2011年7月23日土曜日

最新:地すべり技術講習会

先日、全地連主催の「最新:地すべり技術講習会」を受講しました。

テキストは国土技術研究センター (編) 「貯水池周辺の地すべり調査と対策」です。貯水池周辺の地すべり調査と対策に関する技術指針(案)・同解説のH21年版を反映した講習会です。
http://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/dam2/
http://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/dam2/pdf/tyosuitigijukaisetu.pdf

「最新」のはずですが、新しい内容としては指針の改定箇所に関する説明が若干含まれていた程度です。一般的な内容としても「LPの利用が普及しており地形判読には必須」といった程度でした(最新でないかもしれませんが)。前にも書いたように、10年前と大差ない技術レベルの解説がほとんどでした。100人、200人規模の講習会ですし、半分は義務で参加していましたので、それほど期待はしていませんでした。が、やはり残念ですね。

この指針に従った計算で最も時間がかかるのが、貯水池の水位上昇、下降を小刻みに変化させ、繰り返し円弧すべり計算にてその水位分布における最小安全率を求める部分です。下降時の残留間隙水圧の残留率は面積比で30%に変更されています。
後輩や先輩がPowerSSAを使用して計算していましたが、全水位の計算が終わるまで数時間かかっていました。そりゃ、そうでしょう。力技ですから。
結果は大抵、水位最降下時に最も小さい安全率を示すようになります。先輩が「これだけ時間をかけても、崩れるのは上昇時で合わない」と言われていました。そりゃそうでしょう。上昇時に崩れるのはサクションの開放で表層崩壊が発生しているわけでしょう。本来は崩壊と地すべりの両方を検討すべきなのでしょうねえ。簡易であれば鵜飼先生のSSRFEMのソフトに、飽和度による強度変化を扱える項目があるので、それで判定しても良いと思います。指針では混在している感がありますね。最終的にはツールとして地すべりの安定計算を使用していますが。

なお、PowerSSAでは盛土工浸透流解析オプションが発売されていますが、まだ購入していません。これ、なかなか良さそうです。非定常の計算結果を用いて、各時間毎の安全率を出せるそうです。
http://www.godai.co.jp/soft/product/products/powerSSA/PowerSSA_sauOP.htm

講習会でも浸透流の利用例が紹介されていました。しかし、ある降雨条件での浸透流結果を流用するよりも、今までの経験的な水位設定法で良いのではないかと考える人が出てくると思います。inputである降雨条件が予測にすぎないからです。また、講習会でも「なぜフェレニウスか?」といった質問に「小さめの安全率を出すから」と答えられていました。どうやったのかは不明ですが、「流線網を使用しても結果に差が出なかったので、簡便法を採用している」とも言われていました。その方が抱いている地すべり解析に対するスタンスも幾分見えたように感じました。

地すべり解析はこんなものだという割り切り感は、古い技術者のほうが強いのかもしれません。それは経験からきているもので本質なのかもしれませんが、それを実証なり反証なりする「最新」の材料を講習会では教えてもらいたいところですね。

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