2011年9月18日日曜日

法面崩壊

今朝の新聞に法面崩壊の写真が掲載されていました。よく見ると、私が法面調査を担当している路線です。

台風12号による先行雨量と、一昨日からの累積雨量が誘因となり表層崩壊を起こし、一時通行止めになっていたようです。後で聞くと、TVニュースにも出ていたようです。交通量の非常に多い路線でしたので、人的被害がなかっただけでもホッとしました。

お客様から連絡がなかったので、同じ路線でも私の調査対象法面とは外れているだろう、写真で見る限り地形・地質条件が少し違う、このような崩壊を起こしそうな不安定な法面は無かった、でも見落としがあるかもしれない、などと色々考えながらすぐ崩壊現場に向かいました。

現場を見ると、風化土、一部風化岩を含む表層部の崩壊でした(深層崩壊の定義が2~3mであれば、これも深層崩壊ですが)。幸いと言うか、残念ながらと言うか私の担当箇所ではなく、その間にある法面でした。3分くらいで連続写真を撮り、その後滑落崖を見ながら簡単に原因をまとめ現場を離れました。

ストリートビューで見る限り、植生に乱れは無く、空中写真からも背後に大きなすべりがあるように見えません。過去のカルテ点検ではどのような状況であったのか知りたいですね。この路線では、同じような風化土の崩壊が過去の台風で複数回でおきていますので、地質的素因を含む法面としてピックアップすることは可能だったでしょう。路線全体ではかなりの数になりますが。ただ、そこからピンポイントで崩壊予測するのは難しかったと思います。

今回の場合は少し違いますが、昨年の広島県で起きた庄原災害では、誘因となる豪雨の通り道で土石流や崩壊が発生しているため、今後は斜面を広域にお金をかけて調べるよりも、雨の予測精度を上げる方が大事ではないかという意見もありました。確かに、広島大学の研究でも、先行雨量と崩壊時の累積雨量の重ね合わせで災害発生箇所が説明できるような報告があります。誘因としての豪雨の通り道を早く、正確に知ること、それを利用して避難することも重要でしょう。

ハード対策を行っても、自然の平衡点への到達速度を一時的に(人間活動としては有意な時間ですが)送らせているだけであり、それらが老朽化すれば次の世代に負の遺産だけでなく、ポテンシャルの増した自然の脅威を背負わせることになります。ハードに対して更なる手当てがなされないと、自然は既存の対策を乗り越え、平衡点に向かって一気に進みます。そこに人的、物的被害が出ると災害と呼ばれます。平衡状態を知ることが長期的に災害を避ける唯一の方法であると思います。
高校地学の履修者を増やし、災害につながる自然の理もその中で教育すれば、百年後には異なった景観・防災体制になるかもしれません。これは理想論で、なかなか難しいでしょうけれど。

今日は道路からしか見ることができませんでしたので、後日時間をとって再調査に行きましょう。

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