2018年12月15日土曜日

災害と降雨にかかわる文献

たまっていた文献にざっと目を通しました。
※20181230追加しました。

災害と降雨指標

複合土砂災害シミュレータSiMHiSを用いた山間地域における土砂災害の警戒避難情報の提供に関する一考察
山野井 一輝, 藤田 正治
砂防学会誌 / 69 巻 (2016) 6 号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sabo/69/6/69_15/_article/-char/ja/
H26広島土砂災害、H25伊豆大島土砂災害、H23紀伊半島大水害のスネークラインを区分

斜面崩壊の誘因となった降雨の評価手法
小杉 賢一朗
砂防学会誌 / 67 巻 (2014) 5 号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sabo/67/5/67_12/_article/-char/ja/
4つの災害事例において崩壊発生時間には降雨の既往最大値超過
深層崩壊の方が表層崩壊に比べて実行雨量半減期大

RBF ネットワークを用いた土壌雨量指数の確率評価について
五十嵐淳博ほか
平成26年度砂防学会研究発表会概要集
http://www.jsece.or.jp/event/conf/abstract/2014/
100年、50年、30年、10年超過確率の土壌雨量指数は、RBFN出力値0.4、0.5、0.7、0.9に概ね対応

日本列島における土砂災害発生危険性を高めた大雨の空間分布とその地域的特徴―土壌雨量指数を用いて―
瓜田 真司, 齋藤 仁, 中山 大地, 泉 岳樹, 松山 洋
地学雑誌 / 120 巻 (2011) 4 号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgeography/120/4/120_4_615/_article/-char/ja/
過去10年間のSWIの履歴上位3位以内を更新する降雨を「大雨」と定義し抽出


災害要因の分析と予測

地域への適用性をふまえた斜面崩壊発生確率のモデルとアウトプットの開発
齋藤 洋介, Thuy Thi Thanh LE, 川越 清樹
土木学会論文集G(環境) / 73 巻 (2017) 5 号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejer/73/5/73_I_229/_article/-char/ja/
多重ロジスティック回帰(標高・斜面傾斜度・表層土壌・降水量)
250×250mまでダウンサイジング
空間解像度の細分化により地形的要因の影響が高まる
動水勾配0(水の影響を考慮しない)場合、発生確率の高い地質の序列は崖錐、凝灰岩、泥岩、花崗岩、礫岩、安山岩
泥岩は動水勾配の上昇に対して鈍感

数値地理情報と降雨極値データを利用した土砂災害発生確率モデルの構築
川越 清樹
自然災害科学 27(1), 69-83, 2008-05-31
https://ci.nii.ac.jp/naid/110006812761
地質4区分(崩積土・新第三系・古第三系・花崗岩)
多重ロジスティック回帰(地質・起伏量・動水勾配データ(降雨・浸透流))
土砂災害発生確率モデルを構築
再現期間10年の土砂災害発生確率は急峻な山岳地が中心
中国山地の山裾部でも高い地域あり
解像度1kmの発生確率は50mの発生確率と概ね同値

ロジスティック回帰分析を用いた土砂災害発生危険基準線の確率的評価
篠崎 嗣浩ほか
土木学会論文集F 66(1), 122-131, 2010
https://ci.nii.ac.jp/naid/130004468701
災害発生時刻以前で最も小さいRBFN値
・ピークと発生が一致・・・ピークのRBFN値を採用
・ピーク前に発生・・・発生前の最小値を採用
・ピーク後に発生・・・ピークのRBFN値を採用
ロジスティック回帰によりRBFN値を確率値として表示

機械学習を用いた1kmメッシュごとの斜面崩壊に対する危険度評価
https://ci.nii.ac.jp/naid/40021669817/
伊藤 真一ほか
地盤工学会誌 66(9), 8-11, 2018-09
いくつかの機械学習手法を利用し、崩壊・非崩壊を教師として学習。GBMの予測性能が良かった。

土砂災害発生に関わる降雨規模と地質の関係分析
国土交通省 国土技術政策総合研究所 池田ほか
http://www.jsece.or.jp/event/conf/abstract/2017/pdf/518.pdf
・降雨・土砂災害・地質の情報をすべて 5km メッシュ単位で整理。
・土砂災害発生状況には、土砂量や崩壊地形などを網羅的に精度良く整理することが困難であるため、土砂災害の発生件数で整理。
・降雨データには、解析雨量・土壌雨量指数・Surface データを用いた。各メッシュにおいて、1988 年~2007 年の土壌雨量指数および RBFN 出力値の最大値(最小値?)を整理し、 2008 年~2014 年でその最大値(最小値)を超過する降雨を 抽出し、これを履歴順位 1 位相当の降雨とした。
・地質データには、20万分の1土地分類基本調査の結果を用いた。指標には岩石区分を用いることとし、メッシュに複数の岩石区分が含まれる場合 は、面積割合が最も大きい区分を代表区分とした。
・①RBFN 履歴 1 位降雨では複数の土石流が発生するポテンシャルが高いこと、 ②SWI履歴1位降雨とRBFN履歴1位降雨で災害が発生しやすい岩石区分が異なることが示唆された。また、③履歴順位 1 位相当の降雨では西日本の方が災害発生率が高い場合が多く、東日本と西日本で履歴順位のもつ意味が異なると推察された。


土砂災害警戒情報の対象とする災害

最近の豪雨による土砂災害と警戒避難強化に向けた取り組み
岡本 敦
平成30年度(公社)日本地すべり学会総会およびシンポジウム
https://japan.landslide-soc.org/symposium_index/symposium_symposium.html
基準雨量設定の対象とする現象は「土石流及び集中的に発生するがけ崩れ」
「集中的に発生するがけ崩れ」とは、土壌雨量指数が一定以上になった場合に一連降雨のピーク付近で、一定の範囲で発生する崩壊として定義。

都道府県と気象庁が共同して 土砂災害警戒情報を作成・発表するための手引き
国土交通省水管理・国土保全局砂防部・気象庁予報部
 平成17年6月 平成27年2月改訂
http://www.mlit.go.jp/river/sabo/seisaku/tebiki_h2702.pdf
土砂災害警戒情報は、個別の災害発生個所・時間・規模等を特定するものではない。
土砂災害警戒情報の基準設定は、一連の降雨のピーク付近で、ある一定の範囲で発生する急傾斜地の崩壊土石流が発生した際のデータ等に基づく。
降雨に関係なく発生する散発的な急傾斜地の崩壊は発表対象でない。
深層崩壊等も発表対象でない。
地すべりも発表対象でない。(国や都道府県等が個別箇所毎に実施する移動量等の監視・観測等の調査結果等に基づき、 市町村が避難勧告等の発令の判断をする等が原則。)



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全国的には雨だけで災害発生・非発生を区分できません。履歴1位に近いほど災害発生の危険性が高いというのも半分正解で、半分間違いでしょう。根拠データを見せてほしいところです。
残念ながら、現段階では全国を網羅した質の良い「災害発生データ」「崩壊データ」等はありません(文献の中にはその指摘もありました)。したがって、議論はいくつかの仮定や災害の定義、あるいはローカルな話題に絞られています。
まずは、質の良いデータを全国的に収集できるシステムを整備すること、ターゲットを「災害」にするのか「崩壊」にするのかを絞ること、扱う「災害」の定義を明確にすることなどが先決です。
多次元を扱える機械学習は予測に必要ですが、データの質を上げることの方が予測精度向上に効果的でしょう。

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