貯めていた「再現期間と崩壊」に関する文献をチェックしました。
齋藤ほか「日本列島における斜面崩壊発生と確率雨量との関係」斜面崩壊は、その場所の暖候期降水量にかかわらず、再現期間 5 年(中央値)~ 300 年(95th percentile)の降雨イベントで発生していた.その中でも規模が 1千 m3 以下の斜面崩壊は,再現期間 10 年以下の降雨イベントで発生。10万 m3 以上の斜面崩壊が発生した降雨の再現期間は 100 年以上であった。木下ほか「深層崩壊が集中的に発生する降雨条件―平成23年台風12号の降雨分析―」台風12号の降雨は短期雨量指標ほど超過確率年が小さく、長期雨量指標ほど超過確率年が大きい降雨イベントであった。各降雨指標と深層崩壊発生の関係には明瞭な相関関係が見られなかったが、48時間雨量および累積雨量の確率年と深層崩壊の発生数および発生率、深層崩壊規模の間には相関関係が見られる。特に崩壊面積10万m2以上の崩壊については累積雨量1/180年以上、48時間雨量1/120年以上で発生する傾向が見られる。
広島の土石流が約10年毎の発生ですので、再現期間10年というのは妥当な気がします。
また、深層崩壊など大規模なモノで100年以上というのも感覚的に受け入れられます。
執印ほか「確率年を用いた単一降雨指標による土砂災害発生危険度の評価について-東京都伊豆大島を事例として-」IRPIによる土砂災害発生時の下限値は104年、非発生豪雨の上限は64年。IRPI:スネークライン原点からの距離(確率年)
IRPI は忘れていたのですが、私も2軸のみならず3軸まで試したことがあります。が、全国規模では1軸に比べ特別に効く指標とはなり得ませんでした。
この文献は他の文献とは異なり、非発生降雨に触れられているところがgood!
どのような問題でも、偏った視点だけでは解けません。
川越ほか「降雨極値の再現期間を用いた斜面災害の発生確率」1991年9月19日のいわき市での降雨イベントを利用。浸透計算(動水勾配)、起伏量を特徴量としたロジスティック回帰による崩壊確率モデルを構築。再現期間30年の降雨極値により東北地方の概ねの山地、丘陵が発生確率80%以上になる。再現期間5年の降雨極値により釜石市、いわき市、再現期間30年の降雨極値により秋田市、仙台市、郡山市が発生確率80%以上になる。
川越ほか「温暖化に対する土砂災害の影響評価 」2004年7月12日~13日の新潟・福島豪雨イベントでモデルを構築。再現期間30年などで、山頂から山裾側にリスクの高い地域が拡大することが明らかにされた。※発生確率主体の部分省略
多重ロジスティック回帰は、単純な割に案外良い予測性能を出す印象があります(GBDTより劣るのでモデル採用には至りませんが)。
残念ながらイベント数が限られており、モデルの予測性能も不明です。
残念ながらイベント数が限られており、モデルの予測性能も不明です。
いずれにしても、全国の降雨を同一指標で扱おうとして再現期間、確率年を利用する方法に至るのは当然の流れでしょう(全国で指標を統一すべきかはわかりませんが)。
RBFN値と共に再現期間等の利用が進むのか、あるいはビッグデータを扱う新たな流れに呑まれるのか。呑まれたとしても、このような地道な評価、解釈は続けて頂きたいものです。
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