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2026年3月21日土曜日

文献:Direct inversion of surface wave dispersion

Direct inversion of surface wave dispersion for three-dimensional shallow crustal structure based on ray tracing: methodology and application | Geophysical Journal International | Oxford Academic

AI要約

背景
表面波トモグラフィーは、地球の地殻や上部マントルの構造を研究する上で重要な役割を果たしてきました。従来の一般的な手法は、まず観測された走時データから2次元の位相速度(または群速度)マップを作成し、次に各地点の分散データのインバージョンにより1次元の横波(S波)速度プロファイルを求めるという、2段階のプロセスを踏みます。しかし、この手法や従来の直接反転法では、多くの場合、大圏コース(Great Circle)伝播を仮定しており、複雑な構造を持つ地殻浅部などでは、波の伝播経路の歪みが無視できず、推定結果にバイアスが生じる可能性がありました。一方で、波形全体を用いるフルウェーブフォームインバージョン(FWI)やアジョイントトモグラフィーは高精度ですが、特に高周波数帯域において計算コストが非常に高いという課題があります。

手法
本論文で提案された手法は、中間的な速度マップを作成せず、分散データから直接3次元のS波速度構造を求める単一ステップのインバージョン法です。主な特徴は以下の通りです。

Fast Marching Method( FMM) によるレイトレーシング: 各周期において、FMMを用いて震源・受信点間の走時と波の伝播経路を計算します。これにより、不均質メディアにおける大圏コースからの経路の逸脱を考慮することが可能になります。

反復的な更新: 反転プロセスにおいて、新しく得られた3次元速度モデルに基づいて、波の経路とデータ感度行列(カーネル)を逐次更新します。

ウェーブレット基底を用いた疎性制約付き反転: モデルパラメータをウェーブレット領域で表現します。ウェーブレット変換の多重解像度特性を利用し、データ制約が強い地域では高解像度を、制約が弱い地域では長波長の特徴を保持するようにします。

L1ノルム正則化: ウェーブレット係数がまばら(スパース)であると仮定し、L1 ノルム正則化を適用します。これにより、従来の滑らかさを強制する正則化よりも、データの分布に適合した適応的な解像度が得られます。

計算アルゴリズム: L1ノルムベースの最小化問題を解くために、反復再重合最小二乗法(Iteratively Reweighted Least Squares: IRLS)とLSQRアルゴリズムを組み合わせて使用しています。

物性間の関係: P波速度(α)と密度(ρ)は、地殻に関する経験的な関係式(Brocher, 2005)を用いてS波速度(β)に関連付けられており、これらによる分散への影響も感度行列に含まれています。

結果
台湾の台北盆地における、環境ノイズ相関法から抽出された短周期(0.5〜3.0秒)のレイリー波位相速度データにこの手法を適用しました。

計算の収束: 反復的な反転により、走時残差の標準偏差は1.44秒から0.91秒に減少し、残差の平均はほぼゼロになりました。

速度構造の解明: 盆地内の低速度域と山地(大屯火山群など)の高速度域が明瞭に描き出されました。これらの結果は地表の地質構造と良好に一致しています。

従来手法との比較: 従来の2段階反転法の結果と概ね一致しましたが、データ網羅性が低い地域では、本手法の方がアーティファクトが少なく、より安定した結果が得られました。

解像度テスト: チェッカーボードテストにより、データ制約が良い地域では水平・垂直方向に高い解像度を持つことが確認されました。

考察
提案手法は、計算効率と精度のバランスに優れており、特に構造が複雑な地殻浅部の調査に有効です。

利点: 2次元速度マップの構築が不要であり、3次元参照モデルの組み込みが容易です。また、ウェーブレット基底の採用により、データの密度に応じてモデルの細かさが自動的に調整されます。

限界と仮定: 現状では高周波近似(レイ理論)に基づいており、滑らかな不均質構造を想定しています。

今後の展望: 有限頻度効果(Finite-frequency effects)を取り入れた感度カーネルの導入や、実体波(P波・S波)の走時データとの共同反転(Joint Inversion)への拡張が期待されます。これにより、地殻浅部におけるP波・S波両方の速度構造をより正確に制約できる可能性があります。

こちらも、数式を追うのに時間がかかりました。パスを計算する点や、1次元のインバージョンを介さないという点が新鮮です。



2026年3月18日水曜日

文献:3D Wave‐Equation Dispersion Inversion of Distributed Acoustic Sensing Data


AI要約
3D波動方程式分散インバージョン(3D-DAS-WD)法の解析手順
3D-DAS-WD法は、DASひずみデータに直接基づく3D波動方程式分散インバージョン手法であり、ひずみ成分を速度に変換する際の数値誤差を回避し、低SNR(信号対雑音比)のDASデータにおけるFull Waveform Inversion(FWI)の収束問題に対処することを目的としています。この手法は、浅い地表付近の地質構造を高分解能で3Dイメージングする能力を示しており、地下の空洞などの特徴を効果的に特定できます。

1. DASの基本原理とデータ取得
• DASの測定原理: 従来の地震計が粒子速度を測定するのに対し、DASは光ファイバーのゲージ長に沿ったひずみ速度を測定します。

2. 初期S波速度モデルの作成
• 解析の出発点として、初期S波速度モデルを準備します。このモデルは、反復的なインバージョンプロセスを通じて改善されていきます。

3. 予測ひずみ速度DASデータの順モデリング
• 作成した初期S波速度モデルを用いて、forward modeling を実行し、予測されるひずみ速度DASデータを生成します。この研究では、スペクトル要素法に基づく弾性モデリングコードSPECFEM3Dが使用されています。
• 計算される速度成分は、式(14)および(15)を使ってDASひずみ速度成分に変換されます。

4. 観測データと予測データの分散曲線の導出
• MASW として分散曲線を作成します。
• 分散曲線は、linear Radon transform を用いて計算された分散スペクトルの最大値に基づいて抽出されます。
• この研究では、各ショットから10度間隔で分散曲線が抽出されます。

5. 目的関数の定義と勾配の計算
• 目的関数(Objective Function): 3D-DAS-WD法は、観測された波数κobs (θ,ω)と予測されたDASデータ表面波分散曲線κ(θ,ω)の二乗差の合計を最小化します。目的関数Jは以下のように定義されます: 
J = (1/2) ∑θ ∑ω (κ(θ,ω) − κobs (θ,ω))^2
ここで、θは方位角、ωは周波数です。

• S波速度に対する勾配: S波速度s(x)に対する目的関数の勾配δ(x)は、以下の式で計算されます: 
δ(x) = ∂J / ∂s(x) = ∑θ ∑ω Δκ(θ,ω) (∂κ(θ,ω) / ∂s(x))

• Fréchet 微分の導出: Fréchet 微分 (∂κ(θ,ω) / ∂s(x)) は、予測データと観測データのk-ω領域における相関を示す接続関数(connection function)Φを用いて導出されます。これは、随伴状態法(adjoint state method)を使用して計算されます。最終的にS波速度 s を λ (ラメの第一定数) と μ (剛性率) に関連付けることで、Fréchet 微分が導出されます
∂κ(θ,ω) / ∂s(x)
 = − (1/A) R{∫ ∂D(g,ω)/∂s(x) D̂*obs(g,θ,ω) dg} 
 = − (1/A) R{∫⟨GR ∂u(g,ω)/∂s(x), D̂obs(g,θ,ω)⟩ dg}
= − 4ρs (∂κ(m) / ∂λ) + 2ρs (∂κ(m) / ∂μ) 

・∂κ(m) / ∂λ、∂κ(m) / ∂μは、 波場u(m)(合成地震計データ)とバックプロパゲーションされた残差u'(D̂∗obs(g,θ,ω)をソースとする)の内積の積分として表される。

6. 速度モデルの更新
• ステップ長の決定: safeguarded backtracking line search method を用いて、モデル更新のためのステップ長αが決定されます。
• モデルの反復更新: S波速度モデルは、計算された勾配とステップ長αを用いて、steepest-descent formula により反復的に更新されます。 ここで、

7. 収束判定と最終S波速度モデルの出力
• ステップ3から6のプロセスは、目的関数が指定された誤差閾値以下になるか、または最大反復回数に達するまで繰り返されます。
• 収束条件が満たされた後、最終的なS波速度インバージョンモデルが出力されます。

さすがにAI要約のみでは理解できず、数式を追うのに時間がかかりました。
DAS(1軸センサー)を利用して、どのようにレイリー波を取り出すか、取り出した後、どのようにインバージョンをかけると精度が落ちにくいか、という内容でした。地震分野の知識の蓄積を感じる文献です。
3次元解析を目的としてファイバーをクロスで張るなら、通常のピックを使った方が楽なように感じましたが。ま、一つの方法として覚えておきましょう。

2025年8月16日土曜日

文献:表面波 スタッキング方法の比較

 Optimal stacking of noise cross-correlation functions | Geophysical Journal International | Oxford Academic

AI要約

背景・目的
地震波形データのノイズクロスコレレーション関数(Noise Cross-correlation Functions; NCF)は、地殻の速度構造や監視、地盤運動解析などに広く使われているが、データ品質のばらつきやノイズの影響により、単純な平均(Linear stacking)では信号品質の劣化が課題となる。本研究は、8種のNCFスタッキング手法の性能を評価し、最適な方法を用途別にガイドする。

評価したスタッキング手法(8種)
Linear stacking(算術平均)
Robust stacking(ロバスト加重平均)
Selective stacking(選抜平均)
Cluster stacking(クラスタ平均、独自新手法)
Phase-Weighted stacking(PWS; 位相加重平均)
Time–frequency Phase-Weighted stacking(tf-PWS)
Nth-root stacking(n乗根的非線形平均)
Adaptive Covariance Filter stacking(ACF)

Linear stacking(算術平均)
すべてのNCFを単純な加算・算術平均として重み1で合成する、最も基本的な手法。すべてのデータが等しく扱われるため、外れ値やノイズの影響を受けやすいが計算は高速。

Robust stacking(ロバスト加重平均)
Pavlis & Vernon (2010)による反復的加重平均法で、リファレンススタックと各NCFの類似度・残差により重み付け。類似度が低いNCFは重みが低くなり、外れ値の影響を抑制する。重みはL1ノルム(内積)とL2ノルム(残差)の両方を用いて定義し、収束まで繰り返す

Selective stacking(選抜平均)
Pearson相関係数などにより「良質なNCF」のみを選抜して平均する手法。設定したしきい値(例:相関係数0.7や0.8)以上のみ重み1、それ未満は重み0として排除することで、質の悪いデータの影響を除去する。基準波形は線形スタックなどを使用可能

Cluster stacking(クラスタ平均)
機械学習のクラスタリング(k-means法など)でNCFを類似したグループに分類し、クラスタ中心(代表波形)同士を振幅比などで加重平均する手法。2クラスタの場合、代表中心の振幅比で重みをつけ、基準値を超える場合は両方加重、それ以外は高振幅側のみ採用する。NCFのパターンや特徴に応じて重みづけ可能な新手法

Phase-Weighted stacking(PWS; 位相加重平均)
Schimmel & Paulssen (1997)の手法で、各サンプルごとに瞬時位相のコヒーレンス(cosine/sineの平均)で重み付けする。コヒーレンスが高いサンプルは強調される非線形スタック。「harshness」パラメータ(本研究は2)で重みの急峻性を調整。外れ値や波形ノイズに強い

Time–frequency Phase-Weighted stacking(tf-PWS)
PWSの時間・周波数拡張版。Stockwell変換(S-Transform)やDOST(Discrete Orthogonal S-Transform)によりNCFを時系列かつ周波数ごとに分解し、両方で位相コヒーレンスによる重み付けを行う。より短周期・非定常なノイズ成分に対応。パラメータ設定により計算時間も異なる

Nth-root stacking(n乗根的非線形平均)
各NCFの絶対値のn乗根をとって合成し、最後に加算結果のn乗に戻す方法。振幅の高い外れ値の影響を抑えつつ信号のコヒーレンスを強調できる。nは根の次数(本研究では通常2乗根)。配列地震学等で利用される非線形フィルタ。

Adaptive Covariance Filter stacking(ACF)
Nakata et al. (2015)による手法。各NCFに対してスペクトル成分の共分散フィルター(適応型偏極化フィルター)を適用し、非コヒーレントなノイズ成分を抑制。その後、線形平均する。ノイズと信号の分離に特化し、地震探査や環境ノイズデータに有効。計算負荷は比較的大きめ

データ・解析対象
米国カスカディア地震観測網(陸・海底両方、複数ネットワーク)
騒音波形をRaw(未処理)とOne-bit(1ビット正規化)で比較
各手法について6つの評価指標:SNR, 位相分散, 収束速度, 時間変化, 振幅減衰, 計算時間

主な結果・知見
原則としてどの方法でも主要な到達波(ballistic/first arrival)は抽出できるが、位相・振幅の保存特性は大きく異なる。
Raw NCFs:Robust stackingが最適(全用途で推奨)
One-bit NCFs:PWSとNth-root stackingを除く全てが実用的
Tomography(速度構造):Linear, Robust, Selective, Cluster, tf-PWS, ACFが有効
Monitoring(地殻変動監視):Linear, Robust, Selective推奨
振幅関連(減衰・地盤運動):Linear, Robust, Selective, Clusterが良い
PWS法はSNRは高いが位相・振幅保存では不安定
Nth-root法はSNRやノイズ耐性は良いが位相情報が劣化する場合あり
Selective/Cluster stacking、ACFは用途によって有効
Robust stackingは全体的にバランスが良い
tf-PWSは計算コストが大きい
距離減衰や一部の目的ではLinear, Robust, Selective, Clusterが安定

実装・応用
PythonパッケージStackMasterをオープンソース公開
時系列データの一般的なスタッキングにも利用可能

線形、あるいはRobust、Selectiveのような単純な方法が多くの用途に適用可といった結論が 面白い点です。NCFにピークが出てこないときは前処理の工夫と共にスタッキング手法の工夫が必要ということでしょうか。

2025年8月12日火曜日

文献:S波速度構造の推定と機械学習

 Surface wave dispersion curve inversion using mixture density networks | Geophysical Journal International | Oxford Academic

AI要約

目的と背景
浅部S波速度構造の迅速・高精度な推定は耐震・地盤工学などで重要。従来の分散曲線逆解析(線形・大域探索・ベイズ)は、局所解・計算量・不確実性評価・層数/厚さ固定などの課題がある。

提案手法(2ステップML)
ステップ1:分類NNで上部100 mの層数(2–7層+半無限層)を推定。
ステップ2:Mixture Density Network(MDN)で層境界深さ(決定論的出力)と各層S波速度の確率分布(混合ガウス10個)を同時推定。Love・Rayleigh基本モードの分散曲線(1–20 Hz)と各周波数点の不確かさを入力。

学習データと前処理
2–7層モデルで上部100 mをパラメタ化。最上層Vsは100–500 m/sで最小厚さ5 m、以深はVs∈[Vtop+100,1600] m/sで最小厚さ10 m、半無限層はVs∈[max(v)+200,2000] m/s、境界深さ最大85 m。P波速度と密度は経験式で付与(Vp=1.16Vs+1.36、ρ=1.74Vp^0.25)。
gplivemodelでLove/Rayleigh分散曲線を計算し、1–20 Hzで100点に対数再サンプル。0–5%の一様ノイズを加え、同時に不確かさベクトルuを作成し入力に含める。標準化後、学習/検証=90/10に分割。
各層数ごとにMDNを個別学習(出力次元は(層数+2)×10)。平均推定は事後分布の最大値を採用。ハイパーパラメータはHyperopt系で探索。

性能評価(合成データ)
層数分類:未学習4000モデルで正答>60%、±1の誤差が約30%、相関係数r=0.90。中間層数(4–6層)の識別がやや難しい。
MDNのVs・深さ推定:2–4層で高相関(各層r>0.84、深さr>0.80)。5–7層では深部ほど相関低下(Vs 0.62–0.87、深さ0.29–0.67)。半無限層Vsは全体で高相関(r>0.84)。
代表例:3層では狭い事後分布で真値に近い。7層では混合核の多峰性が現れ、曖昧性を示すが大筋で整合。

従来法との比較(合成データ)
比較対象:GEOPSY DINVER(近傍算法NA)とベイズMcMC(Alder et al. 2021 実装)。パラメータ空間は最大7層、Vs=100–2000 m/sに整合。
2層モデル:分類は正解、MDNは深さ・Vsとも真値に近く、推定は1秒程度。NAも良好(約30秒/1万モデル)。McMCも良好だが約2 CPU時間/20万モデル。
5層モデル:MDNは平均値が真値に近く、深さ誤差<5 m、推定は1秒程度。NAは目標適合は良いが真の構造から逸脱(層境界の位置ずれ・深部不解像)、約60秒/3万モデル。McMCは大筋整合、約7 CPU時間/50万モデル。

実データ適用(ミュンヘン)
市内L字配列(辺100 m、4.5 Hzセンサー11台、2時間観測)。HRFKで1–20 HzのLove/Rayleigh分散曲線を抽出。
分類は5層、MDNの結果は5 m付近で速度段差、その後は圧密によると考えられる速度勾配。水位・堆積物境界(GeoPot水文地質3Dモデルの砂→粘土)と整合し、20 m付近の層境界とも概ね対応。

ロバスト性検証
学習外の滑らかな速度勾配(200→1800 m/s)に対して、分類は最大の7層、MDNは構造を再現。順解析の分散曲線は入力に近く、非一意性を示唆。
低周波欠測(1–3 Hzのギャップ)を4種の外挿で補完し、不確かさを大きく設定。分類結果は3–4層に分かれたが、MDNの事後分布を平均すると浅部構造と浅い層境界は安定。30–60 mで差異が出るが最大確率は真値に近い。
深部解像度の限界例として、深部の薄い低速度層(厚さ10–30 m)の感度テストでは、10 mではノイズ下で識別困難、20 mで差がやや現れ、30 mで明瞭。深部ほど最小可探厚が増すことを示唆。

議論・利点と限界
利点:層数を固定せずに分類し、Vsの事後分布と層深さを同時に高速推定。学習後の推論は秒オーダーで、多点・多次元適用に有利。複雑構造に対しNAより高精度、McMCに近い結果を高速に得られる。
限界:深部の解像度低下と非一意性により、層数中間域の分類や深い層境界の推定は不確かさが増大。MDNは事前サンプル型で、観測近傍のサンプル密度が低い場合、McMCより事後分布が広くなる可能性がある。ただし最尤近傍は真値に近い。
実務上の注意:1–20 Hzの広帯域データが望ましい。欠測は外挿+大きな不確かさ付与で平均化戦略が有効。7層以上の極薄層は本帯域では解像困難。
将来展望:H/V比の併用、上位モード導入、説明可能AIの活用が精度・解釈性向上に有望。

 層数を指定することなく、層境界深さ・Vsの確率分布を同時に推定できる、しかも機械学習なので高速というのは従来法に比べて有利で理想的です。データを作って教師データとするのもうまいと思います。学習時の不確かさの作り方は書かれていますが、実データでどう定量化したかは書かれていません。コードを追わないとわからないのかな。


2025年8月11日月曜日

文献:分散曲線の自動ピッキング その1

Automatically Extracting Surface‐Wave Group and Phase Velocity Dispersion Curves from Dispersion Spectrograms Using a Convolutional Neural Network | Seismological Research Letters | GeoScienceWorld 

AI要約

研究の背景と目的:
アンビエントノイズトモグラフィー(ANT)は地殻や上部マントルの構造を画像化するために広く用いられているが、その重要なステップの一つが、連続的なアンビエントノイズ記録の相互相関関数から地表波の群速度および位相速度分散曲線を抽出することである。
従来の手法では、手動による抽出は非常に労働集約的で時間がかかる。自動抽出手法も、特に位相速度データにおいては信頼性が低い場合がある。本研究の目的は、これらの課題を解決するため、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いた新しい手法「DisperPicker」を提案し、群速度と位相速度の両方の分散曲線を自動的かつ正確に抽出することである。

提案手法「DisperPicker」:
DisperPickerは、CNNと特定の抽出戦略、データ品質管理基準を組み合わせた手法である。CNNの入力は周期-速度ドメインにおけるペアになった群速度および位相速度分散スペクトログラムである。これにより、群速度分散曲線が位相速度分散曲線の抽出を暗黙的にガイドし、位相速度抽出における曖昧さを軽減する。CNNのアーキテクチャは、U-net構造をベースに問題に適応するように簡略化されている。出力としての分散曲線は、ガウス関数を用いて確率画像に変換されている。これにより、CNNの訓練が容易になる。

データセットと訓練:
訓練データには、中国の3つの異なる密な地震アレイ(蘇州市、長寧-昭通、濰坊市)から収集された短周期地表波データが使用された。合計32,404組の群速度および位相速度分散曲線が手動で抽出され、訓練(28,404組)、検証(2000組)、テスト(2000組)に分割された。

結果:
テストセットでの平均損失は1.03であり、過学習がないことが示された。DisperPickerは、従来の自動抽出プログラムAutoPickerと比較して、より多くの分散点を抽出し、群速度と位相速度の両方でより高い精度を示した。特に位相速度の抽出精度が大幅に向上している。DisperPickerで抽出された分散データは、浅層のVSモデルインバージョンにおいても信頼性があることが確認された。

ただし、上記の説明では品質管理基準の具体的な内容や、どのように組み込まれるか(例えば、アルゴリズムや閾値など)については、記載がありません。

文献:分散曲線の自動ピッキング その2

Deep learning‐based extraction of surface wave dispersion curves from seismic shot gathers - Chamorro - 2024 - Near Surface Geophysics - Wiley Online Library

AI要約

この研究では、地震ショット収集データから表面波の分散曲線を深層学習を用いて直接抽出する新しい方法を提案した。

背景と課題:
多チャンネル表面波分析(MASW)では、表面波の伝播特性を利用して地盤の情報を得るが、分散曲線の抽出は通常手動で行われ、品質管理が必要であり、多大な労力を要する。

提案手法::
深層学習(residual network)を使用して、地震ショット収集データとそれに関連する分散曲線との直接的なマッピングを確立する。これにより、分散スペクトルの計算が不要となる。

データ生成:
1Dの圧縮波及びせん断波速度、密度モデルを使用して、1000組のショット収集データとその分散曲線を生成した。

結果:
合成データセットと実際のフィールドデータの両方において高品質な分散曲線の予測を実現した。結果は地域の地質と一致し、信頼性の高い速度モデルを提供できた。

不確実性の定量化::
モンテカルロドロップアウトと分布パラメータ推定技術を用いて予測の不確実性を評価し、予測プロセスの品質を確認した。

モデルの可視化:
説明可能なAI(XAI)技術を用いて、ネットワークの学習プロセスを理解し、どのデータが予測に寄与しているのかを可視化した。可視化された結果は、モデルが特定の周波数に対してどのように反応しているのかを示し、解析の透明性を高めることに寄与した。

結論:
分散曲線の自動抽出プロセスを効率化し、フィールドデータに対する分散曲線の予測精度を向上させ、実用的な逆解析の結果を得ることができることを示した。


その1の文献よりは受け入れやすい内容です。データ解析の自動化、省力化に寄与することが期待されます。

文献:分散曲線の自動ピッキングとドメインシフトへの対応

 Domain Adaptation in Automatic Picking of Phase Velocity Dispersions Based on Deep Learning - Song - 2022 - Journal of Geophysical Research: Solid Earth - Wiley Online Library

AI要約

本研究は、深層学習を用いた位相速度分散曲線の自動ピックアップにおける「サンプル不適合性(sample-inadaptability)」の問題、特に訓練データと異なる地質領域のテストデータでニューラルネットワークの性能が低下する課題に取り組んだ。これは、従来の表面波トモグラフィーが基礎モードのみに依存し、非一意性と精度が低いという問題や、手動ピックアップの時間とエネルギーの消費をディープラーニングで解決しようとする中で生じたものである。

背景1:分散曲線ピッキングにおける時間と労力の課題
地質構造を正確にマッピングするためには、基本モードと上位モードの分散曲線をピッキングするのに時間を要する。従来、位相速度-周波数図からの分散曲線の手作業によるピッキングは、かなりの時間を必要とた。そのため、深層学習を用いた分散曲線の自動ピッキングが試みられていた。

背景2:深層学習モデルの一般化能力の低下(サンプルへの不適応性/ドメインシフト)
深層学習を用いた自動ピッキングにおいて、ある位相速度-周波数図(トレーニングセット)で訓練されたニューラルネットワークが、トレーニングセットとは異なる地質学的領域のテスト図に対しては、その一般化能力や性能が低下するという問題が発生していた。これは「サンプルへの不適応性」と呼ばれ、コンピュータビジョンにおける「ドメインシフト」の問題と同義である。具体的には、東北中国のデータで訓練されたネットワークが、他の地質学的領域からの位相速度-周波数図(例えばアメリカのデータ)に対して性能が低下するという現象が観察された。

この問題に対処するため、本研究では深層学習ベースのピックアップ手法に「ドメイン適応(domain adaptation)」ステップを導入した 。具体的には、画像処理で一般的に使用される「ガンマ変換(gamma transform)」を用いて、位相速度-周波数図の画像のコントラスト(グレーレベル分布)を変更した 。ガンマ変換により、テストデータのグレーレベル分布を訓練データに近づけることで、ニューラルネットワークの汎化性能を向上させた。

分散領域の抽出には Res-Unet++ を使用し、位相速度-周波数図はF-J変換によって取得する。F-J変換は、高次モードの分散曲線を効果的に抽出できる特徴を持っている。最終的な分散曲線の特定には「追求法(pursuit method)」が用いられる。

主な成果と利点:
ガンマ変換により画像のコントラストを増加させると(ガンマ値γを減少させると)、ニューラルネットワークはより多くの分散点を特定した。例えば、合成データにおいて、γ=1からγ=0.7に変化させることで、総計92点の分散点が追加で選択され、その平均精度は99.4%以上であった。
画像の平均グレースケール分布(MGLD)がトレーニングセットの平均MGLDに近いかそれよりも高い場合、高次モードの分散領域がより効果的に抽出された。
この手法は、転移学習や新しいニューラルネットワークの再訓練なしに、訓練されたネットワークの汎化性能を向上させるという利点がある。

課題と注意点:
画像のコントラストを過度に増加させると(γを小さくしすぎると)、ニューラルネットワークがノイズなどのアーティファクトも抽出してしまう可能性があるため、適切なガンマパラメータの選択が重要である。


分散曲線のピッキングはまだ手動です。機械学習で自動化するステップ、そこで問題となるドメインシフトに対応するステップの2手遅れています。
社内の地質部門はさらに遅れています。直営で物理探査を実施していた世代のおじさん達が効率化のもと外注化を進め、技術を伝達せずに退職し、我々の世代もできる人が地質から離れてしまいました。今の若い人たちは将来どうなるのでしょう?私のチームの後輩君の一人には理論もコードも伝えているので、自力で解析できるようになっていますが、地質を知らない子ですからね。
ま、いずれにしてもドメインシフトの問題は機械学習を利用する上で避けて通れない問題です。このような取り組みがあること自体、参考になります。

2025年8月10日日曜日

文献:表面波探査による地下水位推定

 Physics‐Guided Deep Learning Model for Daily Groundwater Table Maps Estimation Using Passive Surface‐Wave Dispersion - Cunha Teixeira - 2025 - Water Resources Research - Wiley Online Library

AI要約

この研究は、限られた空間的・時間的観測データしか得られない地下水位(GWT)のモニタリングにおける課題に対処するため、DNN(MLP)と受動的な表面波解析(passive-MASW)を組み合わせたアプローチを提案している。
研究サイトでは、鉄道によって誘発される表面波を連続的に記録し、そこから毎日分散曲線(DCs)を測定している。 鉄道線路と平行に5本の測線が配置されており、42個のジオフォンが3m間隔で設置されている。

MLPモデルは、入力としての分散曲線と、出力としての対応する地下水位の深さを用いて訓練された。モデルはセンサーアレイ全体にわたるGWT深度を推定し、日々のGWTマップを生成する。モデルの性能は、訓練ピエゾメーター地点でR²が80%、RMSEが0.03mという高い精度を示した。さらに、訓練データに含まれていない別のテストピエゾメーター地点でも、R²が68%、RMSEが0.03mと良好な結果を示し、空間的な外挿能力があることが実証された。この研究は、ディープラーニングが地震データからGWTマップを推定する上で有効な手段であり、空間的に限られたピエゾメーター情報のみで広範囲の地下水動態を効率的に監視できる実用的かつ効率的な解決策を提供する可能性を示している。

表面波分散の物理::
レイリー波の位相速度(VR)は、地中の周波数(または波長)に応じたS波速度(VS)の構造に依存する。短波長は浅い深度のVSを反映し、長波長は深い深度のV_Sを反映する。この関係は非線形である。

物理モデルの考え方:
地下水位(GWT)の変動が地盤の弾性特性、特にS波速度(VS)に影響を与え、その結果として表面波(レイリー波)の位相速度(VR)の分散特性が変化するという、物理的な関係性を取り扱っている。、地下水位が上昇すると速度は低下し、地下水位が下降すると速度は上昇する。この関係はすべての波長で見られるが、特定の波長でより顕著になる。これは、地下水位の変化(水で飽和しているか否か)によって地盤の剛性が変化し、それがS波速度に影響を与え、最終的に表面波の位相速度に影響するという物理的なメカニズムに基づいている。
Physics-Guided」という言葉は、この地下水ダイナミクスと地震波速度構造の間の物理的な因果関係をモデルの基本的な入力と出力の関連性として捉え、データ駆動型のアプローチの基盤としていることを示している。つまり、地下水位の物理的な変動がどのように地震波の伝播特性に影響を与えるかという知識が、モデルの設計と解釈の指針となっている。

単純に、上載荷重の変化がVsに効いているのでしょう。
あと、Physics-informed と -guided は別物なのですね。もう間違えません。


2025年6月25日水曜日

ambient noise cross-correlation の前処理

 後輩君に ambient noise cross-correlation の前処理について聞かれました。

そういえばまとめていなかったなと思い、あらためて文献を整理。まとめてみると、1つの論文に収斂するのがよく分かりました。


No.

Title

Down Sampling

Demean

Detrend

Band Path

交通振動の少ないものを選定

amplitude-versus-offset metric

One-bit Normalization

Running-Absolute-Mean
Normalization

Spectrum Whitening

Correlation

1

岩手県の Hi-net 観測点で観測された常時微動の地震波干渉法解析による群速度の推定

20Hz

 

 

 

 

 

 

2

既設地震計の微小振動記録への地震波干渉法の適用による 農業用ダム地震波伝播特性評価の試み

 

 

0.5Hz-

 

 

 

 

 

 

3

山崎断層におけるトラフィックノイズを用いた地震は干渉法の適用

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4

常時微動の相互相関関数中の実体波の特徴

 

 

 

0.52.0 Hz

 

 

 

 

 

 

5

地震波干渉法 その 1 歴史的経緯と原理

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6

地震波干渉法 その 2 応用

 

 

 

360s, 36時間分スタック

7

地震波干渉法による西日本の地殻速度構造(1

 

 

 

 

 

 

 

 

いくつか試した結果、データ長1時間、MaxLag100

8

中京堆積盆地における表面波群速度の推定-Hi-net連続地震観測記録を用いた地震干渉法に基づく検証-

20Hz

 

 

0.052.0 Hz

 

 

 

 

1時間、1年分スタック,MaxLag100

9

福島県の広帯域リニアアレイで観測された常時微動の地震波干渉解析

20Hz

 

 

 

 

 

1sec

 

15分、1ヵ月分スタック(1時間、1日、10日、6カ月と比較)

10

Identification of a nascent tectonic boundary in the San‑in area, southwest Japan, using a 3D wave velocity structure obtained by ambient noise surface wave tomography

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10-min segments with a 50% overlap1ヵ月分スタック

11

Global propagation of body waves revealed by cross-correlation analysis of seismic hum

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.8 h segments with a 50% overlap7年分スタック

12

Processing seismic ambient noise data to obtain reliable broad-band surface wave dispersion measurements

 

 

 

 

13

Rayleigh wave group velocities at periods of 623 s across Brazil from ambient noise tomography

1Hz

760 or 360 s

 

 

 

 

14

Surface wave group velocity in the Osaka sedimentary basin, Japan, estimated using ambient noise cross-correlation functions

 

 

0.052.0 Hz

 

 

 

10sec

30分、50% overlap1年分スタック

15

Two-receiver measurements of phase velocity cross-validation of ambient-noise and earthquake-based observations

1Hz

 

 

2200s

 

 

 

 

half an hour with 50 per cent overlap

16

Aquifer Monitoring Using Ambient Seismic Noise Recorded With Distributed Acoustic Sensing (DAS) Deployed on Dark Fiber

125Hz

0.002-15Hz

 

 

 

0.5sec

 

1min

17

Distributed Acoustic Sensing for Seismic Monitoring of The Near Surface: A Traffic-Noise Interferometry Case Study

 

 

 

 

 

18

Daily Groundwater Monitoring Using Vehicle-DAS Elastic Full-waveform Inversion

 

3-10Hz

 

 

 

 

 

 


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20250628 文献追加
18:DASの場合はゲージ長が空間的なlow-pass filter の効果がある。