2014年9月12日金曜日

地質断面図の精度

踏査を行い、地質推定断面図を10枚書いて、お客様に調査計画の説明をしに行きました。

お客様、驚かれていました。「調査をしていないのに、なぜ地中が分かるのか?」と。
単純な地質的ロジックを積み上げているだけなのですが、設計側の方にとっては不思議な力なのでしょう。同時に、この断面の精度を理解されていないということでもあります。

断面の精度は、調査を重ねることで向上します。大まかには以下の順ではないでしょうか?
(主観が多く入っています。)

①資料調査
地形図・地質図・既往資料などから断面を想像します。精度は低いのですが、段丘や地すべりなどの抽出では重要な項目です。踏査範囲もこれで決めるのではないでしょうか(実際は地権者の制約あり)。

②踏査
踏査を行うと地表部の情報が得られます。崖があれば一部で深度方向の情報も得られます。
断面上では、地表部の地質分布がほぼ確定しますので、それを使用して深度方向を推定します。土軟硬程度は引いてしまう段階です(地質屋さんが、線1本毎に大まかな意味を持たせる段階です)。これで踏査でつかんだ大まかな山の雰囲気が表現されます。当然、深度方向の情報が限られるため、その精度は低くなります。
適用できるロジックを絞っていくと、2、3種類の矛盾のない断面ができる場合もあります。

③調査
前段で工学的に問題となりそうな場所、地質分布のわかりにくい場所などを絞り込み、ボーリングや物理探査などの配置を計画します。その結果を使って、断面の深度方向の情報を補正します。
前段で積み上げたロジックに反する証拠が出てきてしまうと、現地を再確認し、もう一度ロジックを積み上げ直します(②③のループです)。結果、全く別の断面(絵)が出来上がることもあります。地表面(横方向)と深度(縦)の情報を用い、あるロジックに従って絵を描いていきますので、イラストロジックなどのパズルを解く感覚に似ています(正解は施工時の掘削でわかります)。ただし、横方向は水平の2方向あるので、立方体の中を3次元で解いていることになります。ですから、GEORAMA や SGeMS の様なソフトに助けを求めることが多くなります。FEMのように、全体で残差(矛盾点)を最小にするモデルを探すのにも似ていますね。
また、この段階で新たな問題が顕在化すれば、2次調査(追加調査)となります。これを繰り返して、欲しい部分の精度を高めていく過程が断面図作成になります。

断面図作成において、地質屋の技術力というのは、「現地に応じたロジックを、早く、適確に見出し、必要な箇所で、必要なスケールで答えを描く力」といっても良いかもしれません。

ま、それほど簡単に、自然は正解を許してくれませんが。

0 件のコメント:

コメントを投稿