで切り替えていましたので、快適です。少し不具合がありますが、ほぼ満足です。

ちょっとしたギミックの組み合わせで、快適になるものですね。






2015年9月14日月曜日

フラジパン

もう一つ、この図書から。
山野井「日本の土: 地質学が明かす黒土と縄文文化」

最近、十数mにわたって道沿いに切られている土壌全体に、規則的な筋状の構造を見ました。薄く剥いでみると、亀裂や断層のようにシャープな形状でなくやや不規則に曲がりを有しており、下に行くほど結合し数が減っている、といったような筋状構造でした。露頭上部は数が多いものの、最上部は消えていました。その時は「木の根の跡だろう」と気にしないようにして離れたのですが、少し形状に違和感があり記憶に残っていました。

この図書のp93図5-11左の写真を見て、「似ている」と思い、読み進めました。

どうやら「フラジパン」と呼ばれる構造のようです。永久凍土でクサビ状の氷(アイスウェッジ)ができた跡で、水平断面を見るとポリゴンのようになっているとのこと。
確かに、最終氷期にそのような構造が形成されてもおかしくありません。 水平断面を確認したいですね。

これまで、最終氷期の構造など取り扱ったことがなく、このような発想がなかったので、新鮮でした。私が見たのが「フラジパン」である確証はありませんが、これからの踏査では、そのような見方もするでしょうね。儲けものでした。

2015年9月13日日曜日

クロボク土

山野井「日本の土: 地質学が明かす黒土と縄文文化」

クロボクの話です。今年の2月に発売されてから、ずっと気になっていました。
今まで、クロボクは火山灰と関連してできる土壌と教えられてきました。が、それが現世の表層にしかないことに引っかかっていました(表層付近に何枚か分布する箇所もあるようですが)。なぜ、過去に何度も同じ環境が生じているはずなのに、現地形の最上部にしかないのかと?
その答えを著者なりに出されていました。

・クロボクには微粒炭が含まれる = 縄文人の野焼き、山焼きの影響を受けた土
・微粒炭が活性炭となって、可溶腐植を吸着 ・保持し,クロボク土が 形成

ただ、この原著論文が1996年で約20年前。あまり受け入れられていないようですね。
山野井徹(1996)黒土の成因に関する地質学的検討, 地質學雜誌, 102(6), 526-544
http://ci.nii.ac.jp/els/110003013763.pdf?id=ART0003437151&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1442138430&cp=

抵抗が大きかったのでしょうか、次の年に、誌上討論が行われています。
 山野井論文「黒土の成因に関する地質学的検討」の問題点
http://ci.nii.ac.jp/els/110003013937.pdf?id=ART0003437918&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1442136874&cp=
山野井論文「黒土の成因に関する地質学的検討」についてのペ ドロジストの疑問にこたえて
http://ci.nii.ac.jp/els/110003013938.pdf?id=ART0003437921&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1442137616&cp=

人為的な影響は1976年のアーバンクボタ13でも触れられています。
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/996533/www.kubota.co.jp/urban/pdf/13/pdf/13_2_5.pdf

ただ、人為的な影響があるのなら、日本よりは世界で多く認められ、報告されているはずです。そのあたりはどうなのでしょうか?

個人的には面白い知見だと思います。世界に通ずる知見であれば良いですね。


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2015.9.16追記
先輩に、「10万年前のクロボクが深部に存在する地域もある」と言われました。
見てみたいですね。さすがにこれは、ヒトとは無関係ですね。

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2015.11.8追記
今日、NHKスペシャル「アジア巨大遺跡 第4集 縄文 奇跡の大集落 ~1万年 持続の秘密~」を見ました。青森県三内丸山遺跡での縄文文化研究の紹介でした。
豊かな森と共生していた縄文人が農耕文化を拒んだ理由として、「自然環境の破壊」を考えられている方がいらっしゃいました。意外でしたね。
現在の各地の縄文文化の研究では、野焼き、山焼きが行われていたのかどうか、答えは出ているのかもしれません。

2015年9月12日土曜日

USB 簡易スコープ

観察のため、孔内にカメラを入れることがあります。

機種は多様で、条件や目的によって選択します。
ボーリング孔であれば、BTV(Borehole TV)と呼ばれている亀裂観察用のカメラの出番が多いでしょう。
一番大掛かりなのが、立坑の観察。カメラはBTVと似たようなものですが、直径数mありますので、準備や調整に時間がかかります。

先日、CCD スコープと、USB 接続の簡易スコープの2種を使用しました。
前者は3m の完全防水。焦点距離は10mm〜無限大まで対応していますので、撮影は容易です。が、画素数は30万とやや少なめ。100V 電源も必要で、現場でのケーブルの取り回しが煩雑です。

USB接続の簡易スコープは、同僚の紹介で購入。5m のUSBバスパワータイプで、タブレットやPCに挿すだけですので、現場での取り回しが非常に楽です。ネットでは2〜3千円で売られています。簡易防水(同僚の7m タイプは水没で壊れました)かつ焦点距離が数cmまでのため、使用環境は限られます。が、100万画素程度の静止画は撮影可能です。
今回は UAV のプロポ等取り付け台に、NEXUS7+USB変換ケーブルを取り付けて使用しました。初めての使用でしたが、数枚に1枚の頻度で綺麗な写真がとれました(焦点距離を合わせるのに苦労します)。

オモチャの割には、役に立ちそうです。

2015年9月9日水曜日

判例

産廃判例訴訟の判例を集めた図書がありました。これがなかなか新鮮です。

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北村喜宣監修「産廃判例が解る」環境新聞社p10-16

民事訴訟:住民が原告の事件

有害物質水道水混入を理由に建設等差止が認められた事例
全隅町安定型処分場建設等差止請求事件

判旨
[1]当該廃棄物処分場に「有害物質」が搬入され埋め立てられることが合理的に予測されるか?
[2]当該廃棄物処分場の「有害物質」が場外に漏出することが合理的に予測されるか?
[3]漏出した「有害物質」が水道や蛇口まで到達することが合理的に予測されるか?


原告が上記3点について合理的に高度の蓋然性をもって疑われる(①~③)ことを立証する必要がある。
被告は下記を立証すべき。立証できない場合は[1]~[3]の法的因果予測の面の証明があったというべきである。
④「有害物質」が搬入されない、。
⑤仮に「有害物質」が搬入されても、埋め立てられない十分な対策を講じている。
⑥仮に「有害物質」埋め立てられても、場外に漏出しない十分な対策が講じられている。

立証事実と立証責任
差止請求者が、どの様な経路でどの程度の量が水道水に到達し、健康被害を摂取者にもたらすものかを、自然科学的論証において必要とされる厳密さをもって特定し、すべてを立証するこは不可能。予測の立証の程度は「通常人が合理的疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうる」との判断を示した。[1][2](予測)でなく、①②(蓋然性をもって疑われる)とすることで証明責任を軽減した。

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最初の事例は上記のような内容でした。
面白いと思ったのは、「蓋然性」という語句。技術者は「可能性」「確度」「確率」などという客観的な語句を多用し、「蓋然性」といった主観的な語句をほぼ使用しないと思います(私が国語を知らないだけかもしれませんが)。 便利な言葉です。


次の事例は、「改正共同命令」に適合していない=未処理液の漏出による健康被害の蓋然性が事実上推定される、といったもの。受忍限度を超えるという事実の証明は困難なため、有害物質混入の蓋然性という比較的証明が容易な前提事実からの推定を許すことで、立証負担を軽減するという手法が特徴のようです。これもユニークです。裁判のテクニックだそうですが、ニッチかつディープな世界のようです。