それまで、現場透水試験といえば、飽和帯を対象としたものが主体でした。
過年度の報告書を借りてくると、不飽和帯に対し飽和帯の試験を適用して、透水係数を求めている例を見かけることも屡々。「長時間注入しているから飽和したと見なす」、「流量が一定になったから飽和帯とみなす」、などという期待のもとに実施されていたり、何も記載せず淡々と飽和帯の式を流用している例も多く見ました。背景には、不飽和の式が基準にないから飽和の式を使うといったマニュアル依存が強くあったようです(基準外の論文ベースの不飽和試験を実施している例は見ませんでした)。
「長時間注入しているから飽和したと見なす」等の期待について、論ずるに値しないことを示すデータは、以下の報告にあります。
西垣ほか「不飽和地盤を対象とした現場透水試験法に関する課題の抽出と改良に関する考察」
- 初期飽和度により求められる透水係数が異なる。これは、不飽和帯に注入することで間隙空気が封入されるため。
- CO2ガスの事前注入が有効。
大きくは上記2点の成果が中心の報告です。他にも、示唆に富む報告が数多く含まれており、個人的には「当たり」の資料でした。
過去の研究をもとに、普遍化・共有化できる部分のみがマニュアル化・基準化されているとも言えます。その観点ではマニュアルや基準の適用範囲に多様な自然をすべて合わせることはできません。適用外の自然をどのように調べるか?が地質屋の力量と言われたこともあります(素晴らしい施主でした!)。
今まで力量を問われ対応できなかった方々も、せっかく基準化されたのですから、使えばよいと思います。不飽和地盤を対象とした試験、今後は広く使われるようになることに期待しましょう。
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