高橋ほか「変勾配流路における土石流の形成」では、侵食速度は侵食深さ aLを侵食時間(遅れ時間)で割ったものとして捉えられています。遅れ時間は粒径dmが大きければ長く、流速 U が速ければ短くなる形として表現されており、補正係数αで調整されています。この表現が正しいかどうかはわかりませんが、αを合わせこみパラメータとしていますので、ある程度の調整はできるのでしょう。
2013年 Hyper KANAKO 勉強会の第一部で紹介されたスライドによれば、この式をさらに簡略化して実装しているようで、その影響をαに含めています。
堆積速度も遅れ時間を考慮し、βといった合わせこみパラメータを使っています。
つまり、支配方程式の一つ、最も重要な河床変動の式 ∂z/∂t=i が「高橋のモデル」では合わせこみパラメータとみなせる扱いです。先日の河床変動計算では理論式でしたが、これは驚愕です(権威の届かない海外では通用しないでしょう)。
なお、最大粒径10㎜での室内実験では、α=0.0007(遅れ時間5秒程度)が示されています。またそれを参考に、再現計算ではα=β=0.0001を用いています。で、最終的にはβとαの一般性についての検討は今後の課題とされています。
一方、Hyper KANAKO のスライドでは、式が文献に比べ簡略化にもかかわらずα=0.0007が良く使われるとコメントされています。マニュアルでは以下の通り。大丈夫なのでしょうか。ま、結果が異なるのは、合わせこみパラメータを調整せずにデフォルト値を使うユーザーが悪いとも言えますが。
Coefficient of erosion velocity 侵食速度係数 δe 0.0007Coefficient of deposition velocity 堆積速度係数δd 0.05δe・δd は、高橋モデルで日本の石礫型土石流を計算する場合は、この表に示した値を用いる例が多い。ただし、上手く合わない場合は、これらをチューニングする方法が、よく取られる。
さらに文献を探してみると、式の補足的説明が以下の講座に掲載されていました。※式22:侵食速度式、式23:堆積速度式
江頭「土石流の停止・堆積のメカニズム(1)」砂防学会誌46巻(1993)1号
式(22),(23)あるいは式(23)は見かけはすっきりしているようにみえますが,これらを直接検証するようなことが行れていないことも原因のひとつですし,最近, 共同で行った実験(寺西・江頭,1993)によれば,堆積速度は,式(22)の傾向とは逆にh/dが小さくなるに伴い増加するような結果が得られている
27年前でこの知見です。それから現在まで何も変わっていないのは、検証済みなのか、それとも放置なのか。
いずれにしても、再現計算なしでは非常に危ういモデルであることは理解できました。
いずれにしても、再現計算なしでは非常に危ういモデルであることは理解できました。
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