その中で、2軸指標(長期雨量、短期雨量、土壌雨量指数などの組み合わせ)を使うという動きがあります。「技術者に必要な斜面崩壊の知識」にも簡単ですが掲載されていました。p215のグラフです。
それをもっとわかりやすくしたのが、次ページの降雨継続時間と再現期間での議論。これは面白いですね。
今年、初めて自分で手を動かして確率降水量を計算した際に、継続時間の区切りなどで引っかかったことがあります。この本では、それを意識することなく、継続時間毎に再現期間を計算しプロットしてありました。これにより、一連の雨の中で、どの継続時間がもっとも斜面にとって不慣れな雨だったかを視覚的にわかるように工夫されています。砂防分野ではスタンダードな手法なのでしょうか?
3章では確率降水量の基礎、再現期間と表層崩壊の話がまとめられています。このように、継続時間毎の再現機関を比較できると、どの継続時間の雨が斜面崩壊に起因したかを推定しやすくなります。当然、概略の域を超えませんが、傾向をつかむには良い手法だと思います。また、これらが土研さんが提供しているEXCELシートで計算できることも紹介されています。
http://www.pwri.go.jp/jpn/seika/amedas/top.htm
http://www.pwri.go.jp/jpn/seika/amedas/top.htm
実際に触ってみましたが、非常に手軽ですね。アメダスに限定されますが、データを集めて期間毎に整理する必要がありません。国土技術センターさんの水文統計ユーティティとあわせて持っておけば、多くの場合、事足りるでしょう。
台風12号の深層崩壊では、72時間の再現期間が約200年のようです。その前に、48時間が150年ですので、雨量だけではどのあたりで崩壊したかが分かりません(振動センサーなど、他の観測結果で分かっていますが)。しかし、傾向として、短期より長期の雨量が崩壊に対し危険ということはすぐにわかります。すばらしい。
一方、誘因としての再現期間200年では、斜面が安定していたと考えられる数千年(数千年の根拠は書かれていません)で壊れていないのが説明できないとも。従って、クリープなどの素因の変化があるはずと展開されています。ま、この辺は地質屋さんが根拠を持ってこないといけませんね。
古いデータを使われている箇所もありますので、この手法自体、昔からあるのでしょう(私が知らなかっただけです)。もう少し、読み進めましょう。