地質リスク学会によれば、「地質リスク」=「地質に係わる事業リスクと定義し、具体的には事業コスト損失そのものとその要因の不確実性をさす」ということだそうです。抽象的ですよね。
「調査しましょう」といった結論と意思表示は理解できます。しかし、それと「地質リスク」という定義が定量的に結びつきません。問題の設定とその解決過程が理解し難いのです。たとえば、①調査を密に実施したため、粗にしたときよりも地質分布が良くわかった。②その結果、施工時の修正設計、手待ちが省け、〇〇円のコスト縮小につながった、という流れをよく聞きます。この場合、回避すべき問題は「調査不足による施工時の大幅な増額」であり、「事前追加調査」が解決法なのです。これが地質リスクの回避なのでしょうか?それなら昔から言われ続けていますよね。回避過程がわかりませんし、リスクの意味も、もう一歩突っ込んで欲しいですよね。
本来、リスクを議論するにはその事象の発生確率が必要でしょう。しかし、それを算出するには問題とする事象以外は比較的均質とみなせる場(前提条件)が必要です。たとえば地層処分や地下空洞の建設対象である深部岩盤がそれとみなせるでしょう。道路・橋梁・河川構造物といった地表面から風化が進行していたり、盛土や埋め立てなどの改変があったり、堆積などによる水平構造が発達している不均質場において、ある事象の発生確率を予測することは困難です。計算中に恣意的な場の形成が必要になるからです。また、統計的手法を使えるだけの既存調査もない場合がほとんどです。
では、あきらめるのか?という問題に、土木研究所 地質監 脇坂氏が以下のように応えていらっしゃいます。(H22 第18回技術後援会「地質リスクのマネージメント」中国地質調査業協会岡山県支部にて)
- 「対策費A×発生確率P+調査費B」と「対策費Aのみ(調査なし)」を比較
- 調査をした場合のほうが安くなるためには発生確率Pの閾値が決まる。
- 通常は対策費Aが非常に高いのでPが高くなる。
- 現段階では発生確率Pを定量的に求めるよりは、閾値を用いたオーダーで議論すべき。
この式の妥当性には気をつけないといけませんが、かなり実務向きではないでしょうか?
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