今年の地盤工学会で分子シミュの発表があったと教えていただきました。
岩手大学大学院 学生会員 中西正樹「分子動力学法による粘土の粘着力 c に関する研究」
分子シミュは1~2年ほど前に知りました。圧密のメカニズムを分子シミュで解かれている先生がいらっしゃり、その話を聞いて一気にやる気になりました。しかし、資料を探しても土木分野への適用は皆無。唯一関係しそうな拡散係数の求め方も、移流分散ではそれほど影響ない所ですので、あえて分子シミュをかけても仕方ない。結局、他分野の解説を読んでもよく分からないですし、(個人の能力的に)応用できそうにないので、気になりつつも手を出していませんでした。
今回の発表ではスメクタイトの粘着力をシミュで求めようと言うものでした。結果はAFM(原子間力顕微鏡、こんなのあるんですね、知りませんでした)の実測値に比較し5~6割となるため、まだ何か足りない(モデル化、その他)というものでした。まあ、学生さんの発表ですので。
これを見て考えたのが、粘着力について。
軟弱地盤の場合、一軸や簡易CUで得られる粘着力が円弧すべりで発揮される平均的な値に近いという事が知られています。一方、地すべりの安定解析(2次元Felleniusなど)で使用されるc・φはあくまで再現するためのパラメーターであり、上記の透水性に関与した粘着力とは似て非なるものとして割り切るべきでしょう(時々、同じ土俵で話をされる方がいらっしゃいますが)。
では、AFM を再現した後の、層間と間隙を考慮した分子シミュによる粘着力と、土質試験で求めた粘着力はどちらが真実に近いのか?分からないでしょうね。
結局、実務で問題を解決できる粘着力が真実っぽく使われるのであって、真実なんてヒトには分からないのかもしれません。モデル依存実在論でしょうか。そんな事を言えば、地すべりのc・φもそれで良いような気がしますが。
まあ、もう少し研究が進まないと何とも言えませんね。
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