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2026年2月6日金曜日

文献:Probabilistic rainfall thresholds for landslide occurrence using a Bayesian approach

 Probabilistic rainfall thresholds for landslide occurrence using a Bayesian approach - Berti - 2012 - Journal of Geophysical Research: Earth Surface - Wiley Online Library

AI要約+α

背景
従来の地すべり予測手法は、地すべりを引き起こした降雨イベントのみを考慮し、決定論的閾値を提供してきた。しかし、斜面安定性は降雨だけでなく、多数の要因の組み合わせで決まるため、同じ降雨条件でも異なる結果(地すべり発生/非発生)が生じる。経験的モデル:降雨強度-継続時間(ID)閾値が一般的だが、不確実性の定量化が不十分である。

研究の対象地域
イタリア・エミリア=ロマーニャ州の山岳地域(12,000 km²)
1939年以降の4,000件以上の地すべり履歴データ
176箇所の雨量計による日降水量データ


手法
1. ベイズの基本手法(1次元解析)
P(A|B) = [P(B|A) × P(A)] / P(B)
P(A|B): 事後確率 - 降雨Bが発生したときに地すべりAが起こる確率(求めたい値)
P(B|A): 尤度 - 地すべりが発生したときに降雨Bが観測される確率
P(A): 事前確率 - 降雨に関係なく地すべりが発生する確率
P(B): 周辺確率 - 地すべりに関係なく降雨Bが観測される確率

実際の計算では、以下のように相対度数で近似:
P(A) ≈ NA / NR  (地すべり発生数 / 全降雨イベント数)
P(B) ≈ NB / NR  (降雨Bの発生数 / 全降雨イベント数)
P(B|A) ≈ N(B|A) / NA  (降雨Bで発生した地すべり数 / 全地すべり数)P
(A|B) ≈ N(B|A) / NB

一変量例(強度 I>40 mm/日)
・事前 landslide 確率:P(A)=5/20=0.25
・強度大の割合:P(B)=P(I>40)=9/20=0.45
・発生時の強度大割合(尤度):P(B|A)=4/5=0.8

→ P(A|I>40)=P(B|A)·P(A)/P(B)=0.8·0.25/0.45≃0.44

降雨B発生時の地すべり確率は44%である。これは尤度P(B|A)=80%とは異なることに注意が必要。事前確率と周辺確率を考慮する必要がある。

2. 2次元ベイズ解析
2つの変数B(降雨強度I)とC(降雨継続時間D)を考慮:
P(A|B,C) = [P(B,C|A) × P(A)] / P(B,C)
ここで、P(B,C)は2変数の同時確率(ある強度と継続時間の組み合わせが観測される確率)を表す。

各セルでの確率計算
二変量例(I>50 mm/day かつ D<=1 day)
・事前 landslide 確率:P(A) = 5/20 = 0.25
・降雨条件を満たす割合:P(B,C) = P(I,D) = 4/20 = 0.20
・発生時の当該領域割合(尤度):全地すべり5件中、この条件で発生2件
   P(B,C|A) = P(I,D|A) = 2/5 = 0.40

→ P(A|I>50, D≤1)= P(A|B,C) = [P(B,C|A) × P(A)] / P(B,C) =0.40·0.25/0.20=0.50

I-D平面全体の確率分布ヒストグラムを作成。
強度と継続時間の相互作用効果を把握。
確率の空間分布パターンを視覚化。
高リスク領域の明確な識別。


結果
1次元ベイズ解析の結果
有意な変数:総降雨量E、継続時間D、平均強度I
P(B|A)とP(B)の分布が明確に異なる
P(A|B)が事前確率P(A)=0.005を大きく上回る
特に降雨強度Iが最も有意:I>100mm/dayでP(A|I)=0.28

非有意な変数:先行降雨AE14, AE30
P(B|A) ≈ P(B)
P(A|B) ≈ P(A)

研究地域では先行降雨は地すべり発生と相関が低い。
降雨の激しさ(総量、継続時間、強度)とともに地すべり確率が増加。
ただし、極端な値では確率が減少する傾向(サンプルサイズの問題と定義バイアスによる)。

2次元ベイズ解析の結果
特定のI-D値で確率が急激に増加。これはシステムの状態の根本的変化、物理的閾値の存在を示唆。不確実性を含めた警報システムの構築に有用。


考察

1. ベイズ手法の利点
統計的厳密性:事前確率と周辺確率を考慮:尤度P(B|A)だけでなく、降雨の頻度P(B)と地すべり発生率P(A)を組み込む。
認知バイアスの回避:人間の直感的判断は事前確率を無視しがち(「80%の地すべりがI>50で発生」≠「I>50で地すべり確率80%」)。
不確実性の定量化:0〜1の連続値で確率を表現、決定論的手法の曖昧性(「閾値超過時に何が起こるか?」)を解消、信頼区間により推定の信頼性を評価

2. 先行降雨の非有意性
一般に細粒土壌では先行降雨が斜面安定性に重要とされるが、本研究では相関が低い。研究地域の地すべりは主にイベント降雨に対する急速な水文応答が支配的。60%の地すべりが降雨終了時またはその直後に発生。
深層地すべりでも、長期的な要因よりも短期的な降雨イベントが引き金となる。

3. 物理的閾値の示唆
I-D平面の特定領域で地すべり確率が急激に上昇。これはシステムの状態変化(安定→不安定)を示唆。
確率的手法であっても、背後に物理的メカニズム(臨界間隙水圧など)が存在。確率分布のパターンから、真の物理的閾値の存在を推測可能。

4. 方法論的課題と解決策
多発地すべりの扱い
方針:同一降雨による複数地すべりは1イベントとしてカウント。
理由:P(A) = NA/NR > 1を避け、統計的整合性を保つ。

バイアスへの対応
問題:誘因降雨は地すべり発生日で打ち切られるが、非誘因降雨は降雨終了まで継続。
影響:極端な長継続時間での確率推定に影響。
緩和:信頼区間の提示、データの60%が降雨終了時に発生することで影響を軽減。

Landslide発生降雨をベイズ手法で評価した少し古い文献です。基本的には、国内で研究されている降雨数ベースの評価と変わりません。
国内では短期雨量と土壌雨量指数の2軸で評価されます。スネーク曲線を書いてピークで評価したりするのですが、原点から離れるにつれてレアな雨(P(B,C) ≒0)となり、確率が極端に高くなります。これ、補正したいですよね。

2019年9月13日金曜日

土石流と降雨パターン

学主導の岡山県での土石流調査に同行しました。

継続3時間程度の短期雨量が効いた災害です。土石流は長期雨量で発生しやすい≠短期雨量は効かない、です。

現場を見ると、今まで見たことのある土石流現場とは感覚的に異なっていました。発生土砂量や分布範囲はやや少なく思える程度なのですが、粒径が小さい。渓流の洗い流しも少なかったと思われます。地質や傾斜の違いがあるのかもしれませんが、降雨パターンの違いの方が大きいように感じました。

帰路の途中、先生が「GRIBデータの入手が遅れる」と話されていました。購入されてはいないようです。学なら京大の整理したデータが使えると思いますが、欲しいデータは含まれていないのかもしれません。
http://database.rish.kyoto-u.ac.jp/arch/jmadata/
ArcGIS ならそれをアニメーション表示できます。
https://blog.esrij.com/arcgisblog/wp-content/uploads/2016/08/ArcGISforMeteorology.pdf
Arc を購入されていないようでしたら、Git で公開されているコードを利用する方法もあります。便利な時代になりました。
https://github.com/catdance124/synthetic_radar_GPV


今回、発生土砂量、流動範囲、粒径についても予測モデルに入れるべき特徴量だと実感しました。今後、検討する機会があれば意識して入れてみましょう。


2019年1月6日日曜日

表層崩壊の現地実験映像

昨晩、NHK で人工降雨?による表層崩壊の実験映像を流していました。

すごいよ出川さん!本物の火事&土砂崩れ!衝撃映像満載のメガ実験バラエティー
「土砂崩れに予兆はないのか?」

これ、地すべり学会にも映像がアップされており、ダウンロードもできます。
https://japan.landslide-soc.org/for_general_index.html

テレビでは 180mm/h の解説がありました。なかなか崩れないため徐々に降雨強度を上げ、最終的には過去最高程度に至ったようです。何時間続けたか?観測機器の動きは?など細かい話はありませんでした。

崩壊形状は平坦で薄く、違和感のある映像でした。人工降雨が短期間で地盤内に浸透できなかったためでしょうね。一方、それ故の流動性に対しては納得。豪雨に起因する崩壊では、対岸まで土砂が駆け上る例もあります。このような挙動を示す場合もあるのでしょう。
驚いたのは土堤の範囲。ばっちりでしたね。どのように設定されたのでしょう?感覚でしょうか?
私ならもっと広く作って、下流側に駐車させませんが。あの程度の高さの土堤は気休めであり、役に立たないことを知っていますので。万が一、もっと大きな崩壊が発生したら、などと考えてしまいます。地下は見えないですからね。

観測データが開示されるかどうかわかりませんが、もしかすると映像を掲載している地すべり学会から「報告」が出てくるのかもしれません。その場合は見てみましょう。


2018年7月15日日曜日

ハザードマップとバイアス

先週の西日本豪雨がトリガーとなり、ため池が決壊or決壊の危険性が続いている報道を見ました。

中には、上流の崩壊土砂がため池に流入した後に破堤したものもあったようです。そうなると、土石流に近くなるのでしょうね。
自治体はため池が決壊した場合のハザードマップを公開しています。が、その危険度は浸水深さと範囲、到達時間として表現されていました。静水と流水では、同じ水深でも威力が違いますし、土砂を含むとさらに違います。過去には、石を含むと深さ20cmでも歩けなくなる人を見てきました。ハザードマップ1枚で伝わる内容は、見る側の経験に依存するでしょう。

手元に日本地すべり学会誌5月号(No.3)があります。H26年8月豪雨で斜面崩壊が発生し、ため池に流入した事例が記載されています(研究報告の趣旨は異なります)。斜面崩壊から破堤といった事例は、マイナーケースのようでした。自治体にとって、おそらくマイナーケースまで率先して予防措置をとる財力はないでしょう。ハザードマップで一律に危険性を伝えたうえで、弱い堤防から補修していく方針だったのでしょうね。

ハザードマップを作る側も、見る側も課題の克服が必要です。課題は日本地すべり学会シンポジウムH30年6月の中でも指摘されています。多くありますが、個人的には、活用する側のバイアス除去が難しいように感じます。
根本的には、幼少時からの教育が効果的でしょう。短期的な効果を求めるのであれば、極端ですが、人命へのリスク表記、例えば○○警報が出てから〇時間までは避難可能かつ軽傷で済む範囲、〇時間で命の保証はない範囲、などと表記すれば、見る側の意識も変わるのではないでしょうか(技術論で考え出すと難しいと思われますが)。現状ダメならどうにかして克服するしかありません。

考えさせられますね。

2018年7月7日土曜日

西日本の豪雨

連日の西日本の雨は一息ついたようです。
お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りします。

広島ではまた崩壊や土石流が発生していますね。平成11年、26年の災害時に学会等の調査団が被災地に足を運んでいましたが、なぜ繰り返し起こるのでしょう?

岡山では洪水。浸水範囲を調べようと海外のサイトに SAR データを探しに行きましたが、ありませんでした(日本の災害を把握するために海外のサイトを訪ねるのは残念ですが)。
ALOS2 を使うとすれば、今晩か明日の昼に撮影され、早ければ明日夜には公表されるでしょう。そうなると、空中写真の方が早いでしょうか。

雨量は気象庁で把握。
鴨川の増水が目立った京都は日雨量171mm。
崩壊のあった呉は日雨量190.5mm。
洪水のあった倉敷は日雨量138.5mm。
多いようですが、いずれも30年確率には届いていません。

大雨特別警報が8府県に出されたのは初めてだそうです。
特別警報ですから、48時間雨量で50年確率に届いているのでしょうか?上記地域だけを見ると48時間では届いていませんが、府県レベルで届いたところが多かったのかもしれません。特に河川災害が目立っていますので、上流側も考慮する必要があるのでしょう。
H26広島土石流の時は短時間雨量が特徴的でしたが、今回は長期雨量が指標になりそうです。

洪水のピークは通り過ぎたようですが、堤防決壊や、そこからの流出はまだ続いているようです。今後の台風や梅雨前線の動きも気になるところです。度重なる災害は避けたいですね。
本格的に手が入るのはまだ少し先でしょうか?被害規模がこれ以上大きくならないことを祈ります。

2014年11月15日土曜日

ゲリラ豪雨の卵

今日のNHKスペシャル「巨大災害」は豪雨の特集でした。

いくつかの話題を集めて構成されていましたが、興味が惹かれたのは「ゲリラ豪雨の卵」の話。以前、防災研の中北先生の講演を聞かせていただいたことがありますが、今回も同じデータが使われていました。

河川のボーリング現場で、上流の雨によって川が一気に増水し、マシンがつかりそうになったことがあります。現場では、スマホで X-MP を見るよりも、卵の表示の方がわかりやすいですよね。講演を聞いた際に、安全管理に使える!と思いHPを探しましたが、見あたりませんでした。今日の話では、まだ実用化には至っていないようです。

ま、上流側で降った場合に警報を発するサイレン・回転灯が下流側まで整備されていないと、遊んでいる方々は逃げないでしょうね。すべての川にそれらを整備するのは無理でしょうから、やはり最後は自分で判断するしかないのでしょう。
その現場では「○○の方向から生暖かい風が吹き始めたら、気を付けるようにしている」とオペさんは言われていました。地元に聞けば、「昔からよくある。前回のはまだマシ」と言われていました。案外、地域的特徴があるのかもしれません。

いずれにしても、X-MPに加え、「卵」の表示は有効です。公開に期待しましょう。