注文していた論文が届きました。
ひとつはハズレ、もう一つはまあまあ、といったところです。
後者はダイレイタンシーと斜面安定度(いわゆる安全率ではなく、荷重が増えた場合にどこまで持ちこたえられるか、といった定義)の話です。同じ摩擦角であれば、ダイレイタンシー角が大きいほど斜面安定度が増すといった内容です。 非関連流れ則よりも、関連流れ則(ψ=φ')の方が安定度が高くなります。
Majid T. Manzari et al., Significance of Soil Dilatancy in Slope Stability Analysis, J. Geotech. Geoenviron. Eng. 126, 75 (2000)
過去の地すべり学会誌はJ-Stageで公開されています。さらに古い18年前の鵜飼 恵三ほか「モデル化された切土斜面の3次元安定解析と留意点」では、そのメカニズムも解説されています。そのもとになっているのが例の地盤工学会「土の強さと地盤の破壊入門です。」モールのひずみ円~流れ則のページですね。ただ、φmobと応力傾角μが区別されていない点と、不動層の節点を固定している点が気になりますが。
http://www.journalarchive.jst.go.jp/jnlpdf.php?cdjournal=jls1964&cdvol=29&noissue=4&startpage=18&lang=ja&from=jnlabstract
この報告、関連流れ則でないとSSRによる2次元安全率がLEMと同じ値にならない点を(モールのひずみ円と応力円を念頭に)指摘しています。一方、関連流れ則では大きな膨張が生じるため、変形が現実的でないとも述べられています。非常に納得できる解説で、頭の中がすっきりしました。その後の論文も探して変更点がないか洗ってみましょう。
これらと似たような話は地盤工学会「地盤工学における数値解析入門」にも出ています。こちらは支持力の話です。FEMで地すべりや支持力など塑性化を取り扱う場合には、ダイレイタンシー角について注意すべきなのでしょう。
ダイレイタンシー角-変形量(塑性化領域)-安全率の3つを考慮する必要があること、適切なダイレイタンシー角(実務的には問題に応じて)やソフトを選定する必要があることがわかりました。
これで調査方針も決まりですね。
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