2020年10月18日日曜日

equifinality problem

昨日の図書では、数値モデルに同位体をトレーサーとして融合する長所・短所が示されていました。
長所:モデルの信頼性向上
短所:校正すべき未知パラメータの増加、固有の不確定性(δ値の時空間的な不均質性など)

今まで、短所には目を向けず長所ばかりを見ていました。が、ある程度その見方も許容されるようです。一般には同位体データを含めて校正・検証されたモデルの方が信頼性が高いと言え、その融合に期待されているとありましたので。

この長所ですが、具体的には等結果性問題への対応ということになります。
等結果性(equifinality):異なる構造・パラメータの組み合わせが同じ結果を示す
浸透流解析では、支配方程式で右辺の各項の値が異なっても、合計が左辺の値として一致することと同義です。

これはわかりやすい話です。
一般的な3次元浸透流解析では、地質構造(ジオメトリ)を1つ決定した後、水理パラメータの調整で水位や流量等の再現を試みます。これは、ジオメトリの調整・再作成に大きなコストを必要とするため、それを固定した後、相対的に安価なパラスタにて再現を試みているということです。つまり、構造の不確実性をパラメータに一手に担わせて調整していることになります(「地下水モデル」にも書かれていましたので、世界的な流儀でしょう)。
本来は文献調査や地質調査結果から複数の3次元地質構造の可能性を地質屋さんは推定します(通常は、その中の可能性の高いと考える構造を地質屋さんが1つ選択・提示しているにすぎません)。ところが、どのジオメトリでも浸透流解析では観測値を概ね再現できます。パラメータ側でその差を調整できるのです。つまり、同じ結果を再現できるモデル(ジオメトリとパラメータの組み合わせ)が複数誕生するのです。これが等結果性。
しかしながら、将来発生するイベント(トンネル掘削など)を入力した場合、どのモデルも同じ予測値を示すとは限りません。再現計算完了時点では、どれが実現象に最も近いモデルなのかわからないのです。
そこで、それらのモデルにδ18Oなどを乗せて流し、観測位置で得られたδ値を再現できるかチェックすれば、モデルの良否が判明します。時空間的に変化しない疑似トレーサーでも可能でしょう(時空間的に変化しやイオンを選択する場合には、Geochemical Modeling との融合が必要です)。これが等結果性への対応です。

「多角的に校正・検証したモデルは、より正確な予測値を出すことが期待できる」ということです。

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