AI要約
背景
- 今後数十年間で、降雨の頻度と規模の変化が景観の進化、社会、経済に大きな影響を与えると予想されている。
- 地すべりは、地球の表面を形成する要因の一つであり、その安定性は降雨に大きく影響される。地球温暖化による降雨事象の頻度と強度の変化は、地すべりの頻度、量、分布を変化させると考えられている。
- スロベニアは地すべりの影響を受けやすい国であり、アルプス、パンノニア平野、ディナル山脈、地中海地域の接点に位置し、3つの異なる気候帯を持っている。
- 浅い地すべり(shallow landslides)は主に降雨のピークと降雨強度に、深層地すべり(deep-seated landslides)は長期(月単位または季節単位)の積算降雨と関連する地下水変動に左右されるため、気候変動に対する反応が異なると考えられている。
- スロベニアでは、国土の3分の1が地すべりに対して非常に脆弱であり、人口の約5分の1が地すべり危険地域に住んでいる。最も一般的な現象は浅い地すべりであり、主に激しい短期間または長期間の降雨イベントによって引き起こされる。
手法
対象地域と期間: スロベニア全域を対象とし、21世紀末までの将来の季節的降雨変動が地すべり発生に与える影響に焦点を当てている。気候シナリオ: CMIP5地球気候シミュレーションに基づく、中程度の気候シナリオ(RCP4.5)と最悪の気候シナリオ(RCP8.5)を使用。
データ: EURO-CORDEXプロジェクトの6つの地域気候モデル(RCMs)と6つの地球気候モデル(GCMs)の組み合わせから、日降雨データセットを使用。
空間分解能: 元の12.5km分解能のデータを1kmに変換。
期間設定:ベースライン期間: 1981-2010年
将来予測期間:
- 1st period (近未来) 2011-2040年
- 2nd period (世紀半ば) 2041-2070年
- 3rd period (世紀末) 2071-2100年
分析アルゴリズム:
- 浅い地すべりの危険地域算出にはスロベニアの国家地すべり予測システムであるMASPREMアルゴリズムを使用。
- 深層地すべりの代理指標として、mGrovaモデルから導出される地下水涵養(groundwater recharge)を考慮。
評価項目:
- 将来の季節的な降雨変動が地すべり危険地域にどのように影響するか(浅い地すべり、深層地すべりの誘発要因としての地下水涵養)。
- 将来予想される地すべり警報の数。
- 予想される気候変動が土地被覆の変化に与える影響。
- 地すべり危険度クラス(低、中、高)を考慮し、50パーセンタイル値をプロットしています。
結果
季節ごとの地すべり危険地域(浅い地すべり)の変動:
- RCP4.5シナリオでは、冬、夏、秋に危険地域が近未来から世紀末にかけて徐々に5%から12%増加。春は世紀半ばより世紀末の方が低くなる傾向がある。(ページ3)
- RCP8.5シナリオでは、冬に最も大きな変化が予想され、ベースライン期間と比較して世紀半ばから世紀末にかけて最大12%の危険地域増加が見込まれる。春には世紀末までに国土の約10%が危険地域になる可能性がある。夏と秋も世紀半ばで大きな変動が見られる。
地下水涵養(深層地すべり)の変化: 両方のRCPシナリオで、冬に最も顕著な変化が見られ、地下水涵養が6%から8%増加。他の季節では、地下水涵養の変化はわずかであった。
浅い地すべりの将来の警報頻度:
- RCP8.5シナリオでは、中・高地すべり危険度地域で、すべての季節において警報が大幅に増加。特に夏と秋の高地すべり危険度地域では、世紀半ばから世紀末にかけて200回以上の警報が予想される。
- RCP4.5シナリオでも警報は増加するが、RCP8.5ほどではない。夏季に警報が最も多く予測される。
警報の空間分布:
- RCP4.5では、国内の北西部、中央部、東部、北東部で最も多くの警報が発生。警報数は現在から世紀半ば、世紀末にかけて増加し、春と秋に最大の警報が予想される。北西部(アルプス地域)では冬季に最多警報が予想される。
- RCP8.5でも同様の傾向が見られるが、より顕著であり、地すべり警報はより広い地域に影響を与える。
地表被覆タイプごとの影響:
- 浅い地すべりでは、冬、春、夏、特に秋にブドウ畑、牧草地、果樹園が主に影響を受ける(20〜40%)。森林、市街地、耕作地への影響は少ない。
- 深層地すべりでは、冬と秋に牧草地、森林、市街地が主に影響を受ける(20〜40%)。春と夏は地下水位の変化が最も少ないため、影響を受ける地域も少なくなる。
- 浅い地すべりは春と夏に深層地すべりよりも景観への影響が大きいと予想される。
考察
- 本研究で用いられたCMIP5の地球気候シミュレーションは、中央ヨーロッパと地中海地域で統計的に有意であることが示されている。IPCCの報告書とも整合性が見られる。
- スロベニアが属する中央ヨーロッパおよび地中海ヨーロッパでは、夏季の降雨が減少し、激しい嵐や短時間の集中豪雨といった極端な事象が増加している。
- 地すべり危険地域は冬に最も多く、次に夏に多いと予想されるのは、冬の降雨量増加と夏の短時間強雨に起因すると考えられる。
- MASPREMアルゴリズムは、夏の激しい降雨イベント(短時間で高強度)に強く関連している可能性があり、これにより、冬の降雨増加が見られるにもかかわらず、夏の警報頻度が高いという結果が説明され得る。
- 研究は気候モデルとMASPREM/mGrovaアルゴリズムの限界を認識しており、特に深層地すべりの誘発が地域の水文地質学的および構造的条件に大きく依存し、MASPREMでは考慮されていない点を指摘。
- 分析には、シナリオ駆動型気候予測に固有のエラーと、水文学的モデリングの認識論的(Epistemic)不確実性が伴う。しかし、地域水文学的分析はモデリングの不確実性を減らし、広範囲での地すべり活動の変動を推定するのに有用である。
- 浅い地すべりは主にブドウ畑、牧草地、果樹園で発生し、スロベニアのブドウ畑がテラス状に整備されており、人為的な影響を受けているため、地すべりが発生しやすいことが示唆される。
- 深層地すべりは主に牧草地、森林、市街地で発生し、その発生は深層地質学的条件、局所的な水文地質学的条件、地盤の地力学的特性に強く影響される。
- 地域規模での定量的な分析を行い、政策決定者が適応策を設計する上で有用な情報を提供している。
国交省の「気候変動を踏まえた砂防技術検討会令和5年度版とりまとめ」では、梅雨時期の豪雨発生北限拡大、豪雨数~1.5倍、線状降水帯発生数~1.6倍と言われています。
緯度が異なりますが、日本でも災害発生数などは文献に書かれている傾向に近づくのでしょう。
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