昨日より、部署内で「アンカー設計の諸問題」が話題となっています。
なにを今更?と思いながらも、珍しくベテラン技術者がネット上で発言されていますので、静観しています。正月明け、時間と心にゆとりのある時期ということもあるでしょう。
その中でも、活発に意見交換されているのが、締付け効果をみるべきかどうか。(うーん。古い。)
LEMでは、すべり面とアンカーの交点に締付け・引止めの両効果が発揮されるとして計算します。具体的には2次元断面上でアンカー負担荷重をすべり面と垂直・平行方向に分割し、それぞれ抵抗力に加えて計算します。
なぜ、ベテラン技術者が引止め効果(平行方向の分割)は考慮して、締付け効果(垂直方向の分割)を無視するのが良いと考えるのか、理屈がわかりません。が、経験則として理解できます。受圧板からすべり面に100%の応力が伝達するわけがないということでしょう。適度に差っ引いて考えたら、実現象にあったということだと思います。ただ、それでは効果が小さすぎると判断すれば、両方見るということも可能です。経済的な意見も出ていました。その辺がベテラン技術者にとって経験則が物を言う、地すべり対策の面白いところなのかもしれません。
ただ、このような議論は本来、経験則をぶつけ合うのではなく、理論ですべきでしょう。正解がわかりませんから。
数値計算を使えば、応力の伝達範囲は視覚化できますし、程度も数値化できます。
あるケースでは、どの効果をどの程度見るべきかも目処がつくでしょう。
例えば、以下の論文では両効果の差についてFEMを用いて検討されています。
蔡ほか(2003)「アンカー工による斜面の補強効果―極限平衡法と弾塑性FEMとの比較」
http://www.journalarchive.jst.go.jp/jnlpdf.php?cdjournal=jls2003&cdvol=40&noissue=4&startpage=266&lang=ja&from=jnltoc
以下は読んでいません。土研が絡んでいますね。書庫を探してみましょう。
土木技術資料 2009年3月
「地すべり対策に用いるグラウンドアンカーの締付け効果の評価」
日本地すべり学会研究発表会講演集 2008 47th pp375-378
「地すべりにおけるアンカーの締付けおよび引止め効果に関するFEMによる基礎的検討」
その他、議論されている諸問題も、変形を取り扱うことで解決する内容が多いようです。
LEMで変形は扱えません。破壊しか扱えないツールで、変形に起因する現象をカバーしようとすると、小難しい説明やファジーな表現に行きつきます。ベテラン技術者はそこを経験のみで発言することなく、計算なども利用してカバーしていただきたいと思います。
鬼に金棒とはこのことでしょう。
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