2015年3月22日日曜日

有効応力法と全応力法 その3

「土地改良事業計画設計基準 設計ダム技術書 フィルダム編」では、条件により全応力法と有効応力法の使い分けが定められています。

完成後の地震時の安定計算では、先の文献の排水条件と同じ有効応力法の式が採用されています。これは、ロック材など透水性の高い材料は即時排水するため、地震に起因する間隙水圧ueやせん断による過剰間隙水圧usは発生しないという考え方でしょう。

一方、地震荷重により圧密排水しないような透水性の低い材料(非排水材料)に適用すべき式は基準で省かれています。
非排水材料は地震荷重に対し、それに応じた間隙水圧ueが発生します。そのため、文献内の式では地震荷重と相殺されています。が、せん断時の過剰間隙水圧usはそのまま残ります。有効応力法ではこれを考慮しなければなりませんが、基準ではその式が省かれているのです(ロック材と同じ式を使用することになっています)。

ため池の円弧すべりでは、ダム基準が適用されます。地域性もありますが、締固めた堤体などに粘性土が使われていることも多々あります。その場合、せん断時に正のダイレイタンシーを引き起こそうとしますが、非排水材料=定体積(水が入ってこない)ですので、負の過剰間隙水圧usが発生します。σ'=σ-u-us(ueは相殺)ですので、本来はσ'が負のusによってσ-uより大きくなるはずです。が、上記基準に従えば考慮されません。結果、堤体の強度(σ'tanφ')を過小評価することになります。その影響は先の論文のFsに表れていた通りです。

ため池基準、耐震基準は改訂されるようですが、それらの安定計算式の参照先であるダム基準はアナウンスがありません。文献と異なり、上記の影響は小さいという考えなのでしょうか?まだ私が知らない実証があるのかもしれません。
http://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/nousin/gizyutu/h26_4/
ま、「何かおかしい」と思った際には上記も含めてチェックすべきでしょう。

次は河川。



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