2017年3月26日日曜日

コールドロンと火砕岩岩脈

後輩から「岩石名が分からない」と、写真が送られてきました。

コアの数10cm区間が、破砕状になっています。その部分の名前が分からないとのことでした。
固結した破砕部ですので、岩石名を付ける必要はないとは思いましたが、成因を知りたい=岩石名が決まるということのようです。
よく見ると、破砕岩中に異質の岩石が取り込まれていました。破砕岩の周りは結晶片岩なのですが、破砕岩中には深成岩片が取り込まれています。
1.ゼノリスのように深部の母岩が取り込まれた岩脈か、2.上部の礫が落ち込んだ割れ目区間かしか思いつかなかったのですが、周辺の地質を知りませんので判断できませんでした。

コアが分析者の手元に送られてきました。それを見た限り、特に上記のどちらかで問題はないようでした。が、新人さん曰く「タフダイクではないか?」と。
タフダイクってなんだ?と思って聞いてみますと、コールドロンの形成にかかわる文献によく出てくる名称とのこと。
調べてみますと、違うようでした。液状化のサンドパイプのような成因に対しタフダイクという言葉が使われています。コールドロンでは「火砕岩岩脈」「貫入性角礫岩」でした。これらを言いたかったのでしょう。

と言っても、火砕岩岩脈という言葉にも違和感があります。火砕岩は地表での堆積起源であり、深部から圧入した「岩脈」とは成因が異なるイメージを持っています。
コールドロンの文献では、火山活動に伴う流動物質で母岩片を取り込むものや、火砕物を供給する火道跡にて固結した岩石(およびその後のドレインバックによる圧縮・溶結、せん断)などといった成因を指して命名しているようです。火道に火砕物を供給する、という表現にも引っかかりますが、ま、現物を見ないと何とも言えません(見ても納得できないかもしれませんが)。

コールドロンについては、近年、複数個所でその可能性が示されているようです。それらの文献を読み進めながら火山岩の分布域を見てみると、コールドロンのない地質図の方に疑問が生じると思います。今後、コールドロンといった現象を重力探査で裏付けされたものが広域の地質図に反映されだすと、それに伴う地質(特に岩脈や破砕部)の成因について考慮する要因が増えることになるでしょう。土木上も、その成因がトンネルなどの計画に影響するのかどうかを見極める必要が出てきます。
広域の特徴を押さえた上で、ローカルの議論を進める視点がより重要になるということです。


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