2011年2月2日水曜日

地球統計学と地質リスク

絶対論的に地質図(亀裂構造図、透水係数分布図、岩級区分図など)を書ける地質屋さんは、確率論によるシミュレーション結果を軽んじる(あるいは避ける)傾向があるようです。ひとつの事実の発見で予測を覆すことができるからかもしれません。「現場を見てないのに何がわかるか?」といった精神論も含まれているかもしれません。
しかし、地球統計学は有用なツールで、知らない地質屋よりも、知っている地質屋のほうが優位と考えています。ま、これは他の手法でも言える事です。

地質リスクではシミュは使っていませんね。(個人的には、使ってこそ調査ポイントが絞れると考えますが。)下の動画は、昔、N値50以上(軟岩)の存在確率をGSMMIのIndicator krigingで計算し、 結果をMicroAVSに流して可視化した例です。


一般的な構造物調査のように、データの少ない中で地質屋さんが計算する場合には、バリオグラムのトレンドをとる際に(地質的根拠を踏まえた)恣意的な操作をすると思います。そうなると、その結果より統計的価値を見つけるのは難しいでしょう。上の動画もそういった材料の少ない中で試行した例です。見た目は良いですが、内容は地質断面以上のことは表現できていません。材料やパラメーターの部分で統計的にどうなのか?といった結果です。お客様には出せないものです。
また、こういった補間の精度や分布確率表示は、調査していないところで低く、調査したところで高いといった当たり前の結果になりがちです。

これを統計の結果だとして「確率の低いところから潰しましょう」という流れになると、調査密度の粗な箇所から調査しましょうといった当たり前の方針になりそうです。それでは従来と同じです。
浅層の地質や統計処理できるだけのデータが得られない場合がほとんどの実務において、確率を定量化することができないといった根本的問題もあります。落としどころはやはり土研の脇坂氏の考えあたりになると思います。
http://phreeqc.blogspot.com/2011/01/blog-post_25.html
今後、地質リスク学会や他の団体がどういった定量化を目指すのか、興味があるところです。

本来、多くの小プロジェクトでは、これらの問題を解決するのは経験豊富な地質屋さんの調査計画立案技量とプレゼン技量(と熱意)にあったはずだと考えます。大プロジェクトのように地球統計学を持ち込むことは、無理があるでしょう。個人的には確率の定量化よりも、経験の伝達こそが地質リスクの予防に効果的だと思います。(それで短期的に仕事が増えるわけではないので、表立って主張するほどのことでもありませんね。)

SGeMS乗り換えついでに地球統計学の本を最初から眺めています。私も人のことは言えず、確率論は必要と思いながらも興味がないため、何度見直してもすぐに忘れてしまいます。何度も繰り返しましょう。




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