以前、孔内水平載荷試験の結果を数値計算で再現すれば、ダイレイタンシー角ψを同定できるのでは?と考えたことがあります。その時は、SoilPlusが関連流れ則しか扱えなかったため、同定作業自体ができませんでした。
http://phreeqc.blogspot.com/2011/08/3.html
今、MIDAS社からGTSをお借りしていますので、そちらで確かめてみることにしました。プリはSoilPlusもMIDAS社から提供を受けているので、操作性は同じです。ただ、こちらは軸対象で水平方向の荷重を扱えますので、2次元で計算できます。3次元より計算時間が早いので、すぐに結果がわかります。
計算結果はこんな感じです。ゾンデ60cm間に1000kN/m2を10分割でかけました。
変位のグラフの例です。
ゾンデの先、余掘り分15~20cmをモデル化し忘れたので、メッシュを切りなおそうとしました。が、同じ領域でメッシュを切りなおした場合、前の節点の情報をクリアしないようです。バグでしょうか?
仕方ないので、そのまま比較することに。
比較は弾完全塑性の関連流れ則、非関連流れ則、ひずみ軟化で行いました。
パラメータはダイレイタンシー角ψと単体以外、試験での実測値や算出値を使用しています。パラスタはしていません。変形係数は試験でポアソン比を仮定して得られた値、K0は土被り圧とP0より算出、φ'peakは深川の方法、せん断抵抗力(ピーク、残留)はσr-σθで求めた値を使用しました。なお、ψは仮にφ-30°として設定してみました。
ピーク、残留をφで指定できないのは、ソフト上の制限です。実務でGTSのひずみ軟化を使用する場合、砂質土をモデル化するには、深度毎に分割しないといけないようです。
で、結果は以下の通り。
うーん、弾性変形の傾きがやや立っていますね。試験時のポアソン比の設定が良くなかったのでしょう。逆に、試験でGがわかるので、パラスタで適切なポアソン比(=変形係数)が設定できそうです。
この結果では、ひずみ軟化が最も合っていますね。試験で求めた値を使うとばっちり合うのでしょうか?結論を得るにはもっとやってみる必要がありそうです。非関連も、まあ、許容範囲でしょうか?関連は駄目(つまり、SoilPlusでこの土の解析はダメ)ですね。
ちなみに、これは載荷区間の変位の平均値をグラフ化しています。実際の孔内水平載荷試験も、土砂の場合は水の注入量から平均的な変形量を算出していますので、こういった簡易な整理も良いと思います。
載荷区間の下の方は、余堀をモデル化していないミスで変位が抑制されています。試しに下15cmをオミットして平均をとると、以下の通り。
それほど変わらなかったですね。ひずみ軟化が良さそうです。
除荷、再載荷をしてみました。
感動!ちゃんと除荷時に変位の大きい側で低下し、負荷時に小さい側で上昇するループを作っています!実際の土もこういった挙動になるのですが、理由はちゃんとあるんですね。構成則を作った昔の人は偉い。すばらしい。
結果としては当ケースの場合、ひずみ軟化が良いでしょう。ψの同定を目的に始めましたが、思わぬ収穫でした。孔内水平載荷試験の結果より、適切な土質定数(の範囲)を設計側に助言することは可能ですね。
うーん、しかし、この結果はひずみ硬化ですよね?弾完全塑性やひずみ軟化としてモデル化しても、結果はひずみ硬化のような挙動を示しています。硬化と軟化、弾完全塑性の区別が良く分からなくなってきました。
まだ理解していない証拠です。もう一度、勉強し直す必要がありそうです。