2017年3月2日木曜日

DualSPHysics Multi-Phase その2

手始めに、2次元でモデル化。

題材は越流破堤だったのですが、inputファイルを作成中に、以下の制限に気づきました。
  • 水位固定や、定流量の様な境界条件を設けることができません。
    今回は横にタンクを付けて代替えとしておきましょう。
  • 現段階で2相以上の取り扱いはできないようです。それは良いのですが、基礎地盤と堤体の構成材料を区分した場合に3相と認識されるようでエラーがかかります。
    仕方ないので土は1層にしました。
いきなりですが、これら2点で実務への適用性はグッと低くなってしまいました。
ま、何ができるかの確認も必要ですので、先へ進めることに。

土砂のパラメーターを c=100kN/m2、φ=30°、γ=18kN/m3 とし、Drucker-Prager の破壊基準で input ファイルを作成し実行!

結果はダメ。
堤防が流体のように自重でグニャっと変形してします。そういえば、内部消費などは構成式に含まれていませんでした。粘性を高めることで対応する考え方でしょうか?その点、同じNS方程式を出発点とした LSFLOW はよく考えられていると気付かされます。
そもそも、自立する材料としての視点ではなく、土粒子としての視点で N-S方程式を適用しているのでしょうから、LSFLOW のように式を加工しないとうまく再現できないのでしょう。河床変動の様なモデルに最適なのかもしれません。

文献値に示されている通りに土砂の粘性を高めてみてもダメでした。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0309170816300926
The fluid dynamic viscosity was 0.001Pa. s and sediment viscosity was set to 150Pa. s with the HBP m and n parameter set to 100 and 1.8 respectively. The value for the exponential growth m parameter value was chosen to approximate a Bingham model as closely as possible with a minimal pseudo-Newtonian region and the power-law exponent n to resemble shear thinning materials as shown in Fig. 3.3. Finally a small amount of cohesion was given to the sediment phase of c = 100 Pa to stabilise the interface and control the scouring near the dam gate. 
この粘性も、dynamic で入力するのか kinematic なのかは示されていません(通常版では kinematic と示されています)。さらに水の重量が kg で入力されていますので、c も kg/m2 で入力すべきなのでしょう。が、そのあたりも書かれていません。コメントや説明書に単位ぐらい示しておいて欲しいものです(私が見つけていないだけかもしれませんが)。


今度は D-P の破壊基準を使用せず、一定値で降伏するような設定にしてみました。これ、先日の文献にも使われていた手法のようですが、それっぽくはなります。が、越流前に水圧で堤体全体が若干変形してしまうのは避けられません。壊れるまでは不透水ということ、流体ベースということが効いているように思えます。また、越流直後、堤内側の斜面を削剥しながら流下する結果もイマイチ。岡山大学の文献では、堤内側にも越流した水もモデル化して計算されていましたが、こういった現象を防ぐコツなのでしょうか?




水頭差を小さくしたり、人工粘性でなく水の動粘性係数を入力したりしましたが、結局、納得のいく結果は得られませんでした。


Multi-Phase Ver.3.4β の結果を整理すると、以下の通り。

・境界条件の設定が困難。
・土砂を1層しか取り扱えない(区分できない)。
・パラメーターの単位について不明な点が残る。
・現行の支配方程式では、堤体の様な自立する土構造物をc・φで特徴付けることは困難。

最後の点は、今後、ソースが公開された時点で LSFLOW に似せれば解決するでしょう。

とりあえず、その能力は掴めました。


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