さて、孔内水平載荷試験で変形係数を設定する際に、土砂の場合はポアソン比νを仮定しますよね。そのことについても時々問い合わせがありますが、そこは深く考えなくてもでも良いのではないか?と思っています。その理由は以下の通りです。
- 三軸応力状態で有効応力、ひずみε=0を仮定すると、静止土圧係数K0=σh’/σv’=ν/(1-ν)となる。K0=0.5のとき、ν=1/3=0.33となるので、これが排水材料(砂)の場合の0.33の導出でしょう。
- 軸対象三軸圧縮では体積変化ΔV=0の場合、ポアソン比νmax=0.5となるため、これが非排水材料(飽和粘土)の場合の0.5の導出だと思います。
- 厳密には孔内水平載荷試験は平面ひずみ状態の試験であり、三軸応力状態ではありません。したがって、上記の値を適用するのは(経験的に施工上問題が発生しなくても)理論的には間違い。(理論上、ポアソン比は孔内水平載荷試験自体から求められます。ユニークな方法を深川先生がご提案されています。)
- また、地盤調査の方法と解説に掲載されている変形係数E算定式は理論的に誤っています。(岩盤のプレッシャーメーター試験方法(地盤工学会)では理論式となっています。)
- このように、現状では①適用できないポアソン比や②理論式でなく経験式で変形係数を求める仕様となっています。
- さらに、変形係数は③ひずみレベルと④拘束圧に依存します。しかし、①~④を無視した経験上の設計手法が確立されています(建築の指針では補正の指摘あり)。
- そのため、上記理論背景を認識した上で基準通り0.5、0.33を使用して良いのではないかと考えています。
ちなみに孔内水平載荷試験で直接求められるのはせん断剛性率Gであり、νの仮定を必要としません。岩盤のプレッシャーメーター試験方法では算定時の孔壁圧力、ひずみレベルとそれに対応したGの報告義務があります。
なぜ岩盤だけが理論式になったのかはわかりませんが、従来設計との整合性も考えられたのかもしれません。
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