redox zoning の例として30年以上前の論文が用いられています。
Robert A. Berner, 1981, A New Geochemical Classification of Sedimentary Environments, Journal of Sedimentary Petrology, Vol. 51, No. 2, 359-365
表層部の open な環境から、地下の anoxic な環境に変化するにつれ、地下水の水質変化や鉱物の安定性がどのように変わるかという義論のようです(教科書を読んだだけで、論文まで追いかけていません)。結論としては、S の量の大小で、析出する鉱物が変わってくるというもの。ま、こういった研究が古くから実施済みでしたので、私が見た資料では「知っていて当然」という前提で書かれていたのかもしれません。
今回は教科書に載っていた例を真似て、海水と淡水の違いを見てみることにしました。計算はphreeqci Ver.3.1。user_graph 搭載版です。EXCEL や PHREEQC for Windows を併用する必要がなくなり、便利になりました。
海水の組成は PHREEQC のできたばかりのフォーラムから、淡水はネットで調べて適当に入力。淡水では酸素等の量が不明だったため、別途 O2 や CO2 を大気圧下で飽和させ(ま、あくまで初期条件は仮想です)、organic carbon を添加していくことで還元環境を作っていきました。余談ですが、どのデータベースも、角閃石や輝石は扱っていないのでしょうか?深くは探していないのですが、見当たりませんでした。そのため、今回、火山灰と一緒に降下した両鉱物や鉄鉱物が Fe の供給源として扱えず、計算ではgoethite を代用しています。
結果はコチラ。ますは淡水。
定性的に見ると、順番に還元されて最後に siderite ができています。S の量が少なすぎて pyrite の生成は無視できる程度です。ほとんど見えません。
goethite の量もいくつか変化させて計算してみましたが、ある程度の鉄の供給量がないと、sideriteができまないことも納得。ま、当たり前ですね。
計算結果より、siderite の析出には鉄の供給があること、S の少ない淡水であること、pe がマイナス側にあることが必要と判断できそうです。
次は海水。
こちらの結論は明らか。Sの量が多すぎて(左の軸の桁が違います)、pyrite が析出しても S を消費できていません。他の挙動は同じようなものですので、海水か淡水かが、棲み分けに一番効いてくるのでしょう。
こうしてみると、両者の差は明瞭です。大枠では、siderite が還元性の淡水性堆積物中で生成するということで、根拠を省略して良いレベルの話だったのでしょう。
汽水だと、条件にもよりますが、S を消費し終わって siderite ができる場合がありそうですね。両者の析出割合で、海水の混入率も計算できそうです(ま、全含有量を量ったほうが早いでしょうけど)。CNS分析 による古環境の判定と並行してチェックという手もありそうですね。
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