2012年4月8日日曜日

盛土造成地の耐震

昨日の続きです。今日は耐震の整理。

国交省の宅地防災マニュアルには、耐震の記述もあります。
http://www.mlit.go.jp/crd/web/topic/pdf/takuchibousai_manual070409.pdf

それらを読んでいて、以下の文章に目がとまりました。
IV1 耐震対策の基本目標 開発事業において造成される土地、地盤、土木構造物等(以下「宅地」という )の耐震対策においては、宅地又は当該宅地を敷地とする建築物等の供用期間中に一~二度程度発生する確率を持つ一般的な地震(中地震)の地震動に際しては、宅地の機能に重大な支障が生じず、また、発生確率は低いが直下型又は海溝型巨大地震に起因するさらに高レベルの地震(以下「大地震」という )の地震動に際しては、人命及び宅地の存続に重大な 影響を与えないことを耐震対策の基本的な目標とする。
宅地防災研究会「[第二次改訂版]宅地防災マニュアルの解説」によれば、以下の定義がなされています。

「中地震」・・・深度5
「大地震」・・・深度6~7
「機能に重大な支障が生じない」
・・・宅地に被害が発生しない、通常の維持管理を超えない。
「人命及び宅地の存続に重大な 影響を与えない」
・・・クラック・はらみ出し・多少の滑動は許容するが、倒壊・崩壊は許容しない。

安定計算では地震時に崩壊するかどうかは対応できますが、中地震時に被害が発生するかどうかは分からないと思います。それを検討するには、中地震時に許容される変位量が必要でしょう。変位量の検討を提案すべきということでしょうか?

安定計算については以下の通り。
VI3 盛土のり面の安定性の検討 
1)安定計算
盛土のり面の安定性については、円弧滑り面法により検討することを標準とする。
また、円弧滑り面法のうち簡便式(スウェーデン式)によることを標準とするが、現地状況等に応じて他の適切な安定計算式を用いる
4)最小安全率
盛土のり面の安定に必要な最小安全率(Fs)は、盛土施工直後において、Fs ≧ 1.5であることを標準とする。また、地震時の安定性を検討する場合の安全率は、大地震時に Fs ≧ 1.0とすることを標準とする。なお、大地震時の安定計算に必要な水平震度は、 0.25に建築基準法施行令第八十八条第一項に規定するZの数値を乗じて得た数値とする。 
VI5 盛土全体の安定性の検討
盛土全体の安定性を検討する場合は、造成する盛土の規模が、次に該当する場合である。
1)谷埋め型大規模盛土造成地
盛土をする土地の面積が三千平方メートル以上であり、かつ、盛土をすることにより、当該盛土をする土地の地下水位が盛土をする前の地盤面の高さを超え 盛土の内部に侵入することが想定されるもの 。
2)腹付け型大規模盛土造成地
盛土をする前の地盤面が水平面に対し二十度以上の角度をなし、かつ、盛土の高さが五メートル以上となるもの。

①安定計算
谷埋め型大規模盛土造成地の安定性については、二次元の分割法により検討することを標準とする。
腹付け型大規模盛土造成地の安定性については、二次元の分割法のうち簡便法により検討することを標準とする。
④最小安全率
盛土の安定については常時の安全性を確保するとともに、最小安全率(Fs)は、大地震時に Fs ≧ 1.0とすることを標準とする。なお、大地震時の安定計算に必要な水平震度は、0.25に建築基準法施行令第八十八条第一項に規定するZの数値を乗じて得た数値とする。
VI5 にて腹付け型と谷埋め型で、簡便法かどうかを使い分けていますね。背景は、円弧か非円弧かというところでしょうか?。谷埋め型のように、縦断方向の弱層に支配される滑りは非円弧です。が、多くの設計者は円弧で探索してしまうのでしょうね。

宅地防災マニュアルの解説IV3p93-94によれば、設計水平震度0.25でFs=1.0を満足する盛土を対象に動解を実施した結果、変位が50cm以内になったそうです。斜面長を20mとして2.5%以内に収まるということで、大規模地震時の水平震度と安全率を決めたようですね。条件やケース数、2次元か3次元かの区別が書かれていませんので詳細や信頼性は不明ですが、国交省「大規模盛土造成地の変動予測調査ガイドラインの解説」p89-90に示されているように、大規模地震時の動解による歪みが2.5%以内であれば問題ないということですね。
http://www.mlit.go.jp/crd/web/topic/pdf/guideline_ver.3.pdf
(余談ですが、このガイドラインの安定計算の箇所、3次元まで説明がありますね。腹付け型の20度以上、5m以上の根拠も示されています。)

総合的に考えると、2次元の縛りはありますが、SSRMが良さそうですね。最小安全率を有するすべりを円弧に限定せずに探索できますので。安全率の意味はLEMと同等ですし、パラメーターを調整すれば同じメッシュで変形量もチェックできます。(ついでに、圧密も同じメッシュでできます)。作業量も2次元LEMと大差ありませんし。2次元ではBESTな方法ではないでしょうか?
安全率を無視し、3次元の動解にて変位量をチェックするのも、本来の目的に答える形で良いのだと思います。が、こちらは金銭面でお客様に嫌われるでしょうね。

ま、基準内でも、いろいろ泳げそうです。もう少し、読んでみましょう。


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