2011年8月18日木曜日

ベーン試験と土検棒

構成則の理解のために、地盤工学会の「土の強さと地盤の破壊入門」をところどころ読んでいます。

この本、前にも書きましたが、多彩です。弾塑性、カム・クレイ、塑性ポテンシャル、関連流動則、圧密、偏差応力、降伏、破壊などが、だんだんと線でつながってきました。特に、塑性ポテンシャルの幾何学的意味が理解しやすいですね。

パラパラめくっていると、ベーン試験に関する解説にひっかかりました。この本を購入した当時、ベーン試験機は壊れて既に廃棄されており、触ることもないだろうと読み飛ばしていました。恥ずかしながら、実物を見たことも触ったこともありません。
それでも、なぜ引っかかったかと言うと、p233のダイヤモンド型ベーンの形が、土検棒のベーンコーンに似ていたからです。

ベーン試験は圧縮と引っ張りの両方が同時に発生するため、盛土下のせん断モードと似ているそうです。これ、好都合です。計算式も簡単なモーメントの合計なので、説明しやすいですね。また、形状を変えることによって強度異方性も把握できるようです。つまり、τvとτHが分かるわけです。

とここまで読んで、気になったことが一つ。土検棒による砂質土(φ材)のベーンコーンせん断時、τvτH同時に発揮しているわけですが、こちらは拘束圧や自重を考慮しなくてよいのでしょうか?ベーンコーンを円錐コーンを抜く前と同じ深度にセットした場合(応力を戻した場合)、水平方向から土圧、鉛直方向からロッドの自重がかかっているため、σH≠0、σv≠0です。φ材の場合、τv成分はσH、τH成分は自重の大きさによって変化するはずです。そのため、σtanφ≠0であり、上から抑え込まずに(自重だけで)せん断しても、φ成分が出現する筈です。理想的な状態では同じφ材でも深度によって初期トルクに差が出ることになります。
マニュアルでは三軸CU3点と原点でR2=0.03(この値、一桁違いません?)ですから、初期トルク=c成分のみ、φ=0といった整理の仕方では、土検棒の結果とφに相関が認められないということなのでしょう。

どちらかと言うと、φ材の場合は同じ土層で深度別に初期トルクのみを集計し、相関を取った方が良さそうな気がします。この初期トルクをとる作業、案外難しいですけど。ベーンコーンを直接貫入してから回した方が良いでしょうね。現場ではコーンの入れ替え時に塑性化させたり、上方からの土砂の落下などにより、何を計っているのかわからない状態になっている可能性もありますから。機会があれば実践してみましょう。

でも、なぜマニュアルはCUなんでしょうね。こちらも、どの条件のcφと相関をとるかは、技術者が問題に応じ自由に決めることができるのでしょうね。ま、どの条件にしても、もう少しデータが集まらないことには、どの程度の精度で使えるのかわかりません。今後に期待です。

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2012/2/13追記
マニュアルで拘束圧は考慮されていませんが、自重は考慮されていますね。勘違いでした。

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