観測孔の設置は、多くの場合、ボーリング孔を利用します。
水位だけであれば、使用されていない打ち込み井戸の利用や、新たな打ち込み井戸の設置、耐用年数を考えなければ、簡易貫入後に細い VP を入れて仕上げることがあります。
土研と応用さんが、ミニラムを使用した設置手法も開発しているようです。使用したことはありませんが、特許をかけていること、契約先が応用さんになっていることなどから、きっと高いのでしょうね。
http://www.pwri.go.jp/jpn/seika/newtech/bui/img/01.pdf
設置の仕様としては、地盤工学会基準でしょうか。他には、地すべりを対象とした土研地すべりチームの共同研究、学会の口頭発表などがあります。前者に示されるように、ノウハウとして伝わっている部分が多いと思います。
http://www.pwri.go.jp/team/landslide/outcome/C457.pdf
http://www.web-gis.jp/e-Forum/2013/PDF/2013-006.pdf
水質を観測する場合には、よりいっそう気を使います。
接着剤は使用不可ですので、ネジきりタイプの保孔管が必須です。水質測定用に特化した市販品もありますが、水道用塩ビ(JIS K
6742)をネジ切り加工して使用しても良いと思います。それらをシールしながら埋設します。
遮水材も、水質に全く影響のない材料を選びたいのですが、なかなか完璧なものはありません。ペレットやセメント、ナイスシール程度しか選択肢がないのも一因でしょう。揚水量を多くし、影響を小さくすることを考えていますが、良い方法はないでしょうか?
ペレットや豆砂利を充てんする場合、挿入する VP の大きさと孔壁とのクリアランスを考慮する必要があります。水質試験等で揚水が必要な場合、VP50 程度のほうが効率良いので、φ86mm 以上で掘削することが多いですね。水位だけなら、VP40 より小さくても可能です。土研の報告ではVP30 を1孔に多段で入れて、帯水層別の水位観測孔に仕上げている例も報告されています。
ストレーナー周りはフィルター巻き、底はキャップ等で土砂の流入を防ぎます。フィルターに関しては、防虫網や繊維フィルターを使用していることが多いようですね。これも、主目的が水質なのか、水位なのかで選択が変わるところでしょう。それでもいくらか土砂が孔内に入ってくるため、延長は少し長めに設置し、泥だめを作っておきます。
洗浄が一番時間のかかる作業です。また、充てんとともにノウハウに頼るところでしょうか?
上がってくる水が綺麗になるまで、注水・揚水するのですが、通常、数時間~1日は実施しています。岩盤の場合、多くが山中ですので派手に注水して洗浄します。が、都市部では排水不可のケースが多々あり、大量の揚水・注水による洗浄が困難となります。その場合、用意したタンクに少量の排水、注水を続け、時間をかけて洗浄します。コンプレッサーで吹かすこともありますね。
もっと良い方法があると思いますが、誰に聞いても我流です。案外、井戸屋さんに決まったノウハウがあるかもしれません。さく井の分野では地盤に応じた砂利の大きさの選定も目安がありましたので、そちらの方が進んでいると思います。
調査孔と観測孔を併用する場合、泥水の使用は避けたいところです。先輩によれば、ウエルクリーナー等を使用して泥壁を取り除くことも可能だそうですが、目の細かいフィルターを設置していたり、近くに利用中の井戸があれば適用困難です。保孔管挿入前にケーシングを回して孔壁を壊しながら洗浄をしておくことが必要となりますが、それでも完全には取れません。水質観測用の場合は、別途掘る方が良いと思います。オペさんによっては、ポリマー材のほうが後で通水させやすいので、そちらを選択される方もいらっしゃいます。
坑口部は無孔管+止水、車道などでは跳ね上げ防止のため鍵付きの耐圧蓋を設置します。
これだけ気を使って設置しても、失敗する場合があります。経験と技術が必要ですし、時間も費用もかかる作業です。経験豊かなオペさんには、まだまだ頑張っていただかないといけません。