2011年11月20日日曜日

Asの含有形態

土のAs含有形態について考えています。

熱力学データを用いた反応計算でAsの含有形態を推定するには、土と水(間隙水)の両者のデータが必要です(定量的にも、定性的にも)。ところが、実務で実施される含有量試験は湿潤状態の試料であり、間隙水に含まれるAsも一緒に測定してしまいます。その影響がどの程度かは現場によって異なるでしょうし、区分して測らない限りは良く分からないデータが得られることになります。つまり、計算には使えません。
特に吸着の場合はひと手間必要です。純水で土を洗うと間隙水の影響は抜けますが、吸着しているAsも一緒に洗い流してしまいます。水を使用してはダメということです(海外の参考書では詳細が述べられています)。

一方、国交省「建設工事における自然由来重金属等含有岩石・土壌への対応マニュアル(暫定版)平成22年3月」には資料集に「3.岩石・土壌に含まれる重金属等の起源を識別する試験法」が掲載されています。
3段階抽出法が紹介されていますが、評価の仕方は書かれていません。溶出量は土1kg当たりに換算するのでしょうか?文献を読みなさいということでしょうか?
3段階のうち、2段階(溶出量試験・含有量試験)は通常行いますので、あとはXRFで分析すれば良いだけです。先に述べたように水と土の分離があいまいである以上、このような大雑把な試験法や比較でも実務的には価値があると判断されているのでしょう。
5段階も紹介されていますが、こちらも十分対応できるレベルだと思います。コチラのほうが説明しやすいですね。

実務で含有形態を知りたい場合では、まずマニュアルの5段階抽出法を実施し、重要案件では化学計算を行うのが良いのかもしれません。
含有形態が分かり、それを計算で再現ができたなら、コンセプトモデルは出来上がりです。あとは搬出先の条件に合わせて、水-反応連成計算を行い、敷地境界での濃度を推定すれば良いですね。こちらは3次元まで対応可能でしょう。MATLAB+COMSOL+IPhreeqc がスマートですが、HYDRUS, PHREEQC, PHASTの組み合わせでも対応できますね。
http://phreeqc.blogspot.com/2011/05/matlab-comsol-iphreeqc.html

調査計画、特に採水方法や保管方法など、また岩石・鉱物・土の判定方法や欲しい精度を、事前に良く考えておかないと問題は解けませんね。以前にも書きましたが、こういった環境問題は地質屋さんの力量に大きく依存していると思います。
http://phreeqc.blogspot.com/2011/05/limestone4.html

実務で含有形態の考慮やコンセプトモデルの作成は、まだまだ実施されていません。法的調査に必要ないからでしょう。業界の意図も含まれている気がしますね。

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