2012年6月7日木曜日

限界揚水量 その6

②の層流・乱流がダメだったので、①を試すことに(本質ではありませんが)。

帯水層厚10m、水位固定境界まで500m、揚水井戸は完全貫入状態、2次元軸対象条件での結果です。まずはk=0.01cm/sで。


 直線ですね。そういえば、地盤工学会基準では算術目盛に変わっていますが、理由は書かれていないですね。

次はkv=0.1kH =0.001cm/sの条件。


まったく変化なし。まあ、境界まで500mあるので、変わらないのでしょう。
 ということは、境界が相対的に近ければ効いてくるということでしょうか?

で、25m離れた箇所に固定水頭を設けて計算してみました。海に浮かぶ島や河川の中州での揚水試験をイメージしてみました。

が、結果は同じ。直線状になります。

最後に、集水埋渠なら、縦方向の透水係数が効くか?と思い、2次元でやってみました。
透水係数はkH=0.1cm/s、kV=0.01cm/s、埋設深は4.4m。

ダメですね。
素直な計算では限界を作れないようです。
ダルシー恐るべし。

②の層流・乱流に引き続き、①もダメ。
残るは③だけですが、これは実験でしか確認できないでしょうね。

2012年6月6日水曜日

限界揚水量 その5

山本荘毅(1962)「揚水試験と井戸管理」を借りてきました。

S-Qの勾配を2直線で表現した場合の変化点を適正揚水量と呼んで良いのか?という提言がこの本の中にありました。当時より、2直線ではなく、曲線になることが知られていたようです(P121)。
3直線の場合はどちらが適正揚水量なのか分からないとも。ごもっともです。

また、限界揚水量(上記適正揚水量と同義)については、水位降下と揚水量の関係が、Reynold の実験による log h と log v との関係に似ていたことより呼ばれ始めたようですね。
レイノルズ数(Reynolds number)については、Re=10や1が臨界値として挙げられています。4については以下の記述があります。
P125
R=4(R=10とR=1の中間位の所に相当する)
P119第87図において、「対数目盛で中間」というのが、Re=4の根拠のようです。


福川豊(1966)「実用深井戸工学」でも、平均粒径を用いて測定した場合、Re<4の範囲で層流となることが書かれています(P51図49)。
こちらも、レイノルズ数(層流・乱流)と限界揚水量の関係は否定的。以下のように書かれています。
P51
ある揚水量を過ぎると、今迄の比例度と異つて水位の降下が多くなる。この変換点を、層・乱流の境界点であるとし、水位の降下率が大きくなったのは、乱流になつたからであると考えるのは、早計である。普通、一般に使用し、施工されている深井戸の流入部では、揚水量の極く少ない間は兎も角、殆ど乱流状態で揚水している。これは、計算してみれば、数字となって表われる事である。
 ということで、引き続き計算されています。井戸を中心に直径10mが乱流と計算されても、限界揚水量は現れない事例も挙げられています。他にも、面白いことが書かれていますね。

以上、2冊の共通する点は、
・層流・乱流は臨界レイノルズ数で区分できる(Re=1~10、中間4)
・限界揚水量と臨界レイノルズ数は物理的な関係がない。(グラフが似ているので間違う人がいた)
ということでしょう。

まあ、実際は違うけれども、Reynold の実験と形がよく似ていたので、「限界揚水量」は層・乱流変換点と見た人がいた。また、今もそう解釈する人たちがいる、程度のことでしょうね。
(部長様に言っても聞かないでしょうね。黙っておきましょう。)

2012年6月4日月曜日

限界揚水量 その4

その2で記載した、レイノルズ数4の根拠を確認するため、引用文献を見てみました。
 口頭発表のようですね。
高坂(2000)井戸限界揚水量に関する考察, 第35回地盤工学研究発表会, pp.1545-1546

面白い内容だと思います。
この発表内容だと Sichardt の動水勾配を使用した限界流速は粒子移動の方ですね。うまく整理されています。しかし、その適用限界は飛んでいますね。また、レイノルズ数4の設定根拠も書かれていません。このままでは使えないですね。
引用されている古いテキストでは井戸近傍のレイノルズ数を測っているようです。これは参考になりそうです。ただ、古い本で市場に出ていないものもあります。大学の図書館で探してみましょう。

手元にあった同じ著者の本、山本荘毅「新版 地下水調査法」では、以下のように書かれています。
p20
地下水の場合、Reの値が1~10の間で層流となり、100を超えると乱流になることが実験的に示されている。ここで、実例を挙げて計算をする。
 計算では、平均粒径が用いられています。
p251
井戸の揚水量が非常に小さい時、地下水の流れは整流であるが、揚水量が少し増すと井戸の周囲の流れは渦流になる。整流から渦流に移る限界の流量は限界流量Qcと呼ばれており、このときのレイノルズ数は約10である。すなわち、R<10では整流である。
レイノルズ数は10が良いのでしょうか?もう少しその背景のしっかりしている方が説明しやすいですね。
仮にレイノルズ数4や10が正しいとして、さらに平均粒径を用いるのが正しいとすると、浸透流で流速を出し、平均粒径を用いてReを計算すると、それが制限となり限界揚水量(地下水低下の限界)を求められそうです。
 うーん。でも、すぐに乱流になりそうですが。

2012年6月3日日曜日

限界揚水量 その3

地下水学会HPには、以下のようなFAQも掲載されています。
http://homepage3.nifty.com/jagh_torikichi/faq/faq_ans.htm#11-0
  揚水限界量を求める計算式はありますか?
手持ちのデータと下記資料を照らし合わせ、目的の揚水量を導く適当な計算式から計算されることを提案します。
参考図書1.(社)地盤工学会編:地盤調査 基本と手引き
    主に第23章 揚水試験と第22章 透水試験
参考図書2.(社)地盤工学会編 現場技術者のための土と基礎
シリーズ19「根切り工事と地下水ー調査・設計から施工までー」

参考図書2について水替え工法勉強会のHPに、以下のような明快な解説があります。すばらしい!デッドリンクになる前にコピーさせて頂きました。
http://www.mizukae.com/qanda/qanda-29.html

安全率について
投稿者:misawa 投稿日: 9月21日(水)11時30分24秒

HP大変興味深く拝見しております。

さて、ディープウェルの安全率についてお伺いしたいと思います。
「根切り工事と地下水」P207において、以下の記載があります。
”通常、シチャートの式は経験的に地盤の透水係数10-2cm/sでよく適合するといわれているので、Fs=1とすると、・・・”
ディープウェル1本当たりの、可能揚水量と必要排水量とを比較し、安全率を求めますが、安全率を設定する際の根拠となるような文献はありますでしょうか?上記に透水係数10-2cm/s云々とありますが、透水係数により安全率は異なってくるのでしょうか?

また、シチャート(シーハルト??)の式は、井戸ロスを考慮した揚水可能量を算出する経験式と見なせばよろしいのでしょうか?

以上、アドバイスお願いいたします。
Re:安全率について
投稿者:利光 投稿日: 9月23日(金)22時13分3秒

今回のご質問内容は、多くの技術者が疑問に思っている部分だと思います。
書店や図書館で専門書を探しても、満足できる答えは得られないでしょう・・・。
ところが、ネットサーフィンで、発見し、入手した文献に答えがありました。

文献名は「Groundwater Lowering In Construction」です。

以下、文献内容を引用しながら、私見を述べますので、参考にしてください。

■ディープウェル揚水能力算定式と透水係数の適用範囲
以下に「根切工事と地下水」に示されているディープウェル揚水能力の算定式を示します。
Sichardt(Sichart、シーハルト、シチャート、ジハルト)の式と呼ばれています。
ドイツ語読みであれば「ジハルト」が正解に近いのでしょうか?・・・。

q=2*3.14*rw*lw*√k/15*Fs (5.9)

q : ディープウェル1本当たりの揚水能力 (m3/sec)
rw: ディープウェル半径 (m)
lw: ディープウェル内への地下水の浸出部分のフィルター長さ (m)
k : 地盤の透水係数 (m/sec) ---> (cm/sec)ではありません。
Fs: 安全率 --- 「根切工事と地下水」でのみ、示されている?

文献によると(5.9)式は次のようにして導かれています。
単純明快です。

q=A*v
=2*3.14*rw*lw*k*Imax
=2*3.14*rw*lw*k*1/(15*√k)
=2*3.14*rw*lw*√k/15

A : 地下水浸出部分(流入部分)のフィルタ表面積
A=2*3.14*rw*lw
v : ウェル外周面における地下水のウェル内流入速度
v=k*Imax ----- Darcy's law(ダルシーの法則)
Imax : 最大揚水能力が得られる最大動水勾配
Imax=1/(15*√k)


文献によると、Imaxの算定式は1928年、Sichardtが多くのポンプ揚水井戸施工実績を調査分析して導き出した式(経験式、実験式)のようです。
(5.9)式がSichardtの式と呼ばれる理由が見つかりました。

さて、文献によると、最大動水勾配算定式 Imax=1/(15*√k) の適用範囲は K>1*10^-4m/sec = 1*10^-2cm/sec となっています。
1993年、Preene and Powrieの研究により、K<1*10-4m/secの場合、上式を用いるとImaxが過大に算出されることがわかりました。つまり、ウェル揚水能力が過大に算出されることがわかったのです。
Preene and Powrieの研究によって示されている「透水係数~ウエル口径~揚水能力の相関図」により試算した結果を示します。

  rw            k             q1               q2          q1/q2
-----------------------------------------------------------------
0.3m    1*10^-3m/sec    0.0040m3/sec    0.0040m3/sec       1.0
0.3m    1*10^-4m/sec    0.0012m3/sec    0.0013m3/sec       0.9
0.3m    1*10^-5m/sec    0.0002m3/sec    0.0004m3/sec       0.5


rw: ディープウェル半径 (m)
k : 地盤の透水係数 (m/sec)
q1: グラフから読取ったストレーナ1m当たりウェル揚水能力(m3/sec/m)
q2: Sichardtの式でFs=1として算出したストレーナ1m当たりウェル揚水能力(m3/sec/m)

Sichardtの式の適用範囲が K>1*10^-4m/sec = 1*10^-2cm/sec となっている理由が見つかりました。
q1/q2を(5.9)の安全率Fsとすると、K>1*10^-4m/secの場合はFs=1、K=1*10^-5m/secの場合は
Fs=0.5となります。

なぜ、このような重要な情報が、日本の専門図書に掲載されていないのでしょうか?
(5.9)式を「きわめて不思議な式・・・」と酷評した論説文を読んだことがあります。
恐らく、Sichardtの研究成果を調査されなかったのでしょう・・・。残念です。
「Groundwater Lowering In Construction」には他にも重要な情報が掲載されています。
文献引用ばかりの和書を読むよりも、参考になります。
問題は「お役所が、この洋書を設計根拠資料として認めるかどうか?」です・・・。

■井戸ロスについて
井戸ロス(井戸損失)とは井戸外周面水位と井戸内水位の差を意味するものです。
Sichardtの式は井戸外周面水位以深にあるストレーナ長をパラメータとしてウェル揚水能力を算定する式です。
したがって、井戸ロスを考慮したウェル揚水能力算定式ではありません。
なお、井戸外周面水位は井戸干渉によって変化しますので、群井戸の式で算出してください。

以上
この中の、Imax が使えますね。
全体的にはP. M. Cashman and M. Preene (2001)Groundwater Lowering in Construction :A practical guide, p214~215 のことを解説されています。この本、今年8月に 2nd Ed. が出るようなので、この個所がそのまま残るかどうか分かりません。ただ、「根切り工事と地下水」は有名な本ですから、根拠には使えるでしょう。Sichardt とPreene and Powrie の文献、早速注文しましょう。

2012年6月2日土曜日

限界揚水量 その2

整理すると、以下の3点ですね。
計算上は①透水係数が小さくなる、実際は②層流から乱流になる、③目詰まりが生じ始めている。

①については先日の通りです。
②は、ある範囲の粒径で構成される多孔質媒体で、レイノルズ数がいくつ以上で乱流になるかという問題です。私は水理学を知りませんので、そちらの方は難しいですね。限界流速を動水勾配にすれば、基準が出てきそうですけど。いずれにしても、これは③とも関連しますが、多様な粒径で構成される地盤について代表値を選定するなど、何か小難しい簡略化を挟まないといけないのでしょうね。
③は昔の基準では数字が示されたものがありましたね。通水井戸などでも基準がありそうです。

②③については、地盤工学会のテキストに詳しい解説があります。レイノルズ数4の根拠については文献を確認しましょう。

ただ、東北農政局さんでは、限界揚水量は日本独自の評価法で、実際は折れ線でなく曲線で表されると発表されています。図4が理解できませんが。どういう意味でしょう?
http://www.maff.go.jp/j/nousin/noukan/tyotei/t_seika/pdf/h20seika_10.pdf

限界揚水量

限界揚水量の発生要因を考えています。

先日、うちの部長様が経験則を持ち出し、「30年の経験上、水位を帯水層の○○%低下させると限界揚水量になる」と豪語してしまったため、お客様に「根拠を出して下さい」と返されました。当然の返しです。

 で、根拠を出せる訳もなく、別の方が新たに揚水試験結果を集め整理することに。


文献を調べても出てきませんし、人に聞いても色々な考えが出てきます。
調べてみると、地下水学会のHPに似たようなFAQがありました。
http://homepage3.nifty.com/jagh_torikichi/faq/faq_ans.htm#11
限界揚水量に学術的根拠はあるのでしょうか?
限界揚水量は、段階揚水試験時の揚水量と水位変化を両対数グラフにプロットした際の屈曲点(急変点)における揚 水量のことです。したがって限界揚水量を上回るとわずかな揚水量変化で水位変化が大きくなります。一般的な井戸公式に従えば、透水係数が小さくなることを 意味しますが、実際には井戸周辺の流速が大きくなり非ダルシー流れ(層流から乱流へ)になり抵抗が大きくなるという解釈や、流速の増大にともなって帯水層 を構成する粒子移動が大きくなり目詰まりが生じ始めているという解釈が一般的です。
限界揚水量の通常80%程度を適正揚水量としているのは、後者の立場にたって帯水層を破壊せず、泥だまりへの土砂の流入を極力おさえながら、なるべく多量の揚水量を得ようとする経験的な方策といえます。したがって、根拠の無い数字とは言えません。
経験的に80%という数字はOKなので、100%の限界揚水量の値もそれなりの根拠があるだろうということでしょうか?やはり明快な学術的根拠はないようですね。

計算でチェックするなら、前者では鉛直透水係数を小さくし、それが卓越するほど(水位が低下するほど)流量増分が小さくなるということができるかもしれません。試す価値はありそうです。
後者では流速のチェック程度でしょうか? さすがに、多孔質媒体における層流・乱流は分かりません。なにかあるような気もしますが。

2012年6月1日金曜日

鉛直方向の透水係数

砂礫地盤の鉛直方向の透水係数を求めたいという問い合わせがありました。

聞けば、鋼管矢板井筒内の揚圧力を計算したいとのこと。
ボーリングで求める透水係数は「水平方向」と地盤工学会の解説書に書かれているため(厳密には鉛直方向も含まれていますが)、鉛直方向が知りたいということでした。

それなら、「鋼管内を掘って揚水すれば求められるのでは?」と返答しましたが、どうでしょうか。乱れているので、参考程度の値にしかならないのかもしれません。しかし、ボーリングで礫層にケースを打ち込んで調べるよりは規模が大きいため、相対値として良い値が出そうです。この辺りは何か基準や研究があっても良さそうですね。

私が論文で見たことがあるのは、岩盤をブロック状に切り出し、3方向の透水性を調べる装置。マイナーです。また、砂や粘土であれば、ミニ供試体+三軸圧縮試験装置でも可能でしょう。
土砂の現位置試験検索してみると、以下の試験装置が引っかかりました。東京ソイルさんです。礫は厳しいかも知れませんね。発想は、上記の鋼管での試験と同じです。
http://www.tokyosoil.co.jp/pdf/g-08.pdf

計算ツールは対応していますので、機会があれば試してみましょう。