最近、CIM(Civil Information Modeling) に関心を持たれたお客様から、費用についての問い合わせが増えました。
お客様の中には、初めて実施する、漠然と流れに乗る、詳細はあまり理解されていない、といった方が多くいらっしゃいます。3次元可視化 = CIM と思われているお客様や技術者もまだまだ多いと思います(地質の場合、解析に供する場合を除き、現段階では可視化だけとみなしてもあながち間違いではありません)。
手持ちのデータを示していただき、利用目的をお伝えいただければ容易に費用を回答できるのですが、なかなかそうはいきません。そういった方々に確認している点は、以下の通りです。
①目的(精度の確認)
・設計施工に使うのか?(mmオーダー)
・住民説明会などで見せるだけ(可視化だけ)か?(数10cm~mオーダー)
当然、設計施工に利用する方がグッと手間になります。
②時系列(モデル作成数)
・施工段階を区分して作成するか?
・完成形のみでよいか?
掘削段階などのモデル化は数値計算と同様です。数を増やすだけ手間です。
仮設の数量、施工での取り合い等を考える場合には、設計者の協力が必要です。
③既存データ
a)地形
・高さを持ったデータはあるか?(DXF、LPデータなど)
これらがなければ現状の2次元図面から起こします。山中はコンターに高さを与えるだけなので楽なのですが、街中なら既存構造物のモデル化に時間を取られますので、場所や範囲の確認も必要です。
b)地質
・地質縦横断図CADデータ
・地質平面図CADデータ(ルートマップ、踏査写真含む)
・柱状図XMLデータ
地質平面図がない場合が多いですね。パネルダイアグラム作成までなら地質平面図は必要ないですが、サーフェス・ソリッドモデルを作成するなら必要です。不足している場合は、地表地質踏査が必要になります。見せるだけなら踏査せず、適当に作ることも可能です。
既存柱状図もXMLでなく、紙だけとか断面に張り付けられているだけとかの場合が多いですね。その場合、データ打ち込みが必要になるのですが、数が多いと手間です。
なお、これまでの経験では、地質平面・縦横断図の整合性が取れていない、とれていてもおかしな3次元形状(すべり面が波打つなど)になる場合が100%です。それは大企業の成果でも地元の小さなコンサルさんの成果でも同様です。2次元ベースで図面を作成している以上、誤っている部分は必ず残るようです。それは技術者の実力不足の場合もあれば、人の空間把握能力の限界の場合もあるようです。従って、地質屋が地質分布の整合性を確認・修正しながら3次元化する必要が出てきます(CAD屋さんでは難しい作業となります)。
https://phreeqc.blogspot.jp/2013/12/georama.html
地質屋さんでも、与えられた地質断面等を絶対としてモデル作成に着手し、ずいぶん進めてから「あっていない」「手戻り作業になる」と戸惑う方もいらっしゃいます。今後、設計施工にかかわる箇所で齟齬が生じた場合、だれがどこまで遡って修正するかは課題になるでしょうね。
c)設計
・2次元設計図しかないか?3次元データはないか?
・道路中心線形XML
今まで、設計データが3次元化されていたことはありません。3次元でとお願いしても、2次元で設計されます。外形だけなら私でも3次元化できるのですが、今後、CIMを謳う以上は対応できる技量を設計者にも身に着けて頂かないといけません。
④成果品(必要とされる output )
・CADデータ
・パネルダイアグラムまで?
・サーフェス、ソリッドモデルまで?
・XML(測量機器や無人化施工機への流用)
・動画
・模型(3Dプリンター)
・AR、VR
必要な output によって準備・使用するソフトが異なります。まだサーフェスモデラーとソリッドモデラーの差は大きいようです。地質のソリッドを求められた場合には、現段階では2つ以上のソフトで成果品を提出するしかないでしょう。
https://phreeqc.blogspot.jp/2015/04/blog-post.html
今まではこれらを一人で対応していたのでが、部署ごとに見積作成担当者のような割り振りができつつあります。確認から費用算出に至る効率は悪化しましたが、将来性や知識・意識の底上げという視点では、改善されたと考えましょう。設計者も関心を持ち始めましたので、3次元設計が始まれば面倒が1つ減るのでありがたいです。
CIMによる効率化というのは後工程だけで、設計段階ではフォワードローディングによる作業増が現実だと考えます(ミスに気づきやすくはなると思います)。ソフトウェアベンダーに担がれている感は多々ありますが、ユーザーが広がることで現実が見えてくるでしょうし、正しい認識も自ずと定着するでしょう。
今後、業界全体でCIM 利用の経験が蓄積すれば、価格と(維持管理段階までの)事業全体の効率化のバランスをお客様が正しく判断することができるようになるでしょう。
ま、今はそれに至る通過点と思って、コツコツ確認しながらでも対応していきましょう。
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