設計者から 地質の CIM 対応が含まれた仕事について相談を受けました。
概要説明、特記仕様書の提示があったので、それに沿った返答をしました。近くの地質担当部署は3次元に対応していませんので、元地質の私のところに来られたようです。
調査業務でも特記に CIM が入り始めたようで、GEORAMA の絵が欲しいと仰る地質担当者も出てきました(使用経験も絵もないのに提案して、どう対応されるのでしょう?)。
GEORAMA の絵って見栄えの良いモノはないんですよね。単なるCADデータですから。見栄えよくするには、私は他のソフトを使用していました。
それに GEORAMA 自体は CIM 要領やガイドラインに対応していません。「GEORAMA でCIM!」と言われる方は半分正解ですが、おそらくガイドラインを読まず、手を動かされていない方でしょう。(自社開発を除き)対応している汎用地質ソフトはまだないと思われます。これからです。
まず、今年度の要領、ガイドラインで、押さえておくべき点をピックアップしておきます。運用上の問題はいろいろありますが、それでも要領等に従うことは基本です。
BIM/CIM モデル等電子納品要領(案)及び同解説 令和3年3月
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001395718.pdf
1.3 成果品の作成範囲
受発注者協議により作成する BIM/CIM モデル等を決定する。
① BIM/CIM モデル照査時チェックシート、BIM/CIM モデル作成 事前協議・引継書シート、BIM/CIM 実施計画書、BIM/CIM 実施(変更)計画書、BIM/CIM 実施報告書等
② BIM/CIM モデル:構造物や地形等の各 BIM/CIM モデル
③ 統合モデル:各 BIM/CIM モデルを統合したモデル
④ 動画等:イメージ画像や動画等のファイル
⑤ リクワイヤメント(要求事項)として特別な検討のために作成した BIM/CIM モデル
⇒②、③、④「成果物モデル」、⑤「要求事項モデル」
詳細設計
「成果物モデル」3次元モデル成果物作成要領(案)
「要求事項モデル」BIM/CIM モデルの作成方法、ファイル形式等は規定しない
詳細設計以外
「成果物モデル」BIM/CIM活用ガイドライン(案)を参考に設定
「要求事項モデル」BIM/CIM モデルの作成方法、ファイル形式等は規定しない
⇒表1-3の納品例:調査業務ではボーリングモデルの納品が必須、パネルダイアグラム・サーフェス・ソリッドは任意。地形、構造物、統合モデルは作成した場合に納品。
3. ファイル形式(電子成果品のファイル形式)
・地形モデル、線形モデル、土工形状モデルのファイル形式は J-LandXML 形式及びオリジナルファイル形式。
・構造物モデルは、IFC 形式及びオリジナルファイル形式。
・地質・土質モデル及び統合モデルは、オリジナルファイル形式。
2.2.2 GEOLOGICAL(地質・土質モデル)
地質・土質モデルは、地質ボーリング柱状図、表層地質図、地質断面図等の地質・土質調査の成果を、3次元空間に CAD データとして配置したもの。
・ボーリングモデル(調査結果モデル・推定・解釈モデル)
・準3次元地盤モデル(テクスチャモデル(準3次元地質平面図)・準3次元地質断面図)
・3次元地盤モデル(サーフェスモデル・ソリッドモデル(B-Reps、ボクセルル、柱状体))
サブフォルダ 格納される成果品
GEOLOGICAL ・地質・土質モデル(オリジナルファイル)
VIEW ・確認用ファイル又はビューア
SOURCE ・ボーリング柱状図やボーリング交換用データの XML ファイル等
TEXTURE ・テクスチャファイル(TIF、JPG 等)
ATTRIBUTE ・3次元モデルから外部参照される属性情報ファイルや参照資料ファイル(PDF、CSV 等)
DOCUMENT ・管理情報等、地質・土質モデルに関する各種ファイル
2.2 BIM/CIM モデル
発注者が BIM/CIM モデルのデータを操作できる環境にない場合でも確認することができるよう、必要に応じて確認用ファイル又はビューアを格納すること。格納するファイル形式やビューア等の選定にあたっては、発注者と協議の上、決定すること。
発注者が 3 次元モデルを確認できる代表的な方法
・3D PDF
・イメージ画像:必要な方向や位置は、発注者と協議の上、決定する。
・3次元モデルビューア:3 次元モデルビューアは、インストール等が必要な場合があるため、利用可能か発注者と十分な協議が必要である。
<BIM/CIM モデルのデータファイル名について>
「BIMCIM_MODEL」フォルダに格納する BIM/CIM モデル(特に構造物モデル)のデータファイル名は、当該 BIM/CIM モデルが何を表現しているか発注者や後工程の受注者が分かるように、受発注者協議により設定することを推奨する。
BIM/CIM活用ガイドライン(案)第1編 共通編 令和3年3月
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001395762.pdf
第3章地質・土質モデル
1 地質・土質モデルの作成・活用に関する基本的な考え方
地質・土質モデルを作成することで、本体構造物と地質・土質構成等における位置関係を立体的な把握が可能となり、各段階の地質・土質上の課題や地質・地盤リスクを関係者間で共有することにより、追加すべき補足調査や計画立案に関する検討を円滑に進めることが期待できる。
地質・土質モデルの作成・活用にあたっては、不確実性の程度やその影響について、関係者間で共有・引き継ぎを行う必要がある。なお、このような不確実性の取り扱いについては『土木事業における地質・地盤リスクマネジメントのガイドライン』が参考となる。
地質・土質モデルの品質は、モデル作成時点における地質・土質調査の質と量に依存するものであり、事業の進捗に応じて構造物等のモデル詳細度がより詳細になったとしても、それに応じて地質・土質モデルの品質を必ずしも確保できないため、構造物等で適用する「詳細度」と同様の考え方を適用することに無理があることから、地質・土質モデルに対しては「詳細度」を適用しないこととする。
1.1 地質・土質モデル作成における基本方針
モデルの品質を明確にするために、作成で用いた地質・土質調査成果やこれらに基づく推定の考え方について「BIM/CIM モデル作成 事前協議・引継書シート」へ必ず記録し、継承するものとする。
2.3 地質・土質モデルの活用時の留意事項
・ボーリングモデルのうち、調査結果モデルと推定解釈モデルのどちらを納品するかは発注者と協議するものとする。
⇒調査結果モデルを選択する。推定解釈モデルは作業量大。
・単にボーリング結果を数学的に補間する方法もひとつの方策であるが、推定精度が低下する恐れがあるので留意する。
3.2 属性情報
地質・土質モデルは、ボーリング調査結果から得られた各地層に対して、物理特性や圧縮強度等の力学特性のような土質試験結果等の様々な属性情報を扱うことが可能である。そのため、地質・土質モデルは、形状情報(オブジェクト)と属性情報で構成され、各事業段階へモデルを更新していく場合は、形状情報と属性情報を一体化するよりも、形状情報と属性情報を分離し、「共通 ID」を使用して、各々を個別に管理するのが有効である。
⇒Civil3D+GEORAMA でオブジェクトを作成した場合、Navisworks + Navis+で属性情報を管理します。現状では一方通行の作業になる(Navis のデータをCivil に取り込んだ段階で GEORAMA は地質を認識しない)ため、ボーリングが追加になるとIDを降りなおした方が効率的です。
4.2 ボーリングモデル
表30 ボーリングモデル(調査結果モデル)の属性情報(例)
基本情報(ボーリング名、ボーリング柱状図の種類、緯度及び経度、角度・方位、孔口標高、総削孔長、孔径(mm単位)、オリジナルデータリンク、改訂履歴)
地質情報(土質・岩石名、記事(概要)、深度(層厚)、孔内水位、N値、土質定数(土質試験結果))
⇒属性情報は柱状図や土質試験結果から取り込むため、冗長的作業になります。
CIM の本質は、3次元化よりも経年的な情報管理にあると考えられます。そのためか「4.2ボーリングモデル」は設計同様に気合の入った例が示されています。
が、個人的には疑問。ボーリングが増えると、現状では属性のついていないCADデータに柱状図データを追加し、ボーリングモデルやサーフェスモデルを作り、再度属性を振りなおすことになります。前段階の調査会社と使用ソフトが変わると、全柱状図を取り込みなおしになるので、データの使いまわしの点でも属性を作りこむのはやや無駄に感じます(あくまで現状では、です)。7年前にも似たような考え方を書き残していますので、状況は何も変わっていません。https://phreeqc.blogspot.com/2014/11/cim.html
ガイドラインにおいて属性の例ではなく、何を付与すべきかが示され、データフォーマットが決まれば、ソフトが対応してくれると思われます。それによってソリッドからの属性読み込み、柱状図認識・再現機能など逆向きの流れができるようになれば、活用の場は広がります。期待を込めて、その時代を待ちましょう。
長くなったので、対応方法は後日。
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