2020年5月30日土曜日

土石流モデル 不明点の整理

久しぶりに Hyper KANAKO を使う必要が出てきたため、この週末にわかっていること、わかっていないことの整理を始めました。

このソフト、理論マニュアルがないため、どのような式が使われているのか一見わかりません。マニュアルがないため文献を追いかけることもできません。開発者に問い合わせることで論文等を紹介されたことがありましたが、そこにも詳細は書かれておらず、最終的には引用のループでお手上げ状態でした。
ソースが公開されていないため、そちらから追いかけることもできません(後輩さん曰く、'嫌気が差すほど’不具合が多いのですが、残念ながらその改良もできません)。
このような状況なのですが、土研さんの資料4240号がこのソフトに準じておりにソフトが適合しており、特許や著作権のしがらみがなく使用できる唯一のソフトであるため、研究発表会などでは時折耳にします。開発が学主体なのでお客様にとっては「お墨付き」があるように受け止められるのも一因でしょう。
で、先輩さん曰く「これを使わざるを得ない」と。
で、現段階での整理です。

わかっていること
  • 侵食・堆積の判断、およびその速度 i の算出に平衡土砂濃度(土石流の段波が一定高さを保つ流下土砂濃度=流下中に侵食も堆積も発生しない濃度)を利用。
  • 平衡土砂濃度は、流下土塊+河床土塊を一体(剛体)とみなした、ある深度でのせん断応力とせん断抵抗力の比より導出(高橋「土石流の発生と流動に関する研究」)
  • 平衡土砂濃度は水面勾配(エネルギー勾配や河床勾配より安定のため代用)を用いて算出。
  • 3つの形態(土石流、掃流状集合流動、掃流砂)に区分し、それぞれ平衡土砂濃度の計算式を変更。シームレスに切り替え。
  • 河床せん断力τの計算式も、河床土砂濃度と流下土砂濃度に応じて3区分
わかっていないこと
  • 河床せん断力τを3区分する濃度の閾値(0.01、0.4C*)の根拠
  • 河床せん断力τの導出(土石流、掃流状集合流動)
  • 侵食堆積速度 i の導出(特に侵食・堆積速度係数の一般値の根拠)
  • 平衡土砂濃度c∞を3区分する水面勾配の閾値(0.03、0.138)の根拠
  • 平衡土砂濃度c∞の導出(掃流状集合流動、掃流砂)

要は土石流特有の「高橋らのモデル?」※ を追えないということです。
実験で決めました、としか言いようがないのでしょうか?

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※「江頭モデル」との比較をおこなっています。
高濱ほか2000「土石流シミュレーショモデルの比較研究」https://www.jstage.jst.go.jp/article/prohe1990/44/0/44_0_687/_pdf 

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20200602追記。
2019年版の Hyper KANAKO も不具合が多く、1日頑張りましたが計算までたどり着けませんでした。実務には向かないでしょう。
また寝かせましょう。

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