幅の広めのモデルと、狭めの高・超高解像度モデル。どちらも流体として Navier-Stokes を解いているようです。
まずは前者の結果。以下のような順序が記載されていました。
- まず、注入された苦鉄質マグマが石英閃長岩メルトを加熱。軽い加水閃長岩相が混合物上に層状に形成される。一方、重い苦鉄質エンクレーブの大部分は、チャンバーの底部に定着。
- 次ステージでは、複数の高温閃長岩メルト(苦鉄質メルトを5~10vol%含有)が既存の閃長岩メルト内に複数注入される(図4a)。
- 苦鉄質相の一部(約5Vol%)は、固結したエンクレーブの形でチャンバー頂部に上昇。他の部分は晶出過程の中で密度および粘度の増加により上昇を止める(図4b、d)。
- その結果、チャンバーを底部から頂部まで貫通する細長い鉛直チャネル(細脈または一連のエンクレーブの形で偏在する苦鉄質岩とのハイブリッド組成)が形成される。
後者も似たようなメカニズム。よく考えられていますね。
いずれも、苦鉄質マグマだけでは重たくて上がれないので、水を含むメルトと混ざるなど軽いメルト(前者:hydrous syenite、後者:super-heated diorite )を生成する点がミソ。苦鉄質メルトは軽メルトの上昇に少量連れていかれるイメージです。
キーワードは水と密度、粘性でしょうか。シミュレーションの結果からは、粘性の違いよりも密度の違いが mixing/mingling を分けているようです。
おそらく地質屋さんの多くは、ここまで具体的に成因を説明できません。その結果、地質図は(スケールにもよりますが)その程度のレベルにとどまります。
過去に書いた閃長岩と花崗閃緑岩、エンクレーブの分布域、ここまでの知識なしで書いていますね。ヤバい。このような具体的な成因を想像して観察結果を解釈すれば、また違った地質図になっていたでしょう。反省。
この解析結果は、動画として公開されています。
正解かどうかは誰もわかりませんが、正解の可能性の一つを提示しているところがこの文献の価値だと思われます。
正解に近い絵の描ける(知識・計算力を有する)地質屋さんを目指さなくてはなりません。
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