2011年7月3日日曜日

せん断モードと強度設定

均質な粘性土における円弧すべりで発揮される強度は、圧縮、単純せん断、伸張の3つになります。そのため、適度に乱れた試料の1軸圧縮強度であれば、「すべり面の平均強度」といったものに一致するという Lucky Harmony が生まれます。おかしな話ですが、乱れの少ない高品質なサンプルを採ってしまうと、その試験結果を使った設計ではすべってしまう可能性もあり、逆に「適度」以上に乱れてしまうと過大設計になります。

では、三軸圧縮試験ではどうでしょうか?
再圧縮がかかると本来の圧縮強度に近づきます。そのまま土層の強度として設定してしまうと、すべり面の平均強度より過大になります。それを補正するためには伸張試験などを実施すれば良いのですが、サンプルが倍以上必要になります。

ただし、このような円弧すべりにおけるせん断モードの考慮は古くから研究されており、地盤工学会基準書「地盤材料試験の方法と解説」にも詳細に記載されています。
例えば、表7.3.6では伸張強度が圧縮強度に対し、平面ひずみで0.19/0.34=0.56倍となっています。601ページにはその解説も掲載されています。これらを考慮して強度を設定すれば、試験は今まで通り1種類でOKです。

先日、そのあたりの内容を新しい基準書で変更がないか再確認していました。
が、その解説の最後に引っかかりました。
「安全側の設計値として基準の試験結果の64%をとることになる。」
主語がありません。何がどの基準の64%になるのかが分からないのです。ちなみに、古い基準書にも書いてありました。

部長様に相談したところ、「いろいろな意見があったのでわざと隠したんだろう」とのこと。そうなんでしょうか?それなら載せないはずです。

今日、それについて考えていたのですが、以下のようなことではないでしょうか?
まず、三軸CUの非排水強度をsuとします。
K0圧密した場合は1/1.15倍になりますので、0.87su。これが三軸K0CUC強度。
三軸K0CUE強度は0.87su/0.33×0.16=0.42su。
この平均が設計強度になるので、(0.87su+0.42su)/2=0.645su
安全側で切り捨て64%

つまり、K0状態の補正も考慮すべきということでしょう。ただ、64%の根拠は何も書かれていないので確認できません。
いずれにしても0.64suは1軸+簡易CUでの評価よりも安全側ですね。

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