2011年6月29日水曜日

今年の目標

今年も半分終わりました。

短期目標として、今年は以下の点をこなそうと思っていました。進捗は50%程度と言ったところでしょうか?
  1. Dtransuの高速化 OpenMP, GPGPU
  2. 飽和・不飽和輸送と反応の連成
  3. 変形解析
Dtransuは半分クリアーです。あとはGPGPUだけですね。
ただし、Dtransuのコード読みが終わっていないので、CUDAコードと併せて読み込む必要がありそうです。目標にはしていませんが、使用している技術者として当然のことなので、やっておく必要があります。でも、難しいんですよね。

輸送と反応は1次元のみHP1でクリアーです。3次元はMATLAB+COMSOL+IPhreeqc と連携コードで可能ですが、ソフトがありません。COMSOLのセミナーには出席する予定ですが、ペイできなければ買ってくれないでしょう。
しかし、お金を出せばできることは分かりました。この辺りでクリアーにしましょう。

変形解析は、まだまだですね。
分かったと思ったら、次に分からないことがドンと出てくる段階です。山の裾野のほうでしょう。早く連続体から不連続体、粒子法へ行きたいのですが、先は長そうです。学ぶべきことは、まだまだたくさんあります。

残り半年、焦らずに時間をかけてやりましょう。

2011年6月28日火曜日

ミニラムの換算N値

応用地質製のミニラムは小型動的コーン貫入試験に用いられる装置で、サウンディングに分類されます。
http://www.oyo.jp/product/11-in-situ/miniram.html

簡易動的コーン貫入試験で対応できない硬い地盤でも比較的入ります。
スウェーデン、簡易貫入、ミニラムの3セットでほとんどの地盤に対応できますから、重宝しています。昨年の地盤工学会だったかどうか忘れましたが、先端に間隙水圧計をつけたオプションの開発を発表されていました。早く発売してほしいですね。

ミニラムは換算N値も出ます。砂質土でN値の倍の打撃回数になるとアナウンスされています。しかし、実測N値よりも小さくなることが多々あります。本当に20cm当たりの打撃回数で良いのか?(30cmじゃないのか?)、本当に貫入エネルギーは1/2になっているのか?ということに疑問を持ち、調べてみました。

HPやカタログでは、以下の貫入エネルギーの式が掲載されています。地盤工学会「地盤調査の方法と解説」にも出ている式です。

Rd=(MgH/A)×(N/D’)

「ミニラムは上式を基に同一地盤においてはその打撃回数が標準貫入試験(SPT)の2倍となるように設計されています。」とHPでアナウンスされています。
断面積や高さはわかるので、実際に入力して計算してみました。
しかし、どうやってもミニラムがSPTの1/2の貫入エネルギーになりません。SPTサンプラーの外形だけでもダメ、外径から内径を引いてもダメ、20cmを30cmに変えてもダメです。

仕方がないので応用の筑波の研究所に問い合わせたところ、「SPTとミニラムの比較は上式ではやっていない」とのこと。また、「ラムサウンディング試験の結果と比較した経験式であり、上式は使っていないだろう」とおっしゃいます。よくわかりませんでした。

もしやと思ってラムサウンディングとミニラムの貫入エネルギーを上式で比較したところ、ばっちり1/2でした。つまり、以下の2つの経験式・換算式を利用しているということです。

経験式 : N値 ≒ ラムの打撃回数(20cm当り)
貫入エネルギーによる換算式 : ラムの打撃回数 = ミニラム打撃回数の1/2

雑なようですが、案外こんなものです。簡易貫入から換算N値を出す時も、簡易貫入とスウェーデン、スウェーデンとN値の関係式が用いられている場合があります。換算式の精度には注意が必要ということでしょう。

HPにミニラムの整理用ワークブックをUPしておきました。DXF変換のVBAは簡易貫入を少し変えただけです。EXCEL2007以上で御使用ください。
https://sites.google.com/site/geochemist001/resources/miniramu

2011年6月27日月曜日

EXCEL Solver

EXCEL2007 のソルバーアドインを使って収束計算をしているのですが、次のエラーが頻繁に出るようになりました。

"Solver: An unexpected internal error occurred, or the available memory was exhausted"

公式なサポートは出ていませんが、解決策はいくつか出ています。
http://www.eggheadcafe.com/software/aspnet/30274656/excel-2007-solver-internal-error-when-generating-answer-report.aspx
古いVer.から受け継いでいるエラーのようですね。
http://support.microsoft.com/kb/819033/ja
http://support.microsoft.com/kb/821430/ja

ソルバーの参照設定が有効になっているかどうかがポイントのようですが、私の環境(XP32bit)ではまったく改善しませんでした。日本語版、英語版、ともにダメ。仕方ないので、Win7 64bit + EXCEL2010 で計算すると、あっさり通りました。その後、何回も同じ計算をさせまったくエラーは出ませんでした。EXCEL2010 は 32bit を選択していますので、ソルバーのVer.UP が大きな改善点なのでしょう。

Microsoft お得意の「最新版の使用を推奨」といったところでしょうか。

2011年6月26日日曜日

Dtransu + OpenMP

DtransuはプログラマーさんがあっさりOpenMPを実装してくれたので、かなり助かっています。

コードを確認して「こんなに簡潔にできるんだ」と感心しました。コロンブスの卵と言いますか、餅は餅屋と言いますか、自分ではできないですね。
プロファイリングと簡単なアルゴリズムの追加で、精度を保ったまま、輸送計算は2コアで1.8倍、6コアで3倍のスピードになりました。さすがプロですね。尊敬します。
今はオリジナルコードのミス修正を反映し終えたところです。実施中の計算が一段落つけば、すぐに検証しましょう。
GPGPUは並列化が終わったのだから簡単でしょと思いきや、そうではないようです。苦労されています。私の知識はまだまだです。

ところで、最近気づいたのですが、Core i7-980Xを4GHzまでO.C.し、6コア使って並列計算すると1~2日で落ちることがあります。1コア×6ケースでも同じですね。ただ、5コアであれば4日くらいで完走します。O.C.しなければ12スレッドフルで使っても14日くらいで完走します。
やはり常用といっても、時間的な限界があるんでしょうね。

2011年6月23日木曜日

地表流

井戸や沢水を利用されている方がいらっしゃると、施工の影響予測として計算を必要とすることがよくあります。

困るのが沢水。地表流として扱う場合にはソフトが限られてしまいます。
古い手法ですがタンクモデルやTOWNBY、最近ではGETFLOWS, HydroGeoSphere, GSFLOW などでしょうか?ジーエムラボからDtransuに対応したプリポストが発売されたようですが、将来的には地表流も搭載されるようです。
http://www.gmlabo.co.jp/geomodeler/gaiyo.html

準三次元(差分)とならEXCELでも組めそうかもと思いつつ、既に組んでいらっしゃる方がいるかも?と探してみました。ありませんでしたね。ただ、国総研ではEXCEL+SHERモデル+GWAPで地表流と地下水の連携が開発済みのようです。
http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0322pdf/ks0322.pdf
どんな連携の仕方なのか見てみたいですね。

2011年6月21日火曜日

乱れの少ない試料採取

シンウォールは軟弱でよく用いますね。

N値0~4程度の柔らかい粘性土に対して用います。それ以上堅くなるとデニソンサンプラーの出番です。しかし、このツールで乱さずに採取するのは非常に難しいようです。倍圧サンプラーの方が小口径で簡単に採取できますが、水回りの設備が大変ですね。1長1短です。トリプルサンプラーは主に砂質土で用いられますが、これも難儀する場面をよく見ます。細粒分が少ない海砂などでは落下する場合もあります。

これらのサンプリングツールに共通するのは、品質がボーリング屋さんの腕に懸かっているということ。デニソンやトリプルはもちろん、シンウォールでも腕の差が出ます。同じように、同じ深さだけ押しこんでいるように見えますが、違うようです。それはオペさんが見てもわからないノウハウ、差のようですね。同じ海成粘土をサンプリングしても、1軸+簡易CUで乱れ具合を判定すれば、腕の差が明瞭に出ます。

また、腕の良いオペさんは通常のφ66コアを驚くほど乱さずに上げてくれます。泡よりもきれいに採れていますし、そのように自負されています。
粘性土を主体とする地すべり土塊中の礫が、まったく乱れずに切れているのを何度も見たことがあります。岩着部も土砂との境界をまったく乱さずに上げてくれます。さらに、破砕帯までその両側の健岩部ともども、まったく乱さずに上げてくれます。これには度肝を抜かれました。使用されているツールや材料も自分達で改造・工夫されていますし、常に水圧を細かく管理されています。それで日進5~7mでしたから、まさしくプロです。尊敬します。当社のサラリーマンオペにも見習ってもらいたいところです。

市販ツールも良くなっています。アイジイの横穴付きビットは格段にコアの品質を上げてくれます。オペさんは謙遜して「腕ではなく道具が良くなった」と言われますが、道具の進化に付いて行く努力、腕やノウハウも必要なのでしょう。マイカイのGWSビットも同じような機構ですが、こちらは腕が要りそうですね。
http://www.kmaikai.co.jp/gws1.htm

トリプルやデニソンでは、メタルビットを改造したり、泥水やホレール、マッドチューブの使用で採取率が向上するようです。試行錯誤をしながらの経験が重要な世界なのでしょう。

2011年6月19日日曜日

地山強度比

地山強度比の設定には一軸圧縮強度が必要です。

一軸圧縮強度を得るには10cm程度の棒状コアが必要です。そうすると、(CL~)CM級以上のコアが必要になります。そのため、風化土やCL級の岩盤では地山強度比を得られないことになります。

しかし、実務上は地山のVpなどで補正?して風化土まで算出しているのをよく見かけます。Vpでの補正は本来、亀裂の影響を反映(準岩盤強度を算出)するところにあるのですが、無理やり使われていますね。補正時に天端から1.5Dの位置のVpを使用しているケースもあります。地山等級を判断する際には1.5Dまで考慮する必要がありますが、準岩盤強度の算出ではサンプリング位置と、同じ強度、コアのVpとみなせる地質帯の天端(側壁)までではないでしょうか?
また、一軸と同じサンプルで実施した単体試験値×土被りを使って土被り圧を算出している例も多いですね。1.5Dと同じように「安全側」を考えられてのことでしょうが、本来は表層と深部で単体は異なっています。

トンネル屋さんの多くは上記まで考慮しません。地山分類では断面図の帯に記載された結果を利用されます。地質屋さんも算出した結果をそのまま利用して、地山等級を決めている場合が多々見受けられます。

地山強度比の意味を理解するとともに、どこで試験をして、どこの値を流用した値なのか、使用する際にはチェックが必要です。

2011年6月18日土曜日

切土・盛土と三笠の一般全応力法

道路土工の切土工・斜面安定工指針では、切土斜面の強度設定としてCUB試験が挙げられています(p401)。改訂前も同じ表が掲載されていましたね。

斜面を切る場合、粘性土であれば長期安定が問題となります。CUB試験では、時間とともに吸水膨張(あるいは非排水膨張)し、強度低下が起こる場合の安全側のcφを試験で求めることができます。
逆に盛土では、短期問題としてUUを挙げている教科書や基準書が多いのですが、同指針ではCUBになっています。
これらの条件を整理すると、実務上、三笠の一般全応力法で安全側のc・φを決めることができます。基準書や土質力学の教科書にも載っている場合がありますので、古い手法なのでしょう。
http://ci.nii.ac.jp/lognavi?name=nels&lang=jp&type=pdf&id=ART0005447927

今回、道路盛土(粘性土)を掘削するということでCUB、その後さらに盛り立てる計画があるということでUUの両方を試験しないといけないと思い、両方やった事例があるかどうかexecutive達に確認したところ、「粘土は一軸かUUでしょ」という意見が圧倒的でした。その方たちに、なぜUUだけでCUBをしなかったのか聞いてみると、「粘土だから」といったよくわからない理由でした。なお、こだわりの部長様だけがCUBを実施されているといった結果。しかも、せん断前に一度圧密してから減圧膨張させるといったこだわりがありました(感服です)。

確かに、粘土のCUBは時間がかかるし価格も他の土質試験に比べ非常に高いのでお客様が嫌がります。急ぎの仕事が多いのも一つの原因でしょう(急ぎでない仕事って少ないですよね)。それに試験時に切土後の小さな側圧を設定することも工夫が必要ですし、UUをやるとなるとサンプルも2倍必要になります。全体的に面倒なので避けたがる傾向があるのかもしれません。
ただ、粘土=c材料といった先入観だけは避けたいところですね。

2011年6月17日金曜日

AC-UNSAF

先日、地盤工学会の図書室で、AC-UNSAF2D のコードに簡単な説明がついている資料を見つけました。地盤工学会関西支部による「第41回実技セミナー資料 数値解析の理論と実務」です。平成11年6月ですから12年前ですね。支部に残っていないかもしれませんので、その部分だけコピーしておきました。本当に簡単ですが、無いよりマシです。昔はこのような講習会で皆さん勉強されたのでしょうね。
その後も探してみましたが、残念ながらDtransu3Dはありませんでした。昨日、支部に問い合わせてみましたが、「メール送ります!」と言われてそのまま。どうなんでしょう。

ネットで検索すると、AC-UNSAF3Dもありました。こちらは整理されていますね。Dtransuを読むのにもに使えそうです。
http://gw.civil.okayama-u.ac.jp/jgs-okayama/others/141123/index.html

まさか、と思ってAC-UNSAFのコードを岡大のHPからDLしてみますと、そのまさかでした。付属のマニュアルにも書かれています。Dtransuで事足りるので、UNSAFはDLしたことがなかったんです。もっと早く気付けばよかった。

2011年6月16日木曜日

地下水の起源

地下水の起源

先日、トリチウムの測定についてUPしましたが、地下水の起源推定に使える同位体、化学種は他にもありますね。

たとえば酸素。重い同位体ほど早く降下(分別)するので、標高の高い涵養源ほど、軽い同位対の占める割合が大きくなります(高度効果)。トリチウム測定による滞留時間の推定と整合的かどうかのチェックになります。
私は酸素同位体を扱ったことは無いですが、温泉などへの影響評価業務では比較的良い結果をよく見ます。

また、聞いたところによりますと、まだ開発中のようですが、最近ではフロンも利用されようとしています。核実験で放出されたトリチウムと同様に、フロンも人為起源による濃度変化を利用したトレーサーです。濃度変化を見る限り、トリチウムより近い年代に効果的かと思われます。

トリチウムで~60年、ヘリウム併用で~100年、フロンで~50年です。
いずれにしても、影響評価には使えます。具体的には表流水との区別や粒子追跡などによるチェック・検証、あるいはその根拠としての利用が考えられますね。
どのくらいの年代の地下水を相手にするのか考えて、手法を選択する必要がありますね。

連続体力学

地盤工学会の「地盤の連続体力学入門講習会」を受講しました。

3人の先生による連続体力学の基礎理論、構成式、微小変形論の適用性でした。理解の弱い変形理解の基礎となればと思い受講たのですが、ちょうど良いレベルでした。久しぶりに頭を使いましたね。

基礎理論はOKです。これは特に問題はありませんでした。

構成式は理解度50%程度というところでしょうか?時間の都合上、式の展開はほぼ省略されましたので後日追う必要があります。私にはちょっと難しかったですね。弾塑性のみでしたが、あとは参考書で理解を深める必要があります。講義の最後にセメント量や飽和度を指標とした強度特性の反映も紹介されましたが、構成式の変更は割と単純でしたね。ただ、コードを自作するしかないようで、実務ではOUTです。もちろん、技術論ではありません。有名な先生のお墨付きか、数多くの実績があるコードでないとお客様が嫌がりますから使えないのです。仕方ありません。

微少変形理論は分からないところの方が多かったですね。難しかった。ただ、疑問に思っていた箇所、たとえば、「体積ひずみεv=ε1+ε2+ε3を定義した場合、定体積せん断でも体積が減少(過小評価)する理由」などに対し分かりやすく御説明頂きました。
他にも、「テルツァギーの圧密理論の適用範囲」や「段階載荷と一括載荷での自重解析時の変形モードの違い」などを連続体力学を用いて示されました。数式は全く追えませんでしたが、面白い内容でした。

今回は自分に足りない箇所が具体的に理解できました。整理すべき箇所が山ほどあって時間が足りないですね。
こういった基礎力は講習会だけで身に付く物ではありません。一つ一つ式を追っていって、仮定なり適用範囲なりを理解する必要があります。時間をかける必要があり、王道はありません。提示頂いた参考書を購入し、足りない箇所をこつこつ補っていきましょう。

2011年6月14日火曜日

結晶質岩の透水亀裂

岩の力学連合会による今年度の特別講演は、吉田英一先生の「地下環境と物質移動-岩盤中の透水亀裂と長期的挙動-」でした。

主に、結晶質岩の亀裂について地質的特徴を整理し、以下のような点を主張されていました。
  1. 湧水亀裂のセクション観察では、空隙に向かって母岩より結晶が成長している。
    shearされると充填鉱物が破砕されるが、日本でそのような物を見たことがないと言われていました。従って応力解法でできた空隙と言われていました。
    亀裂自体の成因には異論がありますが、確かに、現在のローカルな応力場と亀裂の方向によって生じた空隙だと考えます。以前にもUPしましたね。
  2. 若い花崗岩ほど亀裂が少なく、古いほど多いと言うことはない。亀裂充填鉱物のレイヤーが少なく、幅が狭い。古いほど多層となり厚くなる。
    亀裂の数については違うでしょう、と思って聞いていると、葛根田では亀裂が非常に少ないことを紹介され、1Maで頭打ちになっているというような話でした。案外若くして頭打ちになるんですね。
  3. 断層周辺では短い割れ目が増える。長い割れ目の数は変わらない。また、短い割れ目は低温、長い割れ目では高温の充填鉱物が認められる。
    長い割れ目をbackground亀裂と呼ばれていました。そうすると、緑泥石など高温充填鉱物ほど連続性が良いということになります。これは違和感ありますね。
  4. 母岩からのCa,Fe,Kの溶脱が充填鉱物のソースになる。
    これは比較的知られている内容ですね。
  5. 粘土充填物は(せん断ではなく)圧入であろう
    いくつかの充填機構があると思いますが、せん断構造のない亀裂に粘土が充填されている事もあります。圧入もあるでしょう。ラミネーションや級化層理も認められるそうです。見てみたいですね。
基本的に地層処分など物質移動を評価するための調査のようです。私がいたサイトもちらっと出ていました。
ここで、気になる点が一つありました。応力により開いたとするのであれば、今後、数万年の応力場変遷を推定する必要があります。それによって、透水性、透水亀裂の方向が変化するからです。しかも、できればスケールの小さな、ローカルな応力場の変遷を推定しないと行けません。できるとすれば地質屋しか考えられませんが、無理でしょうね。そこで、以下の2点が重要だと考えます。
  1. 影響の大きい移流が卓越するような開き方が起こるのは、どういった場合か評価が必要。
  2. 透水性が変化した場合でも機能は保証されるような設計を行うために、地質屋による吸着特性や亀裂の連続性・分布の評価が必要。
いずれも難しい問題ですが、地質屋の腕の見せ所でしょう。今、閉じている亀裂も、透水亀裂と同じくらい調べる必要がありそうです。
最近はこのような地質の仕事が少ないので、まずは先生の最近の論文を読み、リハビリを行いますか。


余談ですが、他の受賞記念講演は解析がメインでした。つくづく、変形に弱い自分が恥ずかしいと思いますね。こういう場に出席すると。こちらも頑張らないといけません。

2011年6月12日日曜日

ホーキング、宇宙と人間を語る

今日、本屋で「ホーキング、宇宙と人間を語る」という本を見かけました。

天文台に遊びに行くこともあり、宇宙に興味がないわけではないですが、最新理論を知りたい!というほどではありません。表紙の写真に目が行って、手に取った次第です。

これが当たりでした。哲学的でしたね。

特に「モデル依存実在論」です。
私が常々思っているのは博士が言うほど高尚ではありません。次元が違います。しかし、似たようなことです。
我々が日常行っている解析は真理ではないでしょう。真理を得ることが重要なわけではありません。作り上げたモデルが真理であるかどうかも重要ではなく、そのモデルが観測結果をよく説明するかどうかが重要であり、予測の根拠となるのです。
いくら高度で複雑な理論を実装したソフトで3次元解析を行っても、パラメーターは2次元モール・クーロンや3軸圧縮試験などで求めた理論的に異なる強度を初期条件とし、キャリブレーションを行うのが常でしょう。高度な解析で再現できたモデルこそ真理ではなく、観測結果を矛盾なく再現できることに意味があるのです。どうでしょう。似ていませんか?
結構、勘違いしている人がいます。手間がかかる解析ほど真実に近い高度なことをやっていると思われる方もいます。だからといって、上記を力説することはありません。
これは先輩の受け売りですが、シャンデリアが欲しいと買いに来られたお客様に、あなたの家には蛍光灯で十分ですよと力説する営業マンはいません。技術論とは別で、仕事はサービス業であり、人と人との関係で成り立つものであり、難しいのです。

また、良いモデルの条件として、以下の点が挙げられていました。(再度言いますが、考えているレベルは違います。)
  1. 簡潔である。
  2. 任意の、あるいは調整のできる要素が少ない。
  3. すべての観測事実を矛盾なく説明できる。
  4. 将来の観測に関する予言、特にその内容が観測結果の合わなければモデルが間違っているとわかるような詳細な予言ができる。
痛い点がありますね。
矛盾が出てきた場合にどうするかというと、まず既存のモデルを修正します。新たに別のモデルを構築する人は少ないでしょう。そしてだんだん複雑になっていきます。

浸透流や移流分散、熱伝導などは非常にシンプルなPDEです。数十年前から理論は変わらず、同じPDEが使われ続けています(手を加えられているのは解くためのツール(FEM)の方です)。こういったモデルは「実在する」と考えて良いのでしょう。
それに比べて変形は複雑・多肢ですね。分かっていないことが多いことの表れかもしれませんが、根本的に理論を見直すべきなのかもしれません。今後、発展の余地ありと考えるべきなのでしょうね。

地すべり対策と垂直縫地

垂直縫地がトンネル坑口の地すべり対策として使用できるのでしょうか?

トンネル関連の雑誌や参考書では採用している事例を見かけます。
先日もこの件について質問がありました。トンネル技術者は採用したがりますね。掘削で切断しますが計算はどうするのでしょう。

地すべり技術者は採用しないですね。私はこちら側の立場なので、ありえないという考えです。細いので1本破断すると、ドミノのように連続で破断していきそうです。

しかし、実際に施工例もあるとなると効果があるのかもしれません。
トンネル構造物とロックボルト、切断した垂直縫地で土塊が一体化するのでしょうか?

疑問です。どうすれば分かるのでしょうか?
とりあえず計算?違うような気がしますね。

偏微分方程式とCOMSOL

自然界の物理現象をPDEで表現することが多くあります。

移流分散方程式、熱拡散方程式の2つはよく使用しますね。双曲型・放物型の組み合わせか、片方です。
先日気がついたのですが、通常の圧密方程式もPDEなんですね。拡散方程式と同じです。

COMSOLではこのようなPDEを自由に編集でき、計算できます。
連成もできるようで、温度の異なる流体の不飽和浸透も下記の参考書には載っていました。
Jos Van Schijndel "Integrated Modeling Using Matlab, Simulink and COMSOL: With Heat, Air and Moistrue Applications for Building Physics and Systems"

興味ありますね。

2011年6月9日木曜日

Dating of Groundwater

温泉に対するトンネル掘削の事後評価業務の中で、後輩がトリチウムを測定することになりました。

「年代が求められない場合もあるので、事前のデータを見ておかないといけない」と言ったところ、「半減期が短いからですね」といった答えが返ってきました。過去に書いた報告書を渡しておきましたが、トリチウムを使った事後評価の手法、事前データのチェックの必要性は理解できたでしょうか?

後輩は話題の放射性というキーワードにはまって、地下水流動まで頭が回らなかったようです。前回測定した地下水がそこに留まり続けることはありません。そのため、トリチウムは単順に減少はしないのです。次々、新しいトリチウムを含んだ地下水がやってきます。増える場合もあるでしょう。

もうひとつ。トリチウム濃度は大気と非平衡になった時点から減少します。例えば、2000年測定時に10T.U.であれば1960年前後、もしくは1970年前後での降雨浸透となります。そのため、浸透個所から測定個所までの滞留時間は40年か30年になります。地盤の透水性や地下水年代のコンター図を描けばどちらかはっきりするでしょう。
仮に滞留時間が30年だった場合、今年測定して年代をきめるのは困難です。水爆実験のピークを過ぎて天然レベルに近付く傾向となり、年代が一義的に決まらないのです。今後、ますます困難になっていくでしょう。

そのため、現在では酸素同位体やヘリウムなどの測定を併用しているようですが、私はやったことがありません。地下水を専門とする他の技術者がやっていますので、この際、聞いてみましょう。

ちなみに、池のトリチウム濃度も測るようです。地表水と地下水の混合を計算する必要があるのでしょう。福井県や愛媛県の公開されているデータを見れば、使えるかもしれませんが。

そういえば、以前、PHREEQCでisotopeをMIXできないと書きました。
http://phreeqc.blogspot.com/2010/08/phreeqcisotopemix_09.html
本当にできないのか再度チェックしたところ、あっさりできました。トリチウムを含むデータベース”iso.dat”を選択し、適当な濃度を入力、mixさせたところ、ちゃんと計算してくれました。逆解析もできそうなんですけど。何をやってたのでしょうか?
でもこれで、水質試験結果と併せてMIXでチェックできますね。

2011年6月5日日曜日

After the earthquake hit on March 11th, 2011

In this earthquake, a lot of problems were boiled up in Japan.

Were geology, geochemistry, physics, and mathematics really applied for the analysis of the earthquake? The result of the diffusion simulation of pollution was published in a few days from the earthquake in foreign countries. Recently, it was pointed out that the result of the prediction was intentionally hidden in Japan.
The politicians who don't know the sciences try to overcome the national crisis by their technique, or political technique. Observation data was hidden, and a political explanation were often used by them. The opposition party is concentrating on hurling diatribes toward the government party, isn't concentrating on helping the victims.
These responses of the government were enough to decrease my interest for the future of nuclear power plant. However, engineers have to examine various natural phenomena generated this time.

The other day, the briefing session on the earthquake was held by our company. Major topics were on the damages of the civil structures. It was started with the evaluation of the seismic characteristics. Then, the dameges of the sewerage, waterworks, bridge, road, harbor, landslide, and liquefuction were reported subsequently.The damage that will occur in the future should be decreased by improving our technology.

The politicians have the responsibility to save the victims after the crisis, and we, as engineers, have to show the technology for the nation before it occurs.

2011年6月4日土曜日

RockJock

USGS の RockJock に Standard を追加しようと、研究職が頑張っています。

といっても、鉱物の入手や測定など、最近着手したところで、お願いしてからもう1年以上経ちました。後回しになっていました。今日は仕事が落ち着いたので、問題点などの話を聞いていました。

その中で、思い出したことがあります。
EXCEL の英語版ベースに作られているので、他の言語版で動かすには修正が必要です。私は面倒なので英語版で動かしていましたが、会社には日本語版しかないので、ソルバーの設定を変更する必要があります。これはマニュアルに書いてあるので、順に追っていけばできると思います。困難ではありませんが、面倒です。

次に、StartRkJock11.xlsm を使用する場合は、マクロの中で指定している RkJock11.xlsm の path を修正する必要があります。マニュアルには Sheet の記載通りに設定するよう書いてあるだけで、Sheet には「マクロの記録」機能を使うよう記載されています。これ、VB Editor で path を直すほうが早いですよね。Module25の以下のプロシージャ内の赤色の path を修正すればOKです。(いらないmoduleがたくさんあります。おおらかですね。)


Sub OpenRJ()
'
' OpenRJ Macro'
'
    Workbooks.Open Filename:= _
        "C:\ALL User Data (Illite)\Denny\Eberl Programs\RkJock11\FINAL RJ\2007 Excel\StartRkJock11\RkJock11.xlsm"
    Windows("StartRkJock11.xlsm").Activate
End Sub


File Openダイアログを使えば簡単ですが、まあ、手間としては変わりませんね。

No such file or directory

「Dtransu のソースの中に誤りがある」と、他社から指摘があり、確認しました。

確かに、Do文で配列の上限以上の要素にアクセスしようとしている箇所があります。ビルド時には当然エラーは出ませんが、実行時にも今までエラーが出ていないので、実際はアクセスすることもないのかもしれません。とにかく修正しました。使ってない変数を引数の数を合わせるためかそのまま置いていたり、コメントがなかったりと、他人の書いているコードは分かりにくいんです。いえ、言い訳ですね。ソースを完全に理解できていない私の能力不足です。
ただ、構成式やFEMなどの近似解法の理論を理解するのと、ソースを理解するのは別ではないでしょうか?市販のソフトではソースまで公表されていませんからね。いえ、これも言い訳になりますね。やめておきましょう。
とにかく、ソースを完全に理解していないのは、気持ちが悪いのです。

他にも気になる個所がいくつかあり、ついでに修正しました。
で、コンパイルしようとすると、VF12で以下のエラーが発生。

 Severe: No such file or directory   fortcom

画面にはちゃんと修正したソースが表示されています。なんで?と思いながらpathをいじったり、VFをインストーラーから修復したりしてました。

晩御飯を食べて落ち着いてから再開すると、今度はソースが開きません。確認すると、ソースを削除していました。バックアップから復活させてビルドすると、正常に動作しました。だから、No such file なんですね。そういえば、ファイルの整理をしていましたね・・・情けない。

ちなみに、さきほどサポートからのメールが届きました。
例えば、ビルドコマンドで指定したソースファイル名を間違った場合にこのエラーメッセージがでるとのこと。遅くまでスミマセン。

2011年6月2日木曜日

石と土の色

今日は、大阪大学 中嶋教授の色の話を聞きました。

昔、地球色変化(「へんげ」だそうです)も興味深く読みましたし、深田研から公開されている資料や、論文も読んでいました。ミノルタの色彩色差計で、論文と条件を合わせてコアの色を計ったりもしていたのですが、定量分析ができないため、いつの間にか使わなくなっていました。
色の測定は XRD で検出できないような微量の鉱物を定性的に推定できる利点があります。私は花崗閃緑岩の強度の落ちる変質の原因を、XRD で解決できなかったため、色から推定したことがあります。他にも実務での利用法はあるでしょう。
久しぶりに聞くと、「ああ、そういう手法があったなあ」という懐かしい思いと、「まだ定量分析は困難なんだなあ」という残念な思いが交錯しました。ferrihydrite を近赤外などで定量できれば、かなり使えるツールになるのですが。

もともと、地層処分の問題を解決するために色の利用を思いつかれたそうですが、その関連で放射性物質の移流分散も研究されているようです。色のイメージが強い先生だったので、簡易反応を取り入れた1次元の移流分散方程式と理論解の載ったスライドを見たときには驚きました。
聴講していた学生さんもパラメーター取得について研究しているそうです。ただ、比表面積 A や反応定数 k についてはまだまだ研究の段階らしく、明快な設定法は無いようでした。
複雑な心境ですね。

2011年6月1日水曜日

トンネル掘削と透水係数の変化

COMSOLのConference CD 2011 Ed. の中に、トンネル掘削による影響によって、周辺の透水係数の変化を考慮した浸透流計算の実施例がありました。2010年 Bostonでの発表のようです。

原理は簡単で、弾塑性でひずみを計算し、それに応じた透水係数の変化をあらかじめ設定していた関数から導いて、浸透流計算をするといった内容でした。関数の出典も載っていましたので、取り寄せましょう。

昔、ポストグラウトで変位を出してしまった事例を経験しましたが、その時は水の解析は水理担当者、変形の解析は力学担当者として別々で行っていました。本来はこういった連成解析が必要だったんでしょうね。

COMSOLは柔軟ですね。